院長の一言

院長の一言
平成 21 年 6 月号の東三河情報誌「はなまる 6 月号広告」に、「院長からの一言」が掲載されま
した。
掲載広告はこちら
喫煙は、不妊症の一番の危険因子として言うまでも有りません。また、本人のみならず夫の喫煙
も同程度の危険性が有ります。そして、妊娠が解ってから禁煙したのでは全く意味が無く、妊娠
する前より禁煙をする事が必要です。それは、卵子と精子が卵巣・精巣の中で発育する時より、
正常な状態の卵子や精子になれるかが決まってしまうからです。また、運良く妊娠が成立したと
しても、流産したり、胎児の先天異常を発生する確率が高くなる危険因子である事もしっかりと
記憶しておいて下さい。
この件に対する解説は、以下の如くです。
人の卵子・精子は、人の体内で、2∼3カ月前より発育しています。卵子や、精子はその発育の
為に沢山の酸素や栄養を必要とします。喫煙は、体の末梢血管を収縮させる上、血液中のヘモグ
ロビンの酸素濃度が低下し、常に体の末梢の酸素不足、栄養不足状態が発生します。卵巣や精巣
は細い末梢血管で栄養を供給しており、特に酸素と栄養を必要とする臓器です。その為、卵子や
精子中のエネルギーが貯留されているミトコンドリアの発育が悪くなり、見た目普通な卵子や精
子に育ったとしても、その卵子や精子の持つ細胞分裂能力が低下します。
受精卵は、細胞内が盛んに分裂し、約 1 週間で孵化し子宮の中に着床、その後約 9 ヶ月で 3000g
程に発育し、出生後約 80 年以上を生き永らえる能力が備わっていなければなりません。単純に
考えてもとても沢山のエネルギーが必要とされるものなのです。その受精卵の発育するエネルギ
ーにストップをかける最悪の危険因子が喫煙なのです。
体外受精の成功率を見ても、本人が喫煙していても、夫が喫煙していてもその成功率は同様に非
喫煙者の約半分になるというデータも有ります。これは、妻が夫のタバコの煙を受動喫煙する危
険性より、夫自身の精子の能力を低下させた為であると考えます。
妊娠に至ったとしても、流早産率の増加、胎児の発育障害(低体重)、先天異常(特に脳の障害:
無脳症、水頭症など)の発生率の増加が報告されております。喫煙は、何においても妊娠には不
必要なものなのです。
他院で体外授精(顕微授精)を行っても妊娠しない為、当院に転院してきた症例で、喫煙を中止
した上で受胎指導のみで妊娠に至る患者さんが頻回に見受けられます。
不妊症を治療して行くに当たり、夫婦共に喫煙を中止する事が第一条件になる事は、言うまでも
有りません。