th Precious Metals Weekly Update 15 October 2015 WEEK IN REVIEW: 先週発表された9月FOMC議事録において、早期の利上げに賛成したのは1人のみで、他の9人は中国経済や他の新興国市場の状態、 更に依然として低い米国のインフレ率を考慮すると利上げを見送るべきとの見解を示したことが明らかとなった。大半は先月のFOMC 後の記者会見で発表されたものと同内容だった為、これ以外に特に驚くべき内容は無かったが、FOMC後に発表された米9月雇用統 計の弱い結果を受けてドルは2週振りの低水準まで下落、フェデラルファンド金利先物レートでは2016年3月の利上げ実施の可能性が 最有力となり、ドル建のコモディティ価格を押し上げる結果となった。米国の経済政策方針が明らかになった事で、株式オプション市場 のボラティリティは落ち着いた(VIX恐怖指数は2か月振りの低水準まで下落)一方、S&P500種株価指数は週次ベースでは年初来で最 も堅調な推移となった。 プラチナ 先週プラチナは週次ベースでは年初来で最も堅調に推移し、直近安値である$899/oz から値を戻した。50 日移動平均である$973/oz を再び突破し、現在は心理的節目である$1,000/oz を目指し推移しているが、戻り売りが入り上値を抑えられる可能性がある。 先週プラチナはとりわけ堅調であった。$900/oz を割り込んだ後、ショートカバーと投機筋による買いが入ったことで$75/oz 上昇した。ド ル安に推移したことも強材料となり、プラチナはテクニカル面で節目となる水準である 960/oz、及び 200 日移動平均である$973/oz を 突破した。プラチナは 5 月中旬以来続く下降トレンドチャネルを脱したようだが、心理的節目である$1,000/oz 付近で(あるいは 2015 年 5 月の高値と 8 月の安値を結んだ 38.2%フィボナッチリトレースメントである$1,002/oz や、100 日移動平均である$1,014/oz)上値を抑え られる可能性がある。 Sibanye Gold(Sibanye)は Amplats の Rustenburg 鉱区の買収合意に続き、先週 Aquarius Platinum(Aquarius)に対し、$294 万で 同社を買収することを提案した。Amplats と Aquarius 双方の買収が実現すれば、Sibanye は世界第 5 位の PGM 鉱山会社となる(多 少の生産合理化が進められる可能性はあるが、Aquarius からは約 6.2t/年、Amplats からは約 15.6t/年産出される予定である)。同 買収案報道時点での Sibanye の提案額は、足下の Aquarius の時価総額に対して約 66%のプレミアムとなっていたが、Rustenburg 鉱区で操業を行う Sybanye は同鉱区に隣接している Kroondal 鉱山を取得することで操業面での相乗効果が見込めるため、 Sybanye にとっては実に買い得な額と言えよう。同時に、同買収によって比較的生産コストが安く産出量も多いジンバブエの Mimosa 鉱山(Aquarius と Implats の 50:50 の JV)獲得することとなる。Kroondal 鉱山と Mimosa 鉱山共に、操業キャッシュコストは約 $800/oz であることから、足元 PGM 価格が低水準である状況下でも Aquarius は競争力を有している。以上の恩恵を Sybanye は享 受し、PGM 需要が高まると予想される将来においてその恩恵は更に増大する可能性がある。 先週ドイツ運輸省は、約 360 万台のフォルクスワーゲン(VW)製のディーゼル車の排ガスを制御する違法装置を取り除くためには、ソフ トウェアの書換えではなく寧ろハード面での変更が必要であると発表した。詳細は現在明らかではないが、VW の米国法人社長は米 下院の公聴会において、ハード面での修理とは(少なくとも米国で販売されるモデルに対する修理)、異なる触媒を組み合わせること、ま たは尿素 SCR システム(SCR)の使用、或いはこのどちらも採用となる可能性があることを証言した。触媒の交換に際して、SCR あるい は NOx 吸蔵還元型三元触媒 (LNT)のどちらが適用されるか次第で、310kg~3.4t 程のプラチナ追加需要が生まれると予測している (SCR は SCR 自体にプラチナを一切含んでいない一方で、他の触媒と併用される為、結果としてプラチナ搭載量は多くなる)。以上を考 慮すると、触媒を搭載するスペースが限られているため自動車メーカーは触媒を追加で搭載することは避けると考えられ、まずは単純 に排ガス再循環装置を採用することで窒素酸化物(NOx)の排出量を抑えるであろうことから、プラチナ需要の減退が加速すると予測し ている。英国の 9 月新車登録台数は 9%上昇しているが(約 50 万台を記録)、欧州の自動車市場の中でも最大市場である英国におけ るディーゼル車シェアは前年比 2%減少し、45.9%となっている。同結果は、ディーゼル車販売台数が数か月後、更に減少するだろうと いうやや不吉な前兆である。しかし、英国の自動車市場の過半数を占める自家用車や商業車においては、CO2 排出量の少なさや優遇 税制の面から、依然としてディーゼル車が有利な状況に変わりない。これらの優位性が継続する限り、ディーゼル車は欧州自動車市 場において今後もある程度シェアを維持するだろう。 パラジウム パラジウムは 2015 年 8 月安値以来続く急激な上昇トレンドが継続し、$700/oz を突破して 6 月中旬以来の最高値をつけた。今週月曜 日には 200 日移動平均である$718/oz の水準から値を戻したが、今後同水準を再び試す可能性がある。 先週はパラジウムも堅調に推移したが、プラチナ・パラジウム間のスプレッドは、プラチナが急上昇したことで 13 年振りの低水準であっ た 29%から再び 39%まで拡大した。ディーゼル車排ガス不正問題に端を発したパラジウム買い/プラチナ売りという市場の構図は足 Platinum prices $/oz Palladium prices $/oz Gold prices ($/oz) Silver prices ($/oz) last week: last week: last week: last week: 5-Oct 9-Oct Change: 8.0% Support: $960 Resistance: $1,002 Outlook: 5-Oct 9-Oct Change: 2.2% Support: $662 Resistance: $737 Outlook: 5-Oct 9-Oct Change: 1.6% Support: $1,114 Resistance: $1,173 Outlook: 5-Oct 9-Oct Change: 3.8% Support: $15.43 Resistance: $16.33 Outlook: th Precious Metals Weekly Update 15 October 2015 元収まりつつあるが、新興国市場における自動車触媒需要が増加した場合、パラジウムは再び上昇する可能性がある。ETF は若干 利益確定の売りが見られたものの、NYMEX ではショートカバーが入り、新たにロングポジションが積み上げられていることから、パラ ジウムに対する投資家心理は強気であることが伺える。 ゴールド ゴールドは 7 週振りの高値である$1,150/oz に達し、先週は 2015 年 5 月の高値と 7 月の安値を結んだ 50%フィボナッチリトレースメン トの水準を上回る水準で引けた。直近の抵抗線は 2015 年 8 月の高値且つ、同 61.8%フィボナッチリトレースメントである$1,170-3/oz と考えられる。 中国が国慶節の祝日で約 1 週間休みに入ったことで、先週ゴールドは現物需要のサポート要因を欠いていた。先週木曜日の中国市 場再開時の取引量は特筆すべき程の水準には至らなかった。中国人民銀行の発表によると、9 月に更に 15t のゴールドが購入された (先週のレポートで触れた通り、8 月の 16t 購入に続くもの)。中国は安定的に月間 15-20t 金準備高を増加させているが、これが過去 購入した数量を調整するものか、もしくは現在実際に購入されたものであるかは断言することができない。 ゴールドにとってもう 1 つの主要な市場であるインドでは、ゴールドの輸入量が前月比 52%減少し 67t となったと報じられた。今の時期 は結婚式やディワーリー祭りを控える等、通常は需要が増加する時期である為、このように輸入量が減少することは珍しい。一方で、 年初来のゴールド輸入量は合計で 750t と(前年比 47%増)、同国内では既に豊富な在庫を抱えていると考えられ、それは国内のゴー ルド価格が国際価格と比較してディスカウントを維持していることから見ても明らかである。 シルバー 先週シルバーは 200 日移動平均である$16.00/oz 近辺の抵抗線に達し、同水準を試す展開が続いている。 先週シルバーは 2015 年 5 月の高値と 8 月の安値を結んだ 38.2%・50%フィボナッチリトレースメントを突破、100 日移動平均まで値を 戻し、その後 200 日移動平均である$16.00/oz で上値を抑えられた。シルバーコインの需要が堅調であることはもちろん、ショートカバ ーが大幅に入っていることに加えて新たにロングポジションが積み上げられていることで、シルバーは堅調な値動きとなった。また、 Glencore と Teck Resources のストリーミング取引に関するニュースが報道されたこともサポート要因となった。ストリーミング取引では、 鉱山会社は将来地金を受渡すことと引き換えに前払金を受けることが出来、地金を購入する側は、価格上昇時にその地金を販売した り在庫することで利益を享受することが可能となる。 15th October 2015 三菱商事 RtM ジャパン(株)貴金属事業部 転用・転送 堅くお断りいたします 2 th Precious Metals Weekly Update 15 October 2015 ECONOMIC CALENDAR Source – Bloomberg Oct-12 US: 祝日 Oct-13 Japan: 9 月工作機械受注数 前 -16.5% 日銀金融政策決定会合 ・議事要旨発表 China: 9 月貿易収支 前 -5.5% 予 6.0% Oct-14 Japan: 9 月国内企業物価指数 前 -3.6% 予 -3.9% China: 9 月消費者物価指数 前 2.0% 予 1.8% 9 月生産者物価指数 前 -5.9% 予 -5.9% UK: 9 月失業率 前 5.5% 予 5.5% US: MBA 住宅ローン申請指数 前 25.5% 9 月小売売上高 前 0.2% 予 0.2% 9 月生産者物価指数 前 0.0% 予 -0.2% 米地区連銀経済報告 Oct-15 Japan: 8 月鉱工業生産 前 -0.5% 8 月稼働率指数 前 -0.2% US: 新規失業保険申請件数 前 26.3 万件 予 27.0 万件 10 月 NY 連銀製造業景気指 数 前 -14.67 予 -8.00 9 月消費者物価指数 前 -0.1% 予 -0.2% Oct-16 EU: 8 月消費者物価指 数 前 0.0% 予 0.2% ACEA 新車登録台 数公表 US: 9 月鉱工業生産 前 -0.4% 予 -0.3% 10 月ミシガン大消 費者信頼感指数 前 87.2 予 89.0 FUTURES MARKET: Source – Commitments of Traders, Commodity Futures Trading Commission NYMEX プラチナ ネット・ロングポジション 10 月 6 日時点: 36.7t 4 週間振り、且つ 9 月前半以来最大規模となる(4.5t、8%)ショートカバーが入ったことで、プラチナ価格は一時的な安値であった $899/oz から反発した。グロス・ロングは依然として減少しており、1.4t(1.5%)減少していることから、現在投機筋は弱気ではないもの の、決して強気とは言えない様である。 NYMEX パラジウム ネット・ロングポジション 10 月 6 日時点: 37.0t パラジウムはショートカバーが入り、また新たにロングポジションが積み積み上げられたことで、ネット・ロングは 8 月前半以来初めて 31t 超増加、6 月中旬以来最高水準となった。先週は 7.2t(21%)のショートカバーが入ったことで 3 週連続でショートカバーが入ったこ ととなり、グロス・ロングは 1.4t 増加した。テクニカル面からパラジウムは強含んでいる様子が窺える為、今後更にショートカバーが入 ると考えている。 COMEX ゴールド ネット・ロングポジション 10 月 6 日時点:274t グロス・ロングが 27.5t(4%)急増し、前週比の増加幅ではネット・ロングが年初来で最高水準まで増加した 6 月 23 日以来の増加幅と なった。3 週前と比較して大幅ペースダウンとなったものの、3 週連続でショートカバーが入り、グロス・ショートは 20t(4.5%)減少した。 COMEX シルバーネット・ロングポジション 10 月 6 日時点:7,698t シルバーもロングポジションが 1,135t 急増し、6 月 23 日以来最大の増加幅となった。また、1,835t ものショートカバーが入り(前週比 22%減)、グロス・ショートは 5 月中旬以来最大の減少幅となった。ネット・ロングは 7,683t まで増加し、6 月初旬以来の高水準となっ た。 15th October 2015 三菱商事 RtM ジャパン(株)貴金属事業部 転用・転送 堅くお断りいたします 3 th Precious Metals Weekly Update 15 October 2015 EXCHANGED TRADED FUNDS: Source – various ETF providers プラチナ ETF残高 10 月 9 日時点:87.4t 先週プラチナ ETF は利益確定の売りが顕 著に見られ、残高は前週比 1t 減少した。 中でも南アランド(ZAR)建ての ABSA ETF の残高減少分はその大半を占める。 パラジウム ETF残高 10 月 9 日時点:90.2t パラジウム ETF 残高は先々週大幅に残高 が増加したこととは対照的に、先週は足元 での価格上昇を受けて若干売り手仕舞わ れた(0.2t、0.3%)。 ゴールド ETF 残高 10 月 9 日現在: 1,356t 先週は SPDR ETF が 1.9t 売り手仕舞われ たことでその他の ETF の残高増加分を相 殺し、結果ゴールド ETF は約 1.6t 売り手 仕舞われた。 シルバーETF 残高 10 月 9 日現在: 13,076t 投資家の利食いによって、先週シルバー ETF 残高は 124t(1%)減少した。最も残高 が減少したのはまたしても iShares ETF で あり、106t 減少した。 SHANGHAI GOLD EXCHANGE: Source – Shanghai Gold Exchange SGEプラチナ売買高 10 月 9 日時点 (implied sales on Pt9995) th Implied premium 5.2% (8.5% to 30 Sep) SGEゴールド売買高 10 月 9 日時点 (implied sales on Au 99.99 contract) th Discount: 0.5% (Prem0.5% to 30 Sep) Thousands Platinum sales (koz) Price (RMB/g) 200 400 350 150 300 250 100 200 150 50 100 50 0 15th October 2015 0 Jan Feb Mar Apr May Jun Jul Aug Sep Oct Nov Dec 2013 2014 2015 2013 monthly average price 2014 monthly average price 2015 monthly average price 三菱商事 RtM ジャパン(株)貴金属事業部 転用・転送 堅くお断りいたします 4 th Precious Metals Weekly Update Spot Gold Forwards Silver Platinum Leases Palladium 15 October 2015 Futures Rhodium Options Ruthenium Swaps Iridium This document is not and should not be construed as an offer to sell or the solicitation of an offer to purchase or subscribe for any investment. Mitsubishi Corporation has based this document on information obtained from sources it believes to be reliable but which it has not independently verified; Mitsubishi Corporation makes no guarantee, representation or warranty and accepts no responsibility or liability as to its accuracy or completeness. Expressions of opinion are those of Mitsubishi Corporation only and are subject to change without notice. Mitsubishi Corporation assume no warranty, liability or guarantee for the current relevance, correctness or completeness of any information provided within this Report and will not be held liable for the consequence of reliance upon any opinion or statement contained herein or any omission. Furthermore, we assume no liability for any direct or indirect loss or damage or, in particular, for lost profit which you may incur as a result of the use and existence of the information provided within this Report. 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