末梢血塗抹標本にて桿菌が確認され急速な敗血症ショックで死亡した1症例

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末梢血塗抹標本にて桿菌が確認され急速な敗血症ショックで死亡した1症例
◎松田 賢也 1)、金城 朋子 1)、中村 尚子 1)、照屋 彰 1)、宮里 泰山 1)、八幡 照幸 1)、古我知 憲康 1)、金城 則裕 1)
沖縄県立中部病院 1)
【はじめに】日常検査において、CBC と末梢血ギムザ標本
を疑った。CBC 採血管のバッフィーコートを用いたグラム
(以下スメア)から感染症を疑う症例にしばしば遭遇するが、
染色で紡錘状の陰性桿菌を認め、直ちに主治医に報告した。
通常スメア上で菌の存在を目にする機会はごく稀である。
【臨床経過】輸液にて一端安定したが、昼過ぎに容態急変。
今回、スメア上で桿菌を認め、DIC を伴った急速な敗血症
ICU に入室となったが、17 時 42 分に死亡が確認された。
性ショックで死亡に至った症例を経験したので報告する。
【病理解剖所見】多臓器鬱血、感染脾、肺出血水腫、胃潰
【症例および検査結果】50 代男性。左手第二指 MCP 関節
瘍痕跡が確認された。
周囲に犬に噛まれた 5mm 程度の傷跡あり。泡盛 3~4 合/日
【起因菌の同定結果】後に陽性となった血液培養液から検
の習慣飲酒、喫煙歴あり。
出された菌は、PCR により Capnocytophaga canimorsus と同
来院前日より悪寒戦慄を伴った 39℃の発熱があり、一晩
定された。
様子をみるが改善を認めないため、翌朝 10 時頃、救急車に
【まとめ】今回の症例から末梢血鏡検の際に、細胞形態だ
て当院救急救命センター来院。来院時、意識清明、関節痛
けに捉われず幅広い視点で観察することの重要さを再認識
あり、呼吸数 36 回/分。
した。今後も CBC やスメアから得られるデータと臨床情報
CBC にて WBC26,300/µl、Plt29,000/µl、白血球分画にて
を基に、感染症が強く疑われる症例では、CBC 採血管のバ
Meta16%、Stab12%、Seg69%と核の左方移動が見られた。
ッフィーコートを用いたグラム染色を行う事で臨床への迅
また、PT23.5 秒、APTT106.6 秒、Fib71.0mg/dl、
速な報告と適切な治療へ繋げたい。
FDP405.9µg/dl、D-ダイマー 57.3µg/ml、AT-Ⅲ70.7%と
〈連絡先〉098-973-4111(内線)3261
DIC が疑われた。スメア上で中毒性顆粒、空胞変性を認め、
さらに桿菌と好中球による貪食像も数多く見られ、敗血症