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2016 年 2 月
市場環境レポート
本書はモルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメントのグローバル・マルチ・アセット・グループが作成したレポートを邦訳したものです
ボラティリティと投資機会
さらに、中国政府の政策が突如として変わる可能性もあり、
これまでのところ、市場のボラティリティが極めて高い 1
その手法の透明性も決して高くないだろう。中国政府は自
年の幕開けとなっているが、残りの 2016 年がどのような
由に使える莫大なリソースを有しており、その気になれば、
展開になるかを予想することはできるだろうか。今後を予
2008 年に実施した景気刺激プログラムと同規模の措置を
想するにあたって、まず考えることは、2015 年の市場変
講じることもできる。そのような景気刺激策が実施される
動の要因を振り返って検証する必要があるということであ
云々ではなく、中国政府にはその気になれば実施するパワ
る。そうすることでこの先、何が待ち受けているのかを予
ーがあるということに留意が必要である。中国政府は、表
測することができるだろう。昨年初めはギリシャの債務交
向きは改革に全力で取り組み続けるであろうが、改革に伴
渉の話題でもちきりだったが、年末が近づくにつれ、新た
う痛みが、とりわけ中国国内での痛みがあまりに大きいと
な話題がいくつか持ち上がった。中国の景気減速はもちろ
なれば、直ちに政策を転換して問題に対処する、それも必
ん、ブレント原油価格が現在の水準に反転する前には一時
ずしも外国人投資家の目に見える形ではない方法で、対処
28 米ドル/バレルまで下落した1(2016 年 1 月 20 日現在)
する権限も持っているのだ。
ことに代表されるエネルギー価格の急落、そして米連邦準
備制度理事会(FRB)による利上げである。2016 年を予想
するにあたって、まずは上記 3 つのリスク要因を取り上げ、
今後の展開を検証していくのが得策だろう。
中国
したがって、今後も中国が市場変動の要因になるという予
想は合理的だといえるが、中国政府が政策を転換する可能
性が、いかに小さい可能性であっても存在するということ
を肝に銘じておかなくてはならない。その可能性は低いよ
うに思われるが、その可能性が少しでも存在するというこ
とは、たとえ中国の経済情勢次第で今後の市場が大きく変
昨今の市場ボラティリティを目の当たりにして、一体何が
起きているのかと不安を感じている投資家が多いだろうが、
動するとしても、中国に対して悲観的になりすぎてはなら
ないということだ。
現時点で中国の景気減速が潜在的な問題となっていること
は誰の目にも明らかだ。中国の景気減速の一因は中国政府
の政策にあると考えている。中国政府は、人民元を市場原
理に基づくようにするなどして、市場リターンの目標を自
ら設定している。残念なことに、少なくとも当面の間は中
国政府が改革を進めようとすればするほど、結果的に市場
のボラティリティは高まることが分かっている。長期的に
は、これらの政策が経済力を適切な方向に軌道修正するた
めに有効であることが証明されるだろう。だが、現時点で
は、投資と輸出主導型成長から消費主導型成長への経済転
原油
原油価格の急落で、2015 年の市場ボラティリティは混乱
を極め、その余波は 2016 年にも及んでいる。2015 年にイ
ランへの経済制裁が解除され、新たな主要産油国の登場に
市場は反応したが、2016 年に入ってからはすでに価格に
織り込まれている。今年は産油量の増加は見込まれず、む
しろ減産に転じることが予想され、その影響が市場にも及
ぶとみている。
換を図ろうとする試みなど、大規模な改革に舵を切っても、 原油生産に携わっている多くの当事者は、生産コストが現
ボラティリティの上昇に繋がるだけである。
在享受しているリターンを大きく上回っている状況に陥っ
ている。最大で 1 バレルあたり 60 米ドルの生産コストに
1 出所:Bloomberg、2016 年 1 月 20 日現在
1
市場環境レポート
2016 年 2 月
直面している米国のシェールオイル生産者であれ、継続的
エネルギー価格の下落は市場価格にデフレ効果を及ぼし、
なメンテナンスとサプライ機器の必要性により限界費用が
また現在のエネルギー価格は将来のインフレ期待にも影響
高くなっているオフショアリグ(海洋掘削)であれ、今や
を及ぼしかねない程度にまでインフレ率を極めて低い水準
原油を生産することで、法外な損害を被っており、今後生
に押し下げている。米国を例に過去の動向を振り返ってみ
産量は減少するであろう。
ると、コア指数は、消費者物価指数(エネルギーと食料品
供給が減少すれば、需要が急激に減少しない限り、原油価
格は安定するはずである。原油価格の下落が需要増につな
がったことを考えれば、原油価格の下落が消費者に及ぼし
た景気刺激効果が、高燃費車などの特別な商品も含めて消
費を促し、結果的に原油の需要が増加したことから、需要
が減少する可能性は低いだろう。
これまでは、原油価格の下落によるマイナス効果ばかりを
取り上げてきた。原油価格の急落で石油会社の投資は減少
し、とりわけ生産の限界費用が現在の原油価格を上回って
いる分野への投資減少は著しく、シェールオイルとオフシ
ョアリグがその好例として挙げられる。雇用削減に加え、
利益が伸び悩み、その結果株価が下落し、世界経済にも深
刻な影響を及ぼしている。
しかしながら、原油価格を富の破壊ととらえず、原油セク
ターから消費者への富の移転ととらえれば、ほぼ同規模の
景気へのプラス効果が期待される。両者の相違点を挙げる
とすれば、原油生産者の数が少ないゆえにその損失が際立
ってしまうが、恩恵を享受する消費者の幅があまりに広い
ために、消費者がそれぞれ享受している恩恵が小さすぎて
気が付かないということだ。平均的な消費者 1 人あたりで
週 30~40 米ドルの恩恵を受けていると思われるが、これ
では新築の家も車も買うことはできまい。
を含み、大抵コア指数よりボラティリティが高い)の平均
がどのあたりに落ち着くかを示す有効な指標であった。と
ころがここ 12 カ月前後ではこのケースに当てはまらない。
消費者物価指数のボラティリティは依然高いが、平均する
とコア物価指数を大きく下回っており、原油価格が下落し
ている場合において、コア物価指数はもはや信頼できる指
標ではないと言えるだろう。
この状況は、FRB の再利上げの判断に影響を及ぼすとみら
れる。11 月の消費者物価指数はゼロ近辺であったが、コ
ア物価指数は 2%2であった。FRB が実際にインフレ率が
2%だと考えるのであれば、利上げを実施するだろう。し
かし、仮に基礎データを検証したうえでコア物価指数がイ
ンフレ期待を過大評価していると判断すれば、利上げを実
施することはまずないだろう。上記 2 つの可能性のうち、
利上げを実施しない可能性の方が高いと我々はみている。
日本と欧州の金融政策も FRB の利上げ決定に影響を与え
るはずだ。日本はマイナス金利の導入に踏み切り、欧州中
央銀行は一段の金融緩和政策の実施を強く示唆しているこ
とから、FRB は現在の金利水準を維持するだけで、他の
国々との比較で、実質的な引き締めを実施しているのと同
じである。現在の環境における FRB の利上げ実施は逆効
果であり、結果的に米ドル高の進行に拍車をかけ、米国経
済の競争力を削ぐことになろう。これらの理由により、当
しかし、この浮いたお金で例えば映画を 1 本観に行くとし
面の間 FRB が利上げを実施する可能性は低いと考えてい
たら、すべての消費者が少しばかり浮いたお金で毎週映画
る。
を見に行けば、映画館の経営者は数カ月もしないうちに新
たな従業員を雇い、また上映するための映画も買い付けな
くてはならなくなるだろう。つまり、こうして大勢が享受
する小さな恩恵が景気にじわじわと効いてくるのだ。消費
者が浮いたお金の半分しか使わなかったとしても、大きな
経済効果が見込めるだろう。原油価格の下落は、2015 年
の景気にはマイナスに寄与したが、今年はプラスに寄与す
ることだろう。
2016 年は市場の乱高下で幕を開けたが、経済全般の見通
しに改善の兆しがみられるとすると、つまり、原油価格の
下落によるプラス効果や中国関連のネガティブなニュース
の減少、そして FRB の利上げが当面実施されない可能性
を鑑みると、投資機会はいったいどこに存在するのだろう
か。
インドなどの一部の新興国は興味深いであろう。主なエネ
ルギー消費国である新興国は、政府支出が増えていようと
金利
も、エネルギー価格の下落による恩恵を受けるだろう。
2015 年末の FRB による利上げ決定を受け、2016 年にさら
我々の考える「適正価格」よりも現在の評価が低い新興国
なる利上げが実施されるだろうとの思惑を招いた。だが、
市場の輸出国には、より高リスクの投資機会が存在する。
FRB の再利上げの決定には複数の要因の影響を受けるだろ
クレジットへの感応度の高い資産には、さらに高リスクの
う。
2 出所:米連邦準備制度理事会
2
市場環境レポート
2016 年 2 月
投資機会が存在しており、クレジットスプレッドは急激に
世界経済と金融の動向を注視し、FRB の利上げが労働市場
拡大している。欧州では、クレジット買いが蓋を開けてみ
とインフレ率に及ぼす影響を見極めている」ことを明らか
れば理にかなっていた、という 2012 年と同じ状況が生ま
にした。
れている。米国債利回りは、とりわけ高リスクのエネルギ
ーセクターで上昇している。新興国の債券、特に現地通貨
株式
建ての債券は、FRB の追加利上げさえなければ、まさに注
1 月、米国の主要株式指数は下落した。例えば、MSCI 米
目すべき投資先である。
国株式インデックスは 5.43%の下落となった。投資家は、
警戒を怠らず、投資対象を厳選すれば投資機会は存在する
世界経済の減速に加え、エネルギー価格の下落が米国経済
とみており、上記のように混乱した市場環境下であっても
に与える影響を懸念した。素材、金融、ヘルスケア株がア
投資機会は引き続き出現するであろう。
ンダーパフォームした。
債券
米国
経済
投資家の間にリスク回避姿勢が広がったおかげで、1 月の
米国債市場は極めて好調だった。2 年債と 30 年債の利回
りは 27bps 下落した一方で、5 年債は 43bps、10 年債は
1 月下旬に米商務省経済分析局(BEA)が発表した速報値
によれば、2015 年第 4 四半期の GDP 成長率は年率換算ベ
ースで 0.7%であった。第 3 四半期の GDP 成長率は年率換
算ベースで 2.0%であった。BEA は、2015 年第 4 四半期の
減速は主に個人消費支出の減速によるもので、非住宅投資
や輸出の減少、そして州政府や地方政府の支出削減も影響
したとの見解を示した。これらの要因によるマイナス効果
35bps それぞれ下落した。
1 月のクレジット市場は、どのカテゴリーの債券もアンダ
ーパフォームした。米国の投資適格債のスプレッドは 17
~39bps 拡大した。非投資適格の BB 格や B 格の債券とハ
イイールド債のイールドスプレッドは、61~88bps 拡大し
た。
を相殺したのは、連邦政府の歳出拡大と輸入の減少であっ
た。2 月初めに米サプライマネジメント協会(ISM)が発
欧州
表した 1 月の米製造業の購買担当者指数(PMI)は、12 月
の 48.0 から 48.2 にわずかに上昇した。新規受注と生産は
拡大し、雇用と在庫は縮小した。サプライヤーによる製造
業への入荷はほとんど変わらずであった。米国勢調査局が
経済
多くの経済指標は、ユーロ圏のほとんどの国で業況の改善
が続いていることを示している。マークイット社が発表し
発表した 12 月の小売売上高は 4,481 億米ドル(季節調整
た 1 月のユーロ圏の製造業 PMI は、12 月の 53.2 から 52.3
済み)で、前月比 0.1%減、前年同月比 2.2%増となった。
にわずかながら低下した。マークイット社が発表したフラ
米労働統計局(BLS)が発表した 12 月の非農業部門雇用
ンスの製造業 PMI は分岐点となる 50.0 となったが、その
者数は 29 万 2,000 人増加し、失業率は 5.0%で変わらずと
他のユーロ圏主要国(および主要国以外の多くの国)では、
なった。「雇用者数は、専門職とビジネスサービス、建設、
PMI が分岐点の 50 を超え、業況の改善を示した。マーク
ヘルスケア、飲食店をはじめとする複数の業種で増加した。 イット社が発表したユーロ圏のサービス部門 PMI は 12 月
鉱業の雇用者数は引き続き減少した。」BLS は消費者物価
の 54.2 から 1 月は 53.6 にわずかに低下した。EU 統計局が
指数(CPI)も発表し、12 月のインフレ率(年率)は 0.7%
12 月に発表した改定値によれば、2015 年第 3 四半期の
(季節調整前)であった。また、食料品とエネルギー価格
GDP 成長率は、ユーロ圏内で前期比 0.3%増、EU 全体で同
を除くコア指数(年率)は 2.1%であった。
0.4%増となった。前年同期比では、ユーロ圏が 1.6%増、
連邦公開市場委員会(FOMC)は 1 月終わりの会合で、12
EU 全体が 1.9%増であった。EU 統計局が 1 月に発表した
月に引き上げたフェデラルファンド金利の誘導目標を
11 月のユーロ圏鉱工業生産指数は前月比で 0.7%低下し、
0.25%~0.50%に据え置くことを全会一致で決定した。FRB
前年同月比では 1.1%上昇した。また、EU 全体の鉱工業生
は償還を迎える米国債の償還金やエージェンシー債や
産指数は、前月比で 0.6%低下し、前年同月比では 1.4%上
MBS の元本の再投資を継続する見通しだ。会合後に発表
昇した。EU 統計局が 2 月初めに発表した速報によれば、1
された声明はハト派色を帯びていたが、その中で「FRB は
3
市場環境レポート
2016 年 2 月
月のユーロ圏年間インフレ率は 0.4%であった。12 月のイ
ルギー価格の下落と世界経済の減速を示すさまざまな兆候
ンフレ率は 0.2%であった。
に懸念を示した。
欧州中央銀行(ECB)は 1 月半ばに開催された政策決定会
債券
合で政策金利のリファイナンス金利を 0.05%に据え置いた。
ECB の資産買い入れプログラムは(現在の月額 600 億ユー
ロのペースで)2017 年 3 月まで実施される見込みだ。同
プログラムで購入した債券の償還金は再投資する。同プロ
グラムの買い入れ対象が 12 月に拡大されたのを受け、ユ
ーロ圏内の地方政府が発行したユーロ建て債券も買い入れ
対象となっている。ECB が実施している主な資金供給オ
投資家にリスク回避姿勢が広がったため、1 月の欧州国債
市場は極めて好調だった。英国債では、2 年債と 30 年債
利回りが 31bps 低下し、5 年債は 45bps、10 年債は 40bps
低下した。ユーロ圏ではイールドカーブのフラット化が進
んだ。ドイツ国債では、2 年債が 14bps、5 年債が 27bps、
10 年債が 30bps、30 年債が 43bps 下落した。
ペと長期資金供給オペは必要な限り実施され、最低でも
1 月の欧州クレジット市場は、どのカテゴリーの債券もア
2017 年半ばまでは実施される。
ンダーパフォームした。ユーロ圏のクレジット債のイール
英国では、全般的に好調な経済と業況が続いている。マー
クイット社と CIPS(英公認購買部協会)が 2 月初めに発
表した 1 月の英製造業部門の PMI は 12 月の 51.9 から 52.9
ドスプレッドの拡大はそれほどでもなく、6~22bps であっ
た。ユーロ圏の非投資適格債の BB 格や B 格の債券とハイ
イールド債のイールドスプレッドは 49~94bps 拡大した。
に上昇した。生産は国内需要の改善を受けて拡大した。ま
た、英サービス部門の PMI は 12 月の 55.5 から 55.6 に上昇
日本
し、経済が底堅く拡大していることを引き続き示した。英
国家統計局(ONS)は、11 月の鉱工業生産指数が前年同
経済
月比で 0.9%上昇したと発表した。成長に最も寄与したの
2 月初めに日本経済新聞社が発表した日本の 1 月の製造業
は鉱業と採石業であった。1 月下旬に ONS が発表した速
部門 PMI は 12 月の 52.6(21 カ月ぶりの高水準)をわずか
報値によれば、2015 年第 4 四半期の英 GDP 成長率は、前
に下回る 52.3 であった。日経は、1 月の製造業生産は「堅
期を 0.1%ポイント上回って 0.5%増となり、前年同期比で
調なペースで」拡大しているとの見解を示した。同じく日
は 1.9%増であった。1 月半ばに ONS が発表した労働市場
経が発表した 1 月のサービス部門 PMI は、12 月の 51.5 か
調査によれば、11 月末までの 3 カ月間の失業率は 5.1%で
ら 52.4 に上昇した。総務省統計局が 1 月末に発表した昨
あった。これは 2005 年 10 月末の 3 カ月失業率以来の低水
年 12 月の世帯あたり消費支出の平均は 318,254 円で、名
準である。また ONS が別途発表した 12 月の CPI インフレ
目ベースでは前年同月比 4.2%減、実質ベースでは同 4.4%
率(年率)は+0.2%となり、前月は+0.1%であった。
減となった。総務省統計局が別途発表した 12 月の CPI イ
イングランド銀行(BoE)金融政策委員会は 1 月半ばに開
ンフレ率(年率)は、前月比 0.1%低下したこともあって、
催された会合で、賛成 8 反対 1 でバンクレートを 0.50%に
前年同月比で 0.2%となった。経済産業省(METI)が発表
据え置いた。資産買い取りプログラムの購入枠は 3,750 億
した 12 月の鉱工業生産指数(季節調整済み)は、前月比
ポンドに据え置かれた。金融政策委員会のメンバーの間で、 で 1.4%低下し、前年同月比では 1.6%低下した。内閣府が
発表した改定値によれば、2015 年第 3 四半期の実質 GDP
中期的なインフレリスクに対する見解は依然として分かれ
たままだ。
成長率は前期比 0.3%増、年率換算ベースでは 1.0%増であ
った。成長を牽引したのは、民間消費と民間非住宅投資で
株式
あった。
1 月の MSCI 欧州株式インデックスは米ドル・ベースで
今月特筆すべきは、日銀の政策決定会合が、日銀当座預金
6.65%下落し、MSCI 欧州株式インデックス(英国を除く) であらかじめ決めた金額を超過する部分に対してマイナス
は 6.89%下落した。MSCI 英国株式インデックスは 6.09%
金利の導入を決定したことだ。1 月末を前に発表された今
の下落であった。金融株や素材株(また若干ではあるが一
回の決定は、多くの市場関係者を驚かせた。日銀は資産買
般消費財株)については、アンダーパフォーマンスが目立
い入れも合わせて継続し、マネタリーベースが年間 80 兆
った。1 月中、ユーロは 0.29%、英ポンドは 3.34%それぞ
円に相当するペースで増加することを目標としている。上
れ対米ドルで下落した。投資家は、前月に引き続き、エネ
場投資信託(ETF)や不動産信託(J-REIT)については、
4
市場環境レポート
保有残高をそれぞれ年間 3 兆円および 900 億円増加するよ
2016 年 2 月
ラテンアメリカ
うに買い入れを行う。コマーシャルペーパーおよび社債の
保有は、それぞれ 2 兆 2,000 億円および 3 兆 2,000 億円に
経済
維持する。
直近発表されたメキシコの製造業部門 PMI では、新規受
株式
注が過去 9 ヵ月で最も速いペースで増加し、景気拡大が続
いていることが明らかになった。ブラジルの製造業部門の
1 月の MSCI 日本株式インデックスは米ドル・ベースで
経済活動は、12 月よりも緩やかではあるものの、後退が
8.23%下落した。1 カ月で円は対米ドルで 0.29%下落した。
続いている。サービス部門についても同様のことが言える。
金融株等がアンダーパフォームした。
今月、コロンビアの中央銀行(BanRep)は政策金利を
債券
25bps 引き上げて 6.00%とした。これは、このところの通
貨安とエルニーニョが食料品価格に与えた影響で上昇して
日本国債(JGB)の利回りは、2 年債が 6bps、5 年債が
いるインフレ圧力に対処するための措置であった。ブラジ
9bps 低下し、10 年債は 17bps、30 年債は 28bps 低下した。
ルの中央銀行は政策金利(Selic)を 14.25%に据え置き、
2 年債の利回りはマイナス金利となっている。
市場関係者の一部を驚かせた。一向に収まらないインフレ
を理由に、金融政策委員会のメンバー2 人が 50bps の利上
アジア太平洋地域(日本を除く)
げに賛成票を投じていた。
経済
株式
財新は 1 月の中国の製造業の業況が緩やかに悪化している
1 月、MSCI エマージング・マーケット・ラテンアメリカ
との見解を示した。財新が発表した 1 月の中国の製造業
株式インデックスは米ドル・ベースで 4.69%下落した。
PMI は 12 月の 48.2 から 48.4 にわずかに上昇するにとどま
MSCI ブラジル株式インデックスは、レアル安の影響もあ
った。一方、新規事業からの資金流入は、中国のサービス
って 7.46%下落した。MSCI メキシコ株式インデックスは
部門の拡大が続いていることを示した。中国を除く東アジ
3.39%下落しているが、これは、米ドルに対して 5.22%ペ
アおよび東南アジア諸国の PMI は、どれも製造業におけ
ソ安が進んだためである。MSCI チリ株式インデックスと
る成長の減速(または悪化)を示した。1 月半ば、インド
MSCI ペルー株式インデックスは米ドル・ベースで上昇し
ネシア銀行(インドネシアの中央銀行)は政策金利を
た。
25bps 引き下げ、7.25%とした。これは、経済の安定化を
図り、フェデラルファンド金利の誘導目標引き上げ後、世
東欧、中東およびアフリカ
界的に不確実性が解消された状況に対処するための措置で
あった。
経済
株式
製造業の生産、新規受注、雇用が昨年 7 月以来最も拡大し
ているチェコ共和国を除き、マークイット社が発表した中
1 月、MSCI エマージング・マーケット・アジア株式イン
デックスは米ドル・ベースで 7.37%下落した。この最大の
要因は、MSCI 中国株式インデックスが 12.72%の下落とな
ったことである。投資家の関心は中国の減速の兆候に集ま
り、また中国経済が「ハードランディング」するような事
態になれば深刻な金融危機を招きかねないとの懸念が高ま
欧と東欧諸国の製造業 PMI は低成長を示唆した。ロシア
でも製造業の業況はほぼ安定している。アラブ首長国連邦
では、非石油部門のエミレーツ NBD PMI が 52.7 に低下し、
これはおよそ 4 年間で最低の数値である。サウジアラビア
でも非石油部門の PMI は 53.9 に低下し、6 年半前の調査開
始以来最低の水準となった。
ったためである。MSCI インド株式インデックスは 6.93%、
MSCI 韓国株式インデックスは 5.66%それぞれ下落した。
一方で、インドネシア、マレーシア、タイでは、MSCI 株
式インデックスが米ドル・ベースで上昇した。
株式
1 月の MSCI エマージング・マーケット欧州および中東株
式インデックスは、米ドル・ベースで 4.31%下落し、2 カ月
連続の下落となった。1 月の MSCI ギリシャ株式インデッ
クスは、21.19%と急落した。一方で、MSCI ハンガリー株
5
市場環境レポート
2016 年 2 月
式インデックスと MSCI トルコ株式インデックスは上昇し
ール株式インデックスは 10.01%、MSCI アラブ首長国連邦
た。今月も原油価格の下落が続いたのを受け、MSCI カタ
株式インデックスは 8.76%それぞれ下落した。
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市場環境レポート
2016 年 2 月
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CRC1440205 Exp 03/11/2017.
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