12 構造強度設計

H27年度 材料力学Ⅱ
12 構造強度設計
12.1 構造強度設計とは
12.2 塑性崩壊
12.3 疲労設計
H27-7/3
早川
(H27 材力Ⅱ)
12.1 構造強度設計とは?
破損 : 構造物が本来の機能を果たせなくなる状態
・構造破損
・変形破損
荷重・荷重条件
熱荷重
静的
(高温構造物)
サブクリープ
変動
荷重条件
漸腐
進増 食
塑行崩 疲
性性壊 労
変
形
(
塑性崩壊
環 脆座 延
境性 性
の 破屈 破
影壊 裂
響
他
クリープ
)
図12.1 代表的な破損の様式
低
サ
イ
ク
ル
疲
労
高
サ
イ
ク
ル
疲
労
12.2 塑性崩壊とその評価法 (極限解析)
12.2.1 塑性崩壊とは
塑性崩壊 : 構造物として使用に耐えないほどの過度の
塑性変形 → 全断面降伏
(壊れた状態ではない!)
前提 :
弾完全塑性材
σ
ひずみ硬化あり
σy
ひずみ硬化なし
E
0
σy : 降伏強さ
E : ヤング率
ε
図12.3 弾完全塑性材応力-ひずみ曲線
初期降伏 Py
塑性域
塑性域
塑性域
塑性崩壊 Pc
図12-2 円孔を含む帯板の塑性崩壊
12.2.2 軸力と曲げを受けるはりの塑性崩壊
( 断面 : 高さ t ×巾 b , 降伏強さσy )
①軸力を受けるはり (膜降伏)
t
σ<σy
N
N
Nc
⇒
0
全断面降伏(崩壊)
Nc=σybt
0
弾性
Ne
軸力
Nc
Ne
図12-4
σy
Nc
無制限塑性流れ
0
伸び
②曲げを受けるはり (塑性関節、ヒンジ)
●
t
M=Mc
θ=∞
M
M
塑性関節
0
σ<σ y
σy
⇒
0
Me
弾性
σy
⇒
⇒
-σy 0
My
初期降伏
σy
-σy 0
-σy 0
M py
Mc=σy bt2/4
全断面降伏(崩壊)
部分降伏
曲げモーメント
図12-5
Mc
My
0
回転自由
Mpy
回転角θ
③軸力と曲げを同時に受けるはり (塑性関節、ヒンジ)
σ<σy
N
N
M
M
0
図心
0
0
Me
弾性
σy
⇒
⇒
中立軸
断面
σy
σ<σy
My
初期降伏
σy
⇒
-σy 0
M py
部分降伏
-σy 0
Mc
全断面降伏(崩壊)
曲げモーメント
M
c
My
M
py
図12-6
0
回転角θ
σy
N
N
M
-σy
η
t
M
0
図12-7 曲げ+軸力を受けるはりの全断面降伏状態
軸力およびモーメントのつり合い → 崩壊限界条件式
2

σm  
σb 3 
  (12-4)
= 1-
σy 2 
σy  



σm=
N
6M
,σb= 2
bt
bt
<練習問題1>
図1に示す自由端Aに軸力Nと水平力Pが負荷される片持ちはり構造について;
(1)軸力Nだけが負荷される場合の崩壊限界荷重Nc
(2)水平力Pだけが負荷される場合の下記の諸量
(ⅰ)初期降伏荷重Py (ⅱ)崩壊限界荷重Pc (ⅲ)Pc/Pyの値
N
A
P
はり(長方形断面 )
寸法 :
厚さ t =20mm
巾 b=9mm
長さ L =500mm
L
t
B
図1
材料 :
降伏強さσy=250MPa
(弾完全塑性材)
<練習問題1の解答>
σy
σm=σy
( 1 ) 全断面一様降伏 (膜降伏)
0
Nc=σybt=250×9×20=45000 N
(1)
(2 )
σb=σ y
ⅰ) 表面降伏 (初期降伏 )
2
σy
M y=σy (bt /6) , M y=P yL
0
したがって 、 PyL=σy(bt 2/6)
ⅰ)
∴ P y=σy(bt2 /6L)
2
= 250×(9×20 /(6×500))=300 N
ⅱ ) 全断面降伏 (ヒンジ )
崩壊限界
σy
2
M
=P
L
Mc=σy (bt /4) , c c
0
したがって 、 PcL=σy(bt 2/4)
2
ⅱ)
∴ P c=σy(bt /4L)
2
= 250×(9×20 /(4×500))=450 N
ⅲ ) P c/Py(=Mc/M y)=450/300=1.5
-σy
-σy
12.3 SN線図による疲労設計
12.3.1 構造物の疲労とは?
疲労破壊のメカニズム
金属材料に繰返し応力が負荷→金属結晶中にすべり線発生
→すべり帯に沿って表面切欠きが形成→微小き裂へ成長
→き裂どうしが結合し大きなき裂に成長→金属材料が破壊
スタート
N(i-1)
疲労き裂
主応力方向
N(i)
11
11
12.3.2 疲労強度評価の基礎(応力変動)
σ ma x 最大応力
応力振幅
σ a =σ r /2
σ ma x
σ r =σ ma x -σ mi n 応力範囲
0
σ a =σ ma x
σ m =0
σ m =(σ ma x +σ mi n )/2
両振
平均応力
σ mi n 最小応力
σ ma x
(a) 応力変動の名称
σ a =σ ma x /2
σ m =σ ma x /2
0
片振
(b) 両振と片振
図12-11 応力変動の名称
12.3.3 SN線図
S1
応力振幅 S
N1(寿命小):104程度以下
S2
N2(寿命大):105~106以上
S1 大
●
S2 小
■
N1 小
10
10 2
10 3
N2 大
10 4
10 5
10 6
繰返し回数 N
低サイクル疲労域
高サイクル疲労域
”明確な境界はない”
疲労線図 (SN線図)
(a) 高サイクル疲労線図
1000
応力振幅 S
時間強度
(MPa)
σ
6
時間強度(例:σ は10
6
時間強度)
6
疲労限度
σw
100
1.00E+05
1.00E+06
1.00E+07
1.00E+08
破断繰返し回数 N
図12-12 高サイクル疲労線図
1.00E+09
12.3.4 疲労強度への平均応力の影響
(a)疲労限度に与える影響と評価法(高サイクル疲労)
250
疲労限度
σ
w
σ200
応力振幅
平均応力
w0 ●
150
修正疲労
限度σ100
w‘
σw‘=σw0(1-σm/σu) (12-6)
50
0
0
●
0
100
200
平均応力σ
m 300
400
500
引張強さσ
u
図12-18 修正グッドマン線図
12.3.6 疲労限設計
(応力計算) (疲労強度データ)
変動応力のパターンの決定
(σa ,σm)
平滑試験片の疲労限度
σw0の決定(両振)
(σm)
平均応力の影響
修正グッドマン
σ
σw ’=σw0(1- m )
σu
修正疲労限度
σw’の決定
影響因子の影響
切欠係数の考慮
安全率の考慮
影響因子 : 寸法効果ζ1、表面状況ζ2
切欠係数β または 応力集中係数α
安全率 : 材料関連fm、荷重・応力関連fs
設計疲労限度
σwの決定
(σa)
強度評価
σa<σw
切欠係数
=平滑材の疲労限度/切欠材の疲労限度
ζζ
1
σw=σw ’ 1 2 ・
β f mf s
図12-24 疲労限設計の
概略手順
影響因子 : 寸法効果ζ1、について(参考)
“試験片の寸法が大きくなる(実体)ほど疲労限度が低下する。“
●
(10Φ試験片基準の例)
<練習問題1 : 疲労限設計 >
図1のフックネジ部について、下記の評価条件に対して、疲労限設計により
許容引張荷重Taを求めよ。
(評価条件)
・荷重/応力の変動パターンは図2による。
・材料 引張強さσu =600MPa,両振疲労限度σw0=200MPa
・ネジ部の応力集中係数 α=4
(谷径d=20mmのネジ底断面の公称応力σ0基準)
・荷重に対する安全率 η=π
d
荷重
T
応力
σmax
σa
α
σm
T
図 1 荷役用フック
T (荷役引張荷重 )
σa
0
時間
図2 荷重/応力の変動パターン
<練習問題1 解答>
荷役荷重 T=ηTa=πTa
2
ネジ底断面の公称応力 σ0=T/A=πTa/(20 π/4)=Ta/100
最大応力 σmax=ασ0=4×(Ta/100)=Ta/25
応力変動は片振だから、
応力振幅σa=平均応力σm=σmax/2=Ta/50
平均応力による修正疲労限度σ w’を求める。
片振の疲労限度 σ w’=σ w0(1-σ a/σ u)
片振の条件 : σ w’ =σ a を使うと、
σ w’=σ w0 σ u/(σ w0+σ u)=600×200/(600+200)=150MPa
他の影響因子は考慮しないから、σ w=σ w’
判定条件 : σ a <σ w より、
Ta /50< 150
∴ T a <50×150=7500
Ta=7500N=7.5 kN
許容引張荷重 :
(別解) 荷役荷重Tに対して上記概略手順どおりに計算してもよい。