塩害損傷を受けた RC 桁の残存性能評価手法の開発

塩 害 損 傷 を 受 け た RC 桁 の 残 存 性 能 評 価 手 法 の 開 発
(株 )ホ ー プ 設 計 金 田 一 男
琉球大学 淵脇秀晃
(株 )南 伸 久 米 仁 司
(株 )中 央 建 設 コ ン サ ル タ ン ト 砂 川 章 次
(株 )綜 合 設 計 コ ン サ ル タ ン ト 太 田 清 志
琉球大学 下里哲弘
1.は じ め に
沖縄県は島嶼亜熱帯環境にあり、塩害により劣
化している橋梁が多く、その一部が架替計画され
ている。本研究は、架替計画された沖縄県那覇市
の潮渡川に架かる若松橋を対象とした。本橋は昭
和 31 年 1 月 に 建 設 さ れ 、 西 海 岸 線 よ り 約 300m 離
れ た 厳 し い 塩 害 環 境 で 、竣 工 後 約 56 年 間 供 用 さ れ
たものである。本研究の目的は、既設橋梁から切
り出した塩害で劣化した主桁の残存耐荷力の評価
手法を開発することである。
2.対 象 橋 梁 及 び 試 験 体
上流側
写 真 -1( 平 成 22 年 度 撮 影 ) 及 び 図 -1 に 示 す よ
う に 、 研 究 対 象 橋 梁 は 2 径 間 の 単 純 RCT 桁 橋 で あ
写 真 -1
架け替え前の対象橋梁
り 、橋 長 15.20m、支 間 長 7.245m、有 効 幅 員 8.18m
である。本橋は旧軍道 1 号線の橋梁として建設さ
れ た 1 等 橋 (TL-20)で あ る と 推 測 さ れ る 。本 橋 は 計
5 本 の RCT 桁 か ら 構 成 さ れ 、 耳 桁 は 壁 型 デ ザ イ ン
高欄と一体化で造られている。本橋梁の桁支点部
で 切 断 し 、 更 に 主 桁 毎 に RCT 桁 に 切 断 し 、 W-1 ~
W-6 の 計 6 基 の 試 験 体 ( 長 さ 約 6.0m、 上 フ ラ ン ジ
幅 約 2.0m) を 加 工 し 、 載 荷 試 験 に 用 い た 。
3.試 験 体 及 び そ の 劣 化 状 況
図 -1
撤 去 す る 前 の 本 橋 梁 上 部 工 の 劣 化 状 況 は 写 真 -2
に示す。床版下面や主桁のかぶりコンクリートが
床版かぶりの大面積剥落
かぶりの大面積剥落
写 真 -2
橋梁一般図
(上段:側面図、下段:断面図)
支点付近での帯筋破断
主桁の劣化状況
撤 去 前 の 上 部 工 床 版 及 び RCT 桁 の 劣 化 状 況
軽微な損傷の RCT 桁
試験体の保管状況
RCT 桁の外観
写 真 -3
劣化度合いの著しい RCT 桁
試験体の保管及び劣化状況
大面積で剥落している。本橋梁から切り取
っ た RCT 桁 ( 壁 高 欄 付 き RCT 桁 4 基 + 中 間
RCT 桁 6 基 ) の 保 管 及 び 劣 化 状 況 を 写 真 -3
に示す。劣化度合いの軽いものは主桁フラ
ンジのコーナー部コンクリートが剥落し、
著しいものは、一部主鉄筋の腐食断面欠
表 -1
コンクリート強度の試験結果
載荷前
No.1
W-1
載荷後 No.2
No.3
W-5
載荷前
平均値
損・帯筋破断が確認さている。
表 -2
4.材 料 試 験 結 果
試験体の端部からコアを採取し、塩分・
中 性 化・圧 縮 試 験 を 実 施 し た 。表 -1 は コ ン
鉄筋
No.
SD1
異形
鉄筋
クリート圧縮強度の試験結果に示す。圧縮
2
強 度 の 平 均 値 は 30.8N/mm で あ る 。 ま た 、
試験体の載荷試験後に主鉄筋をはつり出し、
丸鋼
鉄筋
SD2
25.2
351.1
525.2
20.0
SD3
25.3
275.6
467.3
10.0
1.78 ×10 5
1.80 ×10 5
平均値
24.9
333.2
507.3
13.3
SR1
22.7
370.8
513.7
20.0
SR2
22.9
363.4
488.0
20.0
2.00 ×10 5
1.99 ×10 5
2.18 ×10 5
平均値
22.8
367.1
500.9
20.0
2.10 ×10 6
6400
b=2500m 2a=1000mm b=2500m
表 -2 に 示 す 。各 試 験 体 の 主 鉄 筋 が 異 形 鉄 筋
2
主鉄筋の引張試験結果
鉄筋径 降伏応力 破断応力 伸び率 弾性係数
(mm) (N/mm2 ) (N/mm2 )
(%)
(N/mm2 )
24.1
372.9
529.5
10.0
2.27 ×10 5
その引張強度試験を実施した。その結果を
と丸鋼鉄筋が混合に使用され、その平均強
圧縮強度 静弾性係数
備 考
(N/mm 2)
(kN/mm 2)
35.9
23.2
載荷後のコアNo.1に
21.3
27.3
は、初期クラックが
32.6
25.2
あったため,他のコ
29.7
23.4
アの試験結果より耐
34.7
22.1
荷能力が低かった.
30.8
24.2
コア採取試験体
正面図
載荷ビーム
ロードセル(右)
変位計
2
度 は そ れ ぞ れ 333.2N/mm と 367.1N/mm で
ある。
190
420
5.残 存 耐 荷 力 に 関 す る 試 験 結 果 及 び 残 存 耐
変位計
オフセットゲージ
200
荷力の評価
図 -2
6000
200
載荷試験模式図
載 荷 試 験 の 模 式 図 を 図 -2 に 、載 荷 試 験 で
得 ら れ た 試 験 体 W-1、W-3 及 び W-7 の 載 荷 荷
重 と ス パ ン 中 央 に 生 じ た た わ み を 図 -3~ 図
-5 に 示 す 。 W-1 試 験 体 ( 中 間 桁 ) の 耐 荷 力
が 最 も 低 く 、 壁 高 欄 の あ る W-3 試 験 体 の 耐
W-1 試験体
(中間桁)
荷力が最も高く、同じ耳桁であった壁高欄
切 断 し た W-7 試 験 体 の 耐 荷 力 が W-3 試 験 体
よ り 約 30%低 下 し た 。
図 -3
W-1 試 験 体 の 試 験 結 果
図 -4
W-3 試 験 体 の 試 験 結 果
6.終 わ り に
劣化度合いの試験体の載荷試験結果よ
り 、 塩 害 劣 化 し た RCT 桁 の 残 存 耐 荷 力 は 外
観劣化グレードと関係なく、理論値と比較
して残存耐荷力の低下は確認されなかった。
壁 高 欄 付 き の RCT 桁 の 耐 荷 力 は 無 い も の よ
り 高 く 、 壁 高 欄 の 存 在 は RCT 桁 の 耐 荷 力 向
上に寄与することがわかった。
7.今 後 の 研 究 課 題
本 研 究 は 、 供 用 50 年 以 上 の 塩 害 に よ り
劣 化 し た RCT 桁 を 対 象 に 調 査 ・ 試 験 を 実 施
し た が 、今 後 、形 式 の 異 な る 橋 梁 を 対 象 に 、
載荷試験を行い、残存耐荷力の評価方法を
確定する必要がある。
図 -5
W-7 試 験 体 (壁 高 欄 無 し )の 試 験 結 果