これからの媒体について

巻 頭 言 これからの媒体について
岩出 斉(昭和電工)
これまで長年にわたりハードディスク製造業に従事し、ジェットコースターに乗っているか
のような上がり下がりの激しい業績を経験してきた。この経験を踏まえ、この巻頭言にあたり、
“これからの媒体について”述べたい。
ご存知の通り、ハードディスクの高記録密度化は止まるところを知らず、幾度となく、進化
を遂げてきた。直近では、2004 年あたりからドライブの世代交代が緩やかになり、一度は落
ち着いていた高記録密度化が、弊社の 2006 年 CQ2 での垂直磁気記録媒体の量産開始を皮切り
に、再び早くなってきたように感じる。
目下、現状媒体をベースにした高記録密度化の開発がおこなわれており、 “Advanced CGC
媒体”
、
”ECC 媒体“といった新しいコンセプトの媒体が誕生しつつある。この方法では、現
状の延長線上のプロセスを採用する為、現有の設備に多額の投資をする必要が無く、後述する
ディスクリート媒体等よりも安いコストが期待できる。まずは、これらの媒体の量産開始であ
る。問題は、これらの媒体、さらに進化したバージョンだけで、どこまで高密度化を達成でき
るかである。限界は 600Gbpsi か 1Tbpsi か。各社が技術開発にしのぎを削っている。これま
で不撓不屈できた“媒体魂”の出番である。更なる進化を遂げる為、一歩、抜き出た技術開発
をおこないたい。
そして、いよいよ、“これらの現状媒体をベースにした性能向上によって達成できる範囲”
を超えた場合の技術として、ディスクリート媒体、ビットパターン媒体、熱アシスト記録が候
補になってくる。いずれも、これまでの技術とはまったく違う極細描画やインプリントといっ
た加工的要素が求められており、これまでの媒体の常識を覆すものになるだろう。リードライ
ト性能、信頼性能とも高い技術の確立が求められるため、現時点の技術では、プロセスは複雑
になりそうである。高いコストの問題を解決する為、①簡素なプロセス ②簡素な工程管理 ③高信頼性 かつ 高スループット かつ 安価な設備が要求されている。多くの基本的な技術開発
がまだまだ求められる。さらに、近い将来の出番に備えて、この分野の量産技術をしっかり固
めておく必要がある。
当面の間は、無理をしながらも、限られた経営資源を両方の分野に同じように投入して技術
開発をすすめ、短期間で量産技術を仕上げていかなければならない。マーケット動向、ドライ
ブやヘッドの技術動向にしっかりとアンテナを伸ばして、状況を見、方向性を判断していかな
ければならない。市場で勝つためのしくみづくりも必要である。安息の日々を楽しめるのは、
まだ先のこととなりそうである。そして、そろそろ、このあたりで、相対的な競争に終止符を
打ちたい。来る世代において、媒体の世界で、絶対的な“高品質”、
“低コスト”を実現したい。
IDEMA Japan News No.85