Column 1. 壺井栄略歴 - 壺井栄の唄 | 今つくる、本の形

ザイナーが、それぞれに選んだ壺井栄の短編作
品を、一点物の書籍として、新たに装幀します。
+広 報 紙 】
この広報紙では、展示に先駆けて、壺井栄の略
年譜、壺井栄が活動した時代の日本の同行と共
に過去に刊行された著作物の装幀(一部)を紹
介します。壺井栄のことを知ることで、展示作
品をより楽しんで見ていただけると嬉しいです。
今垣知沙子 Chisako Imagaki
1989 年生。兵庫県出身、東京都在住。神戸芸術工科
大学視覚情報デザイン学科卒、現在フリーランス。
萩原こまき Komaki Hagiwara
1984 年生。兵庫県出身・在住。神戸芸術工科大学視
覚情報デザイン学科卒、同大学助教。
樋笠彰子 Shoko Higasa
1985 年生。香川県出身、東京都在住。東京藝術大学
デザイン科卒、現在フリーランス。
守屋史世 Fumiyo Moriya
明治 32
1899
0
33
1900
1
34
1901
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35
1902
36
1903
4
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1904
5
38
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6
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7
40
1907
8
41
1908
9
森岡書店 銀座店
東京都中央区銀座 1- 28 -15 鈴木ビル 1 階
壺井 栄 Sakae Tsuboi
13 : 00 Open 20 : 00 Close
1899 年 8 月 5 日 – 1967 年 6 月 23 日。香川
・東京メトロ有楽町線「新富町駅」
2 番出口より徒歩 5 分
・東京メトロ日比谷線・都営浅草線「東銀座駅」
5 番出口より徒歩 9 分
・東京メトロ銀座線・丸ノ内線「銀座駅」
A13 出口より徒歩 12 分
県小豆島出身の小説家。主に一般向小説
および児童文学(童話)を主領域に活躍。
随筆や雑誌掲載を含めると、約 1,500 編
にのぼる作品を発表し、多くの文学賞
を受賞した。代表作『二十四の瞳』は二
[email protected]
http://tsuboisakaeno-uta.com
お問い合わせ :
WEB サイト :
度映画化された。夫は詩人の壺井繁治。
刊 行 書 籍 紹 介
あ ら す じ 紹 介
A –G
今回の展示で制作する装幀作品の中から、
いくつかの書籍のあらすじを紹介します。
*書影のない作品は、初出の年と雑誌名を並記。
Text : Komaki Hagiwara, Shoko Higasa, Fumiyo Moriya
*株式會社(株式会社)の表記は省略。
*新字・旧字の表記はそのまま記載。
「曆」
8 月 5 日、香川県小豆郡坂手村(現小豆島町坂手)に生まれる。
3
2 015. 10. 6. tue ― 2 015. 10. 11. sun
1987 年生。神奈川県出身、東京都在住。東京藝術大
学デザイン科卒、現在 ea 在籍。
壺 井 栄 略 年 譜
著 者
チーフにしたブックデザイン展です。4 人のデ
展 示 期 間 / 場 所
県小豆島出身の作家、壷井栄の短編作品をモ
展 示 者
【 展 示 告 知
壺 井 栄 の 唄
今 つ く る 、本 の 形
「壺井栄の唄 ― 今 つくる、本の形」は、香川
A.
「たんぽぽ」
「私の雜記帖」
新潮社
高山書院
靑磁社
昭和 15 年 3 月 9 日 發行
昭和 16 年 4 月 25 日 發行
昭和 16 年 12 月 11 日 發行
装幀:松山文雄
装幀:藤川榮子
印刷:宗文社印刷所印行
印刷:新陽堂印刷所
(昭和 16 年 8 月 25 日 五刷)
装幀:松山文雄
印刷:富士印刷株式會社
製本:町田製本所
[PH.1]
[PH. 2]
「暦」
カバー
舞台は瀬戸内海の島。いつものように仕事
「夕顔の言葉」
に出掛ける前の朝の庭の手入れをする姉の
長兄から「二宮金次郎」という本が送られ、感動深く読んだ。
クニ子と、妹の実枝の何気ない日常会話か
ら物語ははじまる。律儀で勤勉な樽屋であ
42
1909
10
43
1910
11
父の商売が得意先の醤油屋の経営不調により傾き、借金がかさみ破産。
44
1911
12
坂手尋常小学校卒業。一等賞を受ける。
る父重吉の一家に起こる様々な出来事が、
娘のクニ子と実枝を中心に、とても細密で
丁寧な描写で書かれてゆく。
大正 1
1912
13
2
1913
14
内海高等小学校卒業。
3
1914
15
村の郵便局へ勤める。
4
1915
16
このころ一つ年上の黒島伝治と知り合う。
5
1916
17
6
1917
18
過労で肋膜炎を患い郵便局を退職。
7
1918
19
第一次世界大戦終結
8
1919
20
兄が過労のため東京青山で急死。長兄の子ども二人を島に引き取る。
国際連盟発足
9
1920
21
村役場に勤める。
10
1921
22
11
1922
23
日本共産党結成
12
1923
24
関東大震災
13
1924
25
14
1925
26
上京。同宿の平林たい子らと過ごした。壺井繁治と結婚。母アサ逝去。
治安維持法施行
昭和 1
1926
27
2
1927
28
昭和 2 年~ 9 年にかけ、繁治は思想犯で入出獄を繰り返す。
金融恐慌始まる
3
1928
29
4
1929
30
5
1930
31
今、一ばんほしいものは何ですか―受持の
全国書房
先生が出した問に、ヤス子は迷わず「夕顔
昭和 17 年 7 月 28 日 發行
の種が欲しい」と答える。去年、出兵直前
装幀:國枝金三
に兄からもらった夕顔の種をなくしてしま
印刷:商業グラビヤ印刷
壺井栄初の小説集である本作は、1941 年
い、今年はなんとか夕顔を咲かせて戦地の
製本:渡邊製本
兄に報告したいと考えていたヤス子。思い
に第 4 回新潮社文芸賞を受賞。壺井栄文学
がけず先生から種をもらい、夕顔は立派な
を確立した一作かもしれない。
戦旗社に雇われ事務員となる。同社は壺井宅に移る。
花を咲かせるが……。太平洋戦争中の思想
[PH. 3]
「大根の葉」
統制の中で、壺井栄ならではの方法で抵抗
新興出版社
C.
を示した児童文学作品のひとつ。
昭和 21 年 10 月 25 日 發行
装幀:內田 巖
「夕顔の言葉」
印刷:新興印刷製本
紀元社
昭和 19 年 2 月 20 日 發行
装幀・口晝・挿晝:松山文雄
D.
「大根の葉」
健の妹である克子は、先天性白内障を患っ
ており、わずかな光を感じる程度の視力し
かない。おかあさんは克子の目の手術のた
『婦女界』に投稿していた「プロ文士の妻の日記」が入選。
B.
女流作家叢書 4「石」
めに、神戸の病院に向かう。まだ 5 歳の健
印刷:靑野印刷所
※復刻版 昭和 46 年
ほるぷ出版
表紙
「夕顔の言葉」目次挿絵
「あたたかい右の手」
は一緒についていきたくとも叶わず、隣村
「耳 からごほうび」
E.
で暮らすおばあさんの家で過ごすことにな
優等生ではないが、快活でちぢれっ毛で、
栄が、息子の右文(遠縁の孤児をひきとっ
る。母親のこどもに対する愛情や苦悩、母
健康優良児の竹子は、慈雨ちゃんと仲良し
て育てていたので実の息子ではない)に、
日本共産党弾圧
親を恋うこどものまっすぐな心情が、時代
だった。クラスでいちばんよくできて、お
泣きやませるために「耳からごほうび」を
世界恐慌
を超えても心に響く作品。1938 年に雑誌
となしくて、やさしい。そのうえ痩せてい
出して喜ばせた。
て色白、美しい目と髪をもつ慈雨ちゃん。
この嘘が、栄が子供の頃の友だちとの出来
竹子は慈雨ちゃんが将来、童貞様になるつ
事を思いださせる。二つとも、当時はとて
もりでいるのに納得がいかないが、そのま
もくやしくて、ひどく嫌な気持ちになった
ま小学校を卒業して離ればなれになってし
思い出だが、一方は今思うと、人を喜ばせ
世界恐慌日本に波及
『文藝』に発表された、
壺井栄のデビュー作。
6
1931
32
満州事変勃発
7
1932
33
転居。文化連盟発行の『働く婦人』の編集事務員として使い走りもした。
上海事変勃発
8
1933
34
留守宅に運ばれた小林多喜二の遺体の手足を拭い清めた。父藤吉逝去。
ヒトラー・ナチスが政権を掌握。日本、国際連盟脱退
まう。そして五月のある日、慈雨ちゃんが
ようとしてついた嘘でもあるのだと回想を
繁治保釈出獄。宮本百合子の家事手伝いや口述筆記をする。
日本、ワシントン軍縮条約破棄
亡くなったことを知らされる。
巡らせる。
初出:昭和 23 年『少年少女の広場』
初出:昭和 23 年『童話読本』
[PH.4]
9
1934
35
10
1935
36
11
1936
37
妹の娘発代が神戸で弱視の手術を受け、折々の手紙を受け取る。
日本、ロンドン軍縮会議脱退。二・二六事件
12
1937
38
日中戦争勃発。日独伊三国防共協定
13
1938
39
宮本百合子が編集長小川を強気で動かし「大根の葉」
(あらすじ C.)が『文藝』に載る。国家総動員法公布
14
1939
40
15
1940
41
16
1941
42
17
1942
43
18
1943
19
「風車」「桃栗三年」発表。
最初の小説集「暦」刊行。[PH.1](あらすじ A.)
「暦」第 4 回新潮社文芸賞受賞。最初の随筆集「私の雑記帖」刊行。[PH.2]
「母のない子と子のない母と。
」
日独伊三国同盟調印
「柿の木のある家」
山の木書店
日本本土初空襲
昭和 24 年 4 月 20 日 發賣
44
黒島伝治逝去。
イタリア無条件降伏。学徒出陣
1944
45
最初の童話集「夕顔の言葉」刊行。[PH.3](あらすじ B.)
国民勤労動員・学徒勤労動員開始
印刷:協和印刷
20
1945
46
敗戦直後、甥卓の子で孤児となった右文(あらすじ E. 参照)を引き取る。
東京大空襲、広島・長崎に原爆投下、日本無条件降伏
製本:古籔製本
21
1946
47
日本国憲法公布
「浜辺の四季」「妻の座」発表。
22
1947
48
23
1948
49
24
1949
50
座談会「小林多喜二の死とその前後」に出席。
51
「屋根裏の記録」「わだち」「桟橋」発表
朝鮮戦争勃発
26
1951
52
「柿の木のある家」第 1 回児童文学賞受賞。[PH.4]
日米安全保障条約調印
27
1952
53
「二十四の瞳」発表。[PH.6] 「坂道」他一作 * で第 2 回芸術選奨文部大臣賞受賞。
日米安全保障条約が発効
28
1953
54
*「母のない子と子のない母と。」[PH.5]
29
1954
55
木下恵介監督、高峰秀子主演による「二十四の瞳」映画化のため帰島。
30
1955
56
31
1956
57
小豆島の「平和の群像」除幕式に木下恵介、高峰秀子らと参列。
国際連合加盟
32
1957
58
日ソ通商条約調印
東京タワー完成
「雑居家族」発表。「風」で第7回女流文学者賞受賞。
33
1958
59
警察法改正反対デモに喘息発作にあえぎながら参加。
34
1959
60
NHK 朝のラジオ小説に「どこかでなにかが」を書きおろす。
35
1960
61
国会デモに繁治も参加して、終夜帰らず。
36
1961
62
十月、急性喘息の発作を起こし入院。
37
1962
63
NHK テレビ小説で「あしたの風」が 1 年間放映される。
38
1963
64
「柚原小はな」を『週刊女性』に連載。入退院繰り返す。
39
1964
65
「壺井栄児童文学全集」全四巻の刊行開始。
40
1965
66
かねて繁治と建立に努めた黒島伝治文学碑が完成。
41
1966
67
喘息の発作で重態、入院。
内海町名誉町民の称号が与えられる。6 月 23 日喘息発作のため 67 歳で逝去。
印刷者:戎居研造
G.
顔を合わせた、島の小学校のクラス会。時
が経っても変わらない者、離れていった者、
そして死を待ち受けていたように一人静か
「柿の木のある家」扉絵
に亡くなった「光ちゃん」の最後……。昔
もの頃に口ずさんでいた手まり唄は、亡友
筑摩書房
や過ぎ去った時代へと向けた手向け唄にな
昭和 29 年 8 月 10 日 發行
る―。「二十四の瞳」の発表された翌年に
装幀:伊藤 廉
小説公園へ掲載された短編作品。
昭和文學全集 55
「平林たいこ 壺井 榮 集」
角川書店
昭和 30 年 3 月 15 日 初版發行
印刷:中敎印刷
製本:鈴木製本所
とになる。貧しい生活の中でも、二人はミ
本文紙:本州製紙
ユキを実の子の様に愛し育てた。やがて戦
クロース:日本クロス工業
三月書房
時下での厳しい思想統制の中、松太郎が思
製版所:中光印刷
昭和 40 年 8 月 25 日
「袖ふりあう」
想犯として投獄され……。
印刷:中越印刷製紙
東京オリンピック開催
厳しい時代の中で親子の絆の形を確かめな
製本:松栄堂
日韓基本条約調印
がら生きる、つるえと松太郎の姿は、栄と
繁治の半生にそのまま重ねることができる。
中国で文化大革命
44
1969
宇宙船アポロ 11 号、月面到着。東大全共闘
45
1970
小豆島町坂手・向いが丘に文学碑が建つ。
大阪で日本万博博覧会開催
「紙一重」にも収録
岩波少年文庫 175
「坂道」
岩波書店
昭和 33 年 9 月 10 日 第 1 刷発行
口絵・さし絵:伊勢正義
Design : Shoko Higasa
1967
1968
壺井栄文学館開館。
F.
五十の坂をこした郷里の面々が久しぶりに
初出:昭和 28 年
『小説公園』第 4 巻 8 号
い形で親類の子であるミユキを引き取るこ
42
「たむけ唄 」
印刷・製本:中央製本印刷
「たからの宿」
43
1992
[PH. 6]
話に思いを馳せる中でふと浮かんだ、子ど
平成 4
[PH. 5]
「月夜の傘」
⋮
製本:三幸製本
昭和 29 年 12 月 15 日 發行
ない、つるえと松太郎夫婦は、思いがけな
キューバ危機
印刷:三晃印刷株式会社
製本:藤田製本
中央公論社
“お人好し”として評判が立つ、新婚間も
安保闘争。国会でデモ、国会包囲
装幀・挿絵:森田元子
印刷:慶昌印刷
Photo : Kenji Utsugi
初版発行
装幀 挿絵:森田元子
「紙一重」
装幀:松山文雄
1950
昭和 27 年 12 月 25 日
そうてい さしえ:赤松俊子
国連総会、世界人権宣言を採択
25
(昭和 25 年 4 月 15 日 再版發賣)
教育基本法公布
光文社
昭和 26 年 11 月 10 日 初版発行
(昭和 28 年 11 月 1 日 八版発行)
第二次世界大戦勃発
太平洋戦争開始
「二十四の瞳」
光文社