既存都市・近郊自然の循環型再生大阪モデル

<成果概要>
研究課題 :「既存都市・近郊自然の循環型再生大阪モデル」
研究代表者 :NPO法人エコデザインネットワーク 池上俊郎
研究課題の位置づけと狙い
アジアを中心とする先進国の多極化は、環境負荷の増大する都市像に基づいてきた。 “歴史を有する旧来の都市がそのつどの
社会情勢に即して変遷し、優先的に存在した自然環境を並行して喪失していく工業都市像からの脱却”が課題である。今後の
都市モデルを、温帯の自然地勢を背景とする代表的工業都市大阪地区から探る。対象地 1=既存都市; 1000 万人を超える
周辺人口をもち都市インフラ整備が整う都市中心部である過密市街地。対象地 2=近郊自然;大阪湾岸部未利用埋立地
(約 1340ha)。前者では、ヒートアイランドの脱却を課題とし、後者では、植物・生命体に視野を置く、都市型農林水産業を中
心課題とする。目的とする都市像は、環境技術と自然・生命体の自己修復能力の共闘により構成される社会であり、アジアモ
デルとして国際的共有を目指した。 “緑化、食料、水循環システム構築、多様な自然クリーンエネルギー、ヒートアイランド脱却、
地球温暖化防止”手法等を実証提示し、“豊かな都市文化、都市景観の創造、循環型ライフスタイルの構築” を探る。
研究項目
1・戦略:BY DESIGN・生活美学としてのエコデザインにより創造する循環型社会。 2・達成目標:地球温暖化防止・LCCO2
現状比30%削減の達成を補完する手法の形成。3・実行計画:フラットな産業構造の形成・機械仕掛けから生命体利用へ
大阪地区の産業再生の方策を循環型都市農林水産業として示す。4・目的地:環境先進都市大阪の創造 5・結果:普遍性
を持った循環型都市再生アジアモデルの構築
研究成果
1)総論:われわれが棲む地域の潜在的に良好な方向性を引き出すことが、今後の都市の総合的な循環型再生モデルとなる。
生命や大気等自然が持つ力は人為的活動より大きい。内燃機関のエネルギー利用は続く。CO2 固定の役割を担う光合成を
基礎とする都市農林水産業を中心とし、バイオマス社会の実現可能性を示した。エコマテリアル等環境技術の進展は速い。エコ
デザインが強化する社会像をアニメーション、シミュレーション、実証モデル、芸術論、植物論等にて示した。国内外の協力者によ
る環境負荷軽減の試みと関係し、LINUX 型書き込みによる“いつでもどこでも何でも都市自然再生エコデザイン手法”を探った。
2)目的地:“環境先進都市大阪”像を、研究全体像を俯瞰するアニメーションの 2006ver,3 に表現した。1:既存都市領域:ヒー
トアイランド脱却を、“緑陰を通じた、BIGTREE・COOLHABIT・GREENWORK 構想”を中心として示した。熱エネルギー利用、
水の蒸散利用、植物系廃棄物の再資源化、クリーンエネルギー利用等を通じて果たすことを示した。対象地2:近郊自然領域:
湾岸未利用地に都市農林水産業のモデル施設を配置し、社会的有効性を視覚化した。工場型農業施設バイオニクス・プラン
テーションドーム、海域に海洋生物回帰施設マリーンプランテーションシステムを構想設置した。この両対象地を循環型として結
合させる役割を、“光合成能力の向上”、“再資源によるエネルギー取得”“食料生産”“環境アメニテイ”を中心とした。実証モデ
ルの概要、中之島地区でのヒ-トアイランド対策提案モデルをシミュレーションした 3 次元流体解析を含め成果としてまとめた。
3) 戦略:BY DESIGN “デザインの力” =“構想,技術,美学“よる統合を理論と実証を行った。芸術理論では、”場所論的視
点・生態学的デザインの感性・デザイン概念の拡大“が中心となった。デザイン論として、”日常生活の中のケーススタデイを通じ
た LCCO2 削減に向けてのデザイン提言と実施“が報告された。デザインによる COMMUNICATION が探られた。実証モデルでは
エコマテリアルによる機能増強による植物栽培、海洋生物回帰手法が探られた。太陽光利用効率増加、省エネルギーシステム
等総合的課題の解消により、形態・空間・装置の統合的デザイン効果を実証した。“地球温暖化防止”、“ヒートアイランド防
止”、“緑による環境創造”の同時達成可能性を示し、植物・生物とともに展開するランドスケープデザインの有効性を指摘した。
4)達成目標:LCCO2 現状比(2006 年比)30%削減の達成を補完する手法の形成。都市農林水産業、未利用エネルギ-に
よる寄与を示した。湾岸地域、建物屋上、街路、建物壁面、海水利用、潜熱輸送、個別建物、都市交通等を対象とする対
策メニューを作成した。研究中核となった SEASIDEFARAM の効果について数値化した。SEASIDEFARAM 単体 CO2 固定速
度との比較では、育成林の 6,34 倍、天然性林の 13,73 倍の CO2 固定速度が同一面積に展開する。工場化農業等植
物による CO2固定化のポテンシャルの大きさが指摘された。ヒートアイランドシミュレーション実証では、屋外の温度、湿度、風速、
圧力などを予測・実測し、3次元解析シミュレーションによる街区温熱環境評価モデル解析を行った。周辺道路面(H=1.5m)
において都市中心部では約2度程度、河川部では海風を取込み約5度程度の低減効果が判明した。
5)実行計画:フラットな産業構造の形成。大阪地区の産業再生を都市型農林水産業として示した。理想的循環型社会の達
成に、植物機能を最大限に利用、食料・資源・エネルギー源を射程とする近郊緑地、都市緑地、屋上農園、沿岸域の海産植
物・水産養殖等総合的物質循環システム構築の必要性を実証した。セラミック多孔質体による海水淡水化装置を試行した。
6)結果:“普遍性をもった循環型都市再生アジアモデルの構築 ”。 アジア欧米中近東各地 10 ヵ国 18 都市の市民行動・都市
比較を行った。都市の評価基準として以下の項目を設定した。000 都市像、010 都市生活、020 デザイン、030 交通 040
緑化・植物施設、050 建築と保存、060 廃棄物処理、070 ENERGY、080LECTURE 講演と意見交換。平行して
“Eco-Design is Design Itself”と題した講演を、主にデザイン系研究教育者・実践者・学生を対象として行った。アジア地区にお
けるエコデザインの今後のあり方と本研究の有効性を問うた。評価ファクターの位置づけを行うこととなった。各国は、食料、エネル
ギー、廃棄物等身近な課題を共有している。“地勢に基づき都市中心部・近郊双方における農林水産業を通じた都市再生”
を基本とする環境負荷削減を目指す本モデルの有効性が確認できた。訪問地に協力者・協力組織 NETWORK を構築した。