第2章 中小企業の新たな活力創造と競争力の強化 本県の中小企業は経済や雇用を支えるとともに、地域の安全や活力を担う極めて重要 な存在です。しかしながら、中長期的には少子高齢化の進展や人口減少による地域経済 の縮小がさらなる人口減少を呼ぶ負のスパイラルが懸念されており、中小企業が活躍の 場としてきた地域経済の見通しは厳しいものがあります。 こうした環境の中で、地域経済を成長させ、地域の活力を維持していくためには、新た な事業にチャレンジする、たくましい精神をもった企業の存在が不可欠です。このため、昨 年6月に「おおいたスタートアップセンター」を設立し、創業の実現からその後の成長プロ セスまで、きめ細かく支援していく体制を整えました。また、経営革新制度については、イ ンバウンド対策など新しい課題に対応する制度拡充を行い、中小企業の付加価値向上を 強力に支援していくほか、地域により多くの付加価値や雇用を生み出すことのできる「地 域牽引企業」の創出に引き続き努めていきます。 他方、ものづくりの世界では、デジタル化や新興国企業の台頭により、コモディティ化が 進行しており、付加価値が生み出しにくい状況となっています。製造業のサービス化や航 空機産業などの有望分野への参入開拓など新たな視点での取組に着手するとともに、新 しい技術を守り、活かすための知的財産権の活用も進めていきます。また、農林水産物 や温泉などの地域資源を活かした商品開発については、地方創生のツールとしての期待 も高いので、これに取り組む中小企業の技術力や商品企画力、マーケティング力等の強 化を図っていきます。 挑戦を可能にする中小企業の経営基盤の安定・強化も欠かせません。インバウンド増 加に対応する宿泊業者等を支援する資金を新設するなど、県制度資金の充実を期すほ か、事業再生や事業承継についてのサポートも引き続きしっかりと行っていきます。また、 ICTやデータの利活用による経営課題解決や新サービス創出支援に引き続き、取り組ん でいきます。 県内の全事業所数の約8割、全従業員数の7割を占めるサービス産業の振興、特に製 造業に比べて低いとされる生産性の向上は、重要な課題です。多種多様な業種があるサ ービス産業の中でも、域外収入を獲得できるという視点に着目し、宿泊、飲食など観光関 連のサービス業の生産性向上に向けた取り組みに、本格的に着手します。また、県立美 術館(OPAM)の開館による芸術文化への関心の高まりや、東九州自動車道の開通等に よる来県客の増加といったチャンスを捉え、回遊促進や滞在時間延長、個店の魅力アッ プなどに取り組む商店街を支援していきます。 大きな環境の変化を契機に、新たな産業の芽を育てていくことも重要です。アーティスト やクリエイターなど創造的人材と企業の交流を進め、異なる分野の人やモノ、技術を融合 させることにより、付加価値の高い商品やサービスの創出を目指していきます。 地域経済の活性化のためには、域内での需要を増やすだけでなく、域外から収入を稼 ぎ出す必要があります。県産品の販路開拓・拡大のため、各種商談会や大分フェアの開 催、「物産おおいた」による情報発信の強化により、商品の魅力を、消費者やメディアに伝 える取組を展開するほか、通販サイトを活用し「世界農業遺産国東半島宇佐地域」におけ る県産品の販売力向上を図ります。また、海外については、TPP協定により、新たな輸出 のチャンスが広がることが予想されます。中国や台湾、東南アジアなどの有望市場に加 えTPP加盟国への展開を目指す企業に対しても、商社等との連携強化により、支援を行 っていきます。
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