海 外 だ よ り D.C.通信│連載44 共和党主導の議会始まる 古林秀峰 (JA全中農政部WTO・EPA 対策課<在ワシントン>) ●中間選挙を制した共和党 として大統領と共和党との溝は深いものの、 11月 4 日にアメリカで中間選挙が行われた。 2016年の大統領選挙や国政選挙を踏まえれば 今回注目されていた上院選では、大方の予想 共和党側もまた強硬姿勢を貫いて再び政治停 以上に共和党が躍進し、 8 年ぶりに多数派へ 滞を引き起こすことは避けたいところだろう。 返り咲くこととなった。また、下院でも共和 さらに上院では法案審議を確実に進めるため 党が議席を伸ばし、両院ともに共和党が多数 の60議席には届いておらず、まして両院で大 派を握ることとなった(下図)。 統領拒否権を覆す 3 分の 2 の支持を集めるこ 日本の場合、首相は国会によって指名され とは至難の業であることから、一定の折り合 る注 1 ことから、実質的に衆議院の多数派政党 いをつけることが可能な分野で成果を挙げよ に属する国会議員が選出されるのに対し、ア うとするものと思われる。 メリカの場合、大統領は連邦議会議員とは別 この点、オバマ大統領と新たな上院多数党 のプロセスで選出される。このため仮に大統 院内総務となったマッコーネル上院議員は、 領の出身政党が多数派であっても、必ずしも 両者が折り合える分野として通商分野を挙げ 大統領の意向に議会の意向が沿うわけではな ており、環太平洋連携協定(TPP)交渉はも く、また、特に大統領の任期後半では大統領 ちろん、交渉展開に大きな影響を及ぼす大統 の出身政党と異なる政党が議会の多数派にな 領貿易促進権限(TPA)法案の行方が気にな ることも珍しいことではない注 2 。 る。当面は例年 1 月下旬に行われる大統領一 しかし、オバマ大統領は以前から議会対策 般教書演説に注目したい。 が得意ではないと言われており、今後共和党 多数派の両院とどのように向き合うのかが注 目される。 ●通商課題と2016年大統領選 移民法改革を含め多くの主要課題では依然 注 1:憲法第67条「内閣総理大臣は、国会議員の中から 国会の議決で、これを指名する……」 注 2:2006年の中間選挙で共和党が大敗し、ブッシュ大 統領(共和党)の任期の最後 2 年間は両院とも民 主党が多数派だった。クリントン大統領(民主党) は、就任直後の1994年の中間選挙で民主党が敗れ、 8 年の在任期間中 6 年が両院とも共和党多数派だっ た。 図 アメリカ議会の勢力図の変化(2014年12月12日時点) 【上院】 改選前 改選後 45 53 54 共和党 【下院】 改選前 改選後 38 月刊 JA 2015/01 44 民主党 2 独立(民主党より) 233 199 246 共和党 2 188 民主党 空席 未定 3 1
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