∼ 愛知県警察交通安全教育チーム あゆみ ∼ 平成27年中、愛知県内では213人の方が交通事故で亡くなり、13年連続して 全国最多数と、大変厳しい交通事故情勢が続いています。なかでも交通事故死者の約 6割を高齢者が占めており、高齢者の交通事故犠牲者をいかになくしていくかが喫緊 の課題です。高齢者を守るための各種対策を推進中ではありますが、高齢者自身の交 通安全意識を高めていくことも重要な課題となっています。 一般的に、高齢者は年齢とともに身体機能が変化し、歩行者としても、また、運転 者としても、道路を通行する際に十全の行動をとることができない場合があります。 また、免許を受けていない、交通安全教育の受講経験がない等の理由から、交通ルー ル等に関する理解が十分でない場合があります。 そこで、高齢者に対する交通安全教育においては、加齢に伴う身体機能の変化が道 路における行動にどう影響するのかを理解させるとともに、交通ルールの遵守、歩行 者や自転車利用者としての心得等について理解を深め、道路を安全に通行できるよう になることが必要です。 またドライバーに対しては、運転に不可欠な「認知・判断・操作」の能力が年齢と ともに変化していくことを自覚させ、その変化が原因で起きた交通事故事例等を紹介 するなどして、慎重な運転を呼び掛けるとともに、運転免許証の自主返納制度や運転 経歴証明書などについても紹介し、その浸透を図ります。 (1) 基本的な心得 目 標 加齢に伴う身体の機能の変化が行動に及ぼす影響及び交通ルールを遵守し、交 通マナーを実践することの必要性を理解させるとともに、交通安全活動への参加 を促すことにより交通安全意識の高揚を図る。 内 ア 容 高齢者の交通事故の特徴 高齢者が当事者となった交通事故の特徴を中心に、最近の交通事故の発生状 況及び高齢者が事故に遭った場合には、死亡等の重大な結果に至る危険性が高 いことを説明し、正しい道路の通行方法を実践する ことが、いかに重要であるかを理解させましょう。 イ 年齢に伴う身体機能の変化 個人差はあるものの、一般的には加齢に伴って ・歩行速度が遅くなること ・危険を回避するためのとっさの行動が困難になること ・危険の発見および回避が遅れがちになること ・歩行並びに自転車及び二輪車での走行が不安定になること などの変化が表れます。このような身体の機能の変化が行動に及ぼす影響を理 解させ、健康診断を受けるなどして、身体機能の変化を客観的に把握するとと もに、道路を通行する場合には無理をせず、安全確認を十分行うよう指導する。 ウ 高齢者の安全を確保するために設けられている交通安全施設 弱者感応信号機、歩行者感応信号機、音響信号機等、高齢者の安全を確保す るために設けられている交通安全施設の現状とその利用方法を理解させまし ょう。 ボタンを押すか、交通弱者 が携帯する発信機から発せら れる微弱電波などを感知して、 歩行者用信号の青の時間を延 長する信号機。 エ 歩行者をセンサーによ って感知し、歩行者用信号 の青の時間を調整する信 号機。 視覚障害者用に考慮され た信号機で、歩行者の横断 できる時間を特定のメロデ ィや擬音で知らせる信号機。 通常、道路鋲、触知板等を 路面に設けた誘導施設を併 設する。 交通安全活動への参加 道路交通の安全を確保するために行われている活動の実例を紹介し、これら の活動において高齢者の果たし得る役割を考えさせるとともに、このような活 動への積極的な参加を促しましょう。 (2) 歩行者の心得 目 標 加齢に伴う身体の機能の変化を踏まえ、体力等に応じて無理をしないで道路 を通行すること等、歩行者として安全に道路を通行するために必要な事項を理 解させる。 内 容 ア 加齢に伴う身体機能の変化が歩行に及ぼす影響 加齢に伴い、一般的に歩行速度が遅くなり、道路の横断に時間がかかるよう になることから、広い道路を横断しようとする場合は、信号が青であっても、 次の青信号を待って横断すること、信号機のない所で横断しようとする場合 は、歩行速度を考慮し、道路を通行する車両等との距離を十分にとること等を 指導するとともに、斜め横断を行わないように指導しましょう。 道路を渡るときは、必ず 一旦止まりましょう。 イ 右・左・後方の安全を確かめて から渡り、横断中も車の動きに気 を配りましょう。 渡りましょう。 電動車いす 電動車いすを用いる場合に注意する事項 電動車いすを通行させている者は、道路 交通法上歩行者とされていることから、歩 行者として交通ルールを遵守しなければな らないことを理解させます。また、電動車 いすは、機種ごとに操作方法、走行性能等 の特性が異なることから、それらを十分に 把握し、道路外の安全な場所で操作方法を 習得した上で道路を通行するように指導し ましょう。 車が通り過ぎるか停止するの を待ち、安全に 道交法第2条1項第 11 号の3に規定する 身体障害者用の車いすで、原動機を用いるも ののこと。 「身体の障害により歩行が困難な者の移動 の用に供するための車いす」を指し、道交法 上は歩行者に分類されます。車体の大きさが 決められているほか、 ○原動機として電動機を用いること ○時速6㎞を超える速度を出すことができない こと ○自動車又は原動機付自転車と外観を通じて 明確に識別することができること などの取り決めがあります。 ウ 安全に道路を通行するために習得する必要のある事項 免許を受けていない、交通安全教育の受講経験がない等の理由から、交通ル ール等に関する理解が十分でない者に対しては、歩行者として安全に道路を通 行するために習得する必要のある事項を、「交通の方法に関する教則」第2章 (歩行者の心得)の内容に沿って指導します。 特に、夜間において高齢者が当事者である事故が多く発生していることから、 夜間は、自動車等(自動車及び原動機付自転車をいう。以下同じ。)の運転者 から暗い色の服装をした歩行者がよく見えない場合があること等を説明し、外 出する場合は、目立つ色の服装をしたり、反射材を身に付けたりするように指 導しましょう。 (3) 自転車に乗車する場合の心得 目 標 加齢に伴う身体機能の変化が自転車の乗り方に及ぼす影響を理解させるとと もに、自転車を安全に利用するためには交通ルールを遵守し、交通マナーを実践 しなければならないことを理解させ、正しい乗り方を習得させることにより、安 全に道路を通行できるようにする。 内 容 ア 加齢に伴う身体機能の変化が自転車の走行に及ぼす影響 加齢に伴い、自転車での走行が不安定になったり、交差点を通行する場合 に安全確認が不十分になったりすることについて、交通事故の実例等を用い て具体的に説明して理解させましょう。 乗ってはならない場合 酒を飲んで自転車に乗ること等の危険性を説明し、こうした行為が禁止さ れていることを理解させましょう。 安全に自転車に乗るために習得する必要のある事項 免許を受けていない、交通安全教育の受講経験がないなどの理由から、交 通ルール等に関する理解が十分でない者に対しては、安全に自転車に乗るた めに習得する必要のある事項を、「交通の方法に関する教則」第3章(自転 車に乗る人の心得)の内容に沿って指導しましょう。 イ ウ (4) 自動車に乗車する場合の心得 目 標 自動車に乗車する場合に注意すべき事項を理解させ、安全に自動車に乗車でき るようにすること。 内 容 自動車から降りた後に道路を横断する場合は、自動車の直前・直後を横切って はならないことを理解させましょう。また、乗り降りする際は、周囲の安全を確 認してからドアを開け、左側から乗り降りするよう指導するとともに、シートベ ルトを備えている自動車に乗車する場合は、これを正しく着用するよう指導しま しょう。 (5) 自動車に関して知っておくべき事項 目 標 自動車等の基本的な特性と合図を習得することにより、歩行者等として自動車 等の動きを予測し、危険を回避して安全に道路を通行できるようにする。 内 容 自動車等の速度と制動距離の関係、死角、内輪差等の自動車の特性及び右左折、 後退時等の合図を理解させましょう。また、これらを踏まえて安全に道路を通行 することができるよう指導しましょう。 (6) 自動車等の運転者の心得 目 標 高齢の運転者が、加齢に伴う身体機能の変化を客観的に把握し、これに応じた 運転ができるよう必要な技能と知識を習得させる。 内 容 運転適性指導及び運転技能指導を中心に実施 することとし、加齢に伴う身体機能や運転技能 の変化を客観的に把握させ、安全に運転できる よう指導する。また高齢の運転者に対する運転 免許制度の特例や高齢運転者標識等を理解させ ましょう。 運転中に病気が発症し事故につながるケース も多いことから、周りを巻き込む危険性や不測 の事態を認識させ、体調が悪いときは運転を控 えるよう指導しましょう。 70 歳以上の運転者が普通自動 車を運転するときは、高齢運転 者マーク(標識)を車体の前面 と後面の所定の位置(地上 0.4 ∼1.2m の間)につけて運転する ように努めなければならない。 ☆罰則、反則金、違反金なし (7) 交通事故の場合の措置 目 標 交通事故に遭った場合に、適切に対処できるようにするとともに、交通事故の 当事者としての責任についても理解させる。 内 容 交通事故に遭った場合には、必ず警察に届け出ること、外傷がなくても頭部等 に強い衝撃を受けた場合は、医師の診断を受けること等の措置を指導します。 特に、車両等の運転者又は乗務員として事故に遭った場合は、事故がさらに発 生することを防止するための措置をとらなければならないことや、負傷者に対し て可能な応急救護処置を行わなければならないことも合わせて理解させます。 (8) 高齢者に対する交通安全教育を実施するに当たって配慮すべき事項 ア 指導者の基本的な心構え 効果的かつ適切な安全教育を実施するため、高齢者の特性を理解するととも に、地域の実情を踏まえた教育の内容及び方法を設定し、適切な教材を用いる などして指導しましょう。あわせて、受講者の居住する地域における身近な事 故事例を挙げるなどして、高齢者が自らの問題としてとらえることができるよ う配慮しましょう。 イ 適切な時間設定ならびに教育の内容および方法の設定 高齢者にとって体力的な負担とならないように、指導事項を数点にしぼり、 短時間で効果的に教育を実施するようにしましょう。 ウ 高齢の運転者の運転適性及び運転技能の把握 高齢者の身体の機能の変化には個人差があるため、交通安全教育を実施する 場合は、対象に応じて、運転適性指導及び運転技能指導を行いましょう。 (9) 家族等に対する交通安全教育の実施 高齢者が加齢に伴う身体機能の変化を自覚し、交通事故を防ぐためには、家族等 の理解と協力が必要です。高齢者が犠牲となる交通死亡事故が多発し ていることをあらゆる機会を通じて広報し、家庭内においても交通安 全に対する積極的な声掛けをしていただくよう呼びかけましょう。 年齢層別死者数 高齢者が 全体の約6割 老人クラブへの加入状況 一般 を占める (25∼64歳) 73人 34% 交通事故死者 213人 若者 高齢者 (65歳以上) 122人 57% (16∼24歳) 14人 7% 加入 29人 24% 非加入 93人 76% 高齢者交通事故死者 老人クラブ 122人 非加入者が 約8割 こども (15歳以下) 4人 2% 運転免許証の有無(歩行者・自転車) 当事者別死者数 その他 1人 1% 自動二輪 4人 3% 原付 5人 4% 歩行者・ 免許 あり 17人 19% 四輪車 22人 18% 高齢者 交通事故死者 122人 歩行者 55人 45% 免許 なし 73人 81% 運転免許証 非保有者が 8割 歩行者・自転車 交通事故死者 90人 自転車 35人 29% 自転車利用者が 7割以上 自宅からの距離(歩行者・自転車) 自宅から 夜間(午後6時から翌午前6時) に発生した歩行者事故を調査した結果、 亡くなった方(29 人)の全員が 反射材を未着用 でした。 1km∼2km 以内 6人 7% 2km超 12人 13% 1km 以内が 8割 歩行者・自転車 交通事故死者 500m∼ 1km以内 23人 26% 90人 500m以内 49人 54% 歩行中の交通事故死者の状況 その他 1人 1% 四輪車 22人 18% 自動二輪 4人 3% 道路横断中の 高齢者 交通事故死者 原付 5人 4% 歩行者 55人 45% その他 16人 29% 122人 自転車 35人 29% 交通事故が 約7割 高齢者 歩行者 交通事故死者 55人 背面通行中 横断中 37人 67% 2人 4% 衝突の状況 横断施設の状況 左折車 と 衝突 2人 5% 右折車 と 衝突 5人 14% 道路横断以外を横断中の 交通事故が6割以上 直進車 と 衝突 30人 81% 道路横断中 交通事故死者 37人 横断歩道 (付近含) 13人 35% 直進車と衝突した 道路横断中 交通事故死者 37人 交通事故が8割 横断歩道 以外 24人 65% 直進車との衝突状況 右からの 車両と 衝突 左からの車両と衝突 7人 23 人(77%) 23% 道路横断中 直進車と衝突 交通事故死者 30人 歩行者から見て 左からの 車両と 衝突 23人 右からの車両と衝突 77% 7 人(23%) 左側からの車両と 衝突した事故が約8割 自転車乗車中の事故死者の特徴 出合い頭の交通事故が 歩行者 55人 45% 高齢者 その他 7人 20% 自転車 35人 29% 交通事故死者 原付 5人 4% 122人 その他 1人 1% 四輪車 22人 18% 自動二輪 4人 3% 右折・ 左折時 3人 9% 追突 3人 9% 正面衝突 1人 3% 自転車乗用中の 事故状況 35人 6割 出合頭 21人 60% 覚えやすい言葉を合言葉にした交通安全教育も効果的です。 安全確認は、道路を渡る前だけでなく渡っているときにも行いま しょう!特に、横断前半は右から来る車両、横断後半は左から来る 車両に注意しながら渡りましょう。 斜め横断や信号無視、車両等の直前・直後の横断、 渋滞停止中の車両の間を渡るなどの強引な横断はや めましょう。安全のため、少し遠まわりになっても 横断歩道のあるところを渡るようにしましょう。 早朝、夕暮れ時、夜間の時間帯は、ドライバーから歩行者や 自転車が見落とされやすく、事故の危険性が高まります。白や 黄色など、明るい服装を身に付けることを心掛けるとともに、 反射材を有効に活用して自分の存在を周りの人にしっかりとアピールしましょう! 加齢に伴い、一般的に歩行速度が遅くなる、危険の発見や 回避に遅れが生じる、判断や操作に誤りが出るなどの変化が 出てきます。その変化を自覚し、無理をせず慎重な行動をと るよう日頃から心掛けることが大切です。 通り慣れた自宅周辺道路で多くの方が被害に遭っていま す。いつも通るよく知った道路こそ油断せず、常に危険を 予測した用心深い行動を心掛けましょう! 車には、「死角」や「内輪差」といった特性があり、ドラ イバーから見落とされたり、左折時に巻き込まれたりするお それがあります。道路を横断する際や進路を変更する際は、 左右だけでなく後ろの安全もしっかりと確認しましょう!
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