3D(立体視)映像の現状と 今後の展開

3D
(立体視)
映像の現状と今後の展開
3D(立体視)映像の現状と
今後の展開
大口孝之
3D 研究家・映像ジャーナリスト
3D
(立体視)
映像の現状についてブームの周期性を踏まえながら、今後の展開を考察する。また、
高輝度・高解像度化が進むデジタルプロジェクタをはじめとするハードの進化とソフトの変遷を
紹介しつつ、
次世代の劇場システムにも言及する。
1
3D映画ブームは終わったのか?
観客による売り上げは増えており、母集団の年齢
層全体が上昇している。またジェンダーバランス
最近 3Dが、以前ほど人々の話題に上らなくなっ
に関しても触れられているが、2010 年以来一貫し
たと感じている方は少なくないだろう。
もちろん、
て女性が観客層の中心を占めているそうである。
若い人たちの間に HMD(ヘッド・マウント・ディ
一般に 3D 映画は、アクション映画、アメコミ
スプレイ)の人気が高まっていることから判断し
ヒーロー、SF 映画、アニメーションなどに多い。
て、立体映像そのものが飽きられたわけではなさ
こういったジャンルを好んで観るのは若年層の男
そうである。
性であり、年齢別・性別で 2D と 3D の統計を取っ
劇映画に関していうと、MPAA
(Motion Picture
てみないと正確な判断は下せない。中高年の女性
Association of America:アメリカ映画協会)
が発
が刺激の少ない作品を選ぶのは当然だろう。さら
表したデータでは、北米の映画観客における“1 年
に若年層の劇場離れは、3D映画ブームとは関係な
間に最低 1 本の 3D映画を観た人”
の割合は、2010
く、ネット視聴の影響の方が大きいと思われる。
年には 52%だったにもかかわらず、2014 年は 27%
そもそも北米全人口の内、年間 1 度も映画館に行
に落ちているという。このことから米ハリウッド・
かない人が 32% もいるということである。
リポーター
(The Hollywood Reporter)
誌 は、
「調
1)
査結果は 3D 映画のブームが去ったことを明確に
示している」と 2015 年 3 月 13 日に報じた。
2
無視できない中国の存在
だが、この結論をそのまま受け取ってしまうの
同じ MPAA の調査データによると、2014 年の
は危険である。1 つの問題は、観客の年齢層に対
映画北米市場は前年対比 5% 減の 104 億ドルで、チ
する考察の不足である。この調査によると、25〜
ケットの売り上げも過去 19 年で最低となってい
39 歳の観客層における 2D 作品と 3D 作品を合わ
る。にもかかわらず世界興行収入全体では、前年
せたチケットの総売り上げ枚数は、2012 年には
の 359 億ドルから 364 億ドルに増加している。こ
990 万枚あったものの、2014 年は 710 万枚まで減
れは圧倒的に中国市場の伸びが大きく影響してい
少している。だが逆に、40〜59 歳と 60 歳以上の
る。
eizojoho industrial
June 2015︱99