45 オバマ大統領とアメリカ議会

海
外
だ
よ
り
オバマ大統領とアメリカ議会
D.C.通信│連載45
古林秀峰
(JA全中農政部WTO・EPA 対策課<在ワシントン>)
●第114議会での通商分野の位置
ており、両院で過半数を握った共和党は「機
1 月 6 日、アメリカでは2017年 1 月までの
能する政治」へと事態を転換させることがで
2 年間を議会期とする第114議会が始まった。
きるかどうかが試されている。共和党は早々
過去 4 年間を振り返ると、上院は民主党、下
から精力的に議事運営に取り組み、反対派の
院では共和党が多数派を握り、深刻な政治停
イメージを払拭しようとしているが、同党が
滞に陥っていた。
重要課題と位置づけるエネルギー政策や移民
単純に成立した法律数の多寡で議会の機能
法改革への対応などは依然大統領や民主党と
ぶりを評価するのは乱暴だが、4 年前の第112
の着地点が見いだせていない。この点オバマ
議会では史上最低の284本、続く第113議会で
大統領と共和党執行部が共に「合意しうる分
もあわや最低記録を更新しそうだったのは記
野」のひとつとして挙げている通商分野は、
憶に新しい(下表)。
早期に具体的な成果を挙げたい共和党執行部
昨年秋の中間選挙では結果として共和党が
と、任期末が迫る中後世に残る業績づくりを
大勝したものの、戦後最低の投票率にとど
急ぐ大統領の思惑が重なる。とはいえ大統領
まったことは、共和党が支持を集めたという
の通商分野への姿勢に対し民主党内では強い
よりも深刻な政治停滞に愛想を尽かした有権
警戒感が渦巻いている。さらに現実的に通商
者が大統領側に厳しい評価を下したと言える
交渉をまとめるために不可欠と見られる貿易
のかもしれない。
促進権限(TPA)について、共和党内の保守
第114議会は始まったばかりとはいえ、既
強硬派は強い抵抗感を持っており、今後の展
に2016年の大統領選や国政選挙が視界に入っ
開は全く予断を許さない。
ふ っ しょく
表 最近の大統領の出身政党と議会(上院・下院)の多数党の関係
議会
期間
第114
2015 ‒ 2017
第113
2013 ‒ 2015
第112
2011 ‒ 2013
第111
2009 ‒ 2011
第110
2007 ‒ 2009
第109
2005 ‒ 2007
第108
2003 ‒ 2005
第107
2001 ‒ 2003
第106
1999 ‒ 2001
第105
1997 ‒ 1999
第104
1995 ‒ 1997
第103
1993 ‒ 1995
大統領
月刊 JA
2015/02
下院
多数党
共和党
オバマ大統領(民主党)
民主党
民主党
ブッシュ大統領(共和党)
法案成立数
?
共和党
296
284
民主党
民主党
385
460
483
共和党
共和党
504
383
604
クリントン大統領(民主党)
データ:GovTrack.us(https://www.govtrack.us/)より
32
上院
多数党
共和党
共和党
404
337
民主党
民主党
473