高分子超薄膜結晶成長における分岐パターン形成機構

高分子超薄膜結晶成長における分岐パターン形成機構
広島大学大学院総合科学研究科・准教授
田口
健
超薄膜状態からの高分子結晶化においては、結晶成長界面が不安定化してサブミクロンス
ケールの分岐構造を形成するがその分岐機構の詳細は不明である。現在、この分岐機構を解
明するため結晶性-非晶性高分子ブレンド薄膜からの結晶成長の観察を行っており、ブレン
ド薄膜の粘度による分岐構造の変化が観察されているので、その結果と予想される分岐機構
の可能性について報告する。
1.
ポリスチレンブレンド薄膜から成長した結晶モロフォロジー
結晶性のポリスチレン(iPS、分子量 556K)と三種類の分子量 500K、100K、30K の非晶
性ポリスチレン(aPS)とのブレンド超薄膜(ブレンド比 7:3、膜厚約 12nm)を作成し、各試
料を成長温度 180℃で結晶化させた。各ブレンド薄膜から成長させた iPS ラメラ結晶の AFM
像を図1に示す。iPS 結晶はブレンド超薄膜においても同様の分岐構造を示すが、その特性
長は aPS の分子量低下に伴い増加していくことが分かる。
図 1.
ブレンド超薄膜から成長した iPS 結晶(AFM 像、膜厚~12nm、成長温度 180℃)
(a) iPS/aPS-500k
2.
(b) iPS/aPS-100k
(c) iPS/aPS-30k
分岐特性長の粘度依存性の検討
600
薄膜の平均分子量依存性を示す。結晶成長界面の不安定
性が結晶周囲の薄膜ダイナミクスと関連していれば、
ξ /μm
図2に、分岐構造の特性長ξ(分岐幅)のブレンド
400
Mullins-Sekerka 的 な 不 安 定 性 に よ っ て 特 性 長 ξ は
(ηG)-1/2 に比例すると予想される(ηは粘性、Gは成長速
200
度)。高分子の粘性が分子量に対してη ∝ M となるこ
3.4
とを用いると、得られた結果は高分子結晶成長における
分岐機構に高分子粘性が強く影響していることを示唆
している。
<参考文献>
[1] Taguchi, K. et.al. Polymer 2001, 42, 7743.
Copyright(c) 2006-2010 ソフトマター物理 All Rights Reserved
4
Mbw
5
+5
[×10 ]
図2.分岐特性長 vs 平均分子量