漢字の字体と字形、書道あれこれ

きるのは、実に幸せな機会とあ
かに親睦を深めた。
オケに参加下さったりと、和や
で始まり、豆子名誉会長もカラ
挨拶、松浦白碩副理事長の乾杯
の懇親会は、木村大澤理事長の
い研修は幕を閉じた。その後夜
会長の閉会の言葉で、密度の濃
がっていた。最後に久野北崖副
ちこちのテーブルから歎声が上
近で子細に観られて好演出。あ
分。各先生の自在の筆捌きを間
ての実演で、観覧スペースも十
席上揮毫は二組に分かれて頂い
らためての実感である。そして
(2)
き取りテスト時に先生によって
採点基準が違う―A先生とB先
生で違う―一体漢字テストとい
漢字の字体と字形とどう違う
か。十年近く前、ある高校で「漢
字テストの不思議」というビデ
オが話題になった。内容は、書
夏の研修会は準会員や会友の
皆さんに多く参加して欲しい
が、今日はそういった方々にも
向けて題を選んだつもりで、書
の奥義を授ける様な難しい話で
はない。
いかも知れない。ここが混乱す
る原因なのであるが。又、字体
の骨格としての正しさというの
時とは違う。正しさというのは、
文字としての正しさと書写的な
それと二つあると思った方が良
書写の授業も担当する。止めや
ハ ネ 等 も 教 え る の だ か ら 悩 む。
字体を基準にして正しいか否か
を決める時と、書写的に見ての
一 つ な の だ。 例 え ば「 三 」。 頭
に浮かぶものは横画三本、恐ら
く皆共通していると思うが、一
人一人書いて貰うと多分色々な
形になる。基本的には横画三本
あれば「三」という漢字だ。つ
まり概念的な文字の骨格、それ
が「 字 体 」。 太 目 で も 細 め で も
見た目は違うが骨格は同じであ
る。対して、視覚化されて見え
る形になったのが所謂「字形」。
「 人 」 で 例 え る と、 字 体 と し て
はハライも止めも考えなくて良
い。本来漢字のテストというの
は 字 体 の テ ス ト な の で あ っ て、
止め・ハネ・ハライが無くても
字体本体が正しければ○にすべ
きなのだ。が、学校では同時に
しいかどうかはその時の国が決
める。それは、正しいとすると
それにしても書道をやってい
ると、常用漢字以外、色々な文
字が出てくるが、字体として正
当 然 出 て く る 違 い に つ い て は、
表現上の相違として認識してく
れという事なのだ。
たという訳だ。つまり常用漢字
表では字体(骨組み)を一種示
し、対して明朝体以外の漢字や
手書きの文字で、実際に書くと
では字体の正しさとは。現在は
常用漢字が制定されていて、新
聞、公文書等全てに使われてい
る。個人の使用に関しては制限・
限定するものではなくも、国内
の公的・一般的なものに関して
はその範囲で使って、という事
になっている。常用漢字とはと
い う と、「 常 用 漢 字 表 に 個 々 の
漢字の字体を、明朝体活字のう
ちの一種を例に用いて示した」
とある。しかし字体を示す事は
難しい。字体とは、本当は頭の
中 に 概 念 的 に あ る だ け だ か ら、
皆それぞれ形にして表すと違
う。頭の中のものを実際に示す
事は出来ないので、それで明朝
体活字の一種を例に用いて示し
講話抄録 ①
うのは何を基準に○×をつけて
いるのかがテーマ。結局○×が
ぶれるという事は、字体と字形
は楷書に限らない。草書でも画
の 長 短 に よ っ て 字 体 を 分 か つ。
風岡五城会長
「漢字の字体と字形」
の認識が皆違う、区別が明確に
ついていないというのが原因の
していくと読み易く書き易い字
底において、どんな形に書き表
だ。書写の指導というのは、文
字としての正しさ(字体)を根
正しい形だと指導してしまいが
ちだが、あくまで標準とするの
は字体であって字形ではないの
してここに出ている形が標準と
思い込みがちで、
混乱が生じる。
教師もこの表にある形が標準で
配当表」に示す漢字の字体を標
準とすること、とある。これを
読むと、つい字体と字形を混同
定めている訳だ。それ以外の文
字は、使われていても「正」に
対 し て 全 て 異 体 字 な の で あ り、
新字源(角川書店)によればそ
の種類は①本字②古字③別体字
④俗字⑤誤字の五つである。
又、
活字体に対して書写体という言
葉もある。
実際に手書きすると、
「高・髙」
「場・ 」のようにス
タイルが違う。このように複雑
でもあるが、一応漢字の正しい
骨組みというのは現在は、常用
漢字の字体が正しいとされてい
るのである。
これに対し、字形の正しさに
ついては学習指導要領に、漢字
の指導においては「学年別漢字
と認識する必要がある。
でなければと考えてはならない
本 来 は 字 体 と し て 見 る べ き で、
この配当表に出てくる字形の形
変わったりハネの有無の違いも
正 誤 の 基 準 で は な い し、「 木 」
が「ホ」の形の場合もまた然り。
ったりハラわなかったりは、字
形としてこのスタイルを表して
いるのであって、長短の長さが
っている。色々調べると、適当
に多く混在しているのだ。実は
止めたり止めなかったり、ハラ
になるかという事を導くものな
のである。そして字形の要素と
しては、①文字の概形②文字の
中心③画の長短④画と画の間⑤
点画の方向⑥点画の接し方⑦点
画の交わり方⑧左右の組み立て
方⑨上下の組み立て方⑩内外の
組み立て方、がある。ただこれ
を字形として正しいと捉える
と、
色々な処で矛盾が出てくる。
例 え ば「 園 」。 字 形 と し て は 中
身の所はハラってあるが、字体
と し て は 止 め て も 良 い。「 遠 」
の同じ部分は書的に止めて正
解。
「書」の横画はどれが最も
長 い か。 一 画 強 調 が 書 的 だ が、
配当表には二画と五画も長く載
(3)
ハネの根拠は隷書に依り、字
源から要るハネ、手書きで続け
て書く時に自然に出るハネ、な
ければならぬハネがあり、また
見た目のものもある(ハネによ
って文字の求心力を高める=字
形と文字感覚)のだ。
文字の特徴を知る―古典の臨
書をする時に何に気をつけたら
よいか―楷書の文字造形にはパ
ターンがある事を知っておく
と、古典の見方が違ってくると
思う。九成宮の背勢、顔氏の向
勢、孔子廟は向勢と言われるが
直勢も交じり複雑。蘇孝慈墓誌
は直勢で単純だ。この様に同じ
講話抄録 ②
「書道あれこれ」
豆子甲水之名誉会長
▼始めに何から話せばいいか難
しいが、風岡先生のお話を引き
継 ぐ 形 で 私 流 に 話 し た い。 今、
ボードに○と×を書いたが、こ
れを単なる符号と思うか、文字
と思うか。これは甲骨文字の占
漢 字 で も 造 形 的 に 特 徴 が あ る。
更 に、 ① 左 収 右 放 ② 左 放 右 収。
唐・北魏の楷書をこの観点から
みると、唐は①で北魏は②。時
代・地域により美意識が全然違
うので覚えておくと良い。
最後に、我々も字形を正確に
捉えるにおいて先入観、錯覚に
とらわれる事が多い。視点・角
度 を 変 え て 観 る こ と だ。 拡 大
したり正面から見たり離れた
り。日を替えたり裏から見たり
等々。やがて字形の特徴が解っ
てくるのだ。
(ホームページ掲載予定)
いで使われた、吉凶を表したも
の。▼ゲイの旧字体は二十画あ
る( 藝 )。 現 代 は( 芸 ) と な っ
て国がこれを正しいとした。書
というものは本来、漢字の発達
からすると右から書くのが本当
解けると死ぬ。また「念」とは
人が発する想い・心である。念
で、今は何故左から書くように
なったかというと、西洋文字の
影響に違いない。左書きの文章
を、国が良しと定めたので今は
こうなったと思うが、漢字の発
生から・・後ろ聞こえますか?
(笑)
▼ 皆 さ ん、 死 が 明 日 に 迫 る と、
人間はまずきっと慌てる。それ
を無くす為に書道は必要なの
だ。書というものは一体どうい
うものかという事を考えて欲し
い。書道にとって一番大切な事
を 文 字 一 字 で 表 す と、
「気」を
挙げたい。気は物質の最も細か
い目にも見えないもの。中国で
はこの気の思想というものは世
紀発生時代からのもので、気が
を込める―気・念
自分の抱いたもの
をぶつける―一念
欲しい。念という
込んで、元気いっ
ぱいの書を書いて
自らの体内に取り
しまうのだ。▼宇
宙に充満する気を
い。便利に慣れて
で あ る 」 と あ る。 一 度 便 利 に
なったものはやめるのが難し
をいかに放つか。書というのは、
一念込めなければ書とは言えな
い。だからその者の総てが封じ
込まれている、特に毛筆で書か
れたものは簡単に足で踏んだり
しないで欲しい。書を踏んだ者
は、明日から足が腐ってくると
昔は教えられたものだ。このよ
うに、書とは何かをしっかり知
って書くという事が肝心であ
る。▼教室にあるカレンダーの
一 月 に、
「 念 仏 と は、 自 己 を 発
見する事である」と書いてある。
私はカトリックだから念仏とは
関係ないが、善光寺、延暦寺な
ど仕事はお寺のものも多い。十
月 に は、
「世の中が便利になっ
て一番困っているのは実は人間
邕。この人が山に籠って一念込
を持っている。そして現代の文
字の根本を創ったのは後漢の蔡
▼なんせ書は四千年という歴史
いるが、頭から下は描いていな
い。 頭 が 一 番 の 勝 負 処 で あ る。
石一言録」には自画像を描いて
のは、手でなく頭で書くものだ
と十分知って頂きたい。私の「穿
なると思う。そして書というも
でもいいからこの書を一つ残
す、という者の書は本当の書に
というものは凄い力を持ってい
るものだ。気功の達人は気の力
で本当に倒す。物質でも形が緩
やかで自由な状態、例えば水は
ゆったりとあれば穏やかな川で
あるが、濁流となれば被害をも
たらす。形がわからなくなる程
その働きは強くなるのだ。気と
いうものは充満すると凄い力に
なる。気・念という言葉をしっ
かりと記憶しておいてもらいた
い。▼「生死大事」という有名
な墨蹟があるが、これは忘れて
はならない言葉。我々は、よく
よく考えてみると、今日あって
明日無き身。人間死ぬ時は死ぬ。
だから明日死んでもいい為にも
書を一生懸命したい。明日死ん
に 専 念 し た。 ▼「 非 理 法 権 天 」
本物か偽物か判るようにならな
いと。私は古いものを観ること
感 動 も 無 い 様 な 観 方 は だ め で、
た。そういう修練を受けて今の
私がある。良い書を観ても何の
本点画だけを教える教室があっ
ものだ。繊維会社に勤めた頃に
書を学んだが、その時の師に基
有る名筆をタダで見せてくれた
は必ず上手くなるでしょう。京
都に居た頃、祇園祭時、各戸に
めて書の事を考え、点画の基本
を確立した。点と線の「三折の
法」、音で例えるとトン・ツウ・
トンという三つの運動。これは
今も続けられている全ての原則
だ。▼遊びを求めるじゃなくて
芸術を志す者は、生きる事の価
値を創っていく事。何事も一生
懸命究めんとする処に価値があ
る。今回の私の話には資料が無
い。今回は、私の生の声を聴い
て頂きたい思いであります。く
り返すが書道は全て考えるとこ
ろから始まる事を知ってほし
い。眼を肥やして人の書を観て
自分の書と較べ合うのも勉強な
んだが、良い書を観ての大いな
る感動、そういう過去の在る人
(4)
らないと思う人は、もっともっ
と書を愛さねばいけない。▼書
の極意・免許皆伝とは何か。今
う事。それが最高の状態と思う
が、
人は裏切ることもする。が、
書は裏切らない。書が上手にな
は、どういう事か。恋愛は男女
が交際することだが、本当のそ
れは、寝ても覚めても相手を想
という言葉がある。人事はつま
るところ天命のまま動く、天を
欺く事はできないといった意だ
が、これが書道にも教え多き言
葉である。理屈に合わないもの
はダメだが理屈に合っても法則
に従わないものもダメだ。
「法」
が書の元。
「灋」
(法の旧字)一
度得たものを逃さない様、堤を
造って自分の水を確保した鹿か
らきた文字。書法を守らねばな
※
らない。今度「温故知新」の大
字揮毫をするが(四日市市文化
会館です)
、 こ れ は 芸 術・ 建 築
などどんなジャンルでも、一つ
の事を究めていく基本の言葉で
ある。▼書道を本当に愛すると
(ホームページ掲載予定)
時間を無駄にせずに全力を尽く
してほしい。今日も明日も、そ
し て 明 後 日 も と 願 っ て い ま す。
っている。その上に我々は生き
ている訳だ。だから書に臨む時、
明 日 が あ る と 絶 対 思 わ な い で、
て書いては、しないほうが良い
と思う。▼地球は我々を乗せて
太陽の周りを時速三千キロで走
今自分は宇宙の中心に居り、生
きて天の命によって今から一つ
の書を書くのだ。今迄学んでき
た事・師に言われた事を思い返
し、そして一念を出す。この書
が書けたら明日死んでもいい―
そういう気持ちになって一度墨
を付けたら、もう後のことは考
えない。一気に無心に書き上げ
た最初の一枚、これが本当の書
だ。
もう一枚もう一枚は捨てよ。
最初の一枚、これに勝負をかけ
る。そして書けた後必ず貼って
自分の書をみて、もっとこうと
思ったら初めからもう一度座り
直して一から始める。続けて行
う浅はかは捨てて欲しい。書い
要
約
者
・
加
藤
松
亭
※実際 の 大 字 揮 毫 で は「 人 中 之 龍 」
が書かれました。
日皆さんに覚えて帰って欲しい
のは、最初に言った、
「気・念」
。
正しき気を静かに自分の中に閉
じ込めるのだ。
紙の前に座って、
(5)
第 回
東 書 藝 小 品 展
って、心にス
ッと入ってく
自然で素直な
表情が四字句
の意味に重な
白で清々しい
作。 安 藤 副 会
長「虚往實歸」
役 員、 関 係 の 皆 様 に 敬 服。 額
三二点、軸二点。漢字作品の他
篆刻一、仮名二、漢字仮名交じ
り 一 の 内 容。 風 岡 会 長「 磊 落 」
渋いベージュ色の紙に現代的な
デフォルメ。和洋どちらにもと
け込みそうな快作。豆子名誉会
長「 李 白 句 」 細 身 の 線 条 で 静
かな強さの表
現。 広 め の 余
平成二十六年九月九日~十五日
栄・中日ギャラリー
盛夏の候、名誉会長、会長始
め九名の幹部先生と、東書藝本
展作品の評価で推薦を受けた
二五名の院人出品による第十八
回小品展が開催された。飾り付
けは、犬山一泊研修会を終えた
当日夕方のハードワーク。担当
18