テーマ Approaching the Elderly 高齢患者に対する開業医での外来治療

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Approaching the Elderly 高齢患者に対する開業医での外来治療
e-PTは、全国より抽出した開業医(19床以下施設)1000施設を受診した患者のデータベースである。
ここでは、e-PT解析結果より 高齢患者に対する開業医での外来治療 について報告する。
【通院患者の年齢構成】
日本の総人口は1億27百万人で、平均年齢は43.5歳
e-PT対象施設の通院患者は85万人で平均49.2歳
日本人の年齢構成と開業医を受診している患者の年齢構成を比較すると、平均年齢では大きな差はないが、高齢者
の比率が高いことがわかる。
全受診患者の30%を70歳以上の高齢者が占めている。
総人口のピーク年齢は30代だが、通院患者では70代がピークであり、70歳以上比率は30%に及ぶ。これに60歳
代を加えると通院患者の半数となる。
年齢階級別人口構成および通院患者年齢構成(平均年齢: 総人口43.5歳 通院患者 49.2歳)
※総人口 1億27百万人 通院患者 85万人
20%
通院患者
18%
18%
総人口
17%
16%
14%
13%
12%
10%
9%
8%
6%
8%
15%
6%
6%
4%
11%
11%
13%
12%
9%
14%
13%
10%
10%
6%
2%
0%
-9歳
-19歳
-29歳
-39歳
-49歳
-59歳
-69歳
-79歳
80以上
【患者はどこを受診しているか】
厚生労働省が発表しているMEDIAS(医療費概算データベース)によれば、2009年6月の診療報酬請求書枚数は、
8500万枚。 うち、8300万枚は入院外の 外来患者 であった。
20床以上の 病院 は全国に8,800施設。19床以下の 開業医 は84,000施設あり、外来患者の70%は開業医
を受診している。
2009年6月の医療施設数(Mediasより)
2009年6月の診療報酬請求書枚数
8500万枚の内訳
病院
8,804施設
外来
8300万枚
入院
240万枚
開業医
84,434施
設
【高齢者の医療費】
8500万枚の請求書の総額は3兆円。うち、49%(1兆5千億円)は70歳以上の高齢者に費やされている。しかし、
外来だけで見ると、総額で49%だった70歳以上の費用は42%と小さくなっている。外来での費用の多くを占める 薬
剤費 が圧縮されてきたこともひとつの要因と考えられる。
総額に占める70歳以上患者の医療費(Mediasより)
70歳未満
0%
20%
42%
外来
食事
60%
入院患者440,000円
49%
58%
35%
42%
65%
100%
3兆円
1兆2000億円
58%
医療費総額より、医科の入院・外来に限定した患者1人あたりの費用は、
外来患者 13,000円
80%
51%
総 額
入院
40%
70歳以上
1兆8000億円
680億円
【高齢外来患者の医療費】
受診患者数も多いが、開業医を受診する全患者の平均医療費は1人あたり13,000円。
これを世代で分けると、70歳未満が9,500円に対し、70歳以上では15,000円。
外来患者1人あたりの医療費(Mediasより)
\0
70歳未満
\4,000 \8,000 \12,000 \16,000 \20,000
\9,466
開業医
← 5,500円の差 →
70歳以上
病院
70歳未満
70歳以上
\15,095
\16,605
\18,194
【どんな疾患で来院しているか】
来院患者85万人に付けられた病名のトップは 高血圧症 で、19万人。これに、 脂質異常 の16万人が続く。さら
に、糖尿病が続き、生活習慣に由来する病名が圧倒的に多く付けられている。
■ 患者の病名
この背景には、高齢者が複数の疾患を抱えていることが考えられる。
開業医を受診した患者に付けられた病名は、高血圧症が19万人でトップ。 これに脂質異常症、糖尿病が続く。
いずれも、生活習慣病で、高齢者に多い病名であり、その患者平均年齢を見ると、脳梗塞、心不全をトップに、高血圧
症までが、平均年齢が70歳を超えている。
e-PT2009年6月 来院患者に多い病名(BEST30)
200,000人
150,000人
100,000人
50,000人
アトピー性皮膚炎
うつ病
急性上気道炎
肩関節周囲炎
心不全
脳梗塞
気管支炎
高尿酸血症
白癬
胃潰瘍
狭心症
胃炎
急性気管支炎
逆流性食道炎
アレルギー性結膜
炎
変形性関節症
白内障
結膜炎
骨粗鬆症
喘息
便秘症
腰痛症
不眠症
慢性胃炎
乱視
湿疹
アレルギー性鼻炎
糖尿病
脂質異常
高血圧症
0人
e-PT2009年6月 来院患者に多い病名(BEST30)別 患者平均年齢
70歳
平均年齢
60歳
150,000人
40歳
100,000人
20歳
50,000人
脳梗塞
心不全
骨粗鬆症
白内障
変形性関節症
狭心症
便秘症
高血圧症
逆流性食道炎
肩関節周囲炎
腰痛症
不眠症
糖尿病
脂質異常
慢性胃炎
胃潰瘍
高尿酸血症
胃炎
白癬
結膜炎
うつ病
乱視
湿疹
アレルギー性結膜
炎
気管支炎
喘息
アレルギー性鼻炎
急性上気道炎
急性気管支炎
アトピー性皮膚炎
0歳
0人
80歳
200,000人
2009年6月 患者数
50歳
30歳
10歳
■ 患者の病名(合併疾患数)
世代別に見ると、70歳未満の患者では、1人平均1.2疾患の合併であったが、70代では2.3疾患、80歳以上では2.
7疾患になる。
(※ グラフに示す記載病名トップ30の合併状況にもとづく平均合併数)
外来患者1人あたりの医療費が70歳を境に大きく変わっているのは、複数の併発疾患をかかえていることの現れと言
える。
e-PT対象患者の主要疾患合併数
3.0
2.7
2.5
2.3
2.0
1.5
1.2
1.0
0.5
0.0
69歳以下
70歳代
80歳以上
【薬剤処方状況】
高血圧症を見ると、降圧薬を処方されている患者にもっとも多く処方されているのは、CCBで70%。ブランドではノル
バスクがトップ。ARBは50%で、ブロプレスがARBでは一番多く処方されている。また、骨粗鬆症では、D3製剤が5
5%に、BISPHOが46%に、SERMが18%に処方されている。
2009年6月 降圧薬カテゴリ別処方率 n=178,698
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
50%
ARB
CCB
ACE
OTHERS
70%
10%
35%
2009年6月 降圧薬ブランド別処方率 n=178,698
0%
2%
6%
8%
10%
12%
8%
ブロプレス
ディオバン
オルメテック
ミカルディス
ニューロタン
OTHER ARB
ノルバスク
アムロジン
カルブロック
4%
8%
5%
4%
3%
3%
12%
6%
2%
14%
2009年6月 骨粗鬆症薬カテゴリ別処方率 n=30878
0%
10%
20%
40%
50%
60%
46%
ビスホスホネート製剤
55%
活性型ビタミンD3製剤
18%
SERM
5%
ビタミンK2製剤
イプリフラボン製剤
30%
1%
【患者世代別 後発品処方状況】
後発品への切替が進むなか、高血圧治療薬、脂質異常治療薬を例として、先発品と後発品の比率を世代別に見る
と、処方患者数は少ないが、ACE阻害薬の後発品比率が高いことがわかる。降圧薬の中心であるCCBでは年代によ
り8-11%。スタチン製剤は高齢患者ほど後発品処方が顕著である。
Ca拮抗薬 先発
0%
20%
ACE阻害薬 先発
Ca拮抗薬 後発
40%
60%
80%
0%
100%
20%
40%
ACE阻害薬 後発
60%
80%
0-49歳
92
8
0-49歳
61
39
50-59歳
91
9
50-59歳
60
40
60-69歳
90
10
60-69歳
65
35
70-79歳
90
10
70-79歳
65
35
80歳以上
89
11
80歳以上
64
36
100%
β遮断薬 先発
0%
0-49歳
20%
β遮断薬 後発
40%
89
60%
80%
スタチン先発
100%
11
0%
20%
スタチン後発
40%
60%
80%
100%
0-49歳
86%
14%
50-59歳
85
15
50-59歳
84%
16%
60-69歳
84
16
60-69歳
84%
16%
70-79歳
84
16
70-79歳
82%
18%
80歳以上
83
17
80歳以上
78%
22%
【先発スタチンの高齢患者処方状況】
2009年1−6月のスタチン処方患者比率は、クレストールを除きほとんど変化がない。
1月に15%だったクレストール処方比率は、6月に2ポイントupの17%を示す。
脂質異常治療薬のシェア
メバロチン
リピトール
リポバス
クレストール
スタチン後発
スタチン以外
0%
10%
20%
30%
40%
50%
リバロ
60%
70%
ローコール
80%
90%
2009年1月
12%
19%
4%
9%
5%
15%
14%
22%
2009年2月
12%
19%
4%
9%
4%
15%
14%
22%
2009年3月
12%
19%
3%
9%
4%
15%
14%
22%
2009年4月
12%
19%
3%
9%
4%
16%
14%
21%
2009年5月
11%
19%
3%
10%
4%
16%
14%
21%
2009年6月
11%
19%
3%
10%
4%
17%
14%
21%
100%
【クレストールの高齢患者への処方】
2009年1月の処方患者数を基準として、6ヶ月間の処方患者の伸びを見ると、もっともシェアーが高いリピトールは、月
を追うごとに高齢者層でも処方を伸ばしている。
しかし、6月までで1割程度の伸びにとどまっている。
また、薬剤費の抑制策である後発品処方も、大きく処方を増やしているとはいえない。
これに対して、クレストールはすべての世代で処方を伸ばしており、60代以上での伸びは顕著である。
70歳代で1.23 80代以上で1.25を示している。
2009年1月を基準とした処方の推移(リピトール)
2009年1月を基準とした処方の推移(スタチン後発)
1.30
1.30
1月
2月
3月
4月
5月
1月
6月
1.20
1.20
1.10
1.10
1.00
1.00
0.90
0.90
0.80
0.80
0-49歳
50-59歳
60-69歳
70-79歳
80歳以上
0-49歳
2月
50-59歳
3月
60-69歳
4月
5月
70-79歳
6月
80歳以上
2009年1月を基準とした処方の推移(クレストール)
1.30
1月
2月
3月
4月
5月
6月
1.20
1.10
1.00
0.90
0.80
0-49歳
50-59歳
60-69歳
70-79歳
80歳以上
【Findings & Discussion】
毎月の医療費は3兆円を超え、とりわけ高齢者の医療費が膨らんでいる。入院はもちろんのこと、外来でも総医療費
に占める高齢者医療費の比率は小さくない。近年、ブロックバスターの後発品が続々登場し、医療費削減の観点か
ら、後発品への切替が進行している。特に、高齢者での切替が進んでいる。
e-PTの解析の結果、70歳を超えると、急激に合併疾患が多くなっている。高齢患者への薬剤処方は疾患の合併状況
に注意しながら適正に行われなければならない。 そうした意味で、新たに薬剤を処方する場合には、患者の状態に
もよるが、マイルドな製品が第一選択されると考える。 また、効果不十分が明確でなければ、これまでの薬剤から安
易に別の薬剤に切り替えることも少ない。
こうしたことから、長期投与される薬剤は、一度処方されると切り替えられることは極めて少ない。その意味で 新規処
方 、 スイッチ を取り込むことが製薬企業にとっては大きな課題であり、多くの先発品が高齢者の取り込みに苦慮し
ている。そのなかにあって、脂質異常治療薬のクレストールは、若い世代の患者で処方を増やしているばかりでなく、
70代、80代の高齢患者でも処方が伸びている。 その勢いは同じ、ストロング・スタチンのリピトールをも上回ってお
り、今後の市場の拡大に注目する必要がある。
e-PTでは、開業医のレセコンに蓄積された来院ごとの薬剤処方状況から、各ブランドの処方件数をカウントするのみならず、新規
処方、切替、追加といった処方の変化をとらえると同時に、処方された患者がその後もどれだけ長期に服用しているかを解析し、
ブランドの強み・弱みを把握することのできるデータベースである。