建設構造設計製図 その 1 課題:設計条件のもとで要求性能を満足するコンクリート構造物を設計する.すなわち, 使用材料(コンクリートの使用材料と配合および補強材)と構造諸元(形状,寸法,配筋) の組合せを提案し,この組合せによって達成される構造物の性能が設計条件(要求性能) を満足していることを工学的方法により照査する. 1.対象構造物 桁 長 支間長 床版+舗装 主桁 対象構造物のイメージ 断面図 コンクリート道路橋の主桁 1 本. 2.設計条件 2.1 一般条件 ・構造形式:鉄筋コンクリート単純桁橋 ・支間長 l:10.0 (m) ・供用期間:50 年 2.2 荷重条件 ・桁自重 pd:24.5 (kN/m3) 鉄筋コンクリートの単位体積質量 ・付帯荷重 pa:5.0 (kN/m) 床版,舗装,高欄など ・移動荷重 Pl:60.0 (kN)×2 載荷間隔 3m ・使用時:桁自重 pd+付帯荷重 pa+活荷重 Pl ・終局時:1.3×(桁自重 pd+付帯荷重 pa)+1.7×活荷重 Pl 3m 移動荷重 Pl 付帯荷重 pa 桁自重 pd 荷重条件 -1- 2.3 環境条件 ・海岸から 200m の距離にあり,塩分を含む大気中に曝されている. 2.4 要求性能 ・安全性:与えられた荷重条件のもとで,曲げモーメント,せん断力よる断面破壊に対し て安全性を有していること.つまり,終局荷重の作用によって曲げ破壊,せん 断破壊しないこと. ・使用性:車両や歩行者の通行時に過度なたわみや振動が生じないこと.使用荷重作用時 のたわみの最大値が支間長の 1/500 以下であること. ・疲労耐久性:繰返し荷重による疲労破壊に対して安全性を有すること.使用荷重作用時 のコンクリートおよび鉄筋の応力度が,移動荷重に等しい荷重に対する等 価繰返し回数作用時の疲労強度以下であること. ・鋼材腐食に対する耐久性:供用期間中に塩化物イオンの侵入および中性化による鋼材腐 食が生じないこと. 3.制約事項 (1)コンクリートの材料・配合 ・骨材には天然の砕石(密度 2.6~2.8 g/cm3)および海砂(密度 2.5~2.7 g/cm3)を使用 する. ・セメントの種類に拘らず圧縮強度 f’c(材齢 28 日,標準養生)とセメント水比 C/W の関 係には以下の式を用いる. f’c =-18.2 + 30.3(C/W) ・圧縮強度の変動係数は 8%とする. ・温度ひび割れを防止するため,打込み温度を 20℃とした場合の断熱温度上昇量を 60℃ 以下とする. (2)構造細目 ・コンクリート打設のため,軸方向鉄筋の水平あきは,20mm 以上,粗骨材の最大寸法の 4/3 以上,鉄筋の直径以上としなければならない.鉛直方向のあきは 20mm 以上,鉄筋の 直径以上としなければならない.また,内部振動機(直径 60mm)を桁上部より挿入する ための水平あきを確保しなければならない. -2- 4.設計作業の手順 設計条件(一般条件,荷重条件,環境条件) 使用材料の特性値(強度,拡散係数など), 構造諸元(断面形状,寸法,配筋)を仮定 修 正 構造物の性能照査 安全性,使用性,疲労耐久性,鋼材腐食耐久性 OK コンクリートの使用材料・配合を仮定 修 正 コンクリートの性能照査 強度,塩化物イオン拡散係数,中性化速度係数 OK 終 了 5.構造物の性能照査 構造物の性能照査は,2002 年制定土木学会コンクリート標準示方書[構造性能照査編] および[施工編]に準拠して行う. 5.1 安全係数 構造物の安全性,使用性および疲労耐久性の照査に使用する各種安全係数 安全性 使用性 疲労耐久性 曲げ せん断 材料係数γc 1.3 1.3 1.0 1.3 γs 1.0 1.0 1.0 1.05 部材係数γb 1.2 1.3, 1.1 1.0 1.1 荷重係数γf 1.1 1.1 1.0 1.0 構造解析係数γ a 1.0 1.0 1.0 1.0 構造物係数γ i 1.1 1.1 1.0 1.0 5.2 安全性の照査 曲げモーメントに対する安全性の照査は,曲げモーメントが最大となる箇所で行い,せ ん断力に対する安全性の照査は支点から d/2(d:桁の有効高さ)だけ離れた箇所で行う. -3-
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