戸建住宅における省エネルギー技術導入に係わるコスト最適化

part.1
省エネルギー技術に関するコスト最適化
 コスト最適化の考え方
• 研究背景
 ZEB(Zero Energy Building)やZEH(Zero Energy House)など、  省エネルギー建物は一般的な建物と比べ、エネル
ギーにかかるコストを小さくできる。
省エネルギー建物の普及が求められている。
 標準建物と比べて、建物の生涯で削減が期待される
エネルギーコストdOCは、省エネルギー設計の経済的
メリットである。
A
一般的住宅
低性能断熱
単層ガラス窓
太陽光発電なし
B
環境性能の高い住宅
高断熱
高断熱窓
太陽光発電あり
・・・
例 2
例 1
初期投資
最小モデル
例 3
省エネルギー
性能最大モデル
コスト最適モデル
生涯エネルギー
コスト
施工時コスト
Reasonable?
Expensive?
初期投資は小さいが、
建物生涯を通じたエネルギー
コストは大きい
建物の初期投資と生涯
エネルギーコストの合計
値を最小化
エネルギー性能は高いが、
ライフサイクルコスト最小
化の観点では、例2に劣る
意思決定者
省エネ性能と施工コストはトレードオフ
の関係にある。
意思決定のための根拠が必要。
生涯エネルギーコスト削減
ポテンシャルを考慮した
コスト最小化
 環境性能の高い建物を計画した場合、建物の各要素
において初期投資が高額化する。
 省エネルギー性能向上によって得られる利益をコスト
として評価し、提示できなければ省エネルギー建物は
普及しない。
 建物の構成要素ごとに、投資を検討した場合、検討
すべき設計パターン数は膨大になる。そのためコスト
最適化の検討ではコストのシミュレーションに加え、
遺伝的アルゴリズム(G.A.)などの最適化ツールが用
いられる。
外壁断熱材
厚さ
50mm
75mm
100mm
125mm
窓
熱回収装置
単層ガラス
複層ガラス
真空ガラス
あり
なし
各部設計仕様を組み合わせたバリ
エーションは膨大
part.2
省エネルギー技術に関するコスト最適化
• 日本の戸建住宅へコスト最適化を適用
• シミュレーションの結果
[左]シミュレーション対象
としたIBEC標準住宅
• 東京においてIBEC標準住宅を50年間使用した場合にお
ける壁、屋根、床下のロックウール断熱材厚さのコスト
最適値を導出する。
※1
• 4段階の断熱材導入厚さにおける施工コスト、生涯エ
ネルギーコストを比較した結果、断熱材厚さ50mmの
際にコスト最適になることが示唆された。
• 省エネ投資に伴うライフサイクルコストへの影響として、
①施工時コストの増減(dIC)、②生涯エネルギーコストの
増減(dOC)、を考慮する。(※ともに標準モデルにおける
値を0とした相対値。)
<コスト計算フロー>
施工時コスト
材料費(¥)
+
施工費(¥)
+
空調用熱負荷
計算値(kWh)
空調用年間
消費電力(kWh)
管理費(¥)
運用1年目の空調用
エネルギーコスト(¥)
以上3要素の加算として施
工時コストを産出
ライフサイクル
エネルギーコスト(¥)
熱負荷
シミュレー
ションによる
1/COP倍
電力量
料金換算
運用年度ご
とにエネル
ギー価格上
昇を設定
現在価値換
算し、積算
[札幌]
ライフサイクルコストは断熱材
厚さ50mm~150mmで横ばいで
最小値をとる
[東京ほか]
エネルギー価格上昇率を
2%以上と仮定すると断熱材
厚さ50mmでコスト最適
[那覇]
断熱材導入に経済的
メリットは無い
• 異なる地域で断熱材導入のコスト最適厚さを計算した
結果、札幌、那覇では他の都市と異なるライフサイク
ルコストの推移が見られた。
※1 計算時に仮定する年間エネルギー価格上昇率を1%(CASE 1)
2%(CASE 2),3%(CASE 3)とした。
※2 札幌のシミュレーションでは、全館暖房を仮定して熱負荷計
算を行った。(他の都市は部分間欠運転を仮定)