ウェアリング・オフは、日常生活において最も深刻な問題 パーキンソン病

ウェアリング・オフは、日常生活において最も深刻な問題
パーキンソン病治療が長期化するにつれて、レボドパの効果が次第に短くなります。その結果、一旦レボドパを服用して
も、次の服薬予定時間の前には症状が再び現れてしまうことがあります。
このように、レボドパが効いて症状がよくなった状態(ON 時間)と、レボドパの効果が弱まり症状が再び現れた状態(OFF
時間)を、1 日のうちに何度も繰り返してしまう現象を「ウェアリング・オフ」といいます。
ウェアリング・オフになると、症状がよくなったり悪くなったりするのを 1 日に何度も繰り返してしまうことから、患者さんの
日常生活に支障を来す最も深刻な問題となっています。
ウェアリング・オフがみられる患者さんの 1 日のパーキンソン病の状態
ウェアリング・オフ時に現れる症状
ウェアリング・オフでは、薬の効果が弱まった OFF 時に、パーキンソン病の主症状である「運動症状」や、見た目にはわか
りにくい「非運動症状」も現れます。
特に非運動症状は主観的な症状であるため、担当医も見落としてしまう可能性があります。運動症状だけでなく、非運動
症状にも心当たりがあれば、遠慮せず担当医にお伝えください。
運動症状(運動機能の変化)
ふるえる(振戦)
動きが遅くなる(無動)
全身のこわばり(固縮)
バランスがとれない
(姿勢反射障害)
不安になる(感情)
非運動症状(感情、思考、感覚、自律神経系の変化)
するどい痛み、
考えがまとまらない(思考)
にぶい痛み(感覚)
体のほてり/汗をかく、寒気
がする(自律神経系)
ウェアリング・オフはいつ頃から現れるの?
パーキンソン病の進行には個人差があるため、ウェアリング・オフがいつ頃現れるかを一概に回答はできませんが、レ
ボドパの服用を開始してから 5 年後には約 30%、7 年後には約 50%のパーキンソン病患者さんにウェアリング・オフが出
現したとの研究報告があります。しかし近年では、もっと早期から多くの患者さんにウェアリング・オフが出現するとの研
究報告もあります。
パーキンソン病の治療を始めてから数年経ち、服薬予定時間の前になるとふるえや体のこわばりなどを感じる方は、既
にウェアリング・オフが出現している場合も考えられます。
レボドパ服用後のウェアリング・オフの出現頻度(服用を 3 年以上継続した患者さん 100 例)
[安藤 一也、印東 利勝:日本医事新報 2954, 1980 より一部改変]
ウェアリング・オフは自然に治るの?
パーキンソン病の初期では、 レボドパの効果がきちんと得られる血液中のレボドパ濃度の範囲(治療域)が広いため、レ
ボドパ服用後は十
分に効果が発揮さ
れます。
しかし、パーキンソ
ン病が進行すると、
レボドパの効果が
得られる血液中の
レボドパ濃度の範
囲(治療域)が次第
に狭くなってきます。
そのため、レボドパ
が効き過ぎたときに
はジスキネジアが、
レボドパが効いて
いないときにはウェ
アリング・オフが現
れるようになり、そ
の頻度はパーキンソン病の進行とともに高まっていきます。
つまり、ウェアリング・オフは自然に治ることはなく、むしろ悪化する傾向にあり、日常生活に極めて悪影響を及ぼします。
したがって、ウェアリング・オフの出現に気付き次第、担当医に相談し、ウェアリング・オフに対する治療を早期から開始す
ることが重要です。
ウェアリング・オフは自然に治ることはなく、治療しなければどんどん悪化する!