エリートボクサーの試合前の急速減量が栄養、ビタミンの 栄養状態、酸化ストレスに及ぼす影響 Reljic D et al. J Sports Sci 33: 437-448, 2015 17名のエリートボクサーを対象に、食事摂取量、ビタミンの栄養状態、酸化ストレスを評 価した。10名は試合前にしばしば急速減量をしており(減量群)、7名は急速減量をして いなかった(対照群)。食事記録チェックリスト、ビタミンの栄養状態と血漿グルタチオ ンレベルを測定するための血液サンプルを、体重を維持している1週間、試合前の1週間、 そして試合後の1週間で測定した。減量群の試合前を除いた両群の平均の食事摂取量は 33 8kcal・kg -1 、炭水化物 3.7 1.1g・kg -1 、たんぱく質 1.5 0.4g・kg -1 、脂質 1 . 2 0 . 4 g ・ k g-1、 水 分 2 . 2 1 . 0 L だ っ た 。 減 量 群 で は 試 合 前 1 週 間 の エ ネ ル ギ ー (18 7kcal・kg-1)、炭水化物(2.2 0.8g・kg-1)、たんぱく質(0.8 0.4g・kg-1)、脂 質(0.6 0.3g・kg-1)、水分(1.6 0.6L)(P<0.001)、そしてほとんどのビタミンの摂 取量(P<0.05)が有意に減少した。両群ともビタミンA、E、葉酸の摂取量は3つの期間 全てで推奨量を下回っていたが、血中ビタミンと血漿グルタチオンのレベルは変化しなかっ た。我々の知見は、エリートボクサーは急速減量を実施してもしなくても低カロリー、低 炭水化物食であったことを示した。減量群の試合前の栄養不足はビタミンとグルタチオン の状態に変化を起こさないようだった。(2015年5月12日 博士後期課程1年 近藤衣美) 本研究では栄養摂取状況がよくなくても酸化ストレスは増えていない。しかし、栄養摂取 状態が正確に評価されているのか、摂取状況のよくない期間が短かったり、アスリートで は生体に備わっている抗酸化機構が亢進していたりして臨床症状が出ていないのかなど、 いろいろとわからないことがあると思う。必要量や推奨量を考えるのは簡単ではない。(岡 村浩嗣)
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