プロジェクト紹介 - 科学技術振興機構

社会システム改革と研究開発の一体的推進
戦略的環境リーダー育成拠点形成
プロジェクト紹介
社会システム改革と研究開発の一体的推進
戦略的環境リーダー育成拠点形成
プロジェクト紹介 目次
▶平成
20 年 度 採択課題
低炭素社会を設計する国際環境リーダー育成
広島大学
3
環境マネジメント人材育成国際拠点
京都大学
6
名古屋大学国際環境人材育成拠点形成
名古屋大学
9
デュアル対応国際環境リーダー育成拠点
早稲田大学
12
共鳴型アジア環境リーダー育成網の展開
東京大学
15
環境ディプロマティックリーダーの育成拠点
筑波大学
18
地域から ESD を推進する女性環境リーダー
神戸女学院大学
21
岐阜大学流域水環境リーダー育成拠点形成
岐阜大学
24
持続社会構築環境リーダー・マイスター育成
北海道大学
27
リスク共生型環境再生リーダープログラム
横浜国立大学
30
現場立脚型環境リーダー育成拠点形成
東京農工大学
33
戦略的水・資源循環リーダー育成
北九州市立大学
36
東アジア環境ストラテジスト育成プログラム
九州大学
39
生態系保全と人間の共生・共存社会の高度化設計に関する環境リーダー育成
静岡大学
42
未来社会創造型環境イノベータの育成
慶應義塾大学
45
地下水環境リーダー育成国際共同教育拠点
熊本大学
48
国際エネルギー・資源戦略を立案する環境リーダー育成拠点
東北大学
51
▶平成
▶平成
21 年 度 採択課題
22 年 度 採択課題
2
▶平成
実 施 機 関 ▶ 広島大学
20 年 度 採 択 課 題
低炭素社会を設計する
国際環境リーダー育成
留学生の受け入れ状況
2015 年 12 月現在 ベトナム(5名)
、アフガニスタン・インドネシア・ウズベキスタン・中国・ネパール・ミャンマー・ラオス(各4名)
、
フィリピン(3名)
、ガーナ・カナダ・マレーシア・南アフリカ・モザンビーク・モンゴル(各1名)
目 的
広島大学では、地球規模の問題である低炭素社会の実現を事例として、複眼的、国際的視野で国や地域が直面する課題を見いだし、戦略的解決策
を設計する国際環境リーダーの育成を目指している。低炭素社会の実現には、低炭素社会システムの全体を俯瞰できる環境リーダーが必要である
との認識のもと、脱温暖化の社会システム設計、エネルギー高度利用、環境影響評価、政策立案・制度設計、環境教育開発の各領域を専門としつつ、
学際的かつ実践的に問題解決に貢献する環境リーダー育成のための国際環境リーダー育成特別教育プログラム、フォローアッププログラム、短期
プログラムを実施し、途上国における環境問題の解決、環境管理能力の向上に向けてリーダーシップを発揮する人材(環境リーダー)を育成する活
動を展開している。
目標(ミッションステートメント)
国際環境リーダー育成を実施する組織として、大学院国際協力研究科内に拠点を立ち上げ、継続的な点検・改善体制を整備し、戦略的な人材育成
を行う。3年目には、修士 24 名(12 名/年×2年)+ 博士6名(6名/年×1年)の国際環境リーダーを育成し、学術、工学、農学、教育学又は国際協
力学の学位を授与する。そして、教育活動の高度化のため、国際環境協力の最前線より研究者・実務者(25 名以上)を招聘し、講義・研究活動を行
う。フォローアップコースでは、短期研究留学の受け入れ(4名以上)
、サマーコース(2回)
、提案型プロジェクト(4件)を実施する。また、国際公募
によって、テニュアトラックの若手研究者を確保(4名以上)
、流動的・競争的人的構成を図る。5年目には、3年目の達成目標に加えて、修士 24 名
(12 名/年×2年)
、博士 12 名(6名/年×2年)の環境リーダーの育成、研究者・実務者の招聘(20 名以上)を行う。また育成した国際環境リーダー
との国際共同研究を実施し(3件以上)
、
外部資金を獲得する。フォローアップコースでは、
短期研究留学の受け入れ(4名以上)
、
サマーコース(2回)
、
提案型プロジェクト(4件)を行う。さらに、テニュア審査を行い、優れた人材を確保する。
プロジェクトの状況
れまで 17 名の留学生を受け入れており、この実績も評価され、平成
広島大学は平成 24 年度の支援期間終了後も、修士/博士課程の学
28 年度より、大学院国際協力研究科とのリンケージプログラムが開
生を対象とした国際環境リーダー育成特別教育プログラム(GELs プ
始される。
ログラム)や海外の大学院生を対象とした短期教育プログラムを、大学
たおやかプログラムの一部として実施しているサマーコースについ
院国際協力研究科を中心に運営し、平成 20 年 10 月の開始からこれま
ては、テキサス大学オースティン校などの海外大学等との共同開催に
で、のべ 159 名(26 カ国)の国際環境リーダーを世界に輩出している。
力を入れ、
質の高いプログラムの提供を目指している。平成 27 年度は、
フォローアッププログラムのサマーコースについては本プログラムの
テキサス大学オースティン校、同志社大学、九州大学との4大学の共同
実績をもとに、対象分野を低炭素社会構築からより広い環境分野、さ
開催として、島根県隠岐の島町のエネルギー戦略立案に関するプログ
らに持続可能な発展をも視野に入れた全学プログラム、博士課程教育
ラムを実施し、国内外から 33 名(11 カ国)が参加した。GELs プログラ
リーディングプログラム「たおやかで平和な共生社会創生プログラム
ムからも1名が参加している。
(たおやかプログラム)
」
(平成 25 年度採択)の教育プログラムの一部
と協力して継続実施している。
GELs プログラムではこれまで、修士 122 名(22 カ国)
、博士 37 名
(14 カ国)の国際環境リーダーを輩出した(平成 27 年度9月末現在)
。
プログラムでは、異なるバックグラウンドをもつ学生同士の学術交流、
幅広い学問分野の教員からの研究指導の促進による学生の複眼的視
野の育成、研究成果の高度化に力を入れている。また、ベトナムやミャ
ンマーなど海外での、インターンシップの実施や、テキサス大学オース
ティン校公共政策大学院主催の夏期プログラムへの参加など、支援期
間に構築された国内外のネットワークを活用した教育を展開している。
平成 27 年度 12 月末現在、54 名(16 ヶ国)が在籍している。
短期プログラムについては、インドネシア政府からの支援や日本
学生支援機構の海外留学支援制度等の奨学金を活用して、これまで
36 名(6カ国)の留学生を受け入れた。平成 27 年度 12 月現在、イン
ドネシアから4名を受け入れている。特にバンドン工科大学からはこ
3
▶ 平成
20 年 度 採 択 課 題
▶広島大学
金子 慎治
実施機関の声
広島大学大学院 国際協力研究科 教授 Q1.本事業ではどのようなことに取り組んでいますか?
A1.広島大学は、国際的な環境課題に対する途上国の対応、途上国の環境課題など途上国における環境問題の解決に向け、複
眼的、国際的視野で国や地域が直面する課題を見いだし、戦略的解決策を設計する環境リーダーの育成のため「国際環境リー
ダー育成プログラム」を実施しています。地域特性を踏まえた開発理論と実践技法を統合した学際的な研究並びに既存の研究
分野を超えて異分野の学生と協働する実践的な力を養うことを目指しています。具体的には、国際協力研究科における既存の学位プログラム(修士、
博士)に追加して設置した特別教育プログラムを中心に、海外の他大学大学院生を対象とした短期教育プログラムの受け入れ、修了生や若手研究者
のフォローアップ教育としてサマースクール等を実施しています。
Q2.講義やフィールド実習ではどのようなことに取り組んでいますか?
A2.本プログラムは、国際環境協力学特論と国際協力プロジェクト演習の2つの必修科目、イン
ターンシップ、能力開発特論などの推奨科目からなるプログラム構成となっています。国際環境協力
学特論では、主要分野において最低限必要な基礎的な知識や手法を学ぶ科目(後期)と国や地域が直
面する環境課題の解決に取り組む、様々な分野の第一線で活躍する専門家から最新の研究成果を学
ぶ事(前期)で、持続可能な社会を構築するために必要な知識やスキル、学際的知識を得ることが出
来ます。また、国際協力プロジェクト演習では、国内外から集まってきた異分野の学生に加えて、修士
課程と博士課程の学生が参加し、互いに自らの研究成果を与えられたフォーマットで短時間に研究の
エッセンスを異分野の学生に理解させ、議論を成立させるための演習を行っています(前期)
。また、
気候変動の模擬交渉を行うことにより、自らの国以外の立場で問題を捉え、コミュニケーションスキ
サマーコースでの
模擬気候変動交渉会議風景(2013 年8月)
ルを習得することが出来ます(後期)
。そのほか、修了生や若手研究者との交流機会を通じた、国際的なキャリア形成支援に取り組んでいます。
Q3.本事業による取組を今後どのように展開していきますか?
A3.現在、広島大学では、本プログラムの実績や成果をもとに、対象分野を低炭素社会構築からより広い環境分野、さらには持続可能な発展を視野
に入れた全学プログラム「たおやかで平和な共生社会創生プログラム(博士課程教育リーディングプログラム)
」が実施されています。そして、環境
分野だけでなく途上国の多様な開発課題など、途上国の開発ニーズに対応する広島大学の研究組織として、国内外のネットワークの組織化、学内の協
力研究者の発展・拡充を行っています。また、短期教育プログラムやフォローアッププログラムは、本プログラムで構築した国際ネットワークの協力
のもと継続して実施しています。時代のニーズに応じた柔軟な特別プログラムや学位プログラムをうまく継続的に実施する方法を模索しています。
佐藤 史典
受講生の声
広島大学大学院 国際協力研究科開発科学専攻 Q1.本養成コースを受講しようとしたのはどのような理由からですか?
A1.本プログラムの受講理由は、自らの専門性に基づいた知見及び様々な分野の先生方から学術的知見を得ることができる
点です。また、様々な専門や経験を持つ国籍の異なる学生と共に学習することを通して、多角的・国際的視野で国や地域が直面
する課題を見出し、解決策を構築できる能力を身に付けられる点です。さらに、インターンシップ制度等のシステムが充実して
いる点です。座学に留まらず、異国の地における現状を理解し、様々な見地から考察できる能力を磨く場が用意されていること
に対して、非常に魅力を感じました。以上の理由より、私は本プログラムを受講しようと思いました。
Q2.本養成コースで印象に残っていることは何ですか?
A2.本プログラムのインターンシップ制度を利用して、ミャンマーのヤンゴン市へ赴き、復建調査
設計株式会社ヤンゴン事務所(以下、
復建)
において研修に参加したことです。研修では、
モータリゼー
ションの進展が著しいヤンゴン市内の交通渋滞の深刻化に着目して、BRT(Bus Rapid Transit)の
導入により私的交通手段利用者がモーダルシフトを起こす可能性及びその誘導策について検討しま
した。特に、ヤンゴン市内のバス乗り込み調査では、日本では想像できないほどの厳しいバスの乗車環
境を経験しましたが、その調査をやり切ったことで、少し自信を持てるようになりました。また、急激
な経済成長をしているミャンマーでは、数年前の知見とは異なる状況が多々あり、現地に出向き考察
インターンシップの最終発表会後の写真
することの大切さを学びました。
Q3.
(現在受講生であれば)
、本養成コースで学んだことを、今後どのように生かしたいとお考えですか
(将来への夢等でも結構です)?
A3.講義では、様々な専門や経験を持つ国籍の異なる学生と共に議論を重ねる中で、意見の相違がありました。また、インターンシップにおいても、
過去の知見を参考にして自分が思い描いていたヤンゴン市と現地調査及び復建の現地スタッフへのインタビューから把握したヤンゴン市に相違が
見られることがありました。このような相違に戸惑いながらも、相手の立場・環境を理解した上で議論・考察する機会に恵まれたことは大きな財産
になると考えています。今後、本プログラムで磨いた能力を駆使し柔軟な対応を取ることを通して、課題を達成していきたいと考えています。
4
▶広島大学
留学生の声
▶平成
20 年 度 採 択 課 題
プログラム修了生(現 CIMMYT(International Maize and Wheat Improvement Center)
South Asia Regional Office(国際トウモロコシ ・ コムギ改良センター・南アジアオフィス))
Narayan Prasad Khanal(カナル ナラヤン プラサド)
Q1.日本に留学した理由あるいは目的、そして本環境リ−ダー養成コースに参加した
理由は何ですか?
A1.農村改革を学問として学ぶことで自らの能力を高めたいと思い、日本に留学しました。私は、2010 年に大学院国際協力
研究科博士課程後期に入学するまでの7年間、農家の方々と共に、村落の種苗生産制度の改革に取り組んできました。大学院で
は、持続可能な発展の観点から、種苗生産制度がもたらす効果の評価に関する研究に取り組みました。そのとき、指導教員から、
私の研究スキルの拡大のために、環境リーダー育成特別教育プログラム(GELs プログラム)に入る事を進められ、GELs プログラムに申請し、選抜
されました。プログラムでは理論的かつ実践的な講義を受講し、さらに3つの国際会議で研究成果を発表しました。
Q2.本環境リーダー育成コースに参加して、
いかがでしたか?
(そのメリットや感想などをお教えください)
A2.本プログラムは、途上国出身のグローバル環境リーダーを育成する非常に良いプログラムだと思います。経済発展と環境保護の両立は、途上
国において主要課題であり、本プログラムの修了生が、この分野で重要な役割を果たすことを願っています。私自身、本プログラムの講義、サマー
コース、学会等へ参加したことにより、自らの研究においても力を存分に発揮できるようになったように思います。また、気候変動や持続可能な
開発の分野における様々な専門家たちとのネットワークを拡げることもできました。本プログラムへの参加によるアウトプットとして、博士論文
「sustainability of community-based rice seed production」を執筆しました。論文では、持続可能な発展の観点(経済、環境および社会的便益)
による農業革新の計測方法、そして施政者が適切な政策を立案するためには、それをどう使いやすいものにすべきかを述べています。
Q3.
(本コース受講をもとに)どのような活動をお考えですか?(将来の夢などをお教えください)
A3.現在、母国(ネパール)で、次の活動に従事しています。
研究成果を政策立案者に共有
気候変動対応型農業技術、クリーンエネルギーおよびネットワーキング等社会経済および気候対応力に貢献するプロジェクトの開発および
実施
ネットワークを通じた、ネパール国内および海外の専門家間での経験と発想の共有
地域適合アクションプラン(LAPA)に基づく気候変動対策および開発についての実践的研究
5
▶ 平成
20 年 度 採 択 課 題
実 施 機 関 ▶ 京都大学
環境マネジメント人材育成国際拠点
留学生の受け入れ状況
長期コース修士課程 アメリカ1、ウクライナ1、カナダ1、韓国4、グアテマラ1、サモア1、スリランカ1、中華民国3、中国 11、ドミニカ1、
フィリピン4、ブラジル3、ベトナム4、ベネズエラ1、ペルー2
長期コース博士課程 インド1、インドネシア3、カンボジア1、スリランカ2、タイ4、中国4、ネパール1、バングラデシュ1、フィリピン1、
ベトナム 13、マレーシア5、韓国2
目 的
本課題では、地球的および地域的環境問題の解決のため、文理両領域にわたる環境に関する学術と高度な解決技法を教授するとともに、海外
フィールドキャンパス(FC)を活用した長期インターン研修、学位研究等を行うことで、アジア地域が直面する環境問題解決、脱温暖化、循環型社
会構築に貢献できる環境リーダーを育成する。
目標(ミッションステートメント)
3年目終了時
長期コースとして修士課程 13 名および博士後期課程5名、さらに短期コースとして国内および海外 FC にて 30 名を育成する。
5年目終了時
長期コースとして修士課程 29 名および博士後期課程 29 名、さらに短期コースとして国内および海外 FC にて 60 名を育成する。以後も育成は
継続して実施し、我が国の環境政策と技術および地域の現状を理解した各国の環境リーダーを組織的に輩出し、アジア地域等の環境問題解決に貢
献する。
プロジェクトの状況
(1)実践的・学際的な教育カリキュラムの構築
(4)プロジェクト期間終了後の取り組み
環境マネジメントリーダー(EML)プログラムとして独自のカリキュ
5年目終了時点以降、環境リーダー育成を継続しつつ、その成果をさ
ラムを編成した。カリキュラムは、文理融合型の学理講義、国内外にて
らに発展させ、平成 27 年度からは海外3大学との修士ダブルディグ
環境マネジメントに関する最先端の課題や技術・ノウハウ・仕組みを
リープログラムの構築を目指す「海外サテライト形成による ASEAN
学ぶ短期インターン研修(2週間程度)
、海外にて課題設定から解決法
横断型環境・社会イノベーター創出事業」
(概算要求・特別経費、4年間)
検討までの一連の環境問題解決過程を自ら経験・学習する長期イン
を開始したところである。
ターン研修(修士3カ月、博士5カ月以上)
、実践的な環境リーダーとな
る研究力を育てる学位研究などから構成される。
(2)国 際 的 教 育 研 究 活 動 と 海 外 フ ィ ー ル ド
キャンパスの設置
アジア諸国で生じている環境問題を把握し解決するための教育・研
究の場として、ベトナム(ハノイとフエ)および中国(深圳)に、本学教
員が(半)常駐する海外 FC を設置した。また、5年目終了までに連携
拠点としてさらに5か所のサテライトオフィス、海外インターン研修
協定校である 14 大学の準サテライトオフィスを整備し、その他のイン
ターン研修受け入れ機関と合わせ海外 27 か国 72 機関で 148 名が研
修を行った。
実施体制
(3)これまでの育成状況
5年目終了時点で、長期コースとして博士後期課程を 31 名(内 23
名が留学生)
、修士課程を 70 名(内 32 名が留学生)
、現地あるいは国
内短期コースを 211 名、計 385 名が修了した。現在までに、長期コース
として博士後期課程を 46 名
(内 38 名が留学生)
、
修士課程を 97 名
(内
40 名が留学生)
、現地あるいは国内短期コースを 273 名、計 416 名が
育成プログラム
修了した。
6
▶京都大学
▶平成
20 年 度 採 択 課 題
藤井 滋穂
実施機関の声
京都大学 地球環境学堂 Q1.本事業ではどのようなことに取り組んでいますか?
A1.複雑で多岐にわたる地球的・地域的環境問題の解決に取りくむ国際的環境リーダーの育成を目的としています。学際的
な環境問題の知識、専門分野の知識を備えるのはもちろん、以下の3つをその育成の特徴としています。①体験型インターン
シップではなく、主体的活動に伴う文化・社会的違いを認識し、それを乗り越える経験が可能な長期インターンシップの実施
(課題発掘能力)
。②海外でのミニプロジェクト型学習等への参画を通じた日本人学生と現地学生との協働(異分野・異文化コミュニケーション能力)
。
③インターン研修を通じて見出した課題に関する学術的解決策の策定(解決方向性を提示する能力)
。また、これらのための海外研修・研究を効果的
に実現するために、ハノイ、フエ(ベトナム)および深セン(中国)に海外フィールドキャンパスを設置したのを含め、海外 27 か国 72 機関との連携関
係を構築しています。
Q2.講義やフィールド実習ではどのようなことに取り組んでいますか?
A2.座学およびフィールドでの学習を効果的に組み合わせています。座学(すべて英語にて提供)で
は、環境リーダーとしてのあり方・視座を育成する「環境リーダー論(必修)
」をはじめ、
「地球環境法・
政策論」
、
「地球環境経済論」
、
「地球資源・生態系管理論」
、
「環境倫理・環境教育論」
、
「アジア環境工学
論」
、
「エネルギー環境基礎論」といったアジア・アフリカ諸国の環境問題の体系的理解のための学際
的な知識を身につけます。フィールドでの学習では、国内・短期および海外・長期のインターン研修
を組み合わせることで、日本の経験を学ぶとともに、海外の現場にて問題発掘から解決法提示までの
一連を習熟する経験を得ることができます。これらは、アジア・アフリカの現場に立脚した環境リー
ダーを養成する重要な要素となっています。
Q3.本事業による取組を今後どのように展開していきますか?
A3.本プログラムの理念は京都大学3研究科の教育理念とよく一致するものであり、英語での講義
など提供科目を内部化しており、日本にて英語で行われる大学院教育(環境分野)に魅力を感じる若
者たちが多数集まると見込まれます。プログラム終了後も海外拠点を維持しており、特に各拠点から
本プログラムに留学した学生の帰国が今後も進む中、修了生を核とした海外教育研究連携が着々と
進んでいます。平成 27 年度からは本プログラムを一層発展させ、海外3大学との修士ダブルディグ
リープログラムの構築を目指す「海外サテライト形成による ASEAN 横断型環境・社会イノベーター
創出事業」
(概算要求・特別経費、4年間)を開始したところです。
古家 明子
受講生の声
国連開発計画(UNDP)
(コンゴ)
Q1.本養成コースを受講しようしたのはどのような理由からですか?
A1.コースのネットワークを活かして、実際に海外のフィールドに赴き調査できることが大きな魅力でした。また 100%文系
だった私には、理系分野の様々な先生方の視点から環境と開発について学べることも決め手となりました。
Q2.本養成コースで印象に残っていることは何ですか?
A2.最後にベトナムのフエ市で、カンボジアで行った自分の調査結果を発表する機会があったこと
です。この研究発表会には東南アジア地域から他の研究者も集っていて、日本人からだけでなく、彼
らの視点からも自分の調査結果について様々なコメントをもらうことができ、とても有意義でした。
また、同じ地域で別の研究をしてきた人たちの発表を見られたことも収穫となりました。研究の最後
を飾るのにふさわしく、また今後にも繋げていくことができる機会だったと思います。そして何より
も、カンボジアで共に労苦した仲間たちと再会できる時間でもあり、彼らといっそう絆を深め、楽しい
時間を過ごすことができました。発表会の後にはベトナムの山岳地帯を訪ね、人々の生活を垣間見せ
てもらったことも忘れられません。
Q3.
(修了生であれば)本養成コースで学んだことが、現在のお仕事に活かされていますか?
(現在受講生であれば)
、本養成コースで学んだことを、今後どのように生かしたいとお考えですか
(将来への夢 等でも結構です)?
A3.本コースに参加することで得たカンボジアでのフィールド調査の経験は、日本とは全くことなる環境や社会の中で、自分の調査に係わるあら
ゆる手配を自ら考えながら進めて行くことでもありました。そのことは、現在の開発の仕事そのものを実施する上で、大きな土台となっています。ま
た、当時の私の調査テーマが「燃費改良型かまどの普及」だったのですが、現在の仕事でも同じ内容の案件を担当しており、コースで得た経験は私
にとって、変えがたい財産になっています。
7
▶ 平成
20 年 度 採 択 課 題
▶京都大学
謝 韵(シェ ユン)
留学生の声
京都大学 地球環境学堂・学舎 修士1回生 Q1.日本に留学した理由あるいは目的、そして本環境リ−ダー養成コースに参加した
理由は何ですか?
A1.大学時代の水質調査に関する環境ボランティア活動を通じ、中国の農村地域における排水処理設備の不備による環境悪
化を実感しました。この経験で、私は自分の力で何とかしたいと思い始めました。そして大学卒業後は、公害の経験があり今は
環境先進国の日本で水処理技術や水衛生管理の経験を勉強してから、中国のような途上国にそれ生かしたいという思いで、日
本へ留学しました。
環境問題の解決には、広域にわたって整合性のある施策発案・実施ができる実務者の能力が必要です。環境リーダー育成コースで提供している長
期インターンシップ研修や、アジア環境問題の実践的解決を目指す学位研究などの学習を通じ、自分に足りない実務者の能力を養成できると思い、
プロジェクに参加しました。
Q2.本環境リーダー育成コースに参加して、
いかがでしたか?
(そのメリットや感想などをお教えください)
コースの「環境リーダー論」や「環境基礎学理」の各科目の授業で、
私はまず国際的視点から環境問題の関連性を認識しました。
そして、科学
A2.
的な面だけではなく、社会的、経済的、法律的いろいろな面から広く環境について勉強しました。これらの学習を通じ、環境問題を解決するために、科
学の対象としての真理探究の側面と問題を解決するべき実践的側面の両方を持ち合わせなければならないと深く感じました。
さらに、日本のし尿・下水処理場で3ヶ月のインターン研修を行ったことにより、日本の水処理や汚泥処理の技術を把握し、日本と発展途上国の水
衛生管理状況の比較ができました。机上ではなく現場で自分自身で感じるという貴重な経験は、研究上での新しい発見や発想ともつながりました。
Q3.
(本コース受講をもとに)どのような活動をお考えですか?(将来の夢などをお教えください)
A3.これからの一年間、研究上では日本のし尿・下水処理に関する研修の経験を生かし、日本とアジア開発途上国との水衛生管理の比較研究に集
中したいと思います。汚水あるいは生活排水等の液状廃棄物の不適正な管理が依然として問題となっている途上国の都市を対象に、地域に基づいた
衛生管理上の制約条件の抽出、類型化し、そして具体的重点都市を対象とした調査を行い、制約条件を踏まえた代替システムの設計・評価をしたい
と思います。
修士学位取得後、私は水に関わる企業、特に開発途上国で浄水や排水処理等の水衛生関連事業を展開している企業に就職したいです。環境
リーダー育成コースで習得した水問題に関する知識や技術をうまく使い、開発途上国に行き、水衛生問題の解決に、また技術交流に努力したいと考
えています。
8
▶平成
実 施 機 関 ▶ 名古屋大学
20 年 度 採 択 課 題
名古屋大学国際環境人材育成拠点形成
留学生の受け入れ状況
2015 年 11 月現在 博士課程前期課程(2年間)
:中国6名、カンボジア6名、フィリピン6名、ベトナム3名、ミャンマー1名、アフガニスタン4名、
ウガンダ2名、エチオピア2名、タンザニア1名(計 31 名)
目 的
大学院環境学研究科都市環境学専攻および工学研究科社会基盤工学専攻の博士課程前期課程において、地球温暖化対策分野、水・廃棄物対策
分野、生物多様性保全分野を中心に、以下に重点を置いて具体的な問題解決方法を提案できる環境人材を育成する。
①問題事象を理解し、②対策技術に関する総合的、体系的な知識を習得し、③制度設計・政策運営を実現する能力
分野にまたがる複合的な問題、新しい問題に対応する優れた応用能力
現地の社会に適応したコミュニケーション能力
目標(ミッションステートメント)
3年目
平成 21 年度より、毎年度、外国人留学生 10 名程度、日本人学生5名程度を受け入れ開始。3年目に、本プログラム第1期の修了生を国内外の
環境リーダーとして誕生させる。取得学位は、修士(環境学)または修士(工学)
。
教育実施経験にもとづき、国際環境人材育成マニュアルの作成、教材集の整備を行う。
5年目
本プログラム第 1 ∼ 3 期の修了生として、外国人留学生 30 名程度、日本人学生 15 名程度の環境リーダーを養成する。修了生の活動支援、人的
ネットワーク形成支援などを通じて、環境リーダーとしての活動を長期的に支援する。
国際環境人材育成マニュアルおよび教材集の内容を継続的に充実・改善する。
プロジェクトの状況
(1)英語による環境リーダー養成カリキュラム
(3)中部地域を中心とする産官学連携
新規開講および既存科目の内容拡充などを行い、英語による科目の
中部地域産業界を中心とする実務専門家(中部電力、INAX 等)によ
みで課程を修了できるカリキュラムを整備した(カリキュラム構成図
る講義科目「環境産業システム論」
「気候変動政策論」を提供し、環境
参照)
。
問題の解決に対する戦略的視点・ノウハウを獲得する機会を整備した。
(2)発表・ディスカッション
能力の強化
授業は英語で行い、学生との質疑
応答を十分に行うように努めてい
る。また、英語による発表・ディス
カッション能力養成に力点を置いた
科目として「国際環境人材育成セ
ミナー」
「環境コミュニケーション」
を設置した。
カリキュラム構成図
9
▶ 平成
20 年 度 採 択 課 題
▶名古屋大学
実施機関の声
谷川 寛樹
名古屋大学大学院 環境学研究科 NUGELP リーダー Q1.本事業ではどのようなことに取り組んでいますか?
A1.名古屋大学国際環境人材育成プログラム(NUGELP)では、アジア・アフリカからの留学生と日本人学生のミクスト・コミュ
ニティを作り、すべて英語による教育で環境問題に対する国際的リーダーを育成する大学院コースを構築しました。2009 年度
から入学をはじめ、毎年おおよそ留学生 10 名、日本人5名を受け入れています。留学生は日本の先端的取り組みを学ぶことが
でき、日本人は国際性を大いに身につけて修了し、世界各地で活躍しています。
Q2.講義やフィールド実習ではどのようなことに取り組んでいますか?
A2.英語しか使えない留学生でも博士前期課程を修了できるように英語科目を充実させました。修
士号取得に必要な 30 単位のうち、
指定した 22 単位の英語科目の習得と英語での修士論文提出によっ
て、NUGELP の修了証書を発行しています。指定科目のうちの一つが Global Research Internship
で、原則として留学生は日本の組織で、日本人は海外での2週間程度のインターンシップを課してい
ます。また、国内および海外の研修旅行も毎年行っており、事前準備、旅行中のリーダーシップ、報告
会などを通して研修の効果を最大化するようにしています。
Q3.本事業による取組を今後どのように展開していきますか?
A3.優秀な留学生確保のために、JICA の人材育成支援無償(JDS)事業に採択されて現在8名/年の枠を確保しています。ABE イニシアチブ
など今後もこのような国家プロジェクトを活用しながら人材と資金を確保していきます。学内の組織としては、平成 26 年度から環境学研究科内
に「持続的共発展教育研究センター」を設置し、G-COE の後継コース(博士後期課程)と一体的に NUGELP の運営を行っていき相乗効果を上
げていきます。
受講生の声
内田 考洋
名古屋大学大学院 工学研究科 社会基盤工学専攻 Q1.本養成コースを受講しようしたのはどのような理由からですか?
A1.環境問題に興味があり、また英語のスキルを身につけ将来は海外で活躍したいと考え受講しました。世界共通の課題でも
ある環境問題は、私の専攻である土木の分野でも注目されていて、機会があれば学んでみたいと思っていました。また、本養成
コースは海外へのインターンシップを支援し、スタディツアー、英語での講義などを設けています。座学で環境問題を学び、英
語のスキルを磨けるだけではなく、実際に途上国へ行き、現地の環境問題を見て学べる点に魅力を感じました。そして漠然とで
すが、将来は海外で活躍できる国際的な人材になりたいと考えていたため、本コースを受講しました。
Q2.本養成コースで印象に残っていることは何ですか?
A2.バングラデシュの首都ダッカで行った約1週間のスタディツアーです。ダッカではゴミ、洪水、
交通問題を実際に見て回り、現地でこれらの問題に取り組んでいる人たちの話を伺い学びました。私
は途上国へ行くのが初めての経験であり、ダッカの交通渋滞やゴミ問題を目の当たりにして衝撃を受
けました。帰国後は、グループでこれらの課題解決のためのプロポーザルを作成し、途上国の課題を
真剣に考え、効果的な解決策を自分たちなりに考えるいい機会になりました。このスタディツアーを
きっかけに、途上国で環境問題や交通問題等の発展上の課題に私が今まで学んだ土木の知識を活か
しながら関わりたいと思うようになりました。
Q3.
(修了生であれば)本養成コースで学んだことが、現在のお仕事に活かされていますか?
(現在受講生であれば)
、本養成コースで学んだことを、今後どのように生かしたいとお考えですか
(将来への夢 等でも結構です)?
A3.私は本コースを終了後は独立行政法人国際開発機構(JICA)に就職します。就職後は途上国で本コースで学んだ環境問題や発展上の課題に関
わりたいと考えています。途上国の課題は多種多様ですが、スタディツアーや講義で学んだ知識や途上国の現状は、就職後に途上国の課題に取り組
む際、現状を把握するのに役立つと思います。また、本養成コースでは知識だけでなく、留学生とのディスカッションやプレゼンテーションなど知識
をアウトプットする機会も多々あり、仕事をする上で活かせると考えています。そして、将来はスタディツアーで訪れた国や本コースで共に学んだ留
学生の出身国で働き、それらの国の発展に貢献したいと思っています。
10
▶名古屋大学
留学生の声
▶平成
20 年 度 採 択 課 題
Clara Chidammodzi(クララ チダモッツ)
名古屋大学大学院 環境学研究科 博士後期課程 Q1.日本に留学した理由あるいは目的、そして本環境リ−ダー養成コースに参加した
理由は何ですか?
A1.Japan experienced several environmental disasters in the 1960s due to increased industrial activity that
characterized its rapid economic growth period. This experience has played a major role in shaping the current
environmental policies and regulations. When I was planning for post graduate study, Malawi, my home country,
was increasingly focusing attention on increasing production and exports, and reducing consumption and imports.“What else could
be better than learning in an environment so rich with recent experience?”I thought, and thus Japan was what I chose. When I was
searching for universities that offer environmental programs, NUGELP was outstanding because it is designed to nurture future
environmental leaders who will play an active role in solving environmental problems with a global perspective. Add to that the fact
that the program is offered in English, what else could I look for?
Q2.本環境リーダー育成コースに参加して、
いかがでしたか?
(そのメリットや感想などをお教えください)
The students are very diverse in their nationalities and educational backgrounds, and the professors and guest speakers have
A2.
diverse research interests. The program thus covers a range of multidisciplinary topics and offers students a unique opportunity to
appreciate environmental issues from a diverse range of cultural and disciplinary perspectives.
Students also get exposed to real environmental issues in developing countries and are challenged to apply learnt skills in
assessing the problems and proposing solutions. Among others, this entails visits to these countries during which site observations
are done and discussions are held with government agencies and development partners to further understand the issues.
Sometimes, quick surveys are also conducted. This helps students understand the complex nature of environmental issues and
appreciate the challenges that policy makers and environmental managers are facing. I feel NUGELP goes an extra mile to better
prepare its students for the real world.
Q3.
(本コース受講をもとに)どのような活動をお考えですか?(将来の夢などをお教えください)
A3.In whatever job or responsibility I may have(be it in civil service, academia, international organizations etc)I intend to stay
active in research. I would like to actively collaborate with others(including fellow NUGELP graduates)to learn, share experiences
and contribute my efforts towards environmental sustainability for societal wellbeing. Meanwhile, I am pursuing a PhD and
conducting research in water resources management.
11
▶ 平成
20 年 度 採 択 課 題
実 施 機 関 ▶ 早稲田大学
デュアル対応国際環境リーダー育成拠点
留学生の受け入れ状況
2015 年 11 月現在 (修了者)中国 30、インドネシア1、韓国1、タイ1 (履修中)中国 13、ロシア1
目 的
本プログラムでは、持続的な発展が可能な社会の構築をめざしし、我が国が現状で抱えている課題の解決のみならず、将来世代や発展途上国・
未開発国の人々の生存・生活基盤の確立・保全も視野に入れ国際的な科学技術コミュニティの構築を図る先導的な研究・教育を進めている。
めざす人材像は、
「環境配慮のものづくりや資源・エネルギー循環を支える人材」及び「循環型社会を社会システムや地域環境問題解決から支え
る人材」と設定し、主に途上国と我が国との間で、語学面、技術面と文化、制度面からも“デュアル”に対応可能な人材と定義している。
目標(ミッションステートメント)
国内リーダー養成人数
(累計受入人数)修士課程:47 名(25 名)/博士後期課程:6名(17 名)
2013 年度の実数(5年目の目標)
海外リーダー養成人数
(累計受入人数)修士課程:17 名(25 名)/博士後期課程:14 名(17 名)
(累計修了者数)修士課程:28 名(17 名)/博士後期課程:4名(6名)
(累計修了者数)修士課程:12 名(17 名)/博士後期課程:5名(6名)
インターンシップ・就職ネットワーク 累計:46 社(30 社)
共同研究案件数
共同研究件数:累計 230 件(34 件)
実績額:173,828 万円(10,000 万円)
プロジェクトの状況
認定条件とカリキュラム整備
校友会交流の仕組み
早稲田の「国際環境リーダー」の称号を得るための、必修3科目
既存の校友会システムを基盤とし、整備した本プログラム専用ウェ
(
「国際環境法特論」
、
「環境プランニング論」
、
「国際環境リーダー・イン
ブサイト上に「バーチャル校友会」を開設し運営している。具体的に
ターンシップ」
)6単位と、所定の選択必修科目(
「環境政策・科学論」
、
は SNS のシステムを実名のコミュニティで運営し、研究コラボレー
「国際環境ビジネス(戦略・展開)論」
、
「環境経済・政策論」
、
「持続可能
ションに適したファイル共有などを実装している。ただし、当初想定し
な発展と国際開発協力」
)から2科目4単位を選択し、合計5科目 10 単
た以上に一般に利用されている SNS である Facebook の利用人口お
位の取得を認定条件を整備した。
よび参加者の利用頻度が多いため、日常的な交流活動は Facebook で
実践的な研究体制の構築
応している。さらに、中国など一部の国では Facebook が使えないた
行うようにし、本事業で開発した SNS 側からの連携機能を設けて対
事業実施期間中に起きた東日本震災や中国で公害問題を機に日本の
め、校友 SNS は有効に機能している。
地域の事例に学びたいとの海外大学ニーズの増加をくみ上げ、計画当
初の本庄、北九州、香川県豊島の拠点整備の他、会津、釜石拠点といっ
た地域展開が飛躍的に増加した。また、日本のエコタウンで培った研究
開発ノウハウを海外展開を行い、中国大連国際資源循環リサーチセン
ターを開設し、
日本のローカルの展開を海外展開へと繋げるモデルを構
築することができた。その他、3年にわたりタイとの「バイオディーゼ
ル事業」が国際連携テーマとして学生の教育現場として活用され、実
践的に学生が海外で調査を行い、研究発表を行う機会を得るなどした。
国際通用性のある学位(デュアル・ディグリー)の構築
北京大学との修士課程におけるデュアル・ディグリー取得の環境の
整備を行い、事業期間中にスタートした。
日本側学生が中国の学位を取得する場合、北京大学での3年の在学
期間を確保するため、日本側学生は博士課程進学を組み込んだ対応が
必要となるが、中国側学生は、本プログラムで構築した国際環境リー
ダーの基礎コース(一年)を履修することで、両国の修士号を取得する
ことが可能な仕組みになっている。国際的な頭脳循環を活性化する良
い枠組みができたと評価している。
12
▶早稲田大学
▶平成
20 年 度 採 択 課 題
勝田 正夫
実施機関の声
早稲田大学 理工学術院 教授 Q1.本事業ではどのようなことに取り組んでいますか?
A1.グローバル化する環境問題と企業活動の課題を国際的な産学官の連携で解決に導く環境リーダーを輩出すべく、本事業
では主に対象とする途上国との間で、語学においても、技術面と文化、制度面からもデュアルに対応可能な人材を定義し、育成
に取り組んでいます。
現場・現物・既存主義のもと先駆的研究での OJT を行う演習科目のほか、広い専門分野のエッセ
ンス的な講義で知識・知恵の補完を行う「環境プランニング論」を設置し、広い視野に立った俯瞰力
を身につけられるようになっています。また、共通科目・演習、論文指導においては、研究科全教員に
よる共同指導を実施しており、一人の研究指導教員体制では実現しない学問領域統合型の教育が実
現しています。
開発中の非接触充電バス、
一人乗り電気自動車
Q2.講義やフィールド実習ではどのようなことに取り組んでいますか?
A2.特に、実践的なリーダーとしての素養を磨くべく、先駆的研究での OJT 教育に力を入れていま
す。具体的な研究フィールドとして、本庄市・北九州市・釜石市などを設定しスマートコミュニティ
関連の技術開発や新しい社会システムの提案に取り組んだり、東北大震災被災地や香川県豊島産業
廃棄物不法投棄現場などでは現場での合宿型の授業を実施し、現状に触れ、関係者の声を聞く中で問
題の本質に迫る実践教育を行ったりしています。
また、こうした現場を、特に中国の北京大学学生と共有し、日中学生のお互いの視点で課題解決型
のディスカッションをし、プレゼンテーションを通じて、国際的なコミュニケーションを実践するカリ
地域における完全無農薬の農作業実習
キュラムを展開しています。 Q3.本事業による取組を今後どのように展開していきますか?
A3.本事業では北京大学との修士課程ダブルディグリーの制度を構築し、中国の優秀な学生たちの
タイにおける
油糧作物調査
知能循環の仕組みが構築できました。また、タイをはじめ東南アジア諸国とのバイオマス利活用研究
の広がりと人材交流の仕組みも構築されました。
また本事業を通じて、企業・自治体等と密接に連携しつつ企業・自治体の現場で人材育成を行う取
り組みのノウハウが蓄積され、同時にそれが人材育成拠点を支える経済的な基盤になりました。
今後はさらに、母体となった大学院環境・エネルギー研究科全体の人材育成に環境リーダー育成
の理念を組み込み、前述の制度的にも、資金的にも整備された基盤のもと、継続的な人材育成拠点と
して展開していきます。
受講生の声
田島 早織
創造理工学研究科 総合機械工学専攻 勝田正文研究室(2014 年度修士課程修了)
Q1.本養成コースを受講しようしたのはどのような理由からですか?
A1.環境問題は全地球共通の課題であり、その地域や国ごとに規制だけでなく人々の資源への考え方までを考慮して取り組
まなくてはなりません。特に現在中国都市での大気汚染は、経済発展や豊かな暮らしを汚い空気や呼吸器疾患と天秤に掛けて
市民が悩んでいます。このような複雑な問題に対しては実際に直面している当事者との対話が不可欠だと考え、北京大学生と
直接意見交換ができるこのコースを受講希望しました。これから世界の多くの人と協力し働いていくことを目指している私は、
東京と北京という遠隔でのコミュニケーションを取る良い練習の機会になると考えたことも理由のひとつです。
Q2.本養成コースで印象に残っていることは何ですか?
A2.急速な経済発展のため幅広い汚染問題が短期間で起こった中、都市の人はどんな問題を最も重
要視しているか興味がありました。そこで北京大生に聞いてみると、ほぼ全員の学生が「PM2.5」を
挙げていて常に問題として議論に取り上げている印象を受けました。PM2.5 は日本でも経済成長時
期にきっと大量に排出されていましたが当時は認識されていなかっただけです。ここから、このよう
な未認知の有害物質は現在も地球に多く排出されており、将来その影響が現れてくると思われます。
よって、特定の汚染物質に焦点を当てて対策技術や規制を実施するだけでなく、環境負荷をもっと広
い視点で広範囲に見張っていくべきだと再確認する機会となりました。
研究室での実験の様子
13
▶ 平成
20 年 度 採 択 課 題
▶早稲田大学
Q3.
(修了生であれば)本養成コースで学んだことが、現在のお仕事に活かされていますか?
(現在受講生であれば)
、本養成コースで学んだことを、今後どのように生かしたいとお考えですか
(将来への夢 等でも結構です)?
A3.本コースから国際的環境問題の解決には互いの国
の状況や考え方を直接話し合い、その国独自の対策方法
を考えることが最も大切であると感じました。これは北
京大教授から中国政府の行ってきた環境対策の講義を
受けたあと、日本で成功した汚染対策が中国にそのまま
適用できないのだと分かり、どんな成功事例もその地域
毎に工夫して作り替える必要を感じたからです。この経
験から専門である環境・エネルギー分野において、日本
の成功例を世界に工夫して導入し貢献すること、また世
界の成功例を日本用に作り直して最適導入することがで
合宿で見た北京市内
本庄の実験装置
きる人材になりたいと思っております。
留学生の声
馮 新玲(フォン シンリン)
環境・エネルギー研究科 吉田徳久研究室(2014 年度博士後期課程修了)
Q1.日本に留学した理由あるいは目的、そして本環境リ−ダー養成コースに参加した
理由は何ですか?
A1.私の故郷の遼寧省では黄砂被害を防止するため、日本の協力を得て植林事業が行われてきました。日本の優れた環境技
術に魅せられた私は、日本で環境を学ぼうと決意し 11 年前に日本に留学しました。2009 年には早稲田大学の環境・エネルギー
研究科に進学し、日本の経験と教訓を生かして中国の深刻な大気汚染を解決し、低炭素化を進めるた
めの政策の在り方を研究してきました。国際的な視点で環境問題の解決と持続可能な社会づくりを
リードする人材の育成を目指す環境リ−ダー養成コースは、私が修士課程に進学した年に早稲田大学
で本格的にスタートしました。私は中国のみならず広く世界を視野において持続可能な発展に貢献で
きる人材になりたいと考えてこのコースに参加しました。
Q2.本環境リーダー育成コースに参加して、いかがでしたか?
(そのメリットや感想などをお教えください)
A2.早稲田大学の育成コースへの参加を通じて、日中両国の政府機関や研究機関、優れた環境技術
北京大学との交流
をもって社会に貢献する企業、ユニークな活動を続ける環境 NPO などをたくさん訪問し、環境・エ
ネルギーに関する政策、法制度、対策技術、社会運動などの幅広い分野の知識やノウハウを修得でき
ました。また、中国だけでなく世界各国の留学生との交流・議論を通じて、同年輩の人々との研究ネッ
トワークを形成しながら、自分の研究課題に挑戦することもできました。早稲田の育成コースの企画
を通じて結ばれた、これら多くの方々との深い友情や絆はとても貴重な財産だと思っています。これ
からも研究上の協力者として、
また志を同じくする友人として、
末永くお付き合いしていきたいと思っ
ています。
Q3.
(本コース受講をもとに)どのような活動をお考えですか?
(将来の夢などをお教えください)
A3.私はこの育成コースに支えられて、早稲田大学で修士課程と博士課程の計5年間を過ごし勉学
豊島研修中の地引き網体験
に励んできました。そしてこのたび、中国東北部における環境共生型都市の形成に関する政策的な研
究で、博士の学位を取得することができました。このプログラムに参加して培ってきた環境・エネル
ギー分野における国際的なセンスと、専門的な情報ネットワーク及び人的ネットワークを生かしなが
ら、今後は日中における環境・エネルギーの有力な研究機関で研究を継続し、環境保全の分野での様々
なチャネルを通じた政策立案や、研究推進あるいはビジネス振興に関する日中間の協力推進に貢献し
ていきたいと希望しています。さらには、日中の枠を超えて、世界の持続可能な発展を実現するため
の諸活動にコーディネーター的な役割を果たしたいとも願っています。
震災被災地でのディスカッション
14
▶平成
実 施 機 関 ▶ 東京大学
20 年 度 採 択 課 題
共鳴型アジア環境リーダー育成網の展開
留学生の受け入れ状況
中国(17 名)
、
フィリピン、
韓国(各7名)
、
インドネシア、
スリランカ、
バングラデシュ(各5名)
、
カンボジア(4名)
、
インド、
エチオピア、
タイ、
ブラジル、
フランス、ベトナム(各3名)
、コロンビア、スイス、スウェーデン、ネパール、バーレーン、ポルトガル、マダガスカル(各2名)
、アイルランド、アメリカ、
オーストリア、ガーナ、
ドミニカ共和国、バーレーン、ブータン、ポーランド、ボリビア、モンゴル、ヨルダン、レバノン(各1名)
※上記は、補助事業期間中の合計
目 的
修士・博士学位取得者としての高度な専門性と同時に、自然科学分野と人文社会分野をバランスよく履修し、幅広い視野と行動力・実践力を習
得した人材であり、環境問題を扱う国際機関や研究教育・行政機関、国際的企業などで活躍できる人材を育成する。また、このような人材育成のた
め、東京大学を拠点として、プログラム実施において連携・協働するアジア各国の大学・研究機関ほか広くステークホルダーを結ぶ「共鳴型ネッ
トワーク」を構築する。
目標(ミッションステートメント)
3年終了時
(1)国外・国内環境リーダーを各3名、合計6名程度輩出する(2)共鳴型ネットワークによる人的交流と情報共有を進める(3)演習教材を2ケー
ス作成し、出版準備を進める(4)演習や若手研究者の成果報告の場として、セミナーなどを4回程度実施する(5)優れた応募者確保のため、プログ
ラムの国際的認知度を高める
5年終了時
(1)国内・国外環境リーダーを各 17 名、合計 34 名程度輩出する(2)共鳴型ネットワークを、修了生の人脈形成、分野融合的な問題解決策を得る
ための具体的なツールに発展させる。修了生はリーダー育成に指導者として参画する(3)演習教材を 10 件程度と、環境リーダー育成の教材および
育成手法マニュアルを作成し、一部を出版する(4)セミナーなどを 15 回程度実施する(5)共鳴型ネットワークに関する WEB の構築と、ニュースレ
ターの発刊を進める
プロジェクトの状況
(3)共鳴のための活動
APIEL は、連携して環境リーダー育成にあたる「共鳴拠点」を国内
(1)拠点形成
外に増やしてきた。その数は、環境フィールド演習の協働実施機関だけ
本課題が実施する「アジア環境プログラム」
(APIEL)は、H21 年度
でも、H24 年度末までに、海外では7カ国、13 大学・研究機関、国内で
から 24 年度までに 135 名の環境リーダー候補生を受け入れ、うち、
は8つの大学・国際機関等にのぼる。また、履修生の成果発表や、本プ
63 名が H24 年度末までに修了した。H25 年度からは、実施母体のひ
ログラムの研究成果公表、環境リーダー育成という目標を共有する大
とつである新領域創成科学研究科サステイナビリティ学グローバル
学・研究機関との情報交流などのためのシンポジウム・ワークショップ・
リーダー養成大学院プログラムが実施する学位課程カリキュラムに組
セミナーは、H20 年度から 24 年度までの5年間で 16 回に及んだ。こ
み込まれ、その一部として実施されている。
うして構築されたネットワークは、後継プログラムにも引き継がれ、プ
ログラム修了生を国際シンポジウムにリソース・パーソンとして招聘
(2)APIEL の教育プログラム
するなど、修了生を含めたネットワークとして発展している。
必修科目「アジアの環境課題とリーダーシップ」
、必修選択科目「環
境フィールド演習」
、新領域創成科学研究科サステイナビリティ学教育
プログラムと工学系研究科都市工学専攻が提供する専門科目、学位論
文、以上の4つを柱とする。
「アジアの環境課題とリーダーシップ」は、環境リーダーに求められ
る知識や技能を学際融合的に学ぶ科目として H21 年度より開講した。
同じく新設の「環境フィールド演習」は、約 10 日間の海外または国内
実習と事前・事後学習からなる現場実践型演習である。H21 年度から
24 年度までに、
16 ユニット
(海外:9、
国内7)
を構築し、
全ての環境リー
ダー候補生が履修した。フィールド演習の実施手法は、教科書として出
版した。なお、
「アジアの環境課題とリーダーシップ」
「環境フィールド
演習」は後継プログラムに組み込まれ、さらなる深化を遂げている。
15
▶ 平成
20 年 度 採 択 課 題
実施機関の声
▶東京大学
味埜 俊
東京大学大学院 新領域創成科学研究科 研究科長 社会文化環境学専攻 教授 Q1.本事業ではどのようなことに取り組んでいますか?
A1.互いに異なる専門性や文化や考え方を持った履修生同士がその多様性を理解しつつ相手に影響を与えながらよりよい方
向に仕事を進めていけるような相互関係、つまり「共鳴型」の相互関係が重要です。本事業では、アジア各国の大学・研究機関・
環境問題専門家による「地域間共鳴」
、多分野融合的アプローチによる「学際的共鳴」
、環境リーダーとして活躍する修了生との
交流による「修了生との共鳴」という3つの共鳴を備えたネットワークを構築し、これを通じて、現
場体験型の演習をはじめとする環境教育のベンチマークカリキュラムを開発し、実行しています。
Q2.講義やフィールド実習ではどのようなことに取り組んでいますか?
A2.アジアにおいて環境分野でリーダーシップを発揮していくのに必要な知識とスキルを提供する
新規講義(
「アジアの環境課題とリーダーシップ」
)
、日本を含むアジアの環境問題の現場における素材
を利用して現場のカウンターパートと協働して実施する現場実践型・学生参加型演習(環境フィール
ド演習)を履修することにより、普遍性と地域特殊性の両者を理解し、環境問題認識能力・提案力を
アジア地域において発揮できるリーダーの育成を目指します。
Q3.本事業による取組を今後どのように展開していきますか?
A3.本事業で構築した演習や講義の教育体系を、新領域創成科学研究科においては「博士課程教
育リーディングプログラム」として採択された「サステイナビリティ学グローバルリーダー養成大
学院プログラム」
(GPSS-GLI)に、また都市工学専攻においては「世界展開力強化事業」として採
択された「アジア都市環境保健学際コンソーシアムの形成」
(UEHAS)に組み込むことで、より発
展させます。また本事業で構築した共鳴型ネットワークは、今後も環境・サステイナビリティに関
わる教育を連携して進めるためのパートナーとして維持します。
受講生の声
永井 宏樹
東京大学大学院 新領域創成科学研究科 サステイナビリティ学教育プログラム Q1.本養成コースを受講しようしたのはどのような理由からですか?
A1.実際に課題が発生している現場を訪問し、現地の人に話を聞くことができる点、様々な国籍やバックグラウンドを持った
学生や研究者の方と議論ができる点が非常に魅力的だったので、APIEL プログラムの受講を決めました。タイの農村や、東北の
被災地域を訪れ、自分の目と耳で状況を知ることができたのは、私にとって大変貴重な経験でした。
Q2.本養成コースで印象に残っていることは何ですか?
A2.私が本コースを受講する直前に、東日本大震災が発生しました。震災直後に被災地を訪問して
ボランティアをしたことをきっかけに、もっと自分達にできることはないかと考えるようになりまし
た。そんな中、所属する東京大学大学院新領域創成科学研究科サステイナビリティ学教育プログラム
に対する、岩手県沿岸広域振興局からの協力要請もあり、同プログラムの学生で、東日本大震災から
の復興を記憶と記録に残し、情報発信を通じて継続的に応援することを目的として、
「おいしい三陸
応援団」を結成することを決めました。それ以来、2年半以上に渡って岩手県沿岸の被災事業者への
インタビューを続け、ウェブやイベントを通じて、復興状況や復活した商品の情報発信活動を続けて
います。そのなかで、被災事業者の方々への継続的なインタビューを通じて知った、メディアなどの
情報では知ることができない、彼らの生の声や復興の状況は、強く印象に残っています。これらの情
報は、おいしい三陸応援団のウェブサイト(http://oishiisanriku.com/)
、facebook(https://www.
facebook.com/oishiisanriku.iwate)や twitter(https://twitter.com/oishii_sanriku)などの SNS で、継続的に発信しています。
Q3.
(修了生であれば)本養成コースで学んだことが、現在のお仕事に活かされていますか?
(現在受講生であれば)
、本養成コースで学んだことを、今後どのように生かしたいとお考えですか
(将来への夢 等でも結構です)?
A3.インタビューをした被災事業者の多くが「人と人のつながり」を大切にしており、その繋がりがきっかけで震災からの復活を決意することが
できたことを知りました。また、彼らへの継続的なインタビューを通じて、彼らが、非常に厳しく複雑な状況の中でも、自分だけでなく周りの人や地
域を大切にする真摯な姿勢を貫いていること、常に状況を俯瞰して復興への戦略を練り、地道な努力を続けていることを、身を持って感じることが
できました。私は、ビジネスの世界に進みますが、このような彼らの考え方や行動から学んだことを常に胸に置き、今後の自分自身の生き方に反映さ
せていきたいと考えています。
16
▶東京大学
留学生の声
▶平成
20 年 度 採 択 課 題
東京大学大学院 新領域創成科学研究科
サステイナビリティ学グローバルリーダー養成大学院プログラム
Nguyen Hong Lan(ニュエン ホン ラン)
Q1.日本に留学した理由あるいは目的、そして本環境リ−ダー養成コースに参加した
理由は何ですか?
A1.APIEL プログラムに参加することにより、私は歴史文化的背景に基づくアジアの環境問題に対し豊富な知識を得る事が
出来ました。また、私はフィールドワークや共同プロジェクト、特に 2010 年の OASIS ユニットへの参加を通じて環境リーダー
としての経験を積むことが出来ました。
Q2.本環境リーダー育成コースに参加して、
いかがでしたか?
(そのメリットや感想などをお教えください)
A2.APIEL プログラムは大変よく計画、組織されていると思います。プログラムは学生がフィールドで得られる成果を最大化する為に、日本内の
大学とよく連動しているだけではなく、海外のステークホルダーとも密接に連携し合い、学生に最先端の知識を提供してきました。それと同時に、
APIEL はアジア諸国が直面している多様な持続可能的な問題に関するフィールド演習ユニットへ参加する機会を学生に提供しています。私はその
ようなユニットへ参加することにより、自分が専門とする水資源マネジメント領域に対する知識や理解を深めることができました。将来はこの知識
をいかして、母国ベトナムと全アジア社会の環境問題解決と持続可能な社会の建設の為に貢献したいと思います。
Q3.
(本コース受講をもとに)どのような活動をお考えですか?(将来の夢などをお教えください)
A3.APIEL のプログラムに参加することで、私は知識や専門技術を学べただけではなく、さまざまな背景や分野から参加した他の環境リーダー候
補学生と、総体的なアプローチで問題を解決するために協力し勉強し合う良い機会を得ることができました。
APIEL は私にリーダーシップを育成する基盤と、将来、持続可能性に関わる問題を解決する為の基本的な知識とスキルを与えてくれました。
APIEL プログラムと東京大学修士課程を卒業した後、私は GPSS-GLI の博士課程に進学し、最先端の持続可能性に関する問題を解決していくリー
ダーへ成長していこうと考えています。APIEL と GPSS-GLI で得た貴重な経験は、私の学術的キャリアの道を支えるだけではなく、日本と他のアジ
ア諸国との緊密な連携を通じて母国ベトナムの持続可能的問題の解決へ貢献していく道標にもなるものだと、私は信じています。
17
▶ 平成
21 年 度 採 択 課 題
実 施 機 関 ▶ 筑波大学
環境ディプロマティックリーダーの
育成拠点
留学生の受け入れ状況
平成 27 年9月時点 修士 ベトナム 17、中国 13、モンゴル8、バングラデシュ4、ネパール3、ヨルダン1、インドネシア1、キルギス1、
エリトリア1、ラトビア1 計 62 名
博士 中国 11、インドネシア2、チュニジア1 計 14 名
目 的
アジア・アフリカ各国や地域において、水資源・水処理技術・水環境政策、生物多様性・バイオ資源利用、公衆衛生・疫学・医療政策等の、環境技術・
環境政策に精通するとともに、国際交渉、規制実務、産業化、教育、地方司政、国の環境政策立案・法整備等、異なる場面において環境諸問題を実際
に解決することのできる人材、
「環境ディプロマティックリーダー」を育成する。
目標(ミッションステートメント)
修士コースにより、水、バイオ資源、環境保健衛生の分野において高度な知識と技術を有するとともに、関連する既存の政策や問題点についても
十分な理解をもち、併せて政策立案・プレゼンテーション能力をもつ、環境ディプロマティックリーダー(修士(環境科学)
)30 名(留学生 18 名、国
内生 12 名)を育成する。また博士コースにより、高度な環境科学知識や技術を問題が生じている現場に適用でき、さらに問題に対応する政策の立案、
実行、当事者間・関連諸国との地域・外交交渉、合意形成、国際社会に対するアウトリーチ等、現地の環境問題を実質的に解決できる人材:上級環境
ディプロマティックリーダー(博士(環境学)
)12 名(留学生8名、国内生4名)を育成する。
プロジェクトの状況
18 名、国内生2名)を受け入れ、14 名(留学生 14 名)が修了した。
事業終了後の時点において(平成 27 年9月)
、修士コース(2年)で
平成 23 年度に実施された中間評価、および平成 26 年度に実施さ
は 73 名
(留学生 55 名、
国内生 18 名)
を受け入れ、
62 名
(留学生 50 名、
れた事後評価の両方において、当事業は最高位の S 評価を得た。
国内生 12 名)が修了した。また、博士コース(3年)では 20 名(留学生
修士コース修了生の育成の道程
18
▶筑波大学
実施機関の声
▶平成
21 年 度 採 択 課 題
辻村 真貴
筑波大学大学院 生命環境科学研究科 持続環境学専攻長 生命環境系教授 Q1.本事業ではどのようなことに取り組んでいますか?
「環境ディプロマティックリーダー(EDL)の育成拠点」プログラムリーダーとして、2009 年度から事業の推進を行って
A1.
きました。水循環・水資源、生物多様性・生物資源、環境保健衛生等の環境科学技術を専門とし、コミュニケーション力、交渉力、
リーダーシップ、使命感等を涵養し、地球規模課題の解決に貢献することのできるグローバル人材:EDL を育成してきました。
優秀な技術スタッフによる EDL オフィスを開設し、教員、履修学生の教育・学修サポート、英語校閲指導、日常生活に関するサポート等、教育プロ
グラムに関する総合的サービスを提供し、教員、学生らが、集中して教育、学修に取り組むことのできる環境を整備してきました。
Q2.講義やフィールド実習ではどのようなことに取り組んでいますか?
A2.フィールドを重視し、チュニジア、モンゴル、ベトナム、インドネシア、熊本県・水俣等、これま
で環境問題の生じてきた、または現在生じている現場に赴き、専門家、行政官、住民等、様々なステー
クホルダーと直接対話することによって、問題点を理解し、学修する場を提供してきました。また、
UNESCO 第8代事務局長・松浦晃一郎氏に代表される各界のトップリーダーによる講義“Meet
the Leaders”を通じ、技術論だけではない、真のリーダーシップについて理解する機会を大切にし
てきました。
こうしたカリキュラムにより、俯瞰力と専門力を合わせもち、また高い実践力、コミュニケーション
力、使命感を有する EDL が育成されています。
Q3.本事業による取組を今後どのように展開していきますか?
A3.EDL プログラムは 2014 年度より、環境分野の他の英語プログラムを統合し、SUSTEP(Sustainability Science, Technology and Policy)
プログラムとして継承されました。SUSTEP では、
EDL で培われた教育上の資産を引き継ぎ、
さらに、
アジア等地域の諸大学・機関と連携し、
カリキュ
ラムの共有、フィールド実習の共同実施等を行い、学生と教員による双方向の交流を通じて、環境・持続性分野におけるグローバル人材を育成して
います。またこうした人材のための多様なキャリアパスの開拓を通じ、
我が国の高等教育において、
博士、
修士の学位を取得した人材が、
多くのフィー
ルドにおいてリーダーとして活躍することができるよう、一層尽力していきたいと考えています。
受講生の声
戸田 美紀
筑波大学 生命環境科学研究科 持続環境学専攻 博士後期課程2年 Q1.本養成コースを受講しようしたのはどのような理由からですか?
A1.学際的な学びを期待して、EDL に興味を持ちました。幅広い分野を扱う環境学に所属しながら博士後期課程の研究をす
ることで視野を狭くするのではなく、多角的な学びからホリスティックな視点を得たいと思いました。EDL における科目のみな
らず、他の分野の学生、留学生との交流、さらに、コミュニケーション力の向上やリーダーシップについて考える実践的な学びを
得ることも期待していました。
Q2.本養成コースで印象に残っていることは何ですか?
A2.ベトナムにおけるインターンシップにおいては、環境学を学ぶ学生としてのみならず、人とし
て大変貴重な体験をさせていただき、心より感謝しています。生物多様性、水環境、保健・公衆衛生
という EDL が取り扱う3領域に関して、国際、二国間、政府、地域、コミュニティ、NGO という各レ
ベルから多角的な視点で学ぶことができました。1つ1つが必ずしも直接的につながりがある内容
ではありませんでしたが、集中的にこれらを学ぶことにより、自然に学際的な視点が育まれていっ
たことには驚きました。その中でも、最も印象深かったのは、化学の視点で環境問題に取り組んでい
る留学生が、化学(科学)において解決策が見つかったとしても、人々からの理解を得るなど、その
他の側面も同時に取り組まないと、環境や保健問題は解決されないことに気づき、その後の訪問先
では自身の分野とは全く異なる視点から質問をしていたことです。このインターンシップから、私
自身も多くの学びを得ましたが、また、仲間の学びを共有させていただいたことで、新たな学びと感
動を得ることができました。
Q3.
(修了生であれば)本養成コースで学んだことが、現在のお仕事に活かされていますか?
(現在受講生であれば)
、本養成コースで学んだことを、今後どのように生かしたいとお考えですか
(将来への夢 等でも結構です)?
A3.国際レベルでの環境に対する取組み、その位置づけ、そして、各国各分野の政策が多くの場合それらにつながっていることを学んだことで、私
が現在研究しているコミュニティレベルの調査から得られるミクロな視点を容易にマクロな視点と結び付けることができてきたと感じています。当
初、私が EDL に期待していたホリスティックの視点の一側面にあたります。また、環境問題には、各レベルにおいて様々なステークホルダーの相反
する利害があること、いかなる場合においても多様な視点とともに柔軟性を持って取り組む必要性を十分に学ぶことができました。これらの学びは、
今後いかなる仕事や活動をいかなるレベルで行うにしても、一つの強みとして発揮されていくと信じています。
19
▶ 平成
21 年 度 採 択 課 題
留学生の声
▶筑波大学
Centre for Agricultural Research and Ecological Studies(CARES),
Hanoi University of Agriculture(HUA), Trau Quy, Gia Lam, Hanoi, Vietnam www.cares.org.vn
PHAM TIEN DAT(ハム ディエン ダット)
Q1.日本に留学した理由あるいは目的、そして本環境リ−ダー養成コースに参加した
理由は何ですか?
A1.In fact, I was interested in studying in Japan because of the following reasons. Firstly, Japan is one of the
most leading countries in terms of environmental sciences and management that I would like to learn and bring
home. Secondly, I would like to discover the Japanese cultures and widen my academic
knowledge as well as make new friends.
The EDL program provides numerous academic courses which taught in English. This
is a great opportunity for me to meet EDL leaders and learn from them. The program
also bring me a new critical of thinking when dealing with environmental problems.
私が日本に留学した動機は、環境科学分野における日本の貴重な経験から学びたかったというこ
と、
そして、
日本で交友関係をつくり学術的な知識を得るとともに、
日本の文化に触れたかったことが、
あげられます。
EDL プログラムは、英語教育プログラムとして、こうした私の多様な期待に十分応えてくれるもの
でした。EDL では様々な学術コースが提供されましたが、とくに、
“Meet the Leaders”の授業にお
いて、各界のトップリーダーの方々から直接講義を受けたことは、非常に貴重な経験でした。EDL は、
環境問題に対する私の考え方、そして考えるための道筋を変えてくれたのです。
Q2.
本環境リーダー育成コースに参加して、
いかがでしたか?
(そのメリットや感想などをお教えください)
A2.Participation to the EDL program has probably brought me a great chance to approach international communities of learning
and practices from which I am able to develop my capability of approaching high technologies, new and useful tools. These lessons
play an important role for my future career. Furthermore, this program also helps me to broaden my specialist knowledge and
academic skill in solving environmental issues that my country has facing in recent years.
EDL で学んだことにより、私は環境科学の研究教育における国際レベルの枠組みや機関を直接知ることができ、その結果、最先端の技術や考え方
に触れることができました。さらに、EDL プログラムを通じて私は、母国が直面している様々な環境問題を解決するために必要な、専門的な知識や
技術について、知見を拡げることができました。このような経験は、私の将来のキャリアにとって、きわめて重要であると思います。
Q3.
(本コース受講をもとに)どのような活動をお考えですか?(将来の夢などをお教えください)
A3.With what I have achieved from this program, I strongly believe that I will contribute positively to improve environmental
situations in Vietnam towards sustainable development. In the future, I will able to co-operate with colleagues, specialists and
scientists as well as professors in Japan, various promoters for proposals and carrying out a number of projects related to natural
resources management and environment.
このプログラムで学んだことで、私は、母国ベトナムにおける環境を、より持続可能な状態に進展させることに寄与できる能力が、身についたと確
信しております。将来、私は母国の同僚、専門家達のみならず、日本でお世話になった先生方とも協力し、自然資源と環境に関わるプロジェクトを構
築し、主導したいと思っております。
20
▶平成
実 施 機 関 ▶ 神戸女学院大学
21 年 度 採 択 課 題
地域から ESD を推進する女性環境リーダー
留学生の受け入れ状況
2015 年 11 月現在 中国(5名)
、インドネシア(4名)
、マレーシア(2名)
、フィリピン(7名)
、ベトナム(5名)
、韓国(1名)
目 的
一般市民とともに地域に根ざした ESD を推進する女性リーダーの養成が、アジア・アフリカ地域の環境問題の解決に重要である。そのため、日
本人大学院生を対象とした国内リーダー養成コース(2年間)
にアジア・アフリカ諸国からの女子大学院生を受け入れ、
1年間の教育・実習を行う「環
境リーダー育成コース」を構築する。
本コースでは、ESD を進める NPO 法人へのインターンシップ、本学教員による学際的リレー講義、アジアの連携大学教員によるライブ講義を
行う。これらのプログラムを通して、修了生は国際的な視点から地域の環境問題を学ぶとともに、地域から ESD を推進する実践力を身につけるこ
とを目的とする。
目標(ミッションステートメント)
環境リーダー養成コース(1年間)に、5年間でアジア・アフリカ地域の女子大学院生 20 名を受け入れる。養成された環境リーダーは環境問題と
ESD に対する幅広い専門知識を持ち、帰国後に企業の広報、市の行政官、NPO 法人スタッフとして、地域から ESD を推進する人材となることを目
指す。また、併設する日本人学生対象の長期コース(2年間)修了生も、アジアを見据えた幅広い視点を持つ女性環境リーダーとして実社会で活躍で
きるよう育成する。さらに本計画では女性の若手特任研究員を1名採用し、ESD を基盤とした環境学の独立した専門家として育成する。
実施期間終了後は、本計画で蓄積したアジア・アフリカ諸大学との人的ネットワークとインターネットビデオ会議システムの運用経験を、本学が
130 年にわたって培ってきた女性リーダーを育てる教育と融合し、アジア・アフリカ諸国の女性の地位向上に寄与する活動へと発展させる。
プロジェクトの状況
連携大学教員によるライブ講義、本学教員による学際的リレー講義と
プロジェクトでは、1)日本とアジア諸国の過去から現在までの環境
文学研究科大学院生による同時通訳支援、地域で ESD を進める NPO
問題を理解している、2)自然環境の保護運動、ESD、環境教育の進め
法人でのインターンシップを柱として実施した。
方を理解している、3)地域に根ざした ESD を実践するスキルを習得
2010 年度から 2013 年度の期間中にアジア6か国から 24 名の留学
している、4)自国の環境問題解決のために ESD 実践プランを立てら
生を受け入れ、全員が環境リーダーコース(1年間)を修了した。同期間
れる、という目標を掲げ、インターネットビデオ会議を活用したアジア
中の日本人学生対象の長期コース(2年間)の修了者は6名であった。
21
▶ 平成
21 年 度 採 択 課 題
▶神戸女学院大学
実施機関の声
武中 桂
神戸女学院大学 人間科学部 環境・バイオサイエンス学科 特任助教 Q1.本事業ではどのようなことに取り組んでいますか?
A1.本学 ESD プログラムでは、環境問題について学ぶ東南アジアの大学院から留学生(環境問題について学ぶ修士課程在籍
の女子大学院生)を受け入れ、本学大学院の学生とともに座学と実地体験の両側面から ESD について幅広く学ぶプログラム
を用意しています。本学でのプログラムは1年間ですが、限られた期間内に可能な限り多くの学びを提供するため、多岐の専門
分野にわたる講師陣の選出、地元 NPO との連携によるインターンシップ活動、充実した学外でのカリキュラムなどを組み合わせています。ESD を
基軸としながらも各年度の履修生の専門性に応じて、講師陣の組み直しや講義内容の再構成、学外活動の内容や訪問先の変更を行いながら、地域か
ら ESD を推進する女性環境リーダーの育成を目指します。
Q2.講義やフィールド実習ではどのようなことに取り組んでいますか?
A2.講義は、学内外の日本人講師による講義と海外の大学の講師による講義があり、いずれも ESD
を基軸とした講義ですが、各講師の専門分野を切り口としています。また講義内に、環境問題への取
り組みを実践している企業の見学や、ESD を実践する博物館の見学も行います。フィールド実習は、
NPO 法人 LEAF(西宮市)との連携で、市内、県内において行政や民間企業での環境学習を行ったり、
市民とともに農地活動を実践したり、NPO 法人の運営スタッフとしてのスキルを学んだりします。ま
た2泊3日のフィールド学習では、先駆的に ESD を展開する地域を訪問し、プログラム参加や現地ス
タッフとの意見交換から ESD に関する理解を深め、即時的な実践力を養います。
Q3.本事業による取組を今後どのように展開していきますか?
A3.本学 ESD プログラムは、2014 年3月で JST による助成期間が終了しますが、実施期間中に築
き上げた国内外の協力関係にもとづいて、今後も継続的にプログラムを展開していきたいと考えてい
ます。ただし、過年度のプログラムの成果を検証したり、これまでの経験を踏まえた上での改善を施
したり、学内他学部ならびに他研究科を含む全学的なプログラムとしての展開可能性を検討したりするためには、今暫くの時間を要します。また、プ
ログラムの円滑な継続を可能にするために必要な外部資金の獲得もめざしながら、現在関係者による打ち合わせを行なっています。
受講生の声
鍋井 春奈
神戸女学院大学大学院 人間科学研究科 人間科学専攻 Q1.本養成コースを受講しようしたのはどのような理由からですか?
A1.ESD プログラムでは、本校の留学生とともに受講するので国際交流ができ、さらに日本や海外の環境問題、ESD の動向、
現状などについて学ぶことができると思い受講しました。また、授業は全て英語で行われるため、英語力を向上させることがで
きると思い受講しました。英語力に自信はありませんでしたし、コミュニケーション能力も低い方でしたが、あえて英語だけの
授業という環境に身を置くことで少しでも自分自身が変わることができればと思いました。さらに、自国だけでなく、他国、主に
アジア諸国の環境問題や ESD について学ぶことで視野が広がるのではないかと思いました。
Q2.本養成コースで印象に残っていることは何ですか?
「アジアの環境とその保全」という授業では、毎週違った国の先生方がインターネット TV 会
A2.
議システムを通じて授業をして下さり、とても印象的でした。直接お会いしなくても他国の内情など
を学べることに恵まれた環境にいると感じました。また、講義以外に、課外授業も設けられており、工
場見学など、普段見ることがない工場の内部を見ることができましたし、その工場が取り組んでいる
環境対策などを知ることができました。2泊3日のフィールドワークで沖縄県に行ったことも印象に
残っています。国頭村という村を訪れ、ここで行われている ESD やさまざまなお話を聞くことがで
きました。地域活性とはどういうことなのか、地域の人々との兼ね合いはどうか、などさまざまなこと
を考える良い機会となりました。
Q3.
(修了生であれば)本養成コースで学んだことが、現在のお仕事
に活かされていますか?(現在受講生であれば)
、本養成コース
で学んだことを、今後どのように生かしたいとお考えですか
(将来への夢 等でも結構です)?
A3.私は現在、本養成コースを受講中であり、また就職活動の真っただ中です。私は研究職を希望していますが、企業での研究と大学での研究との
違いはコスト制限や時間の制限、環境への配慮を考えながら研究を進めるという点にあると思っています。大学院で養った専門知識を生かし、研究
を通して持続可能な社会に貢献したいと思っています。そのためにも他国の環境問題や ESD の知識があるということは強みになると思います。と
はいえ、授業が全て英語で行われていたため、全てを理解することができていません。これからますます国際社会化が進み、英語力は必要不可欠に
なるため、英語力を身に付けることは必ずプラスになると思います。これを機に英語力をさらに向上させる必要があると改めて感じています。
22
▶神戸女学院大学
留学生の声
▶平成
21 年 度 採 択 課 題
Maria Flordeliza P. Del Castillo(マリア フロデリザ P デル カスティロ)
神戸女学院大学大学院 人間科学研究科 Q1.日本に留学した理由あるいは目的、そして本環境リ−ダー養成コースに参加した
理由は何ですか?
A1.ひとりの人間として成長し、専門性を養いたいという思いで本学の ESD プログラムに参加しました。深刻化する環境問
題に取り組み、
「持続可能な開発」にシフトさせる方法を理解するには、本プログラムで幅広い知識と教養を身につけることが
役立つと考えたのです。
私はこれまで地域社会の災害管理計画を作るため、地域の人々とともに働いてきました。天災や
人災による破壊的影響を避けるために、災害に対するハザード、暴露、脆弱性を分析していたので
す。本プログラムはこの分野の知識と理解を深め、建設的で実践的な視野を広げるのにも有効と考
えました。
さらに、本学は、人間としての成長に必要なスキルを学ぶのにふさわしく、ここでの学びの機会
は、私自身の能力をきたえ、公正かつ調和的に生きるための考え方と行動力を養うのに役立つと考
えました。
Q2.本環境リーダー育成コースに参加して、いかがでしたか?
(そのメリットや感想などをお教えください)
A2.本プログラムでは、アジア諸国の講師陣の講義を通じて、各国の環境問題の現状や相違点・共
通点を理解し、それぞれの状況に応じた解決法を考えられるようになります。また、現在の環境問題
につながる過去を学ぶことで、将来のよりよい環境を目指すことができるようになります。
講義、フィールドワーク、NPO 法人 LEAF でのインターンシップを通して、私たちは環境問題とそ
れに取り組むための努力についても知るようになりました。LEAF の活動に参加することで、環境活動や政策が地域社会のいろいろな分野に担われ
ていることを経験的に学べます。地域社会の限界や脅威を克服できる持続可能な社会を構成する要素とはどんなものかなど、包括的な思考が訓練さ
れます。講義やインターンシップでの経験は、私たちの考え方を変え、自分だけでなく、他者にもよりよい影響を与える決定が可能になるでしょう。
Q3.
(本コース受講をもとに)どのような活動をお考えですか?(将来の夢などをお教えください)
A3.現在の環境問題の多くは、私たちが狭い視野で考えてしまう過去の誤った社会的習慣によっています。ESD の考え方がもっと人々に浸透して
いたなら、地域社会は明るい将来を築く決定ができていたはずです。私自身の ESD 経験でいえば、
固形廃棄物、環境汚染、災害のリスク、社会的問題、
文化的問題、政治的問題など、地域社会の発展を妨げる身のまわりの問題について、もっと地域社会に知らせる必要があります。これらについて地域
社会に周知する一方で、子どものうちから(成長段階を考慮して)ESD に関する教育も始めるべきです。なぜ自分たちの生活の方法を変え、より持
続可能な生活を送る必要があるのかを認識・理解するために、さまざまな地域社会活動に参加し、かかわることで、地域社会への周知と教育を進め
ていきたいと思います。
23
▶ 平成
21 年 度 採 択 課 題
実 施 機 関 ▶ 岐阜大学
岐阜大学流域水環境リーダー育成拠点形成
留学生の受け入れ状況
平成 27 年 12 月までの受入人数 111 名 中国(57 名)
、インドネシア(28 名)
、ベトナム(7名)
、バングラデシュ(7名)
、モンゴル(4名)
、
カンボジア(3名)
、スリランカ(2名)
、マレーシア(1名)
、タイ(1名)
、韓国(1名)
目 的
アジア地域の発展途上国が直面する水質・水資源・農業灌漑用水などの流域水環境分野の問題について、多角的な視野で問題点を的確に理解し、
戦略的な解決策と発生防止策の設計・施行に向けてリーダーシップを発揮する人材(国外リーダーと国内リーダー)を育成する拠点を形成する。
目標(ミッションステートメント)
3年目
修士課程の育成対象者として、留学生 29 名と日本人学生 11 名をそれぞれ受入れ、17 名と7名を輩出する。また、博士課程の育成対象者として、
3名と1名をそれぞれ受入れる。
5年目
3年目までの養成目標と合わせて、
合計受入人数は修士課程では外国人留学生 51名と日本人学生 19 名とし、
合計修了人数は 41名と 15 名とする。
また、博士課程では、外国人留学生を合計9名、日本人学生を合計3名受入れ、修了人数はそれぞれ3名と1名とする。
また、修了後の継続教育・支援措置として、修了生を短期研究留学生として受入れるとともに、国際ワークショップの定期開催と提案型共同研究
プロジェクトを実施する。
プロジェクトの状況
は目標 60 名(修士課程 56 名、博士課程4名)に対し 86 名(修士課
程 78 名、博士課程8名)となり、受入人数と修了人数ともに目標人
(1)特色のある教育プログラム
数を大幅に上回っている。
流域水環境に関する基礎知識の総合的な基盤形成と基礎応用力の
平成 27 年 10 月までの時点で 111 名の学生(修士課程名 96 名、博
増強を図るため、学生が所属する3専攻の既存の流域水環境関係の
士課程 15 名)
がプログラムから修了し、
現在は 61名
(博士課程 20 名、
専門科目を生かし、その上で、3専攻に跨って履修できる相互補完科
修士課程 35 名、研究生6名)が在籍している。本プログラムは、アジ
目群を設けるとともに、環境に関わる人文・社会関係の授業科目と
ア域における流域水環境分野高度人材育成拠点として国内外におい
アジア水環境問題対処型の科目を組み合わせた。また、発展途上国
て定着しつつあり、途上国からの期待が高まっている。
の問題を直視し授業内容を支える4つの流域水環境特別研究領域を
(4)修了生への継続教育・支援措置
設けた。
全修了者に対して、ウェブ・アンケート、メール連絡網、ニュース
(2)実施体制と運営体制
レターを通じて育成プログラムや修了生支援に対する要望や意見を
学長のリーダーシップのもとに事業を推進するための実施体制と運
調査し、その結果をプログラムの運用に反映しながら、民間を取り入
営体制を整備した。関連事項を定める大学規程として「岐阜大学流域
れた継続支援と現場課題に対応する共同調査・共同研究などの修了
水環境リーダー育成事業規程」を設けた。
後のフォローアップを行っている。また、帰国後に母国の行政や大学
実施体制:流域圏科学研究センター、工学研究科、応用生物科学研
で活躍している修了生を大学に招聘して、短期研修や意見交換をも
究科、地域科学研究科の教育・研究部門、留学生支援室
行っている。
や研究支援課などの事務組織のほかに、事業推進にあ
たる「流域水環境リーダー育成プログラム推進室」を
設置した。
運営体制:
「岐阜大学流域水環境リーダー育成拠点形成統括委員
会」を設け、そのもとにプログラムの点検、運営、評価
などにあたる各委員会を置くという戦略的運営体制を
構築した。
(3)養成目標人数と実績
平成 25 年度末までの5年間、日本を含むアジア域 11 か国から修士
と博士の両課程での受入人数は目標 82 名(修士課程 70 名、博士課
平成 26 年度プログラム修了式(H 27.3.25)後の集合写真
(中央:森脇久隆学長;修了生人数:修士 18 名、博士6名)
程 12 名)に対し 131 名(修士課程 105 名、博士 26 名)
、修了者人数
24
▶岐阜大学
▶平成
21 年 度 採 択 課 題
岐阜大学 流域圏科学研究センター 教授
岐阜大学流域水環境リーダー育成プログラム推進室長
李 富生
実施機関の声
Q1.本事業ではどのようなことに取り組んでいますか?
A1.水質・水資源・生態などの流域水環境問題は、途上国にとって特に深刻です。本事業は、関連分野の教育研究に携わる学
内部局を横断的かつ有機的に連携し、大学組織としての実施体制のもと、途上国が直面する流域水環境問題について多角的な
視野で理解し、戦略的な解決策と発生防止策を設計・施行する国際的環境リーダーを育成するものです。実施初年度(2009 年
度)からの5年間では、日本を含むアジア域 11 か国から修士と博士の両課程で 131 名の育成対象者を受け入れ、2015 年 10 月までの時点における
修了人数は修士 96 名、
博士 15 名に達し、
いずれも目標人数を大きく上回っています。岐阜大学の特別措置の1つとして、
育成対象候補者を広く募集・
選定した上で、半年間研究生として受入れ、基礎知識の強化を図っています。これは、途上国の優秀な学生を確保する上で有効に機能しています。
Q2.講義やフィールド実習ではどのようなことに取り組んでいますか?
A2.学生が所属する研究科・専攻の既存専門科目に加えて、以下の新規科目群と海外・国内グループ・インターンシップを組み合わせた特色のあ
るカリキュラムを編成し実践しています。また、小中学生、高校生との野外環境学習、環境活動への指導も環境リーダーの養成に重要な内容として取り
入れています。環境リーダー特論3科目(リモートセンシング水環境計測学特論、アジア水環境動態評価特論、アジア水環境動態評価特論)では、行政・
企業から実務者を講師として迎え、問題の分析と理解、戦略的解決策の立案・策定に必要な理論と現場知識について講義を行っています。演習3科目
のうちの2科目(環境リーダー育成特別演習、環境ソリューションⅠ)では、行政や企業の協力のもと、プログラム受講生全員が日本の水処理、廃棄物再
利用、再生可能エネルギーなどの環境関連事業を訪問・調査し、調査結果をライフサイクルアセスメント(Life Cycle Assessment)手法に基づいて
分析した上で、全員が参加する発表会での発表と討論を通して、これらの事業を途上国に導入する際の問題点を考案し改善策を提示する能力の養成
を行います。もう1つの博士課程を対象とした演習科目(環境ソリューションⅡ)では、将来、大学や政府機関などで人材育成ならびに環境教育に携わ
ることを想定し、一般学生への公開模擬講義または中学・高校への出前講義を行っています。受講者は
講義の準備から実施までを経験することにより、教育を行う上で必要なスキルを身につけます。また、
講義終了後の聴講者へのアンケートにより、受講者が自分の講義で不足している部分を認識できるよ
うにしています。共同セミナーでは、流域水環境問題と関連する地球規模の環境・エネルギー問題、社
会歴史・文化・生活風習などについて、約 150 テーマを設定し、日本人学生1名を含むことを基本とし
た出身国の異なる2∼3名の小グループが事前調査、資料作成および発表を行い、最後に全員による討
議を行います。これらの科目を通して、環境問題に関する視野の拡大、意識の共有、そして国際コミュニ
ケーション能力の向上を図っています。
Q3.本事業による取組を今後どのように展開していきますか?
A3.本事業では、大学組織としての実施運営体制、学外連携協力体制、特色のある育成カリキュラムが構築され、養成人数目標を超えた人材育成を
行ってきました。修了生の殆どは国内外で活躍しており、同事業に対する国内外における認知度は高くなっています。岐阜大学の更なる国際化と国
際社会貢献にも大いに資する事業であるため、平成 26 年度以降は第Ⅱ期として継続しています。第Ⅱ期の実施体制は複数の研究科・専攻に所属す
る従事者を新設の「学術院」に集結され、教育・研究指導体制の更なる効率化を図っています。学内外との連絡調整やきめ細かい学習指導などの重
要な業務を担う推進室体制は民間からの寄付金支援によって維持されています。カリキュラムについては、共同セミナーの成果を生かして、修士課
程では「地球環境社会特論」と「地球環境文化特論」の2科目(4単位)
、
博士課程では「地球環境セミナーⅠ」と「地球環境セミナーⅡ」の2科目(4
単位)を必須科目として新設し、カリキュラムの発展版として再編成しました。また、アフリカからニーズにも応えるため、育成対象範囲を現行のアジ
ア域からアフリカ域にまで広げ、流域水環境分野の人材を輩出していきます。
本事業のURL:http://www.green.gifu-u.ac.jp/BWEL/
受講生の声
小川 翔平
岐阜大学 工学研究科 生産開発システム工学専攻 博士3年 Q1.本環境リ−ダー養成コースに参加した理由は何ですか?
A1.私は、以前から排水処理に関わる研究に取り組んでおり、流域水環境問題に対し強い興味を持っておりました。本学修士
課程に進学し、新たに所属した研究室でも土壌圏の環境問題を研究課題として扱っており、流域水環境について学ぶことはこ
れから行う研究の視野拡大にもつながると考えていました。本プログラムについては、修士課程の指導教員から教えて頂き、本
プログラムを通し流域水環境に関する専門的知識・技能・実地経験を養うことができることを知りました。本プログラムへの参加は、自身の今後の
研究と知見拡大に繋がると考え、修士コースから参加しました。
Q2.本環境リーダー育成コースに参加して、
いかがでしたか?
(そのメリットや感想などをお教えください)
A2.専門知識の補強以外に、英語能力を向上させる大きな一因となりました。本プログラムには外国人留学生が多数参加しており、英語での講義
やセミナー発表、海外インターンシップなどの修了要件がありました。本プログラムでのセミナー発表や留学生との交流は、私が初めて英語をコミュ
ニケーションツールとして使用した場であり、拙い英会話でも留学生と意思疎通できたことは、英語に対する苦手意識を払拭する機会となりました。
以降、自分の英語能力に対して自信を持つことができるようになり、研究成果を国際学会や海外論文誌において積極的に発表することができました。
25
▶ 平成
21 年 度 採 択 課 題
▶岐阜大学
Q3.
(本コース受講をもとに)どのような活動をお考えですか?(将来の夢などをお教えください)
A3.私は今、本プログラムの博士コースの3年生であり、この3月に博士課程を修了します。本プログラムを経て培った英語能力や専門知識は、今
後の研究活動に大いに役立つものだと実感しています。また、本プログラムでは、セミナーを通し学生間の国籍を越えた意見交換を経験することが
できました。国際的な環境問題は、国ごとに視点が違い、多面的な視点から問題を捉えることが重要と学びました。修了後は、ひとまず国内の土壌汚
染や廃棄物処理を対象とした研究を続けていくことになりますが、将来的には海外にも目を向け、国際社会に寄与していきたいと考えています。そ
のためにも、本プログラムで培った知識、経験、技能を土台として、立派な研究者となるべく努力を続けていきたいと思います。
留学生の声
RAHMA YANDA(ラマ ヤンダ)
岐阜大学 工学研究科環境エネルギーシステム専攻博士1年 Q1.日本に留学した理由あるいは目的、そして本環境リ−ダー養成コースに参加した
理由は何ですか?
A1.岐阜大学流域水環境リーダー育成プログラム(以降 BWEL)をアンダラス大学の指導教員から紹介されました。また、母
校の講師で BWEL に参加した先輩からプログラムの面白さについて聞き、BWEL に志願するきっかけとなりました。BWEL は
個人の学習のみでなく、環境問題を知らない人への教育・指導の能力の養成にも重点を置いているので、より魅力を感じました。
学習内容も多国学生合同での講義・実習を通じて現在起こっている問題を学習し認識し直すことができるので、BWEL でなら私が必要とする知識・
技術を身に付けることができると確信しました。また、日本は他の国に比べ研究や技術、環境政策が進んでおり、実際に過去何度も環境問題を克服し
てきました。一歩進んだ視点から問題解決法を習得させて頂ける、そんな日本をより深く知り、また自身もそんな学習環境に身を置きたいと思い日
本を選びました。
Q2.
本環境リーダー育成コースに参加して、
いかがでしたか?
(そのメリットや感想などをお教えください)
A2.様々な講義で学習を重ねていくうちに環境問題はそれぞれが相互に関わりを持ち、時に社会経済・政治政策からも影響を受ける複雑な問題で
あることを認識しました。また BWEL は日本人学生と留学生が共に学べる環境下で実施されているために、例えば共同セミナーや特論といった講
義を通じて、様々な国の学生と交流し知識を深め、同時に将来にわたって続くであろう広範囲で有益な交友関係を築くことができました。苦労はし
ますが新しい環境に順応していく能力もリーダーには必須であると思います。リーダー育成を謳うこのプログラムは実際それだけの充実度があり、
私達留学生は、これを通じて自身を正しく見つめ直し、問題解決のための知識と広い視野を身につけました。
Q3.
(本コース受講をもとに)どのような活動をお考えですか?(将来の夢などをお教えください)
A3.修士課程を修了してからはさらに専門知識を深めるために博士課程へ進学しました。その後は私が習得した知識や技術・環境問題解決に向け
た想いといったものを、特に母国の人たちと共有し、彼らの環境意識を高めたいと考えています。自然環境を犠牲にした人間活動は結局何の利益も
生まないばかりか、かえって大きな損害として帰ってくるものだということを私は実感しているからです。もちろん自国だけでなく国際的な環境保
全プロジェクトにも積極的に参加し、私が BWEL で得た知識と経験をいかしたいと考えています。それだけに様々な国の学生と交流していく中で
私が BWEL で築いた交友関係は将来大いに助けになるものであると考えています。母国で多くの環境問題の解決に貢献できる人材を育てていける
リーダーになることが私の夢です。
26
▶平成
実 施 機 関 ▶ 北海道大学
21 年 度 採 択 課 題
持続社会構築環境リーダー・
マイスター育成
留学生の受け入れ状況
長期コース(修士課程:環境リーダー)
インドネシア 11、中国4、フィリピン3、ザンビア2、グアテマラ1、ウガンダ1、セネガル1、セルビア1、
ガイアナ1、バングラディシュ1、中央アフリカ1、モンゴル1、フランス1、タンザニア1、マレーシア2、
コンゴ1、エジプト2、インド1、ハンガリー1、スリランカ1、ケニア1、タイ2
長期コース(博士課程:環境マイスター)
セネガル1
目 的
持続社会構築環境リーダー・マイスター育成(StraSS)プログラムは、サステイナビリティ俯瞰講義と専修科目5科目からなる修士課程向け
StraSS リーダープログラムとオンサイトでの問題解決型インターシップとサステイナビリティ教育プログラム設立・運営のノウハウを獲得す
る博士課程向け StraSS マイスタープログラムから構成されている。StraSS リーダープログラムは履修証明課程として社会人履修も可能とし
ている。北海道大学におけるサステイナビリティ学教育は、独自に開発されたサステイナビリティ学教育コンテンツ、俯瞰力・汎用的能力の育成
および、海外協定校とのアライアンス形成による共同教育プログラム開発、グローバル教室授業やフィールド実習の共同運営や国際標準化を特徴
としている。
目標(ミッションステートメント)
次を目標とした。
①海外サテライトの教員との連携による環境マイスター教育プログラムの確立、海外サテライトを3箇所以上確立すること。
②本プログラム実施期間中に修士レベル(環境リーダー)24 名、博士レベル(環境マイスター)
4名の輩出を目指す。
③インターンシップ制度を地方自治体、企業、連携大学、JICA の協力のもと確立し、ポストグラデュエート実務経験獲得プログラムを確立する。
プロジェクトの状況
道における農林、水産コースを毎年開催し充実させると同時に、海外拠
本プログラムでは、海外協定校と国際大学間アライアンス(StraSS
点におけるフィールド研修プログラムの開発を海外協定校と協力して
アライアンス)を設立して、大学間の講義共有を行うと共に、環境リー
きた。2011 年にはインドネシア中央カリマンタン、2012 年には台湾、
ダー認定証の授与を目指して調整を進めた。StraSS アライアンスで
2013 年には中国(杭州)にてフィールド研修を実施し、国内外の様々
は、インターネットを利用した、同時・双方向遠隔講義システムを利
な研究教育機関や自治体のほか、民間企業、NPO 法人、農林水産業従
用した質の高い講義を低コストで実現し、大学毎に地域性を反映した
事者などの協力を得て、特徴的なフィールド研修プログラムの発展へ
StraSS リーダー・マイスターを育成する基盤を形成した。フィールド
とつなげる努力を重ねてきた。
研修(ECOSUS: Education Course for Sustainability)では、北海
27
▶ 平成
21 年 度 採 択 課 題
▶北海道大学
実施機関の声
山中 康裕
北海道大学 サステイナビリティ学教育研究センター センター長 Q1.本事業ではどのようなことに取り組んでいますか?
A1.持続社会構築環境リーダー・マイスター育成(StraSS)プログラムは、サステイナビリティ俯瞰講義と専修科目5科目か
らなる修士課程向け StraSS リーダープログラムとオンサイトでの問題解決型インターシップとサステイナビリティ教育プロ
グラム設立・運営のノウハウを獲得する博士課程向け StraSS マイスタープログラムからなります。StraSS リーダープログ
ラムは履修証明課程として社会人履修も可能です。北海道大学におけるサステイナビリティ学教育は、独自に開発されたサステイナビリティ学教育
コンテンツ、俯瞰力・汎用的能力の育成および、海外協定校とのアライアンス形成による共同教育プログラム開発、グローバル教室授業やフィール
ド実習の共同運営や国際標準化を特徴としています。
Q2.講義やフィールド実習ではどのようなことに取り組んでいますか?
A2.海外協定校と大学間アライアンス(StraSS アライアンス)を設立して、大学間の講義共有を行い、インタネーットを利用した同時・双方向の
遠隔講義共有システムを実現し(グローバル教室)
、
大学毎に地域性を反映した StraSS リーダー・マイスターを育成する基盤を形成しました。フィー
ルド研修では、北海道における農林・水産コースを毎年開催し充実させると同時に、海外拠点におけるフィールド研修プログラムの開発を海外協定
校と協力し行いました。2011 年にはインドネシア中央カリマンタン、2012 ∼ 2013 年には台南、2013 年には中国杭州にて実施し、国内外の様々な
研究教育機関や自治体のほか、民間企業、NPO 法人、農林水産業従事者などの協力を得て、特徴的なフィールド研修プログラムの発展へとつなげる
努力を重ねてきました。
Q3.本事業による取組を今後どのように展開していきますか?
A3.本センターは現在の StraSS プログラムを継続していく予定でしたが、残念ながら今年度末をもって、センターは閉鎖されます。これまで
StraSS リーダーは 97 名受け入れ 56 名(内 44 名は留学生)の修了者、StraSS マイスターは 12 名を受け入れ、修了者は1名(留学生のみ)を輩出
しました。今後 StraSS アライアンスは浙江大学を中心に継続され、本センターが持つサステイナビリティに関する教育、フィールド実習は、文科省
平成 24 年度事業「大学の世界展開力強化事業」に採択された教育プログラム「人口・活動・資源・環境の負の連環を転換させるフロンティア人
材育成プログラム」に活かされています。
吉村 美香
受講生の声
北海道大学水産科学院 博士後期課程 Q1.本養成コースを受講しようしたのはどのような理由からですか?
A1.日本に居ながら海外の大学の講義を英語で聞くことができるため、英語を聞き取る力を付けるのに良い機会と思い、環境
リーダー育成拠点形成プログラムの講義を受講しました。
Q2.本養成コースで印象に残っていることは何ですか?
A2.フィールド研修では台湾の成功大学へ行き、環境をテーマに講義を受け、グループに分かれて議論を行いました。フィールド研修を通じて仲良
くなった異なる言語・背景を持つ学生同士で、真剣に、時にはユーモアを交えて遠慮なく議論を行ったことは貴重な経験でした。
Q3.
(修了生であれば)本養成コースで学んだことが、現在のお仕事に活かされていますか?
(現在受講生であれば)
、本養成コースで学んだことを、今後どのように生かしたいとお考えですか
(将来への夢 等でも結構です)?
A3.修士課程の際、タイの大学へ留学しましたが、本コースで学んだことは、異なる文化背景を持つ人々とのコミニュケーションに役だったと思い
ます。そのことは博士課程に進学後、タイをフィールドとして漁港を回り水産物の流通に関する調査を行う際にも役立っています。これからも本コー
スで学んだことを活かして、異なる文化圏で問題に直面した際、一方からその是非を判断するのではなく、その問題の背景に興味を持ち、広い視野で
ものごとを考えられるようになりたいと思います。
28
▶北海道大学
留学生の声
▶平成
21 年 度 採 択 課 題
Devon Ronald Dublin(デヴォン ロナルド ダブリン)
国際 NGO 勤務 Q1.日本に留学した理由あるいは目的、そして本環境リ−ダー養成コースに参加した
理由は何ですか?
A1.私はガイアナ共和国のジョージタウンで生まれました。ガイアナはアマゾン熱帯森林による森林被覆度が 80%の南アメ
リカで唯一の英語圏の国です。自然に囲まれた環境で育った私は環境に興味を持ち、そして獣医師になりました。その後、水生
動物を扱う知識が充分でないことを自覚した私は、進学することを決意し、水産業が発達している日本を進学先として選択し
ました。北海道大学水産科学研究院における海洋生命科学の修士コースに在籍中、StraSS リーダーコースを修了しました。コースに参加したのは、
広範囲にわたる分野、英語で提供される、他の講義時間と重複しない、からです。
Q2.本環境リーダー育成コースに参加して、
いかがでしたか?
(そのメリットや感想などをお教えください)
A2.以前は、持続性についてあまり深く考えたことがありませんでしたが、StraSS リーダーコースを履修してから、このプログラムに触発され、自
分の進路について考え、国際環境保全コースの博士課程に進み、現在は地球規模で環境保全について活動している国際 NGO で働いています。博士
課程の研究では、里山里海の理念に基づき、それが脆弱なコミュニティにおける持続可能性のために適用することができるかについて検討しました。
伝統的な社会、特に政変や法的問題、気候変動や地球温暖化、人口の変化、自然災害などによって負の影響を受けているコミュニティに対し、先住民
族が維持してきた自然と共生する伝統的な生活様式を維持し、かつ地域社会の持続的発展を担保する方法に焦点を当てた研究を行ないました。
Q3.
(本コース受講をもとに)どのような活動をお考えですか?(将来の夢などをお教えください)
A3.私の母国ガイアナでは9つのアメリカ先住民族が住んでいます。発展途上国として、人的資本はまだまだ不十分なので、私が持つ多面的な環
境において発揮できる能力は非常に重要となるでしょう。私は自らの多様な経験により、問題を様々な角度から検討することができるようになった
と思っており、常に持続可能性について意識しながら、将来のキャリアを歩んでいきたいと思っております。
29
▶ 平成
21 年 度 採 択 課 題
実 施 機 関 ▶ 横浜国立大学
リスク共生型環境再生リーダープログラム
留学生の受け入れ状況
2013 年3月現在
長期コース(修士課程)合計 13 名:中国6、ベトナム1、バングラディシュ1、ネパール2、スリランカ1、ナイジェリア1、イギリス1、
長期コース(博士課程)合計 33 名:韓国2、中国9、ベトナム2、ミャンマー8、バングラディシュ3、インド1、スリランカ3、イラン1、
クロアチア1、マダガスカル1、ガーナ1、シエラレオネ1、
短期コース(遠隔授業)合計 212 名:中国 41、フィリピン 28, ベトナム 37、タイ9、マレーシア 20、インドネシア 15、
マダガスカル 40、ケニア 22
目 的
多くのアジア・アフリカ諸国では経済開発とともに種々の生態リスクが拡大しつつある。しかし、その問題解決に当たっては、人間活動とリスク
との調和を図る技術開発とその応用が必要であり、リスクを単に低減させるという発想のみならず、経済発展と生態リスクとのトレードオフを重視
する「リスク共生」という新しい生態リスクマネジメントの手法と実践が重要である。
そこで本プログラムでは、リスク管理の統合的な理念・方法論を構築するとともに、具体的事例に立脚した生態系機能およびリスクの調査・解析・
評価を特に重視している。また、
「リスク共生」の基本的な考え方として、欧米的な価値観の押し付けではなく、アジア・アフリカ諸国に存在する多
元的な価値観と伝統知を尊重して、環境再生リーダーを養成する教育を行う。
目標(ミッションステートメント)
海外連携大学より短期コースに毎年3名ずつ受け入れる。本学大学院博士後期課程の学生が応募できる長期コースでは、8名(国内3名、国外
5名)ずつ受け入れ、実施期間中に短期コース 15 名、長期コース 24 名の修了生を養成する予定である。修了時に、
「環境再生リーダー認定証」を授
与する。育成された人材は、環境リスク管理のエキスパートとして日本国内のみならず、アジア・アフリカ各地の地域レベル、国レベル、あるいは国際
レベル(国連機関等)での環境問題に対して、具体的かつ実践的に問題解決できる人材として活躍が期待できる。
プロジェクトの状況
とアフリカの2カ国(マダガスカル、ケニア)と連携し、双方向の遠
アジア・アフリカにおける環境リスクの実態を把握し、環境再生
隔教育体制を構築する。遠隔授業の受講生のうち毎年1名を各大学
に取り組む環境リーダーを養成するために、本学の特徴を活かして
から日本に招へいし、短期間の研修コースを実施する。さらに、国際
3つの主要な教育カリキュラムを用意した。1)コア科目「アジア・
協力機構(JICA)、産業界、自治体、NGO 等との連携によって留学
アフリカにおけるリスク共生型環境再生」
、2)選択科目、そして
生教育の実効力と実践力を高める。アジア・アフリカ諸国における
3)フィールドワークを基盤とする論文作成である。平成 19 年度∼
現地実習やワークショップなどを実施することによって、実践教育
23 年度に行われた本学のグローバル COE プログラムの研究成果
の充実化を図る。
をフルに活用しつつ、平成 21 年度より新設された副専攻プログラ
ム「環境リスク学国際教育プログラム」
、さらには工学府および国
際社会科学研究科における2つの留学生教育プログラムを有機的に
連携して、英語による環境リーダー育成のプログラムを構築する。
海外連携大学との連携協力とともに、国連大学高等研究所(UNUIAS)、
(財)地球環境戦略研究機関(IGES)等の協力によってさらに
教育効果を高める。
特に注目すべき手法として、海外連携大学との間で世界初の「双
方向高画質(ハイビジョン)遠隔講義システム」を用いた教育を行い、
横浜国大で行われる英語講義を海外拠点校へ世界同時発信するシス
テムを実現させる。平成 21 年度より実施されている「国際シャト
ルベース事業−グローバルな人材の交流育成拠点形成−」
(国際戦
略室)のシステムをフル活用して、国際連携拠点校としてアジアの6
カ国(中国、フィリピン、ベトナム、タイ、マレーシア、インドネシア)
30
▶横浜国立大学
▶平成
21 年 度 採 択 課 題
金子 信博
実施機関の声
横浜国立大学大学院 環境情報研究院 Q1.本事業ではどのようなことに取り組んでいますか?
A1.本学では「リスク共生」の概念のもと、さまざまなリスクを調べ、対処する研究を盛んに行っています。そこで、環境リス
クに的を絞り、アジア・アフリカ地域における生態リスクと環境被害の拡大を防ぎ、環境を再生するための国際教育プログラム
を設置しました。このプログラムでは、アジア・アフリカの計8大学と、インターネットを活用した定期的な双方向型の遠隔授
業を行うとともに、年に一度、教員・学生を日本に招いての短期集中コースと組み合わせて、国際的な環境リーダーを養成しています。学内では、副
専攻プログラムとして全学の大学院生が履修可能であり、さらに単位互換をしている国連大学の高等研究所の修士コースの学生の履修可能となっ
ています。大学院の枠を越えて生態リスクとの共生を探っています。
Q2.講義やフィールド実習ではどのようなことに取り組んでいますか?
A2.独自に開発した遠隔授業システムで、本学を含め、計9拠点と同時に毎週火曜日に授業を共有
し、ライブで教員、学生が環境リスクについて討議しています。講師には本学教員だけでなく、企業、
NGO、そして国連大学や JICA などの国際機関から環境問題についてのさまざまな視点を持つ方を
お招きしています。さらに、連携大学から日本に招へいする短期集中コースでは、日本の環境技術や自
然共生的な生活を見学させるとともに、2011 年に起きた東日本大震災の被災地を定期的に訪問し、
復興の様子と問題点を体験してもらっています。
Q3.本事業による取組を今後どのように展開していきますか?
A3.本学では、「リスク共生学」の発展をめざして、高等研究院、リスク共生社会創造センターを設置し、研究面での充実を図りました。さらに、大
学院環境情報研究院に環境リスクマネジメント専攻、新規の学部として都市科学部に環境リスクを扱う専攻を設置予定です。このように、学内で、学
部から大学院、そして研究組織を整備し、一貫して「リスク共生学」を学び、研究する体制を整えました。この中で、環境リーダープログラムをモデ
ルとして、既存の連携大学に限らない展開を行っていきます。
受講生の声
荒井 見和
横浜国立大学大学院 環境情報学府 現在の所属:農業環境技術研究所 Q1.本養成コースを受講しようしたのはどのような理由からですか?
A1.学部生の頃より地球温暖化問題に興味があり、農地土壌への炭素貯留に関心を持つようになりました。国内外で同じ栽培
管理を行った場合、圃場整備など農地を取り巻く環境は大きく異なるため、様々な視点からの評価が必要だと感じていました。
他方で東南アジア地域では、農地開発によって森林面積が減少し、農地転換後は作物収量の安定性や農地として維持すること
の難しさから放棄地となってしまうことが問題となっています。そこで、アジア・アフリカ地域に重点をおいた環境リーダープ
ログラムを受講し、何が生じているのか、何が原因なのか、どうすれば問題を解決できるのかを、国内外のフィールド活動を通して考えてみたいと思
いました。
Q2.本養成コースで印象に残っていることは何ですか?
A2.環境リーダープログラムを受講して、国内外の調査に参加する機会をたくさん得ることができ
ました。フィールド調査での、提携大学の先生や学生と、調査地と自国の問題とを比較しながらの議論
は、大変貴重な経験となりました。特にマダガスカルの調査は、それまで私が漠然と持っていた人と自
然が共存するという概念を揺るがすものでした。調査で訪れた農村は、土壌侵食による多大な被害を
受けていました。土壌侵食の被害を軽減するためには、単独の事業として自然資源の保全を押し進め
るのではなく、社会の根底に存在する経済的な問題もあわせて解決する必要があると感じました。
Q3.
(修了生であれば)本養成コースで学んだことが、現在のお仕事に活かされていますか?
(現在受講生であれば)
、本養成コースで学んだことを、今後どのように生かしたいとお考えですか
(将来への夢 等でも結構です)?
A3.アジア・アフリカ地域におけるさまざまな問題を学び、以前より興味のあった地球温暖化問題に加えて食料問題にも興味を持つようになりま
した。現在は高 CO2 が農業生態系に及ぼす影響について調べるために、解放系水田での研究に携わっています。アジア・アフリカ地域でのイネの需
要は今後も高まると予想され、今後の環境変動がイネの収量や品質にどのように影響するのか、さらに温室効果ガスはどのような挙動を示すのか明
らかにして、将来の適応策を提示できたらと思います。
31
▶ 平成
21 年 度 採 択 課 題
留学生の声
▶横浜国立大学
Mohamad Raknuzzaman(モハメド ラックヌズマン)
横浜国立大学大学院 環境情報学府 Q1.日本に留学した理由あるいは目的、そして本環境リ−ダー養成コースに参加した
理由は何ですか?
A1.バングラディッシュ沿岸地帯の水環境における重金属汚染、公衆衛生に与える影響に強い関心を持っています。
日本は、現代社会におけるリスクの構造、社会的要因が与える影響を理解するための教育を提供できる技術的に高度な国で
す。そして、最新の研究設備・教育環境が整い、自身の研究領域に関する開発政策・戦略がしっかりしているため留学を決意し
ました。また、本学の養成コースは、遠隔講義システムを活用した国際教育が確立されており、世界的な視野と実践的アプローチにより、世界の環境
問題の側面、環境リスクマネジメントが学べ、生態学的な思考と、環境リスクへの理解を向上させるため非常に有意義であるため参加しました。
Q2.本環境リーダー育成コースに参加して、いかがでしたか?
(そのメリットや感想などをお教えください)
A2.環境リスクから自由になれない現代、急激な経済発展は、環境汚染、生態系サービスを低下させ、
更なる環境リスクの増加となっています。これは今やグローバルな問題へと変化しており、健全な生
活基盤を確保するためには、早急にこの深刻な環境問題を解決しなければなりません。この養成コー
スでは、問題解決に必要となる知識として、環境政策・制度の改善、教育と能力開発、持続可能性の推
進とリスク管理のための社会的能力アセスメント、都市の環境保全、環境リスクに対処するための廃
棄物管理におけるコミュニティの役割、土地利用変化の生態への影響、食糧の安全保障、災害と生活、
など学際的に学ぶことができました。
Q3.
(本コース受講をもとに)どのような活動をお考えですか?(将来の夢などをお教えください)
近年、
バングラデシュのような発展途上国において、
水環境生態系における重金属の蓄積が、
大きな問題となっています。
残念ながら、
一般的に、
A3.
このような厳しい健康リスクの問題に対する対応が進められていないのが現状です。
博士課程修了後は、まず、自国のいくつかの海岸において重金属汚染を低減するために、戦略的な政策展開をするため、研究に取り組む学生、政府、
準政府機関や NGO 等に、日本で学んだ知識や技術を普及したいと考えています。
32
▶平成
実 施 機 関 ▶ 東京農工大学
21 年 度 採 択 課 題
現場立脚型環境リーダー育成拠点形成
留学生の受け入れ状況
2015 年 12 月現在 中国(13 名)
、
ベトナム(6名)
、
タイ(6名)
、
ミャンマー(4名)
、
インドネシア(4名)
、
カンボジア(3名)
、
バングラデシュ(3名)
、
ガーナ(2名)
、マレーシア(2名)
、ウズベキスタン(2名)
、韓国(2名)
、ロシア(2名)
、モザンビーク(1名)
、ネパール(1名)
、
モーリタニア(1名)
、イラン(1名)
、アフガニスタン(1名)
、パレスチナ(1名)
、ベラルーシ(1名)
目 的
アジア・アフリカの環境問題の現場での地道な観測と、地域の住民との協働から、現場の課題を的確にくみ上げ、解決に必要なデータ・情報取得
や環境修復・保全のための知識や技術を用いつつ、それらを俯瞰的な視点から総合し、実効性の高い環境対策・政策を提言できる「現場立脚型環
境リーダー」を育成する。
目標(ミッションステートメント)
東京農工大学大学院の全組織(農学府・工学府・連合農学研究科)横断的に新設する教育プログラム(
「アジア・アフリカ現場立脚型環境リーダー
育成コース(通称 FOLENS コース)
」
)において、以下の人数を育成する。
長期コース:80 名(修士課程 48 名:日本人 24 名、留学生 24 名、博士課程 32 名:日本人 16 名、留学生 16 名)
短期コース:10 名(留学生 10 名)
プロジェクトの成果
を得て、2010 年はマレーシア、2011 年はガーナ、2012 年はベトナム、
大学院の全学府横断プログラム「アジア・アフリカ現場立脚型
2013 年はタイ、FOLENS のスタッフ(主に特任教員)がアレンジし、
環境リーダー育成コース(FOLENS)を設置し、アジア・アフリカ等
学生を引率して、実習を行った。さらに、実学志向の学生にはインター
19 ヵ国から留学生 56 名、日本人学生 42 名を受入れ、実践的共学的カ
ンシップを提供した。これらの実習、特に FOLENS オフィスアレンジ
リキュラムを提供し、現場での活動・調査に基づき俯瞰的な視野から
型の実習は現場体験と異分野交流の機会を学生に提供するものとな
環境問題解決をリードする環境リーダー 98 名を育成した。プログラム
り、このプログラム無くしては、学生が体験できなかったものであり、
の特色は以下の通りである。
高く評価される。さらに、これらの実習・インターンシップの参加者は
組織的には学府を横断した全学組織「環境リーダー育成センター」
「ポスト・フィールド報告会」
・
「ケース・スタディー・ワークショップ」
とアジア・アフリカ5ヵ国(ガーナ、
ベトナム、
マレーシア、
タイ、
中国)
へ参加することにより、個別の体験や地域での調査結果を相互に関連
への海外教育・研究拠点の設置、海外の学生の留学を本学の経費で支
づけ、俯瞰的な視野を養われている。成果の公表と活動への参加教員
援する ACE(Asia-Africa Clean Environment)奨学金の創設が特徴
と国内外の協力機関からの評価・提言をいただくために、国際シンポ
である。これらの仕組みを軸に、全学から 60 名以上の教員の協力を得
ジウムを毎年開催した。
て、農学分野(環境問題の実態とメカニズムの把握)
、工学分野(環境問
題対策技術)
、社会科学分野(環境問題の
原因の解明)に関する授業科目を全て英
語で提供してきた。座学よりも、
「環境計
測評価実習」
「
、グリーンテクノジー実習」
、
「国際環境農学課題別演習」
「FOLENS
セミナー」等の実習、現地見学、討論形
式の授業を重視している。大きな特徴は
海外フィールド実習と国内外インターン
シップである。海外フィールド実習は、修
士・博士論文研究型と FOLENS オフィ
スアレンジ型の2つのタイプを提供し
た。前者は、14 ヵ国で 20 回以上実施し、
確固とした専門性の上に俯瞰的に視野
を養う、T 字型の人材育成につながって
いる。後者は海外教育・研究拠点の協力
33
▶ 平成
21 年 度 採 択 課 題
▶東京農工大学
尾崎 宏和
実施機関の声
東京農工大学 環境リーダー育成センター Q1.本事業ではどのようなことに取り組んでいますか?
A1.教員、学生とも、様々な分野より集まる本プログラムで、「現場立脚型環境リーダー」とは何か、そうなるためには何が求
められるかという点を、皆でまず再考しました。もちろん、すぐに答は出ませんでしたし、完璧な結論は今も難しいと思います。
しかしそうした議論から、各自の専門分野と周辺の分野との関連を認識し、社会の中での位置付けや貢献の可能性を考えるこ
とが大切であるとの視点から、プログラム行事を運営するようになりました。これは、一専攻内で行うよりも、構成メンバーの専門分野が多様である
からこそ可能となるものだと思います。こうした考え方にもとづいて、担当した国内外の実習や講義では、主要なテーマに対して参加者の考え方や
アプローチの仕方も紹介してもらうよう心がけました。
Q2.講義やフィールド実習ではどのようなことに取り組んでいますか?
「環境計測評価実習」
(国内実習)では、専門性に関わらず共通すると思われる基本の再確認をひ
A2.
とつの柱としました。私自身の経験からも、基礎的事項であればあるほど、必ずしも理解が十分でな
い場合が多いためです。自分の研究室では聞くに聞けない質問も、多専攻の学生で学ぶからこそ質問
しやすいこともあったようです。
「海外フィールド実習」では、単に“行って測って考察する”のではなく、受け入れ機関との調整、
不慣れな土地での屋外計測と注意点、出国前の機材や物品の準備など、一連のステップを実習として
取り込みました。そして、先方協力大学と合同して開催する形式として、コアとなる現地環境問題に参
加者が各々の切り口からアプローチし、帰国前に全体を総括しました。これにより、従来的な、研究室
の指導教員と学生による個別テーマ型実習とは一味も二味も違った実習になったものと思います。
Q3.本事業による取組を今後どのように展開していきますか?
A3.環境問題に対して有意義な貢献のできる人というのは、諸問題が相互に関連性をもつという認識や、立場の違いに伴う利害の差異を推測する
こと、当事者意識をもち自身の日常との関わりを考えるなどの想像 (Imagination) 力が必要だと考えています。これは思いやりの心でもあるでしょ
う。これによって的確な環境対策を構築したり、理解を集める政策を提言したりするといった創造 (Creation) に繋がると思います。とはいえこうし
た能力は、
どのような分野でも、
中長期的な「現場立脚」経験を重ねてこそ育つものだと改めて感じました。今後も、
私自身がその意識を持ち続けて、
学生さんと接したり、自分の研究を進めたりしていきたいと思います。
受講生の声
牧田 朋子
林野庁(東京農工大学大学院 農学府物質循環環境科学専攻(修士課程)修了)
Q1.本養成コースを受講しようしたのはどのような理由からですか?
A1.環境問題に興味があり、本大学で学ぶうちに、様々な環境問題を改善するためには、時には地球規模で考える必要がある
こと、また、科学だけでなく、社会の仕組みや経済の問題にも働きかける必要があることを感じていました。環境リーダー育成
プログラムでは、様々な国や研究分野の留学生と共に、環境の問題について学ぶことで、新しい考え方に出会い、より理解を深
めることが出来ました。また、プログラムは全て英語で行われますが、将来環境問題に関わる仕事をする為には必要なスキルと
考えていたため、挑戦の意味でも受講を決めました。
Q2.本養成コースで印象に残っていることは何ですか?
A2.一つは、2010 年に名古屋で開催された生物多様性条約第 10 回締約国会議(COP10)に参加し、
状況を目の当たりにしたことです。
国際条約の持つ影響力や国どうしの交渉の難しさを感じると共に、
様々な国の NGO の方からお話を聞くことで、日本人の考え方・やり方だけでは解決出来ない問題の
多さを痛感しました。
二つ目は、海外フィールド実習で、アフリカのガーナに環境調査に行ったことです。水質や土壌汚染
についての科学的な分析だけでなく、実際に現場を見て、現地の住民や学生、現地で活動されている
JICA の方などからお話を聞いたことで、その地域が抱える環境問題について、大きな視野で捉えることが出来たと思います。
Q3.
(修了生であれば)本養成コースで学んだことが、現在のお仕事に活かされていますか?
(現在受講生であれば)
、本養成コースで学んだことを、今後どのように生かしたいとお考えですか
(将来への夢 等でも結構です)?
A3.私は現在農林水産省 林野庁に勤務しています。環境リーダーを通じて学んだ、一つの問題を様々な側面から見る事の大切さや、実際に現場に
行ってみる事の重要性は現在の仕事にも共通します。世界の森林はそれぞれ多様な問題を抱えていますが、やはりその背景には、経済や社会の問題
があります。例えば、日本の森林は古くから人の手が入ることで守り・育てられてきましたが、経済的な問題や山村地域の不便さなど、様々な問題か
ら、昔のように手入れするのが難しくなっています。その問題の一つ一つを理解し、解決するためには、やはり、実際に現場を見たり、現場の声を聞く
ことが重要です。論理的には正しい対策でも、現場では実行するのが難しいということが多くあります。
また、研究機関や異なる業界から出された意見も聞きながら、総合的な解決策を考えるのが、この仕事だと思っています。
34
▶東京農工大学
留学生の声
▶平成
21 年 度 採 択 課 題
Harakhun TANATAVIKORN(ハラクン タナタヴィコー)
東京農工大学大学院 工学府応用化学専攻(博士後期課程) Q1.日本に留学した理由あるいは目的、そして本環境リ−ダー養成コースに参加した
理由は何ですか?
A1.独自の文化と先進的な技術をもつ日本には以前から憧れていました。日本には豊富な知識と独自の思考があり、私にとっ
てそれらはとても興味深いものです。将来アジアでキャリアを積んでいくために準備するうえで、教育を完了する場として、日
本は素晴らしい国だと考えました。フィールドワークを強く重視する FOLENS プログラムを通じて、自身の教育を補完する多
様な経験を得ることができました。
Q2.本環境リーダー育成コースに参加して、
いかがでしたか?
(そのメリットや感想などをお教えください)
A2.FOLENS プログラムは、私が当初抱いていた全ての期待を満たしてくれました。プログラムを通じて、理論的知識と現場体験を得ることがで
き、それにより、私たちの社会が直面する環境問題について理解を深めることができました。また、FOLENS は、知識と体験だけではなく、様々な専
門分野の同じような考えを持つ人々と出会い、いろいろな国々の人と話し合う機会を与えてくれました。
Q3.
(本コース受講をもとに)どのような活動をお考えですか?(将来の夢などをお教えください)
A3.FOLENS プログラムで国内・海外実習を行い、廃棄物処理や再生エネルギーといった環境に密接に繋がる課題について、新しい考え方を知る
ことができました。講義、フィールドレポート発表会等により東洋と西洋を双方見るという貴重な経験を通じて得た大きな俯瞰力を、将来のキャリア
の中で活かしていきたいと考えています。日本が、
その独自の文化と先進的な技術にもとづき実現してきた環境問題に対する対策には驚かされます。
廃棄物を焼却により無害化処理して発電することや、東京湾に「埋立地」を造ってきたことなどはその一例です。
35
▶ 平成
21 年 度 採 択 課 題
実 施 機 関 ▶ 北九州市立大学
戦略的水・資源循環リーダー育成
留学生の受け入れ状況
2015 年 11 月現在 中国 19 名、インドネシア8名、ベトナム6名、モンゴル2名、アメリカ1名、バルバトス1名(計 37 名)
目 的
水資源・水環境と資源循環の問題と対策を俯瞰的に捉え、思考の基盤として理工学、環境管理学の専門知識と公衆衛生学、社会科学の素養を有
して行動するリーダーを年間 10 名程度育てる。環境リーダー候補者は、本学大学院が有する多様な選抜制度・奨学支援を活かして国内外の各層
から発掘する。育成においては、
「環境モデル都市・環境未来都市」北九州市の行政・企業が行う水・資源循環の場を活用し、過去の失敗経験の学
習、新旧技術の習得、現場での知識統合を通して養成学生の実践力を高める。修了後も国内外リーダーが引き続きこれらの事業に参画し、発展途上
国に適した環境対策と国内における技術開発を連携させ、お互いの地域の発展に資するための道筋をつける。
国外、国内の環境リーダーが連携することで、アジアを中心とする発展途上国の水や資源循環問題の改善に我が国の行政組織や企業が継続的に
関われる戦略的体制が構築され、その結果、発展途上国に環境改善の利益をもたらし、同時に北九州地域を中心に我が国の産業や市民活動が振興
され地域活性化が進む。
目標(ミッションステートメント)
<3年目>
到達レベル:企業、行政等の環境分野における中堅的役割
養成人数:修了生として国外リーダー5名、国内リーダー2名
活動内容:水・資源循環に関わる行政の企画立案、資源循環ビジネス、技術開発、市民参加型事業の企画立案等の修了生による新規援助事業の仲介等
修了後の支援措置:修了生の所在する発展途上国における水・資源循環セミナー開催、情報提供ホームページ開設、国内外
<5年目>
到達レベル:企業・行政等や大学・研究機関の環境分野における基幹的ないし中堅的役割
養成人数:修了生として国外リーダー 21 名、国内リーダー6名
活動内容:3年目段階に加え、大学・研究機関における理工学および環境管理研究の実施等
修了後の支援措置:3年目段階の措置を継続
プロジェクトの状況
る候補生誘致を推し進めた。その結果、現地政府による若手研究者の
プロジェクト補助事業期間終了までに、養成人数の目標であった
育成計画への参画や国際共同研究、開発した技術の事業化へとつな
27 名(国外リーダー 21 名、国内リーダー6名)を大きく上回り、
がり、これがさらに現地政府奨学生、文部科学省国費奨学生、私費留
47 名(国外リーダー 28 名、国内リーダー 19 名)を輩出した。また、
学生の継続的な入学へとつながっている。図にベトナムにおける展開
博士前期課程プログラムに加え、博士後期課程プログラムを整備し
例を示す。
た。補助事業期間終了後には、プログラ
ムの対象となる学生の専門分野を建築
学や生命化学まで広げ、履修対象科目
を一部追加するなど、大学院での研究動
向と連動してプロジェクトを継続・展
開している。現在、国外リーダー候補生
37 名、国内リーダー候補生9名が当プ
ログラムを履修している。
本プログラムを初期に修了した者や
社会人として学んだ者は、企業、行政機
関や大学・研究分野における基幹的な
いし中堅的役割を果たし始めている。
本プロジェクトをきっかけとして、環
境分野における本学と北九州市の優位
性の紹介を様々な経路で行い、ベトナ
ム、インドネシア等の国々との学術交流
海外連携の展開(ベトナム)
や協定の締結や、短期研究招聘などによ
36
▶北九州市立大学
▶平成
21 年 度 採 択 課 題
加藤 尊秋
実施機関の声
北九州市立大学 国際環境工学部 准教授 Q1.本事業ではどのようなことに取り組んでいますか?
A1.本事業では、北九州市立大学の博士前期および後期課程において、これまで、水および資源循環の問題に興味を持つ
16 カ国の留学生 90 名と日本人学生 41 名が学んできました。環境未来都市である北九州市、および東南アジアを中心とする海
外の実習フィールドを活用し、環境国際協力に重きを置く北九州市の政策と連動した教育を行いながら環境技術者、および政
策担当者としての実践的な能力を強化しています。教育の最終段階では、環境分野で実績のある外部専門家を交えた討議を通じ、環境リーダーとし
てどう活動するか、明確な道筋を示せた学生にプログラム修了証を授与しています。
Q2.講義やフィールド実習ではどのようなことに取り組んでいますか?
A2.講義では、環境に対する基本的な考え方を身につける「環境原論」をはじめ、水・廃棄物処理
分野を中心に技術者・政策担当者としての能力を磨くための科目が 42 科目(うち博士前期 23 科目、
博士後期 19 科目)そろっています。発展途上国の現場での水・資源循環促進を意図した「省資源衛
生工学(同特論)
」など、特徴的な科目も充実しています。
フィールド実習は、北九州および東南アジアを中心に行っています。とくに、ベトナムでは、ダナン
大学、日本企業等と連携した省資源型下水処理プラントを用いた実習や、養豚農家との連携による食
品残渣処理のフィールドワークなど、多彩な活動をしています。受講生にとっては、理論と現実の関係
を考え、実践的な力を鍛える貴重な場となっています。
Q3.本事業による取組を今後どのように展開していきますか?
A3.上述のベトナムでの活動に加え、モンゴル・ウランバートル市の室内外の大気汚染改善、イン
ベトナムの小学校での環境教育実習
ドネシアの小学生向け環境教育など、本事業の修了生・受講生が重要な役割を果たす国際環境プロ
ジェクトが動いています。北九州市や JICA 九州と連携しつつ、これらを新たな実習の場として取り
込み、受講生の能力向上に活かします。
現在、ベトナムやインドネシアを中心に、高度な環境技術者・研究者の育成ニーズが高まっており、本事業においも、現地の大学や行政機関、北九
州市や日本企業と連携して、実践的な活動の中でこれらの人材を養成するしくみを作りつつあります。
修了生の声
姫嶋 恵里(2014 年3月修了生)
独立行政法人 環境再生保全機構 Q1.本養成コースを受講しようしたのはどのような理由からですか?
A1.日本だけでなくアジア各国の現状や対策を、講義や海外インターンシップ等を通して学ぶことができるため、学術的な知
識だけではなく、幅広い視点から環境問題について考察する能力が得られると考えたからです。また本コースは、大変多くの留
学生が受講するため、これまで日本人としか接する機会がなかった私にとって、留学生とともに学ぶことは、将来的により広い
人的ネットワークを構築できると思ったためです。
Q2.本養成コースで印象に残っていることは何ですか?
A2.ベトナムのダナン市でのインターンシップです。ダナン大学との連携により、ダナン市での都市厨芥リサイクルについて現地調査を行うこと
ができ、現在の課題や求められる対策などについて研究することができました。現地の学生や留学生と接することで、人的ネットワークの形成や環
境問題の多様性への理解を深め、多角的な視点を得ることができました。
Q3.本養成コースで学んだことが、現在のお仕事に活かされていますか?
A3.環境再生保全機構の事業は多岐に渡り、環境省をはじめとする主務官庁、地方公共団体、産業界、医療機関、NGO・NPO など多くのパートナー
の方々との連携により成り立っています。日々の業務に携わる中、本コースで培ってきた経験、特に環境問題の多様性への理解と、人的ネットワーク
の形成能力が役立っていると感じています。今後もこれらの経験を生かして、環境行政の円滑な推進に貢献していきたいと思います。
37
▶ 平成
21 年 度 採 択 課 題
留学生の声
▶北九州市立大学
北九州市立大学 大学院国際環境工学研究科 環境システム専攻
環境資源システムコース 博士前期課程
Vuong Thi Huyen (ヴォン ティ フェン)出身国:ベトナム
Q1.日本に留学した理由あるいは目的、そして本環境リ−ダー養成コースに参加した
理由は何ですか?
A1.高校生のときに自分の将来ビジョンを考える機会があり、周囲から信頼されて役立つ人間になることを自らの目標に設定
しました。これを実現するために日本への留学を決めました。日本は環境改善の技術をはじめとして様々な高度なテクニックを
持つ国なので、日本で学ぶことで信頼できる人材に成長し、将来はアジア全体で活躍できるようになると考えたわけです。
北九州市はとりわけ、工場からの排水による水質汚染を官民一体で解消してきた実績があり、今では環境モデル都市という世界でも先進的な存在
になっています。そのような地において、環境資源システムを専攻とし、水・資源循環をテーマに環境技術を広く深く探究しながら、様々な国からの
留学生たちと英語で交流ができる環境リ−ダー育成コースに魅力を感じ、参加することにしました。
Q2.本環境リーダー育成コースに参加して、
いかがでしたか?
(そのメリットや感想などをお教えください)
A2.環境リーダー育成プログラムは国内外に環境リーダーを発出することで、途上国と日本で協同的・持続的な発展を導くことを目的としていま
す。本プログラムに参加して、いろいろな環境技術や知識を基礎から勉強しました。そして、修得した技術を実際にアジアの現場で応用し、データの
採取と現地実験室で共同して解析するなどのインターンシップは、通常の大学院のカリキュラムだけでは学ぶことのできない貴重な体験となりまし
た。日本人や海外の学生と交流するにつれて日本を含めた様々な国の環境問題を解決する訓練となりました。コースの日本人学生や留学生たちとの
交流を通して、文化をはじめとして国際交流ができ、非常に勉強になりました。
Q3.
(本コース受講をもとに)どのような活動をお考えですか?(将来の夢などをお教えください)
A3.共同研究成果をアジアの現場で応用し、データの採取と現地の実験室で解析するインターンシップに参加しました。その経験を通して、様々な
国の環境問題を解決できる人材になりたいという夢が更に膨らみました。ベトナムをはじめとしていろいろな国に日本で勉強した知識や技術を提供
することで、その国の活性化や循環型社会の形成に貢献できる分野で活躍していこうと思います。また、各国で活躍していく環境リーダー仲間との
ネットワークを生かし、より広い視野で問題の本質を掘り下げていきたいです。
38
▶平成
実 施 機 関 ▶ 九州大学
22 年 度 採 択 課 題
東アジア環境ストラテジスト
育成プログラム
留学生の受け入れ状況
2015 年 11 月現在 ベトナム(15 名)
、
中国(11 名)
、
アフガニスタン(6名)
、
ミャンマー(4名)
、
インドネシア(4名)
、
マレーシア(4名)
、
タイ(3名)
、
フィリピン(2名)
、
ラオス(2名)
、
バングラデシュ
(2名)
、
ネパール(1名)
、
シエラレオネ(1名)
、
カンボジア(1名)
、
チェコ
(1名)
目 的
本プログラムでは、九州大学東アジア環境研究機構が主体となり、東アジアの連携校、国際研究機関、企業との連携のもと、環境問題に関する体
系的なカリキュラム、実践演習、研究指導からなるプログラムを設置した。本プログラムで育成される人材は、自然科学から社会科学に亘る幅広い
知識を習得するとともに、東アジア環境研究機構が進めている国際共同研究プロジェクトや国際機関へのインターンシップを中心とする演習によ
り、実践的な問題解決能力を身につけることができる。留学生への支援策として、既に獲得している他の競争的資金や企業からの寄付金を利用した
独自の奨学金制度を整備した。
目標(ミッションステートメント)
本プログラムにおいて育成する環境リーダーは、東アジアで発生している環境問題の実情、対策技術、制度等に関する幅広い知識を有し、国際的か
つ戦略的に問題解決に当たることができる環境スペシャリスト(環境ストラテジスト)である。本プログラム修了者は、行政、研究機関、企業において
指導的な立場で環境対策を立案することが期待される。環境ストラテジスト育成の目標人数として、博士課程の大学院生を毎年5名、修士課程の大
学院生を毎年 10 名、基本コース(1年間)の大学院生を毎年5名受け入れる。3年間で 45 名、5年間で 70 名を育成することを目標とした。
プロジェクトの状況
本プログラムは、実施機関の東アジア環境研究機構長である総長と、
本プログラムでは、東アジア環境ストラテジストが有すべき4つの
副機構長(理事・副学長)のもと、本機構の教育、研究の企画・運営を
柱となる能力(環境知識、環境評価、環境技術、環境戦略)の育成(図1)
指導した。東アジア環境研究機構の実務を担当する「プロジェクト推
に必要なカリキュラム体系を検討し、新規に9つの科目を開講した(そ
進室」には、
「東アジア環境ストラテジスト育成支援室」と、
「東アジア
の後2科目追加して 11 科目に拡大)
。新規に開講した科目を、
「コアカ
。東アジア環境ストラテジスト育
環境研究支援室」とを設けた(図2)
リキュラム」と呼び、
必修科目または選択必修科目として位置づけた。
成のための教育・研究指導には、全学の研究院から教員が参画し、東
本プログラムの修了のためには、これらコアカリキュラムの必修科目、
アジア環境ストラテジスト育成支援室の特任教員と連携して講義や演
選択必修科目を受講して単位を取得する必要がある。必要単位数は後
習を担当した。東アジアの環境問題に関する知識と経験が豊富な研究
述する教育コースによって異なり、コアカリキュラムのほかに学生の専
者が、東アジア環境ストラテジスト育成プログラムの講義、及び同プロ
門分野に応じた6科目を「推奨科目」として、指導教員の指導の下に
グラムを履修している学生(育成対象者)の修士論文研究、博士論文研
履修することを推奨した。
究の指導を担当した。
図1 環境ストラテジストとして育成する人材像
図2 東アジア環境ストラテジスト育成プログラムの実施体制
39
▶ 平成
22 年 度 採 択 課 題
▶九州大学
島岡 隆行
実施機関の声
九州大学大学院 工学研究院環境社会部門 教授 Q1.本事業ではどのようなことに取り組んでいますか?
A1.本事業では東アジアで発生している環境問題の実情、対策技術、制度等に関する幅広い知識を有し、国際的かつ戦略的に
問題解決に当たることができる環境スペシャリスト(東アジア環境ストラテジスト)を育成しました。東アジア環境研究機構の
東アジア環境ストラテジスト育成支援室が主体となり、連携校、国際研究機関、企業との連携のもと、環境問題に関する体系的
なカリキュラム、
実践演習、
研究指導からなる教育プログラムを実施しました。本プログラムの実施期間中、
予定
(85 名)
を上回る計 89 名の履修生
(外
国人留学生 57 名、日本人学生 32 名)を受け入れ、国籍もベトナム、中国、アフガニスタン、ミャンマー、インドネシア、マレーシア、タイ、フィリピン、
ラオス、バングラデシュなどアジア諸国を中心に 15 カ国に及びました。
Q2.講義やフィールド実習ではどのようなことに取り組んでいますか?
、環境評価」
「環境技術」
、
そして「環
A2.本プログラムの特徴である4つの基本的な能力「環境知識」「
境戦略」を習得させるため、実戦的な 11 の教科を開講し、すべて英語で講義しました。新たに開講し
た講義・実習は「東アジア環境概論」
、
「環境システム分析論」
、
「環境ソリューション学」
、
「環境の社会
経済分析」
、
「フィールド環境質分析」
、
「同実習」
、
「環境プロジェクト・マネジメント」等です。長期コー
スの博士および修士課程の学生には、
「環境・公害原論演習」として、他大学(東京大学、熊本大学、
北九州市立大学、筑波大学、岐阜大学)の環境リーダープログラムと共同して、水俣病に関るフィール
ド演習(約1週間)を行いました。同コース修士課程の学生には「東アジア環境プロジェクト演習」と
してスリランカ、ベトナム、ネパール、バングラデシュでの海外演習を行いました。同コース博士課程
の学生には「東アジア環境インターンシップ」として学生ごとの2∼3か月の海外インターンシップ
を義務づけました。これまで学生を国連人間居住計画、国連アジア太平洋経済社会委員会、地球環境
センター、各国の環境センター・防災センターなどへ派遣しました。
Q3.本事業による取組を今後どのように展開していきますか?
A3.平成 27 年度以降も、本事業の取組である東アジア環境ストラテジスト育成プログラムの実績を引き継ぎ、培った教育のノウハウを活かしな
がら、本プログラム運営に関与してきた関連学府と協同して学府の専攻科目等をコアカリキュラムとして開講・実施する予定です。これらの科目の
受講により、環境知識、環境技術、環境評価、環境戦略について、様々な学府の学生が学修でき、基礎的能力、現場対応力、実績的能力を身につけるこ
とができると考えます。また基礎テキストとして、本事業の実績を踏まえて作成した 「東アジア環境学」 入門を使用します。
受講生の声
小楠 裕也
九州大学大学院 工学府 都市環境システム 工学専攻・修士課程 Q1.本養成コースを受講しようしたのはどのような理由からですか?
A1.私は大学で土木を学び、研究室に配属されてからはごみに関する環境問題について研究を行ってきました。その過程で、
環境問題に取り組む際には幅広い視野と知識が必要であること、また海外での需要も増えているため海外の制度や文化の知識
や理解が必要であることを感じました。そのため、日本だけでなく様々な国籍の学生が参加し共に環境分野の授業を受け、議論
を行うことのできる本養成コースは、将来環境問題に取り組む上で重要な経験ができると考えました。また、私は大学に入学す
る前から海外で働きたいと考えていました。そのため、授業がすべて英語で行われ、海外での研修やサマースクールがある本養成コースに参加する
ことで自身の英語力やコミュニケーション能力を鍛えたいと考え、参加を決意しました。
Q2.本養成コースで印象に残っていることは何ですか?
A2.本育成コースで最も印象に残っているのは、バングラデシュでの海外演習です。現地の学生や
他国の学生とともにグループワークを行い、ハザリバーグ地区の再開発計画について議論しました。
私は土木科の学生なので環境関連施設を担当したのですが、参加した学生の多くは建築科の学生で
ごみや下水について認識が異なっていたので、施設の機能や重要性を英語で説明し理解してもらう必
要がありました。私は土木科の学生と建築科の学生の調整役になったのですが、施設の機能に関する
認識が異なるだけでなく、言葉の問題もあり調整にかなり苦労しました。これらの経験から、グループ
内で共通の認識を持つ重要性やそれを得るために的確に説明を行うことのできる会話力や表現力の
重要性を学びました。
海面処分場を模擬した海水中への
焼却残渣投入の公開実験
40
▶九州大学 ▶ 平 成
22 年 度 採 択 課 題
Q3.
(修了生であれば)本養成コースで学んだことが、現在のお仕事に活かされていますか?
(現在受講生であれば)
、本養成コースで学んだことを、今後どのように生かしたいとお考えですか
(将来への夢 等でも結構です)?
A3.私は、大学を卒業後プラントメーカーに就職し、国内外でごみ処理施設の建設、運営に携わります。私の希望として将来は発展途上国で仕事を
したいと考えており、その際は本養成コースでの授業や演習で得られた環境問題に関する様々な知識やグループワークでの経験、英語でのコミュニ
ケーション能力は海外の環境問題を解決するうえで必ず役に立つと思います。また、本養成コースでは大学だけでなく様々な環境関連機関の方々が
講義をしてくださいました。将来、私が国内外で経験を積んで環境問題に関して十分な知識と経験を得ることができましたら、本養成コースで講義
をしてくださった講師の方々と同じように若い人に環境問題について伝えていきたいと思います。
留学生の声
Nag Mitali(ナグ・ミタリ)
九州大学大学院 工学府 都市環境システム工学専攻・博士課程 Q1.日本に留学した理由あるいは目的、そして本環境リ−ダー養成コースに参加した
理由は何ですか?
A1.私はかねてより研究のキャリアアップのために海外での研究に興味がありました。そのため、私は学部4年生の頃から
いろいろな国の教育システム、研究、技術、文化、安全性といったものを学んできました。そのなかで、日本は私が求めるハイ
レベルの研究水準と高い技術力をそなえた最適な国だったのです。色々な言語を学んだ研究のほかにも、日本の文化は他国
とはかなり異なりました。博士後期課程(PhD)の研究を始めてまもなく、私は国際環境リーダープログラムである「東アジア環境ストラテジス
ト育成プログラム(EAESTP)
」を知り、とても魅力的に感じ興味をもちました。このプログラムは系統的なカリキュラムが組まれ、実践的なセミ
ナーや国際協同による環境問題の研究指導が組まれており、私の将来のキャリアにとって大変重要となる環境スペシャリストになることができ
ると考えたからです。
Q2.本環境リーダー育成コースに参加して、
いかがでしたか?
(そのメリットや感想などをお教えください)
A2.本プログラムの経験を共有できることを非常に嬉しく思っています。講義、実習、プロジェクトマネジメントトレーニングを通じて非常に多く
の環境問題の知識を得ました。また、EAESTP により開催された国際シンポジウムでは世界中の若い研究者と交流することができ素晴らしい経験
でした。サマースクールプログラムでは外国の学生とグループワークを行い、彼らの考えを知り、様々な施設を見学することができ、貴重な体験をし
ました。インターンシップではインターンとして組織で働く機会を得、プロジェクト参加を通じて組織の活動及びその管理体制について知ることが
でき、非常に良い経験を得ました。本プログラムは環境ストラテジストになるための全ての重要な関心事、例えば環境汚染、経済、分析、持続可能な
社会への問題解決等、を網羅していると思います。
Q3.
(本コース受講をもとに)どのような活動をお考えですか?(将来の夢などをお教えください)
A3.将来は優れた研究者と同時に環境ストラテジストになりたいと思っています。EAESTP プログラムで得た知識を自分の国と同様に他の国へ役
立てることができればと願っています。このことは、私の優れた研究者になるという将来のキャリアの構築に役立ち、また、自国だけでなく他の国々
の多くの環境問題を解決できると信じています。私たちは本プログラムにて、どのように環境専門家/ストラテジストになるのかの教育を受けたの
で、これらの知識を環境状況が心配される発展途上国に適用することが最も重要だと考えます。私の知識を特にこれらの国々の持続可能な社会を作
るために適用できればと願っています。
41
▶ 平成
22 年 度 採 択 課 題
実 施 機 関 ▶ 静岡大学
生態系保全と人間の共生・共存社会の
高度化設計に関する環境リーダー育成
留学生の受け入れ状況
2015 年 11 月現在 バングラデシュ(8名)
、ベトナム(6名)
、中国(4名)
、タイ(4名)
、モーリシャス(3名)
、フィリピン(2名)
目 的
本拠点は沿岸、陸域生態系危機・ダメージを保全・修復・再生し、サステイナブルな共生型社会構築に向けた環境リーダーの育成が目的である。
「長期コース」と「海外短期コース」の両方からなる。
長期コースは博士課程に属し、高度な学位(博士)研究を外部専門家を含めて指導する。海外短期コースはアジア・アフリカ諸国で実際に生じて
いる生態系とその関連する環境問題を把握し解決のため海外フィールド実習・講義を通じて育成する。
目標(ミッションステートメント)
3年目:環境リーダー 21 人 環境マイスター 60 人
問題解決型の提案・政策を国内外に学術機関等に提示できる能力を有するリーダーを育成する。
5年目:環境リーダー 35 人 環境マイスター 100 人
国際的評価が得られる国際ワークショップを開催し、環境生態系が本来の姿を取り戻すためのリーダーとなりうる人材を育成する。
プロジェクトの状況
外目標 25 人、
実績 27 人、
国内目標 10 人、
実績 15 人、
基本コース(海
拠点運営会議、アジア・アフリカ環境リーダー育成支援室を設置し、
外短期コース)目標 150 人、実績 418 人でいずれも目標を上回った。
創造科学技術大学院の教授会等と連携し、本プロジェクト独自の自然
現在長期コースに国外 11 人、国内6人の博士学生が在籍している。
科学系5教科の講義科目を創造科学技術大学院の共通科目として単
長期コース修了国外 14 人、国内5人、基本コース 418 人で5年間の
位化した。教育プログラム、教育の質の向上に関しての状況把握・改
実施計画に掲げる育成人数の目標に対し、長期コース(博士)の受入
善を行った。定期的に外部評価委員会の評価を受け、国際会議発表機
者数は留学生、日本人とも目標を達成している。
会の確保などの改善を図った。2015 年 11 月現在、長期コース受入国
環境リーダー育成システム
環境リーダー育成プログラム
42
▶静岡大学 ▶ 平 成
実施機関の声
22 年 度 採 択 課 題
静岡大学創造科学技術大学院 グリーン科学技術研究所
教授
Beatriz CASARETO(ベアトリス カサレト)
Q1.本事業ではどのようなことに取り組んでいますか?
A1.アジア・アフリカ諸国においては、開発に伴う生態系の破壊や環境汚染、地球温暖化等による急激な環境変化(海面水位
の上昇、異常気象等)により、社会システムが大きなダメージを受けています。生活や産業の成長の重要な基盤は、環境(水質・
土壌・大気と生態系)の安定的維持が不可欠です。プログラムは、3年間の博士課程(長期コース)と 180 時間の海外でのフィー
ルド実習と現地の研究者・行政・学生との交流を行う海外短期コースの二つを実施しています。学生自身が実践的な英語力や企画力や技術解析能
力を身につけるための特別研究・英語での討論会や外部識者による国際環境論・英語の海外双方向授業・学生企画セミナー・インターンシップ・
海外実習・国際シンポジウム・広報等に取り組んでいます。
Q2.講義やフィールド実習ではどのようなことに取り組んでいますか?
A2.物質循環環境論、海洋生態系論、地球環境システム工学、環境倫理等の環境関連の科目の講義を英語で行うが、学生たちとの対話による授業
を重視しています。年間5∼6人の外部学識者(世界銀行・国連大学、三菱商事等)による国際環境論の講義により、学位取得後の就職等へのガイダ
ンスを実施しています。フィールド実習は国内外のマングローブ・サンゴ礁等での問題解決のための、フィールド場の選択方法、試料採取、処理等や
再生管理の技術・知識や砂漠・半乾燥地域での森林再生・二酸化炭素削減技術・評価の解析、大気汚染・水質汚染の調査研究・対策手法等に関す
る現場対応実践型のフィールド授業を実施しています。事前に自分で試料採取、処理等の道具や試薬を準備させています。
Q3.本事業による取組を今後どのように展開していきますか?
A3.大学内の支援運営体制の恒常化、環境リーダー関連授業のフエ科学大学、モーリシャス大学との単位互換と双方向授業の強化、海外実習や国
内外でのインターンシップ、現地社会との交流事業の遂行、学位修了後の留学生の支援体制(財政とインフラ)の強化を、海外の日本企業との連携に
よりさらに進めていきます。我が国の成長戦略にリンクさせていく環境リーダー修了生のネットワークの確立を推進します。上記の連携以外に、中国
国内8大学とのネットワーク、タイでの共同実習等の共同事業を恒常的に推進します。学生を真のリーダーにするためには、長期コースの3年だけの
教育でなく、継続的支援体制を確立することが重要です。
受講生の声
大島 卓之
静岡大学創造科学技術大学院 バイオサイエンス専攻 2015 年3月修了 Q1.本養成コースを受講しようしたのはどのような理由からですか?
A1.研究内容を環境保護に役立てるために環境問題について学びたいと思ったからです。環境保護に取り組む方を招いた講
義や環境分析の会社へのインターンシップなど環境問題に関して実践的な知識を得られると考えました。さらに海外の大学や
環境教育について知ることができるアジアやアフリカでのフィールドワークに魅力を感じました。また、海外からの留学生との
交流を通じて英語を使えるようになりたいという気持ちがあり、さらに専門分野の異なる学生達とのセミナー等を通してプレ
ゼンテーション技術の向上や普段の研究活動で狭くなりがちな視野を広げることができると考えました。
Q2.本養成コースで印象に残っていることは何ですか?
A2.海外でのフィールドワークです。1年目にモーリシャスに行き、2年目にタイに行きました。モーリシャスでは自然の美しさに圧倒され、生物の
多様性を生み出すサンゴ礁の重要性について学ぶことができました。タイでは1年目よりも英語が上達していたこともあり、一緒に行った留学生や
現地の学生との交流を楽しむことができました。また、本養成コースでは海外の大学から先生や学生を招いた国際シンポジウムなど英語でプレゼン
テーションを行う多くの機会がありました。そのための準備は大変でしたが英語で話すことだけで精一杯な状態から回数を重ねるごとに質問の受け
答えなどが鍛えられていることを実感することができました。
Q3.
(修了生であれば)本養成コースで学んだことが、現在のお仕事に活かされていますか?
(現在受講生であれば)
、本養成コースで学んだことを、今後どのように生かしたいとお考えですか
(将来への夢 等でも結構です)?
A3.私は現在、特許事務所において特許に関する日本語文書作成と英語文書の翻訳をしております。特許の仕事は、海外から依頼された仕事が多
く、英語を読まない日はないという環境です。将来、一人前になれば、顧客と直接やりとりしていくことになり、英語で意見を伝える力も必要となり
ます。海外からの案件は、基本的にメールでのやりとりになりますが、本養成コースで経験した英語でのコミュニケーションを生かすことができると
考えております。また、特許の仕事は、全ての産業分野にわたり、専門外のジャンルも理解する力が要求されます。本養成コースでは、環境保護に関
するセミナーやフィールドワークを通して、様々な分野の研究や活動を知る多くの機会を与えていただきました。これらの経験は、現在の仕事をす
る上で大きな力となっております。
43
▶ 平成
22 年 度 採 択 課 題
留学生の声
▶静岡大学
静岡大学創造科学技術大学院
環境・エネルギーシステム専攻 2013 年9月修了
Nguyen Thi Thuy(グイエン テイ トウイ)
Q1.日本に留学した理由あるいは目的、そして本環境リ−ダー養成コースに参加した
理由は何ですか?
A1.日本に留学した目的は大きく分けて2つあります。1つは最先端の技術を学べるということ、もう1つは安全で綺麗な
国であるということです。母国ベトナムでは、日本は留学先として大変人気があり、多くの学生が留学を希望しています。日
本は世界でも有数の技術を持っており、さらに他国に比べ治安が良く、安心して研究に集中ができると思うからです。静岡大
学の環境リーダー育成プログラムについて興味を持ったのは、母校の指導教員から勧められたことがきっかけでした。アジア・アフリカの国々の
環境リーダーを育成するために設立され、環境問題の中でも特に、持続可能な開発のための沿岸域や陸域生態系の保全を重要視していると聞き、
魅力的に感じました。
Q2.本環境リーダー育成コースに参加して、
いかがでしたか?
(そのメリットや感想などをお教えください)
A2.研究における環境はとても親切で寛容でした。大学での授業に加え、企業や研究機関でのインターンシップも参加でき、研究の仕方から社会に
おけるコミュニケーションのとり方まで、豊富な経験ができました。教授や専門家による講義からも、環境のためにどのようなことをしているか実用
的な情報を得ることができました。
これらの講義を通してモチベーションが高まり、
責任感が増しました。
月に一度開催されるELSUセミナーからは、
自分の研究に集中するだけでなく、パートナーからも学ぶことができました。生活面と研究面でも先生方、スタッフ、同じプログラムの学生から常に
勇気づけられ、サポートしてもらい、家族のように感じています。おかげで研究に集中することができました。
Q3.
(本コース受講をもとに)どのような活動をお考えですか?(将来の夢などをお教えください)
A3.母国ベトナムへ戻り、職場であるフエ科学大学において講師として、日本で学んだ技術や知識を学生に伝え、生かしたいと思います。そして今
後も発展国から豊富な技術や知識を得たいと思います。特に私の研究テーマである、ベトナム北部の河川での、鉱業による重金属汚染についても研
究を続け、母国の環境問題解決に貢献したいと強く思っています。
日本で得た知識や技術や経験と人間関係を今後も恒常的に維持し、ベトナムやアジアでの日本との連携・交流をさらに深めて行く予定です。将来
は、アジアでの他の国の環境問題解決のための、若手の人材育成事業にも貢献したいと思います。本コースの受講は環境問題に取り組む新たな可能
性を与えてくれました。
44
▶平成
実 施 機 関 ▶ 慶應義塾大学
22 年 度 採 択 課 題
未来社会創造型環境イノベータの育成
留学生の受け入れ状況
修士コース モザンビーク:1名、中国:3名、ケニア:1名、インドネシア:2名、モンゴル:2名
基本コース インドネシア:5名
博士コース 韓国:1名、インドネシア:1名
目 的
本事業はアジア・アフリカ地域において、地球環境と調和のとれた開発と発展を実現し、気候変動リスクに適応した未来社会創造型の国際的環
境イノベータの育成拠点を形成するものである。国際リーダー育成システムでは、独自の奨学金制度・研究資金制度・チューター・英語インター
ンなどを活用して、万全な支援体制を確立し、日本人学生と留学生が共に研究できる国際性豊かな育成環境を提供する。環境リーダー育成プログ
ラムでは、英語のみで学べる一年基本コースと、長期コース2年修士課程と3年博士課程を提供する。プログラムを修了した学生は、分野横断的専
門知識と実践的研究経験を持ち、ビジネスの起業家やマネジャー、空間デザイナーやプランナーなどの専門家として、またはグローバルリーダーや
コミュニティリーダーとして活躍することが期待される。
目標(ミッションステートメント)
実施期間終了時の本事業自体の目標としては、第一に育成プログラムが完成され、育成システムが安定的に運営されていることであった。また博
士課程修了生は自立的に研究し、国際学会で1回以上の発表と2本以上の査読論文(うち1本外国語)があり、学位取得基準をクリアしていること、
修士課程学生は1回以上の国際学会発表を行っており、修士卒業生は社会起業や環境ビジネスなど民間企業や組織で活躍し、博士学位取得者はポス
トドクター、助教、政府や国際組織、企業、NPO などで活躍することが目標である。
プロジェクトの状況
本事業との連携によって相乗効果をもたらした。さらに、2014 年に文
修士コースに関して、受入と修了の実績はともに概ね目標を達成し
部科学省グローバルアントレプレナー育成事業(EDGE Program)を
た。国外育成者数は目標をやや超過し、国内育成者数は目標をやや下
申請し、採択された。同事業は本学システムデザイン・マネジメント研
回っている。基本コースはインドネシア・リンケージプログラム(IL)と
究科(SDM)および理工学研究科の共同事業で、PBL とデザイン思考
ダブルディグリー校から学生を受け入れている。博士コースに関して
によるアントレプレナーの育成事業が目的である。このような活発な
は、受入実績は目標の 60% にとどまったが、2013 年にリーディング大
横への展開は教員・学生の環境意識、イノベーション意識、国際意識の
学院事業が始まってから、同事業との連携による工夫に努め、受入者を
変化の表れであるといえる。
増やすことができた。全体として、多様な分野の学生を受け入れられる
本事業の取り組みは UNEP/APAN を通して海外でも高く評価さ
ために目標人数を多めに設定していたため、それに伴い、育成プログラ
れている。APAN 東南アジア地域ノードとして選ばれた SEARCA
ムと育成システムの構築の業務が大きな負担となった。事業立ち上げ
(Southeast Asian Regional Center for Graduate Study and
時、想定外のことが起き対応が厳しかったが、概ね目標を達成したと自
Research in Agriculture)と MOU を結び、東南アジア8カ国の大
己評価する。
学院においてイノベータ教育に協力した。また、本事業は国連地球
本事業のプログラムが中心となって立ち上げた 3.11 プロジェクト
環 境 変 化 の 人 間 計 画(IHDP: International Human Dimensions
が契機となり、キャンパス内で様々な震災復興のためのプロジェクト
Programme on Global Environmental Change)か ら も 注 目 さ
が始まった。震災後、本事業従事者がリーダーシップを取って、分野
れ、その「統合的リスクガバナンスプロジェクト(Integrated Risk
横断、研究室横断の SFC3.11 プロジェクトを結成したと同時に、プロ
Governance Project)
」と共同で国際的大学コンソーシアムを構築
ジェクト・ベースのラーニング(PBL)の柔軟性を生かし、復旧復興支
し、本事業の取り組みは1つのモデルとなっている。
援のための研究実践をカリキュラムに取り入れ、教員と学生を東北被
災地に派遣した。SFC3.11 プロジェクトは学生が主体となって進めら
れ、環境デザイン、再生エネルギー、まちづくり、ビジネスなど、様々な
視点から復旧・復興を提案した。この PBL ベースの活動は毎年、環境
リーダー育成事業国際シンポジウムに取り入れられ、学生によるワー
クシップ、研究成果の発表などを行い、レジリエントな社会づくりの実
践を国際的に発信している。国内外の参加者から学生の活躍および本
事業の育成プログラムに対して高い評価をいただいている。
本事業の取り組みを発展して、政策・メディア研究科を超えた「グ
ローバル環境システムリーダープログラム」が文部科学省 2011 年度
博士課程教育リーディングプログラムに採択された。
「グローバル環境
システムリーダープログラム」はより広い領域をカバーしていますが、
45
▶ 平成
22 年 度 採 択 課 題
▶慶應義塾大学
厳 網林
実施機関の声
慶應義塾大学 環境情報学部 Q1.本事業ではどのようなことに取り組んでいますか?
A1.本事業は、生態環境が脆弱で経済成長著しいアジア・アフリカ地域において、地球環境と調和のとれた低炭素型未来社会
を創造する国際的環境イノベータの育成を目的としています。独自の研究助成制度、国内外のネットワークを利用したフィール
ドワークやインターンシップなどを活用し、日本人学生と留学生が共に学ぶことのできる国際性豊かな育成環境を提供してい
ます。
「社会起業」
、
「環境ビジネス」
、
「環境計画・政策」
、
「環境デザイン」という4つの領域を横断する学際的なカリキュラムにより、分野にとらわれ
ない創造性と個益・公益両方の視点を持った環境リーダー/イノベータの育成に取り組んでいます。
Q2.講義やフィールド実習ではどのようなことに取り組んでいますか?
A2.本事業の特色はプロジェクトベースの教育にあります。学生は入学時から「プロジェクト科目」を履修し、実践的なプロジェクトへ参加するこ
とによって必要な知識・技能が何なのかを分野によらず発見します。プロジェクト科目は異分野の複数教員によって運営されており、学際的な人材
を育成する重要な仕組みとなっています。また学内の競争的研究資金への申請を半義務化し、新たなプロジェクトの企画能力とマネジメント能力の
養成も図っています。学生は自身が取り組むプロジェクトをベースに、研究に必要な基本概念や技能などをカバーする基礎科目と、より高い専門性
を身につけるための様々な専門科目の中から、適切な講義や実習を自由に選択、履修し、自らの課題の解決に役立てています。
Q3.本事業による取組を今後どのように展開していきますか?
A3.本事業は国連環境計画(UNEP)/アジア太平洋地域適応ネットワーク(APAN)の北東アジア地域ノードに選ばれ、活動してきました。このネッ
トワークを活かし、気候変動適応のための国際人材育成拠点として発展していきたいと考えています。また本事業は東日本大震災を契機に、地球環
境変動と災害リスクに対し、レジリエンス(強靭社会)の構築に取り組んできました。社会の強靭化は国土環境と人間、またコミュニティの強靭化で
あって、環境リーダーはそれを担う人材となります。事業終了後もプログラムを継続し、リーディング大学院(グローバル環境リーダー)事業と連携
して、強靭化社会の構築をリードするレジリエンス・リーダーを育成していきたいと考えています。
土井 亘
受講生の声
Studio Mumbai Q1.本養成コースを受講しようしたのはどのような理由からですか?
A1.慶應義塾大学環境情報学部に入学後、大学1年時より建築家の坂茂教授の研究室に所属し、建築の設計を学びながら、被
災地等の復興支援として仮設建築を建てる機会を数多く経験しました。大学院入学直前に、東日本大震災が発生し、その直後か
ら学部時代の恩師である坂教授とともに被災地復興支援活動を行いました。その一方で、環境イノベータコース所属の小林博
人教授の講義「応用環境デザイン」にて被災地である南三陸町の集会所を設計・施工するというプロジェクトに関わり、実際
に考えたことや、やるべきことなどを実現させるということがいかに難しく、そしていかに重要で意義深いかということを学び、実際のプロジェクト
に関わることのできる環境イノベータコースの受講に至りました。
Q2.本養成コースで印象に残っていることは何ですか?
A2.前述の南三陸町におけるプロジェクトでは、素人でも施工が出来るような新しい工法として、
合板を組み合わせていくことにより構造が出来上がるという仕組みを考案し、実現させました。また、
その南三陸のプロジェクトからの派生で、石巻の前網浜という所で同様の建物を設計・施工するプロ
ジェクトを小林教授が引き受け、そこでも主体的に関わらせて頂きました。このプロジェクトでは、南
三陸での反省を活かすこと、そして誰でも建てることが出来るように施工マニュアルを作るなどの活
動を行いました。建築においては、建築家が設計し施工業者が施工する、というのが常ですが、これら
のプロジェクトでは設計し、かつ施工も行うということで、建築の最初から出来るまでに一貫して関
わることができました。
Q3.
(修了生であれば)本養成コースで学んだことが、現在のお仕事に
活かされていますか?(現在受講生であれば)
、本養成コースで
学んだことを、今後どのように生かしたいとお考えですか
(将来への夢 等でも結構です)
?
A3.現在はインドのムンバイに拠点を置く Studio Mumbai という建築の設計・施工を行う事務所
で働いています。この事務所の特徴として、インドという途上国においてクオリティの高いものを作り出すために、自分たちで全てやってしまう、と
いう点が挙げられます。具体的には、基本的に何でも作る。必要となるデザインのものが市場に無かった場合、自分たちの手でデザインし作る。その
繰り返しにより、事務所独自のアーカイブを蓄積し、建築の設計と施工が一体になった状態で仕事をしています。環境イノベータプログラムにおける
設計・施工を一貫して行うプロジェクトで得られた経験が、現在の業務で大変役立っています。
46
▶慶應義塾大学 ▶ 平 成
22 年 度 採 択 課 題
Matthew Jones
留学生の声
ESRI UK Q1.日本に留学した理由あるいは目的、そして本環境リ−ダー養成コースに参加した
理由は何ですか?
A1.英国サウサンプトン大学では考古コンピュータ学を研究しており、その研究を基に歴史的名所をより良く理解するた
めの三次元モデルを作製したいと考え、そういった名所の多い日本に留学を決意し東京大学に進学しました。東京大学では、
奈良県明日香村の寺院の三次元モデルを作製するなどしましたが、その際、作製したモデルを GIS により正確に地理座標上
に配置する必要があり、GIS に興味を持ちました。そこで、GIS 研究に定評がある環境イノベータコースの厳網林教授に指導を仰ぐべく慶應義塾
大学に入学し、このコースに参加しました。
Q2.本環境リーダー育成コースに参加して、いかがでしたか?
(そのメリットや感想などをお教えください)
A2.私の研究プロジェクトは広島県の厳島神社における気候変動の影響分析でした。過去と現在の
気候モデルのデータを利用し、気候変動が日本の環境システムと気候にどのような影響を与えるか調
べました。特に、今後数十年間で厳島神社近辺の海面レベルがどのように変化するのかについて興味
がありました。このプロジェクトを通して、GIS の利用といった技術的なこととともに、気候変動に関
する知見など非技術的な事についても実に多くの事を学びました。また、大きなプロジェクトに取り
組む事によって、プロジェクトマネジメントの経験を得る事も出来ました。さらに、厳島神社の管理機
関から気候モデリングの専門家まで、多様な関係者と直接連絡をとる必要があり、それらもよい経験
となりました。
Q3.
(本コース受講をもとに)どのような活動をお考えですか?(将来の夢などをお教えください)
A3.私は現在、GIS ソフトの開発とソリューションを提供している ESRI UK にて技術研究コンサルタントとして働いており、ESRI の ArcGIS を
土台として顧客からの要求にあわせた解決策の開発を担当しています。そこでは、デスクトップとウェブベースの両方の GIS 技術を使用してお
り、また、英国の利用者向けの新機能やベータ版ソフトのテストも行っています。これらの業務をこなすにあたり、環境イノベータコースで培った
ArcGIS の経験を活用していきたいと考えています。さらに、環境イノベータコースで体験した実践的な学習、プレゼンテーションとレポートを通し
た日常的な情報交換の経験も業務に直接関係する形で活用したいと考えています。
47
▶ 平成
22 年 度 採 択 課 題
実 施 機 関 ▶ 熊本大学
地下水環境リーダー育成国際共同教育拠点
留学生の受け入れ状況
2015 年 11 月現在 インドネシア(18 名)、中国(16 名)、バングラディッシュ(6名)、ベトナム(5名)、韓国(2名)、イラン(2名)
、
モンゴル(1名)、ソロモン諸島(1名)、ジャマイカ(1名)、ベニン(1名)、タンザニア(1名)、ナイジェリア(1名)
目 的
地下水環境リーダー育成プログラムでは、大学院自然科学研究科が地下水の理学と工学、および社会文化科学研究科が地下水の法的管理と共生
学に関する計8つの授業(座学と演習・実験)を担当し、熊本市上下水道局などと連携してインターンシップを実施する。この他に MOT 科目、招聘
講師による集中講義も開講する。授業科目の必要単位を修得し、インターンシップが認定され、博士論文が合格すれば博士号とともに『熊本大学地
下水環境リーダー』の称号を修了生に与える。
目標(ミッションステートメント)
5年間の育成プログラムで長期コースの博士課程学生を計 75 名(留学生 50 名、日本人 25 名)受け入れ、45 名を修了させる。5年目以降も未修
了生に対する育成プログラムを継続する。
修了生は、地下水共生学の理学と工学、具体的にはグローバルな水循環システム、広域地下水流動のメカニズム、水理地質学、同位体水文学、水環
境モニタリング技術、水環境解析学、水質管理学、水環境生物学、および地下水の公共政策や地下水法、地下水資源管理学に関する知識を修得する。
また、野外や室外で地下水・水質調査を行い、PC を使って水質の空間分布に関する GIS、水質の時間的変化に関するデータ解析、地下水の適切な利
用に関する線形計画法を駆使できるように指導する。これらの修得知識と技術をもとに、育成された環境リーダーは留学生の母国、あるいは日本に
おいて地下水共生学に関する教育や研究、政策学の実践力になり、健全な水循環を踏まえた社会作りに貢献できる。育成された環境リーダーと本学
との連携関係を密にするために、毎年一回は水環境共生に関する国際会議を本学で開催する。また、環境リーダーとの共同研究を深化させ、本プログ
ラムの活動を紹介するウェブサイトも充実させる。
プロジェクトの状況
継続している。また、本プログラムの発展形として、自然科学系のリー
2015 年3月をもって支援事業としては修了したが、
学長主導の下、
デイング大学院プログラムとして位置づけ、全学的な組織として大学
現在在籍する学生については大学の自主事業として継続中である。講
院先導機構の下での教育体制の確立に向けて、自然科学系の改組の
義をはじめ、インターンシップや、国内外の学会旅費、参加費、RA 費
一部として議論を進めている。
等の経済的支援についても、支援事業で実施した内容と同じ内容で
48
▶熊本大学 ▶ 平 成
実施機関の声
22 年 度 採 択 課 題
大谷 順
熊本大学大学院 自然科学研究科長 プログラムリーダー Q1.本事業ではどのようなことに取り組んでいますか?
A1.地下水に恵まれた熊本の地域的優位性を活かしながら、アジア・アフリカの水資源持続可能利用に関する環境リーダー
を教育し、世界の持続可能水資源管理・水環境保全に貢献するための教育プログラムを行っています。
育成を目指す環境リーダーとは、自身の専門分野で高度な技術力を有しながら、幅広い知識とスキル、コミュニケーション
力、リーダーシップを発揮できる人材であり、帰国後に自国の水問題に遭遇した場合に、広い視野を持ち異なる専門分野の技術者を指導しながら
原因究明のための調査計画立案から、調査、分析、解析および解決策の選定まで提案、指導できる真の環境リーダーとして活躍できる国際的な環
境人材です。
育成する環境リーダーの目標数は毎年 15 名です。
Q2.講義やフィールド実習ではどのようなことに取り組んでいますか?
A2.講義内容は、地下水管理に関する基礎的知識(地下水の流れのメカニズムなど理学的観点)の
他、適切な管理による地下水保全や水質浄化という工学的な観点、さらに湿潤アジアの特性である潜
在涵養量を有効に利用した持続的地下水資源利用システムの構築という政策科学的な観点も含む多
方面から地下水について学べるよう努めています。
また熊本県・市協力の下、地下水の観測・調査等フィールド実習の充実、地下水管理政策の実体験
研修を行うとともに、水俣市での合宿研修などを通して、経済発展と持続可能社会についての学習な
ど、総合的な視点で環境問題を考えることができる環境リーダー育成に努めています。
Q3.本事業による取組を今後どのように展開していきますか?
A3.育成プログラム終了後も、学内の各種関連研究プロジェクトとの連携を更に強化し本事業を継続させます。継続事業では、地下水に特化した
プログラムを発展させ、湖沼、河川、沿岸、海洋を含む総合的な水圏環境共生に対する環境リーダーの育成プログラムへとカリキュラムを充実させま
す。また国費留学生の積極的招聘、世界の水資源管理に関する社会工学分野の研究者育成にも力を入れます。また本学で学んだ修了生との連携を密
にし、国際的な水環境リーダーネットワークを構築します。
さらに各種寄金等活用による国際的・学際的水資源管理に関する研究の推進・水俣連携大学院構想への支援も検討中です。
内川 拓
受講生の声
熊本大学大学院 自然科学研究科 Q1.本養成コースを受講しようしたのはどのような理由からですか?
A1.指導教員の先生からこのプログラムのことをご紹介していただいたのがきっかけでした。私たちをとりまく水環境を様々
な視野から学習できるということと、普段の講義や国外でのインターンシップを通して、国際的な交流や英語によるコミュニ
ケーション力の上達を図れるというところが、このプログラムの大きな魅力でした。
Q2.本養成コースで印象に残っていることは何ですか?
A2.このプログラムのインターンシップ支援制度により、イギリスのバーミンガム市に1か月間滞
在させていただいたことが、印象に深く残っています。滞在中、バーミンガム大学でお世話になりまし
たが、そこでの研究や研究室の方々と過ごした日々が、大切な思い出として残っています。
Q3.
(修了生であれば)本養成コースで学んだことが、現在のお仕事
に活かされていますか?(現在受講生であれば)
、本養成コース
で学んだことを、今後どのように生かしたいとお考えですか
(将来への夢 等でも結構です)?
A3.現在、私は生命科学講座に所属しており、魚類を用いた研究をしております。生命を研究するにはそれを取り囲む環境も視野に入れることが必
要不可欠だと思いますので、生物学一辺倒ではない、広い視野をもった研究を続けていきたいです。
49
▶ 平成
22 年 度 採 択 課 題
▶熊本大学
Sugiyono(スギヨノ)
留学生の声
熊本大学大学院 自然科学研究科 Q1.日本に留学した理由あるいは目的、そして本環境リ−ダー養成コースに参加した
理由は何ですか?
A1.私は日本文化に興味を持ち日本に留学しました。母国で日本の大学を卒業した講師から、日本文化について多くの興味
深い事を聞きました。日本人は時間を守り、約束をする場合も常に時間を守ること、そして丁寧で利他的であるとも聞きまし
た。日本はクリーンで安全な国です。日本で研究することは母国より容易であり多くの先端技術を利用できるため、日本で研
究を続けたいと思いました。
熊本は、母国から比較的近く、その気候が熱帯地方を母国とする私には快適であると考え、熊本大学に留学しました。母国は、洪水や水質汚染など
水に関する問題を抱えています。水についてより良い理解や知識を得る事で、我が国の問題を解決していきたいと考え、GelK に参加しました。
Q2.本環境リーダー育成コースに参加して、
いかがでしたか?
(そのメリットや感想などをお教えください)
A2.私はこのプログラムに参加して地下水管理に関する知識を習得しました。GelK 講義では、どのように熊本が地下水に関する問題を解析し解決
しているのかを学ぶ良い機会でした。熊本や別の市における地下水管理の情報は問題に対応するためのアイデアや論理的思考をつけるために非常
に貴重でした。プログラムに参加したことで、
母国での地下水管理法のような問題を解決するために鍛えられたと思います。GelK に参加したことで、
我が国の将来のために自分がどのようにすべきか想像することができ、GelK は熊本大学の素晴らしいプログラムだと思います。
Q3.
(本コース受講をもとに)どのような活動をお考えですか?(将来の夢などをお教えください)
A3.私は自分の専門分野と水問題に関連した研究を行う予定です。私の専門は、ゼブラフィッシュ胚および幼生の運動行動上の重金属カドミウム
の影響について研究をしています。私の国では、多くの水質汚染が起きているので、私は特定の地域の水質を監視する為にゼブラフィッシュの運動
行動を利用したいと考えています。特に、東ジャワ、インドネシアで水質汚染エリアのマッピングを行いたいです。そして、水問題を解決するための
政策を立てるために地方政府にその情報を提供し、解決策を見つけて政府に提案するために水文部門との連携を図りたいと思います。
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▶平成
実 施 機 関 ▶ 東北大学
22 年 度 採 択 課 題
国際エネルギー・資源戦略を立案する
環境リーダー育成拠点
留学生の受け入れ状況
2015 年 3 月末時点 修士:中国 10、インドネシア 2、ブラジル 1、メキシコ 1 博士:中国 4、エジプト 1、インドネシア 1
基本:中国 38、タイ 2、ベトナム 9、韓国 1、スウェーデン 1、パキスタン 1、ケニア 1、メキシコ 1、インドネシア 7、フィリピン 2、
イラン 1、エジプト 1、
ヨルダン 1、マレーシア 9、バングラデシュ 1、アルジェリア 1
目 的
国際的なエネルギー・資源政策や企業の国際戦略を、俯瞰的な視座から立案できる国際環境リーダーを育成する教育拠点を構築する。アジア・
アフリカ地域の拠点から修士・博士課程レベルの学生及び地域の行政官を選抜し、長期コース(修士課程は2年間、博士課程は3年間)及び基本コー
ス(修士・博士共に1年以内)を提供する。高度なエネルギー・資源・水分野の知識や、俯瞰的視座で環境問題を理解し、政策立案や企業戦略を立
案するスキルを実践型カリキュラムにより習得する。学生に対して学費等を支援し、将来の後継プログラムへ向けた環境リーダー教育組織の改編
と留学生支援システムの強化を実施し、安定的に環境リーダーを輩出する拠点を形成する。
目標(ミッションステートメント)
本プログラムで修了した環境リーダーは、高度なエネルギー・資源分野の研究能力を有し、同時に、俯瞰的な視座から国際的なエネルギー・資源
政策、または企業の国際戦略を立案するスキルを有するレベルとなる。
修士コースについては、
基本コースの年間の受け入れ人数は5名、
5年間で 20 名を目標とする。長期コースの年間の受け入れ人数は8名(国外リー
ダー4名、国内リーダー4名)を目標とし、5年間で 32 名を目標とする。博士コースについては、基本コースの年間の受け入れ人数は3名、5年間で
12 名を目標とする。長期コースの年間の受け入れ人数は4名(国外リーダー2名、国内リーダー2名)を目標とし、5年間で 16 名を目標とする。5年
間の受け入れ人数は合計 80 名、修了予定者数は 64 名となる。
プロジェクトの状況
育成者数と国籍の多様性
継続性・発展性の実現
プログラム終了の平成 26 年時点で世界 24 カ国より 150 名を超え
平成 26 年度 10 月より後継プログラムとして「国際環境リーダー
る学生を受け入れ、長期コース、基本コースとも当初計画を超えた。受
プログラム(IELP)
」を実施、平成 27 年 12 月現在で約 30 名の留学生
入時の審査に加え、定期面談・業績評価、また修了面談を実施すること
を受け入れており、今後も継続した育成システムの展開が期待される。
で、より質の高いプログラム構成を目指し、受講者の意識を向上させ、
海外リエゾンオフィスの運用も継続しており、新規の部局間協定締結
優れた人材育成に繋げることができた。
も平成 27 年 12 月に予定されている。
実施体制の有効性
環境リーダー担当教員と大学院研究室指導教員によるダブル指導、
海外リエゾンオフィスを活用したシンポジウム・現地視察実施による
国際的素養の育成、座学とフィールドワークによる専門性と総合力の
強化を図った。また、行政や企業における研修により政策立案力や問題
解決能力を養成し、履修生の就職や研究に貢献した。
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▶ 平成
22 年 度 採 択 課 題
▶東北大学
田中 泰光
実施機関の声
東北大学 特任教授 Q1.本事業ではどのようなことに取り組んでいますか?
A1.地球環境問題、地域問題は深刻であり、その解決は喫緊の課題です。東北大学大学院環境科学研究科は、エネルギー・資源・
水の問題を重要な環境問題と認識し、この分野の研究と教育に取り組んでいます。本事業は、これまでの教育実績を活かし問題
解決と持続可能な世界に役立つために、高い専門性を有し、全体を俯瞰できる総合力(国際性・実践能力・マネジメント能力・
戦略立案力)
を持つ、
リーダーとして自覚を持った次世代の担い手を育成しています。対象は優秀な留学生と日本人学生で、
お互いを理解して協力し、
共に学び研究を行っています。
Q2.講義やフィールド実習ではどのようなことに取り組んでいますか?
A2.講義は英語で行い、必要な日本語のフォローなど行います。留学生と日本人学生が一緒に受講し、学生参加型のディスカッション、発表、協働
作業などを活用しています。時には留学生の母国の言葉が出てきます。国際性を高めることを重視していますが、同時に留学生は日本と日本文化の
良さを理解し、日本人学生は母国について再認識するようにしています。インターンシップ、フィールドワーク、特別講義などを行い、現場、実社会で
活躍する人たちとのふれあいなど実践を大切にします。自主性を重んじ、仲良く楽しく学び、研究意欲が高まることで、環境問題を理解し、互いに理
解し尊重し合い、自ら考え行動できる国際的なリーダーとして活躍する人財育成に取り組んでいます。
Q3.本事業による取組を今後どのように展開していきますか?
A3.これまで5年間のプログラム運営を通して、環境問題の解決、持続可能性の必然性および教育の特徴を考えた上、本事業の大切さと必要性を
再認識しています。現在の環境リーダー育成拠点の重点対象地区は、アジア・アフリカ地域で、これまでの活動で実績を上げてきました。これからは
さらに範囲を広げて、ロシア/ CIS 諸国、ASEAN、東北アジア、中南米も対象地域としています。地球環境問題の解決と持続可能な世界の実現にお
いて国際的な環境リーダーシップをとることができ、活躍する人財の育成を、東北大学環境科学研究科の得意とするエネルギー・資源・水分野の専
門性と教育実績を基盤に、さらに進めていきたいと考えています。
熊谷 将吾
受講生の声
東北大学大学院 環境科学研究科 助教 Q1.本養成コースを受講しようしたのはどのような理由からですか?
A1.当時、リサイクル技術の開発に関する研究を遂行しており、資源枯渇問題や廃棄物問題を直接的なバックグラウンドとし
て、専門的な化学および工学研究を遂行していました。しかし、知れば知る程、資源枯渇問題や廃棄物問題は、地球温暖化や水・
大気・土壌汚染等、様々な環境問題とも深く関連しており、技術だけではなく、環境問題を俯瞰する能力、環境問題の本質を見
抜く能力、および解決に導くリーダーシップの養成が重要であると感じました。また、自分の研究が、間接的に関連する環境問
題の解決にも役に立てる可能性を感じました。本養成コースは、これらの能力を培うプログラムが準備されている他、専門分野の枠、国籍・文化の枠
を超えたメンバーで構成された魅力的なものであり、受講を決意しました。
Q2.本養成コースで印象に残っていることは何ですか?
1つ目はカリキュラム構成とメンバー構成です。英語を共通言語としたディスカッションや研究交流会は、プログラム生が主役であり大変活気
A2.
がありました。自分が主役となることで、環境問題に対する責任感がより一層増し、良い刺激となりました。専門性の違いはもちろん、国籍が違えば
考え方も違い、環境問題一つを取り上げてもアプローチの多様性に日々驚かされていました。同時に、環境問題の解決に向けてベクトルを揃えるこ
との難しさ、それをマネージメントすることの難しさも身を持って感じました。日常の研究生活では得難い経験でした。専門や文化の違う発想やアプ
ローチは、自分の研究分野にとって非常に新鮮なものでもありました。
Q3.
(修了生であれば)本養成コースで学んだことが、現在のお仕事に活かされていますか?
(現在受講生であれば)
、本養成コースで学んだことを、今後どのように生かしたいとお考えですか
(将来への夢 等でも結構です)
?
A3.現在、私は東北大学大学院環境科学研究科の助教として働いています。研究テーマは、廃棄物問題と資源枯渇問題の双方の改善を目的とした
リサイクル技術の開発です。今後も研究者として、最先端の技術開発や新たな現象を解明し、世界に発信していきます。一方で、本養成コースを通じ
て、環境問題解決に向けて最先端技術が必ずしも重宝されるとは限らない現実的な事実も痛感しました。将来的には、世界規模での効果的な資源循
環を目指し、各国の経済・環境レベルに応じたリサイクル技術およびシステムの立案、廃棄物問題と関連する環境問題の同時解決のアプローチ、リ
サイクル技術の他環境問題への応用など、先駆的な取り組みにチャレンジしたいと考えています。
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▶東北大学 ▶ 平 成
留学生の声
22 年 度 採 択 課 題
Samir Gadow(サミル ガドウ)
National Research Centre, Cairo, Egypt Assistant Professor Q1.日本に留学した理由あるいは目的、そして本環境リ−ダー養成コースに参加した
理由は何ですか?
A1.来日する前に私は様々な大学のハンドブックをインターネットで閲覧していました。世界に数ある有名大学でも、東北
大学に引き寄せられました。東北大学では私が研究したい専門分野があったからです。担当教授に連絡しスムーズに受け入
れていただきました。その後来日し、なぜ東北大学が優れているか分かりました。教職員を始め学生も皆友好的で喜んで手を
差し伸べてくれるのです。また研究室は最新装置がしっかりと備わっておりました。私が博士課程在学中に環境リーダープログラムが始まり、第
1期生として合格しました。プログラムでは、期待通り様々なメリットがありました。国内外で開催した会議やワークショップ、フィールドワーク
では、有能かつ前途有望な研究者らと出会うことができました。環境問題に関する充実したディスカッションの機会も多くありました。今では私
は中東、中国、東南アジア、ヨーロッパ、ラテンアメリカ、アフリカ出身の友人ができました。また東北大学との交流を続けております。
Q2.本環境リーダー育成コースに参加して、
いかがでしたか?
(そのメリットや感想などをお教えください)
本プログラムを通じて、
多くの専門技術を身に着けることができ、
実践的な知識や経験、
特に持続可能な環境マネジメント分野の知見が深まり、
A2.
また沢山の意欲的な人々と出会うことができました。生涯を通し私は創造的に物事に取り組み、また仕事に対しては挑戦的でありたいと思っており
ます。ですから、環境リーダープログラムを修了したことでゴールが一歩近づきました。素晴らしいリーダーを目指し、地域や世界の環境問題の解決
および持続可能な社会の実現に挑戦したい方には、是非このようなプログラムをお勧めします。
Q3.
(本コース受講をもとに)どのような活動をお考えですか?(将来の夢などをお教えください)
A3.私は現在、母国エジプトの National Research Centre で Assistant Professor として働き、次の2つの研究テーマに取り組んでいます。一
つ目は廃棄物および廃水の管理に関する研究で、健康や生産能力、また生活環境の改善などに直結している課題です。二つ目はバイオエネルギー回
収システムとその運用条件に関するバイオテクノロジーの研究です。エジプトの繊維産業は工業用水と化学物質の利用が最も多い産業の一つで、染
色工程において 20%から 50%の染料が水相に残留するため、
着色された廃液が発生します。廃液には染料だけでなく化学物質も多く含まれるため、
これが環境汚染に繋がるのです。そこで、エジプトにおける持続可能な繊維産業の発展を目指し、工場廃水処理のための脱色とバイオエネルギー回
収の研究を進めております。このように研究を通して環境保全と持続可能な発展に貢献したいと考えています。
53
お問合せ先
文部科学省 科学技術・学術政策局 科学技術・学術戦略官付(制度改革・調査担当)
〒100-8959 東京都千代田区霞が関 3-2-2
TEL 03-6734-4017
FAX 03-6734-4176
http://www.mext.go.jp/a_menu/sonotaichiran/ittaitekisuisin/index.htm