1. 社会背景 2. 問題提起 3. 目的 4. 敷地選定、 敷地情報 5. 提案

子どもが織りなすヨハク時間
BR11061 藤岡知夏
指導教員 澤田英行
1. 社会背景
現代の子どもたちの生活を覗くと、 常に大人に手を差
しのべられ、 制度化された毎日を過ごしている。
かつての日本には “向こう三軒両隣” の言葉があるよう
に子どもは家族だけでなく近所の大人たちに見守られな
がら育った。 学校では机の上での制度化された勉強を
主に学び、 放課後は家の周りが 「人生の学び」 の場で
あった。 現代はそのご近所付き合いが希薄化し、 さらに
学力社会に伴い子どもたちの放課後の過ごし方は学習
塾が中心となっているのではないだろうか。
4. 敷地選定、 敷地情報
□対象敷地 : 埼玉県さいたま市南区南浦和 2 丁目
JR 南浦和駅東口駅前の大通り付近
□用途地域 : 商業地域
□容積率 : 400%
□建ぺい率 : 80%
谷田小学校
善前小学校
大谷場中学校
JR武蔵野線
大谷場小学校
住宅地
岸中学校
南浦和駅
UR団地
小谷場中学校
住宅地
fig.1 昭和時代の子どもたちの日常(1
JR京浜東北線
fig.2 現代の子どもたちの日常 (2
600m
2. 問題提起
現代の子どもに必要な教育とは何だろうか。 放課後の
時間をも制度化された学問に当てている子どもたちは 「人
生の学び」 をどこで学ぶのだろう。 本来 「人生の学び」
の場となる公園から、 近年子どもの姿が減っている。 毎
日の生活が管理され、 自らの興味や意志で行動すること
が減ってしまってはいないだろうか。
fig.5 南浦和広域地図
fig.6 駅前大通り
fig.7 対象敷地 a
fig.8 対象敷地 b
fig.9 対象敷地 c
■4-1. 住宅地としての南浦和
南浦和は一軒家や団地の広がる住宅地であり、 少子化
が進む中でも子どもの数は安定している。 住宅の周辺に
は公園が多く点在しているが、 利用している子どもの姿は
あまり見られない。
(3
■4-2. 学力が高い街としての浦和地区
浦和地区は学校の教育水準が高いことで知られており、
駅前には 35 もの学習塾が存在している。 小学校もレベル
が高く、 子どもの小学校のためにこの地区に引っ越してく
る家庭も多い。
fig.3 敷地周辺の公園
fig.4 公園に子どもの気配がない
3. 目的
制度化された教育や、 大人に管理された生活の中で
は体験できない学びの空間を創造する。 “空間の中で子
どもが自発的に興味を持ち、 行動すること” をこの場所
での学びの目的とし、 時間 (スケジュール) ・ 思考 ・ 行
動が与えられることが当たり前になっている子どもたちに
自ら考えるさせる仕掛けとなる建築をデザインする。
■4-3. “街のヨハク” の発見
駅前には銀行 ・ 塾 ・ パチンコが軸に構成された中層ビ
ルが建ち並ぶ商業エリアがある。 この中にパーキングエリ
アが多く点在している。 この空間に“街のヨハク”を感じた。
5. 提案
子どもの “ヨハク時間” を過ごす工房を提案する。
制度化された時間のすき間 “ヨハク時間” を過ごす場所
をパーキングエリアという “街のヨハク” に埋め込む。 子
どもの集まりやすい駅前にこの施設を設けることで、 現代
の忙しい子どもたちの日常に入り込む。
6. 設計の手掛かり
■6-1. 曲面の利用
制度化されたモノ ・ コトに対抗し、 柔軟性や未完成の
イメージを与える曲面を用いて設計する。
7. 設計ダイアグラム
90度にそびえ立つビル
箱内に押し込こめられている個々
制度化されたモノ…90 度にそびえ立つ周辺ビル
個々をバラバラにする
制度化されたコト…学校や塾などの教育制度
枠にとらわれず
個々が思い思いに配置される
重なり合った場所が干渉し合う
工房
90°にそびえ立つ建物のすき間に、 ひとの生活に寄り添った建築をつくる
工房
待合所
展示室
広場
道具屋
駄菓子屋
一枚の布を柔らかくかぶせる ■6-2. 3 敷地の性格付け
周辺敷地から各々の敷地の性格を読み取り、 ここで行
われる行動に反映する。
8. 構成ダイアグラム
出会いの空間
粘土などを使った動的な工
街を眺める空間
対象敷地
対象敷地
房がある場所。
駄菓子屋やおじいさんの集
奥の空間
まる空間もあり、 多世代のコ
ミュニケーションが生まれる。
出会いの空間
対象敷地
街を眺める空間
絵の工房や本棚の
広場など、 静的な
奥の空間
学習塾
工房がある場所。
手芸の工房が
公園
産地直送市場が
ある場所。
あったりと、 街の人
個の空間を楽し
も入り込む場。
む。
南浦和駅
0
20
50
100 (m)
fig.10 対象敷地周辺地図
□出会いの空間
日用品店が近隣にあり、 人の出入りの盛んな場。
多世代の人々との出会いが生まれる。
□街を眺める空間
大通りから少し上がった坂道上の地。 いつもの景色
を少し上がって見ることで新たな発見や気付きが起
こる。
□奥の空間
人通りが少なく、 日陰である場。
3 つの敷地で異なる体験が出来る空間を作る。
空間の大きさ 空間の疎密
■6-3. 空間の大きさと疎密
3 敷地の性格の違いを表現するにあたり、 空間の大き
さと疎密に着目する。
人の行動と空間
疎
密
大空間がゆったりと配置される
個のスペース
が密集する
集団
個人
対話
感性
動的
静的
周りに開く
周りから閉じる
出典 ・ 引用
(1. 道草ギャラリー
(閲覧日 : 2015 年 1 月 20 日、 http://mitikusag.exblog.jp/i30/)
(2. 進学塾 田中学習会 『Life Learning』
(閲覧日 : 2015 年 1 月 20 日、
http://www.tanakagakushukai.com/blog/?paged=2)
(3. さいたまの観光 ・ 国際交流情報
参考文献
・ 高橋鷹志 : 子どもを育てるたてもの学, チャイルド本社, 2007
・ 東孝光 : 住まいと子どもの居場所 100 章, 鹿島出版会, 1987
・ しみん教育研究会 : 建築が教育を変える 福井市至民中の学校づくり物語,
鹿島出版会, 2009
・ 早稲田大学渡辺仁史研究室 : 行動をデザインする, 彰国社, 2009