第5章 計画の基本理念と目的 医療情報等の分析結果による健康課題と対策の方向性から、基本理念を「健やかな心と 体はまちの宝物」としました。この基本理念に基づき、目的を定め、施策を展開していき ます。 【基本理念】 健やかな 心と体はまちの 宝物 【目的】 健康寿命の延伸及び医療費の適正化 ※「健康寿命」とは、 「日常的に介護を必要とせず、自立して心身ともに健康的な日常生活を送 ることができる期間」 。 【施策】 被保険者一人ひとりが自立して健康で自分らしく生活が送ることができるよう、主体 的に疾病予防と健康増進に取り組めるよう保健事業を推進します。また、健康・医療情 報を活用して医療費の適正化を推進します。 1 特定健康診査受診率及び特定保健指導実施率の向上 2 生活習慣病の重症化予防 3 がんの早期発見・早期治療を目指した重症化予防 4 重複頻回受診者への適切な受診指導 5 健康づくりの啓発活動 6 後発医薬品の使用促進 6つの施策について、実施計画を次章にまとめます。 39 第6章 保健事業の実施計画 1 特定健康診査受診率及び特定保健指導実施率の向上 【目的及び概要】 生活習慣病の発症・重症化予防及び医療費の適正化を図るため、桑名市国民健康保険 被保険者のうち 40 歳以上 75 歳未満の人に特定健診を実施することにより、健康寿命 の延伸を目指します。 【実施内容】 ・受診勧奨コールセンターの設置を委託し、前年度健診未受診者かつ医療機関未受診 者へ電話による受診勧奨を行います。また、働き盛りの 40~50 歳代の受診率が他の 年代に比べ低いため、9月末時点で 40~50 歳代の未受診者へ電話による受診勧奨を 行います。 ・受診勧奨はがきの送付を継続的に行います。 ・人間ドックを実施(定員 500 人)し、受診率の向上に努めます。 ・国民健康保険の加入時にパンフレットを配布し、特定健診の案内を行います。 ・特定健診、特定保健指導のパンフレット等を作成し、地区ごとに啓発活動を行いま す。 ・医師会に健診結果等の報告を行い、連携体制の強化を行います。 【実施体制】 主体:地域保健課、保険年金課 協力:関係団体 【アウトプット(事業実施量評価)】 実績 評価指標 評価の 方向性 平成 25 年度 平成 26 年度 - 3,047 勧奨はがき送付者数(人) 19,200 18,503 人間ドック受診者数(人) 377 445 (維持) 国民健康保険加入者へ案内配布 実施 実施 (維持) - - (増やす) - - (維持) 電話勧奨実施者数(人) 各地区での啓発活動(22 地区 年1回) 健診結果等の報告(年1回) 40 (維持) (減らす) 【アウトカム(事業成果評価)】 実績 評価指標 特定健診受診率(%) ※第2期桑名市国保特定健診等実施計画書 特定保健指導前年度実施率(%) ※第2期桑名市国保特定健診等実施計画書 目標 H25 H26 H27 H28 H29 36.1 38.6 50 55 60 14.3 12.4 35 40 50 ※KDB データ 2 生活習慣病の重症化予防 【目的及び概要】 生活習慣病の中でも糖尿病の医療費が最も高く、本市は、全国や県と比較しても高い 状況にあります。また、人工透析を受けている方の糖尿病の割合が高いという分析結果 をもとに、糖尿病の方に対して、早期に保健指導を行い、生活習慣を改善するために、 個別に保健指導等を行い重症化予防を図ります。 【実施内容】 ・平成 27 年度中に対象とする項目や基準の選定、実施方法を検討し、平成 28 年度か ら実施します。 ・特定健診の結果等から重症化予防が必要な対象者の方を把握し、必要な指導を行い ます。 【実施体制】 主体:保険年金課 協力:地域保健課 【アウトプット(事業実施量評価)】 評価指標 実績 評価の 平成 25 年度 平成 26 年度 - - 指導対象者への実施率(%) 方向性 (実施) 【アウトカム(事業成果評価)】 実績 評価指標 指導終了者の糖尿病性腎症における病期進行者 数(人) ※市独自の評価指標 41 目標 H25 H26 H27 H28 H29 - - - 0 0 3 がんの早期発見・早期治療を目指した重症化予防 【目的及び概要】 大腸がん検診を実施します。特に、大腸がん検診の助成対象の方に対し無料クーポン 券を発行し、受診機会の向上を図りがんの早期発見を目指します。 【実施内容】 ・大腸がんについての基礎知識や検診方法、予防方法等について地区ごとに啓発活動 を行います。 ・大腸がんの予防に関するパンフレットを作成し、個別がん検診受診券送付時や、精 密検査受診勧奨時に同封します。 【実施体制】 主体:地域保健課 【アウトプット(事業実施量評価)】 評価指標 大腸がん検診受診者数(人) ※地域保健報告 実績 評価の 平成 25 年度 平成 26 年度 8,429 9,077 方向性 (増やす) 【アウトカム(事業成果評価)】 実績 評価指標 大腸がん検診前年度受診率(%) ※地域保健報告 42 目標 H25 H26 H27 H28 H29 23.1 24.9 26.0 27.0 28.0 4 重複頻回受診者への適切な受診指導 【目的及び概要】 重複頻回受診は、重複投与や過剰投与の原因となり、被保険者の健康を損なう可能性 があるため、幅広い年齢層を対象に受診指導等を行います。 【実施内容】 ・平成 27 年度中に対象とする項目や基準の選定、実施方法を検討し、平成 28 年度か ら実施します。 【実施体制】 主体:保険年金課 【アウトプット(事業実施量評価)】 評価指標 実績 評価の 平成 25 年度 平成 26 年度 - - 重複頻回受診者への指導の実施 方向性 (実施) 【アウトカム(事業成果評価)】 実績 評価指標 重複頻回受診者の割合(%) 43 目標 H25 H26 H27 H28 H29 - 1.0 - 1.0 1.0 5 健康づくりの啓発活動 【目的及び概要】 健康意識の向上や生活習慣の改善が図られるように、個人・家族・地域全体で取り組 める健康づくり施策を推進します。 【実施内容】 ・市民を対象に健康に関する講演会を開催し啓発します。 ・健康増進法健康診査や歯周疾患検診を実施し、市民が自らの健康状態を把握し、主 体的な健康づくりに取り組むきっかけとします。 ・親子健康手帳発行時の啓発や幼児歯科検診・フッ素塗布を実施し、母子の健康状態 を把握し、主体的な健康づくりに取り組むきっかけとします。 ・健康づくりや介護予防を目的とした住民主体の通いの場を作るよう働きかけます。 ・認知症初期集中支援チームを設置し、認知症の早期診断、早期対応に向けて支援し ます。 ・平成 28 年度から国民健康保険のデータを活用した記事を広報、ホームページ、「健 康・ケア情報」、「ほけんだより」等に掲載します。また、パンフレットの配布を行 い、健康意欲の向上に努めます。 ・こころの健康づくり講演会及びメンタルパートナー養成講座を実施し、主体的な健 康づくりに取り組むきっかけとします。 ・医療機関等受診世帯へ医療費の支払額を把握してもらうため、年に2回通知します。 【実施体制】 主体:地域保健課、保険年金課、地域介護課、子ども家庭課、福祉総務課、 障害福祉課、地域医療課 【アウトプット(事業実施量評価)】 実績 評価指標 平成 25 年度 医療費通知 8月 2月 対象世帯へ通知(世帯) 健康講演会 歯周疾患検診 平成 26 年度 8月 2月 16,456 16,426 実施 実施 受診者数(人) 46 56 受診率 (%) 7.8 7.9 受診者数(人) 29 16 受診率 0.3 0.2 開催回数(年1回) 健康増進法健康診査 16,485 16,415 評価の 方向性 (減らす) (維持) (増やす) (増やす) (%) (次ページに続く) 44 評価指標 実績 評価の 方向性 平成 25 年度 平成 26 年度 71.5 77.1 (増やす) - 9 (増やす) - - (実施) - - (維持) - - (維持) - - (維持) 189(5回) 259(10 回) (維持) 幼児歯科検診・フッ素塗布 歯科検診無料券利用率(%) 「通いの場」(スタート応援事業)の導入 箇所 認知症初期集中支援チームの設置 指導対象者への実施率(%) 健康情報の広報活動 掲載回数、ホームページ更新回数(年1回) 健康情報のパンフレット配布 パンフレット配布(年1回) 親子健康手帳発行時に喫煙による ぜんそくへの影響について啓発 パンフレット配布数 メンタルパートナー養成 メンタルパートナー養成人数(人) 【アウトカム(事業成果評価)】 実績 評価指標 妊娠届出時の同居家族の喫煙率の低下(%) 幼児歯科検診・フッ素塗布 3歳児健康診査時のう歯罹患率(%) スタート応援事業後、継続している箇所 目標 H25 H26 H27 H28 H29 37.3 33.4 33.0 32.5 32.0 12.14 12.08 12.00 11.00 10.00 - - 15 20 25 66.1 65.5 66 68 70 40.7 41.6 42 44 46 生活習慣改善に取り組む意欲の割合(%)* ※特定健診質問票 「運動や食生活等の生活習慣を改善してみようと思うか」 運動習慣のある人の割合(%)* ※特定健診質問票 「1日 30 分以上の軽く汗をかく運動を週2回以上、1年 以上実施」 *年2%増を目標とするとき、特定健診受診者が 8,573 人(H26)とすると約 170 人の改善が見込まれる。 45 6 後発医薬品の使用促進 【目的及び概要】 医療費の抑制を目的に、平成 27 年2月から差額通知を実施しています。平成 26 年 11 月診療から平成 27 年9月診療まで、後発医薬品を使用している人の割合を比較する と 58.2%から 59.7%と上昇しています。 【実施内容】 ・後発医薬品に切り替えた場合、被保険者あたり 200 円以上の差額があり、14 日以上 の投与がある場合に通知します。年に2回通知します。 ・医薬品に関する問い合わせに応対するコールセンターの設置を委託します。 【実施体制】 主体:保険年金課 【アウトプット(事業実施量評価)】 評価指標 実績 評価の 平成 25 年度 平成 26 年度 - 1,671 差額通知(年2回)(世帯) ※平成 27 年2月(11 月診療分)から実施 方向性 (減らす) 【アウトカム(事業成果評価)】 実績 評価指標 使用率向上(%) ※当該年度3月末時点 46 目標 H25 H26 H27 H28 H29 53.5 60.7 64 67 70 第7章 計画の推進 1 評価と見直しについて (1)評価方法について 計画の評価については、事業の実績や取り組みの状況について、PDCAサイクルに そって保健事業を展開し、それぞれの項目ごとに下記の評価の視点により評価します。 評価方法については、次の4つの観点から毎年度行うこととし、必要に応じて翌年度 の事業内容などの見直しを行うこととします。また、KDB システム等の情報を活用し、 国・県・同規模保険者と比較を行い、下記のとおり評価します。 【図7-1 評価の観点と評価方法】 評価の観点 ストラクチャー (事業構成・実施体制) プロセス (実施過程) 内容 評価方法 だれが、どういう体制で 事業計画、職員体制、他機関との連 携、社会資源の活用など どうやって 評価の観点ごとに実施 周知方法、実施手順・方法、データ 当初計画どおり実施した場合 → A に基づく対象者の把握手段など 変更があったが実施した場合 → B 課題はあるが実施した場合 → C 実施できなかった場合 → D アウトプット どのくらい実施 (事業実施量評価) 開催回数、参加者数など アウトカム どうなったか (事業成果評価) 対象者の満足度、実施前との変化 (2)評価の時期と評価体制 評価の時期については、施策毎の計画に準ずるものとし、毎年評価結果を取りまとめ ます。 評価の体制としては、桑名市国民健康保険運営協議会やワーキング会議にて実施する ものとします。 (3)計画の見直しについて 最終年度に全体評価を行い、その評価に基づき本計画をより実行性の高いものにする ため、本計画の見直しを行います。見直された内容は、次期計画に反映し、より効果的 47 な事業が行えるように、桑名市国民健康保険運営協議会やワーキング会議において見直 しを行います。 2 進行管理 (1)進行管理の方法について 各計画に対する進行管理(実施・評価・改善)については、桑名市国民健康保険運営 協議会やワーキング会議において実施するものとします。 ① 桑名市国民健康保険運営協議会 項目 内容 協議機関 桑名市国民健康保険運営協議会 実施回数 1回 実施内容 データヘルス計画や事業の進捗状況について ②ワーキング会議 項目 内容 協議機関 ワーキンググループ 事務局:保険年金課・地域保健課 ワーキングメンバー:保健福祉部各課 実施回数 2回 実施内容 各事業の評価 医療費の状況等情報共有 3 計画の公表・周知 本計画は健康課題解決のための計画であり、国民健康保険被保険者をはじめ、広く市 民の皆さんに知らせる必要があることから、本市ホームページにおいて公表します。ま た、計画期間中の変更においても同様とします。 48 第8章 個人情報の保護 個人情報については、個人情報保護法、「国民健康保険組合等における個人情報の適切 な取扱いのためのガイドライン」(厚生労働省)、桑名市個人情報保護条例に基づき、個 人情報保護に努めます。 外部委託に際しては、個人情報の厳重な管理や、目的外使用の禁止等を契約書に定め るとともに、委託先の契約状況を管理します。 49 資料 1 用語の説明 特定健康診査 メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)に着目した健康診査のこと。40 歳 から 74 歳が対象で、糖尿病や心臓病、脳卒中などの生活習慣病を早期発見し、重症 化を防ぐことを目的とする。 診療報酬明細書 保険医療機関等が被保険者の診療を行ったときの医療費をその患者の所属する保 険者に対して請求する診療報酬請求書に添付する書類である。患者ごとに毎月一枚作 成し、各月に実際に行った診療内容と個々の診療行為に要した費用の額を記入するも ので、診療内容の明細を示すために作成される。 保険者 保険者とは、保険事業を行う者をいう。保険給付をはじめ被保険者の健康の維持増 進のための保健事業、これらの財源に充てるための保険税(料)の徴収などを行う。 被保険者 被保険者とは、保険の利益を受ける者をいう。被保険者の資格を取得すると、一方 において法定給付事由が発生すれば権利として保険給付を受けることができると同 時に、他方において保険税(料)の納付義務を負うことになる。 日本再興戦略 平成 25 年 6 月 14 日、日本経済の再生に向けた「3本の矢」のうちの第 3 の矢で ある、成長戦略、 「日本再興戦略-JAPAN is BACKー」が閣議決定された。 桑名市国民健康保険 高齢者の医療の確保に関する法律に基づき、本市国民健康保険被保険者のうち 40 特定健康診査等実施 歳から 74 歳を対象に特定健診及び特定保健指導を実施することにより、市民の健康 計画書 長寿の実現を目指すことを目的に策定。 KDB システム 国保データベース(KDB)システムは国保連合会が保険者の委託を受けて行う各種 制度の審査支払業務及び保険者事務共同電算業務を通じて管理する「特定健診・特定 保健指導」、 「医療(後期高齢者医療含む)」、 「介護保険」等に係る情報を利活用し、 統計情報等を保険者向けに情報提供することで、保険者の効率的かつ効果的な保健事 業の実務をサポートすることを目的として構築されたシステムである。 標準化死亡比(SMR) 死亡率は通常年齢によって大きな違いがあることから、異なった年齢構成を持つ地 域別の死亡率を、そのまま比較することはできないことから、標準的な年齢構成に合 わせて、地域別の年齢階級別の死亡率を算出して比較する必要がある。 標準化死亡比は、基準死亡率(人口 10 万対の死亡数)を対象地域に当てはめた場 合に、計算により求められる期待される死亡数と実際に観察された死亡数とを比較す るものである。国や県等の平均を 100 とし、標準化死亡比が 100 より大きい場合は、 国や県等の平均より死亡率が多いと判断され、100 より小さい場合は死亡率が低いと 判断される。 50 特定保健指導 特定健康診査の結果から、生活習慣病の発症リスクが高い人に対して、医師や保健 師や管理栄養士等が対象者一人ひとりの身体状況に合わせた生活習慣を見直すため のサポートをすること。リスクの程度に応じて、動機付け支援と積極的支援がある。 (よりリスクが高い方が積極的支援となる。 ) ※判定基準は「特定保健指導の選定基準」 (図 8-1)を参照 後発医薬品 (ジェネリック) 医薬品の有効成分そのものに対する特許である物質特許が切れた医薬品を他の製 薬会社が製造・供給する医薬品のこと。開発費が大幅に削減できるため、新薬と同じ 有効成分・同等の効き目でありながら、薬の価格を低く抑えることができる。 メタボリックシンド ローム 内臓脂肪蓄積に加えて、血糖や脂質(HDL コレステロールと中性脂肪) ・血圧が一 定以上の値を示している場合をいう。 メタボリックシンドロームは、血圧・血糖・脂質の値が治療を要するほど高値でな くても動脈硬化が進行しやすい状態であるので、これらの値が異常になる前から生活 改善を心がけて、動脈硬化の進行にブレーキをかけ、生活習慣病を未然に防ごうとい うのが、メタボリックシンドロームを取り入れた基本的な考え方。 重複投与 1人の患者が、同じ時期に複数の医院で診察を受けている場合、よく使われる抗生 物質や鎮痛剤など、同じ薬効の薬がそれぞれの医院で処方されること。 【図 8-1】特定保健指導の選定基準 51 桑名市国民保険保健事業実施計画(データヘルス計画) 平成 28 年 3 月 発行 桑名市保健福祉部 保険年金課・地域保健課 〒511-8601 桑名市中央町二丁目 37 番地 TEL:0594-24-1174 FAX:0594-24-1357
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