平成 27 年 5 月 プリウス故障診断レポート <車両> 車名 :トヨタ プリウス 型式 :DAA-ZUW30 年式 :平成 21 年 12 月 走行距離:348,041km <お客様の訴え> 時々エンジンがノッキングする、具体的にはエンジンルームあたりから、 ガタガタと大きな音がするとともに、ボディーが振動する。 <受入点検・故障診断> 一通りの目視チェックをし、スキャンツール(G-scan2※1)を接続しテスト走 行をした。結果を表 1 に示す。 表1.スキャンツール接続テスト走行結果 項目名 エンジン負荷値(%) エンジン回転数(rpm) 車速(km) 点火時期#1(‘) EGR(排気ガス再循環)目標開度(%) 目標空燃比 A/F センサー電圧 B1S1(V) HV 接続状態 ノック補正学習値(‘CA) ノック制御値(‘CA) 失火時平均負荷(g/rev) 失火カウンター#1 失火カウンター#2 失火カウンター#3 失火カウンター#4 失火カウンター 失火カウンター母数 失火余裕度(%) EGR(排気ガス再循環)現在ステップ数(step) データ① 95.7 1547 24 9.0 28.6 0.992 3.103 受信有 11.9 -4.0 0.00 0 0 0 2 2 0 48.00 8 データ② 96.1 1471 25 7.5 31.8 0.992 3.112 受信有 11.9 -3.8 0.00 0 0 0 5 5 0 44.00 8 データ③ 78.8 1105 15 4.5 0.0 0.937 2.415 受信有 11.9 -3.0 0.00 0 0 0 0 19 0 127.00 0 <診断結果> 表 1 において、データ①②では 4 番シリンダーに失火がみられる。しかも この時は EGR 制御がされている。データ③では失火がみられない。そして この時 EGR は停止状態である。 確認の為アクティブテスト※2 により EGR を作動させると、お客様の訴え (テスト走行時に確認)と同一の現象が確認できた。 ここで EGR 制御が行われている時だけ、特定のシリンダーに影響があるの は、そのシリンダーのみに影響する点火系もしくは EGR 通路に問題がある と考えられる。 この再度の確認は 3 番、4 番のプラグ及びダイレクトコイルを入れ替えて同 一テストを実施した。 結果は当初と同じ 4 番シリンダーのみ失火、このためほぼ EGR 通路に問題 ありと判断した。 <分解点検> 内視鏡での確認ができない個所であったためインテークマニホールドを外 しての点検を行った。 結果は 4 番の EGR 通路のみインテーク側に通っており 1,2,3 番は詰ま っている状態であった。 スラッジ詰りがあった EGR 通路(1,2,3 番) 図 1.取り外したインテークマニホールド 図 3.インテークマニホールド入口側詰り様子 図 2.EGR 通路拡大(スラッジ詰り) すなわち ECU 信号により EGR 制御が始まると、4 番だけに大量の EGR が流れるためこの気筒のみの失火が発生していた訳だ。 <対策、処置> インテークマニホールドは EGR 通路がスラッジにより詰り固着して、清掃で は修復が困難であった為 EGR バルブとともに交換し、正常に復帰することが できた。 走行キロが多い車両はブローバイガスの量も増えてくるのでこの種のトラブ ルも想定しなければならないであろう。予防としては 10 万 km 毎ぐらいに清 掃をすすめるべきだと思う。 <注釈> ※1.G-scan2 オシロスコープ搭載の高性能スキャンツール ※2.アクティブテスト 診断機にて ECU と通信を確立させ本来ある一定の条件が確立しない と作動しないアクチュエータを強制的に作動させおこなうテスト (サービス部 チーフインスペクター 長野 清志)
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