第 6 章 河川土工の検査

第6章
第 6.1 節
概
河川土工の検査
説
検査とは工事が完成または部分的に完了した段階において工事が契約ど
お り 実 施 さ れ て い る か ど う か を 観 察 ,検 測 ,試 験 ,そ の ほ か の 手 段 に よ っ て 確
認 し 、合 格 ま た は 不 合 格 の 判 定 を 下 す こ と で あ る 。工 事 検 査 は 請 負 契 約 に お
け る 工 事 目 的 物 の 出 来 形・品 質 を 保 証 す る こ と を 主 な 目 的 と し て 実 施 さ れ る
ことになる。
河川構造物の品質は均一性を要求するものであり、細部を重視するあま
り全体を見失うことがないようにすることが大切である。このため出来形
にしても他の部分が過大であるから一部に過小があっても全体の量的には
均衡を保っているという考え方は絶対に許されるものではない。
検査の方法そのものは特別に変ったものではなく、工事が設計,仕様
書に示されたとおりに実施され、目的とされた構造物ができているかど
うかを確認することである。なお、工事担当者は検査に先立って検査が
効率よく適正に行われるよう準備しておかなければならない。
公共土木工事においては請負契約の適正な履行の確保と引渡し(給付)
を受けるための確認が不可欠であることから、会計法などにおいて国や地
方自治体などの監督や検査が義務付けられている。また、公共土木工事の
目的物は公共施設であるので工事の遅延や完成後の瑕疵発生を防止し、工
事の能率的な施工と技術水準の向上を図るため技術上の検査も重要である。
検 査 の 順 序 は 工 種 ,検 査 員 ,検 査 時 の 状 況 に よ っ て 異 な る が 、 一 般 的 な 例
と し て は 図 6.1.1 の よ う な 流 れ が あ る 。
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書 類 検 査
実 地 検 査
(受検に必要なもの)
出来形図、出来形数量計算書、
出来形管理データ、測定機器類
(受検に必要なもの)
検査関係書類
1
2
3
4
5
6
7
設
計
図
書
契
約
関
係
書
類
施
工
計
画
書
工
程
管
理
関
係
工
事
打
合
せ
関
係
品
質
管
理
関
係
出
来
形
管
理
関
係
図 6.1.1
第 6.2 節
8
9
工
事
写
真
完
成
図
・
そ
の
他
出
来
形
測
定
品
質(
工
・
出事
来箇
ば所
え全
確般
認)
検査の順序の例
出来形検査の方法
出 来 形 検 査 の 対 象 に は 築 堤 工 ,掘 削 工 ,浚 渫 工 な ど が あ る 。
6.2.1
築堤工の出来形検査
築 堤 工 事 で は 一 般 に 20m 毎 に 測 点 を 置 い て い る こ と が 多 く 、 そ れ を 利
用して築堤盛土延長の縦断測定、代表的測点での横断測定を行う。縦断
は一定勾配の場合が多いのである程度目視でも確認できるから、概ね
100m に 1 箇 所 の 割 合 で 基 準 高 を 測 定 し て お く 。横 断 測 定 を 行 う 代 表 的 断
面 も 概 ね 50m に 1 箇 所 く ら い で も よ い よ う で あ る が 、 曲 線 部 な ど 目 視 が
困難な場合は適宜その数を増さなければならない。
横断測定はレベルおよびスケールを用いて実施するものとする。築堤
工の検査で注意しなければならないことは次のとおりである。
①
築堤工は天端に余盛りを施工し、小段に片勾配をつけることを原
則としているので、レベルで測定するときにはその点に留意しな
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ければならない。
②
のり面の仕上り具合は目視で検査する。とくにのり面の不陸には
注意しなければならない。
③
4 割より急な地盤上に片盛土する場合、原地盤の段切りが確実に
施工されていたかどうか写真にて確認しなければならない。
④
目視により高さを検査する場合、盛土部のたるみ、軟弱地盤上の
盛土の沈下などに注意しなければならない。
6.2.2
掘削工の出来形検査
掘削の目的は一般に河積を増大させるか、高水敷の整正のために低水
路河床もしくは高水敷を掘削するものであるから、検査対象面積として
は比較的広大な場合が多い。また、検査の方法としては掘削する土量の
検収ではなく掘削された跡坪の検測、すなわち断面の計測である場合が
ほとんどである。代表的測点は検査官の経験によるが、直線で見通しの
良 い 場 合 1 0 0 m に 1 箇 所 く ら い が 適 当 で あ る 。代 表 的 測 点 を 主 体 に 基 準 高 ,
距 離 ,横 断 等 を 測 定 し て 検 査 し 、 代 表 的 測 点 間 は 目 視 に よ り 検 査 す る 。
掘削工の検査にあたっては次のような留意点がある。
①
代表的測点間の凹凸に注意する。
②
高 水 敷 の よ う に 横 断 幅 の 長 い 場 合 は 10m に 1 箇 所 の 割 合 で 高 さ を
測定する。
③
掘削ののり面が長い場合、または曲線部の内側ではのり面が張り
出していることがあるから注意を要する。
④
掘削完了後湛水していることがあるので、基準高測定および横断
測量は深浅測量によることがある。
⑤
岩盤掘削も概ね上記の方法により検査する。
⑥
掘削残土の捨土場所が決められており、その捨土のり面の崩壊防
止について仕様されている場合などでは、捨土場所の検査も行わ
なければならない。
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6.2.3
浚渫工の出来形検査
浚渫工の検査は跡坪検収を原則とするが、浚渫土量の検収も併用して
行っておく。また、でき得るなら浚渫ポンプの稼動時間もチェックして
おくとよい。
跡 坪 検 収 は 浚 渫 箇 所 の 深 浅 測 量 を 実 施 す る 。測 点 は 概 ね 2 0 ㎡ に 1 箇 所
の割合で選定する。このとき計画断面以上の過掘りがあっても、その部
分は出来高として認めないのが一般である。また浚渫済みの箇所であっ
て も 、そ の 部 分 に 堆 砂 が あ っ た 場 合 は 、中 間 検 査 ( 出 来 形 確 認 が 終 了 し た
箇 所 )が 完 了 し て い な い 場 合 は 竣 工 と 見 な さ な い 。
浚渫土量の検収は含水比の違いなどから必ずしも精度が高いとはいえ
な い が 、一 般 の 横 断 測 量 を 実 施 し て 土 量 計 算 を 行 い 、跡 坪 検 収 と 対 比 し て
お く 。2 方 法 の 測 定 結 果 が 甚 だ し く 異 な っ て い た 場 合 再 測 定 の 必 要 が あ る 。
しかし、水中のことゆえ工事竣功と検査との間に時間の差が大きいと
必ずしも精度がよくないので、監督中の中間検査を併用しなければなら
ない。
第 6.3 節
品質検査方法
品質検査は仕様書にもとづき施工者の提出した資料をもとに発注者が行
う の が 通 常 で あ る が 、こ れ と は 別 に 発 注 者 自 ら が 品 質 試 験 を 行 っ て 検 査 す る
こ と も あ る 。い ず れ の 場 合 も 資 料 の も と と な る 試 験 や 測 定 な ど は 信 頼 で き る
も の で あ る こ と が 前 提 で あ り 、熟 練 し た 技 術 者 の 指 導 に よ っ て 適 正 に 行 わ れ
ることが必要である。
品 質 検 査 の 対 象 に は 築 堤 土 質 ,ま き 出 し 厚 さ ,締 固 め 度 な ど が あ る 。
1)
築堤土質
仕様書などにより盛土材の管理試験を実施するように規定している場
合は、その記録を確認して検査するのが一般的である。土取場を指定し
ている場合はその土取場から搬入されたかどうかを確認する。また仕様
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書 に 盛 立 時 の 土 の 条 件 、す な わ ち 降 雨 ,降 雪 時 の 休 工 な ど が あ る 場 合 、そ
の条件が守られていたかどうかの確認も必要である。
な お 、盛 土 材 料 の 品 質 が 万 一 不 合 格 で あ っ た 場 合 の 処 置 は 極 め て 難 し く 、
施 工 当 初 お よ び 中 間 段 階 で 品 質 の 確 認 ,土 取 場 の 調 査 な ど を 確 実 に 実 施
しておくことが何よりも必要である。
2)
まき出し厚さ
築 堤 工 事 の 際 に は 高 ま き は 最 も 注 意 し な け れ ば な ら ず 、し た が っ て 、
仕様書に規定されている厚さどおりに、または試験盛土の結果どおり
に施工されているかどうかを主に写真によって確認する。一般土の場
合 、 ま き 出 し 厚 は 35~ 45 ㎝ で あ る 。
3)
締固め
盛土工事の竣功後に締固め度の検査をする場合、盛土内部の締固め
度の現地確認は事実上困難なので、監督員立合いもしくは監督員確認
の品質管理の記録により確認を行う。このとき品質管理の記録に不審
な点や品質のバラツキが多い場合などでは、現地試験を実施する。現
地試験は表面に近いところしかとれないし、その上いろいろ困難なこ
とも多いと思われる。しかし、不審な点が見られた場合にはその解明
に勇気をもってあたらなければならない。
工事施工中の品質管理としての締固め度の試験については乾燥密度
による方法,飽和度または空気間隙率による方法,強度特性による方
法,締固め機種および締固め回数による方法などがある。
施工規定により品質管理を行った場合には機械の使用日報などのア
ワ ー メ ー タ な ど に よ り 確 認 す る が 、ブ ル ド ー ザ で は 敷 な ら し と 締 固 め の
両方に併用されている場合があるので注意が必要である。
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第 6.4 節
合格判定規準
出来形にしろ、品質にしろ、できあがった目的物がすべて設計寸法ど
おり出来あがっていることは稀である。そのため目的物の効用が全うさ
れることを最大の条件として、設計値を中心にしてある範囲の許容値を
設けている。
許容される誤差の範囲は工事各部分の必要な機能,施工性,経済性な
どから決められるものであるから、工事の性格,内容および施工の条件
(使用材料,施工場所,施工方法,施工者)によって異なるが、土工に
おいては、特別のものを除けば、過去の実績から調査して定めることが
できる。合否の判定基準はあらかじめ仕様書などで示し、契約条件とす
ることが必要である。
1)
規格値による方法
原 則 と し て 全 数 検 査 と し 、検 査 時 の 測 定 値 の い ず れ も 規 格 値 ( 設 計 図 ,
仕 様 書 に 示 さ れ た 設 計 値 に 対 す る 許 容 誤 差 )を 満 足 し て い れ ば 合 格 で
ある。一般には、構造物の外形寸法などの検査に用いられる。
2)
合格判定値による方法
抜取検査の場合、ロットの大きさおよびロットごとの抜取個数を定
めて測定し、その結果が下記を満足していれば合格である。
上限合格判定値≧測定値の平均≧下限合格判定値
この方法は一般に品質などの検査に用いられる。
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