細胞診で卵巣腫瘍が疑われ、 子宮留水症を併発した 兎の治療例について 鈴木 透 オダガワ動物病院 (川崎市開業) PP(患者情報) SPECIES 兎 BREED 雑種 SEX 雌 AGE 6歳 CC(主訴) • 兎の左側腹部 が2ヶ月前より 腫大している。 • 元気、食欲は ある。 Diet(食事) • Env(飼育環境) • in door 100% 希に散歩 • 餌・日本製フード • SR(問診特記事項) • なし 鑑別診断リスト • DDX • • • • • 子宮留水症 子宮癌 腹腔内腫瘍 脂肪 胃拡張 PE(身体検査) T−38.6℃ P-nor R-nor BW 2.6kg Net 100% 脱水なし、貧血なし、口腔内異常なし 触診では判断つかず、レントゲン検査を おこなう。 レントゲン検査 追加検査 • バリウム造影 • エコー検査 • CBC • 生化学検査 バリウム造影1時間後 Echo CBC • • • • • • • RBC480×104/μl, PCV 35.6% Hg 11.5g/dl MCV 74fl MUHC 24pg ICT <5 PLAT nor • • • • • • • WBC Band Seg Lym Mon Eos Bas 5000/μl 100 4200 700 0 0 0 Chemistry • • • • • • • • TP 5.7g/dl GOT 15U/l GPT 19U/l ALP 72U/l, GGT 8U/l GLU 157mg/dl BUN 18.2mg/dl Cr 0.7mg/dl IP 2.8mg/d Ca 12.9mg/dl, • TG 80mg/dl, • TCHO 12mg/dl, • CPK 533U/l. • T-BIL 0.2mg/dl • Na 144meq/l • K 3.9meq/l • ,Cl 92meq/lß Massは膣かとおもはれた。 左の卵巣が胃に癒着 摘出した子宮・卵巣の一部 貯留液の検査 •比重1.016 •蛋白 0.8 •沈渣 なにもなし 貯留液の培養検査 • 細菌学的検査 • 直接塗抹 菌体は認めら れなかった。 • 培養 スワブを血液寒天 培地。DHLおよびマンニッ ト寒天培地に塗抹し、 37℃、24時間、好気性培 養おゆび嫌気性培養をお こなった。いずれの培地 においても菌体は発育し なかった 卵巣のFNA •不規則重積性を示す大小の 細胞集塊が出血性背景に出 現しています。 •集塊は核の大小不同や核形 不整を示す細胞によって構成 されており、密な結合を示す 等の所見により上皮性性格を 有する腫瘍と判断します。卵 巣原発を疑います。 病理診断:内膜増殖症 • 卵巣に存在が推測される悪 性細胞は子宮には認められ ません。 • 一部の子宮内膜に異常増殖 を示す腺が存在します。ただ し悪性像としては認識できま せんので、内分泌異常の結 果としてのものと考えられま す。 病理検査 • 腟部病変と思われたもの は組織学的にみると、子 宮粘膜上皮からなると思 われますので、いわゆる 子宮留水症(hydrometra) と考えられます。何らか の原因で遠位部に閉塞 か狭窄が生じた結果であ ることが多いようですが、 本症例では未確認です。 まとめ • 子宮角に留水症をおこした疾患は報告さ れて予後が良いことが言はれている。 • 子宮と膣の境界がはっきりしないで、留水 症した症例はめずらしい。 • 子宮留水症は何らかの原因で遠位部に閉 塞か狭窄が生じた結果であることが多い が、本症例では未確認です。 • 本症例は03年5月6日に手術をおこないそ の後QOLの改善をみたが、8月20日に死 亡した。 • 抜糸後、月1回の来院で経過観察をオーナー と同意していたが、その後の来院はなかっ た。 • 8月にはいり左下腹部が腫大して死亡にい たった。 • 胃は硬結しており、手術時に卵巣のみで はなく、胃の細胞診もおこなうべきだった。 • 人で報告されている胃原発で卵巣に転移 するクリベンベルグの腫瘍、また卵巣から 直腸、子宮窩に転移するダグラス症候群 の可能性も否定はできない。 • 子宮の腫大の所見が疑われた場合、バリ ウムまたは胃のエコーをもっと積極的に活 用して、術前にもっときちんとしたインホー ムドコンセントをとる必要性が反省として残っ た。
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