EGR、燃料噴射制御の効果

PS-20
ディーゼル機関の燃焼に及ぼす
エマルション燃料、EGR、燃料噴射制御の効果
環境・動力系
1.はじめに
*西尾澄人、柳東勲
testo350XL を用いて、NOx、CO、O2、CO2 濃を計測した。
ディーゼル機関から排出される NOx の低減技術とし
て EGR(排気ガス再循環)やエマルション燃料の使用が
ある。これまでの実験で、EGR は高い NOx 低減効果があ
スモー ク濃度 の計 測はス モ ークメ ータ SOKKEN MODEL
GSM-3 を使用した。
なお、全ての実験はほぼ同一時期に行っている。
るがスモークを増加させる。また、エマルション燃料
は EGR より NOx 低減効果が少ないが、スモーク低減効
果がある。さらに EGR とエマルション燃料を組み合わ
3.実験結果および考察
小型高速ディーゼル機関に軽油、エマルション燃料、
せるとスモークを増加させずに NOx を大幅に低減する
LCO 混合油を使用して、EGR や燃料噴射制御を行った実
ことができるが、着火遅れが大きくなり、熱効率が悪
験の燃焼解析の結果を図 1 から図 3 に示す。
化する。一方、燃料噴射制御で着火時期の制御が可能
だが、スモークを増加させる場合もあり、適切な燃料
。
特性や機関特性に与える影響を調べたので報告する。
加えてエマルション燃料と同程度の着火遅れを有する
LCO 混合油を用いて実験を行ったので報告する。
2.実験装置および実験方法
実験に使用したディーゼル機関は小型高速 4 サイク
ルディーゼル機関(単気筒、無過給、最大出力 12kW/
P (MPa)
Pfuel (×10MPa)
すべてを小型高速ディーゼル機関に適用し、排気ガス
GO
EF30-EGR30-8.8°
EF30-EGR30-10.6°
EF30-EGR30-12.4°
EF30-EGR30-14.2°
9
8
7
6
5
4
3
2
1
0
-1
-2
-3
-30
2600rpm、AVL 製)である。EGR の実験が行えるように
0.15
Pfuel
0.10
dQ/dθ
関回転数:1363rpm、トルク:4.13kgf・m)に設定して
P (MPa)
Pfuel (×10MPa)
1500rpm の状態とした場合の舶用特性の 75%負荷(機
実験を行った。
使用した燃料は、軽油(GO: Gas Oil)、エマルショ
0.00
0
crank angle (deg)
燃料は軽油と水を容積比で 70:30(EF30)にして製作
を調べるために、燃料噴射時期を上死点前 7.0 度(基
準)、8.8 度、10.6 度、12.4 度、14.2 度と変えて実験
を行った。
筒内圧データはクランク角度 1 度間隔で収集した。
排ガス計測はポータブル型燃焼ガス分析計
P (MPa)
Pfuel (×10MPa)
する LCO と A 重油の混合油(図中 LCO と記す。LCO:A=7:
燃料噴射時期が排ガス特性や機関特性に与える影響
30
0.30
P
0.25
0.20
0.15
Pfuel
0.10
dQ/dθ
0.05
0.00
0
crank angle (deg)
30
図 2.燃焼解析結果(EF30、EGR25)
したものである。また、EF30 と同程度の着火遅れを有
使用した。
GO
EF30-EGR25-7.0°
EF30-EGR25-8.8°
EF30-EGR25-10.6°
EF30-EGR25-12.4°
9
8
7
6
5
4
3
2
1
0
-1
-2
-3
-30
ン燃料(EF: Emulsified Fuel)である。エマルション
3。密度 0.9151g/cm 3、動粘度 2.573cSt、CCAI 882)も
0.05
図 1.燃焼解析結果(EF30、EGR30)
る。EGR 率は 25%(EGR25)と 30%(EGR30)である。
100%の負荷を同機関の最大トルク 5kgf・m と回転数
0.25
0.20
排気ガスの一部を吸気側に戻すように改造を行ってい
ディーゼル機関の運転条件は、本ディーゼル機関の
0.30
P
dQ/dθ (kJ/deg)
本研究では、エマルション燃料、EGR、燃料噴射制御
dQ/dθ (kJ/deg)
1),2),3)
9
8
7
6
5
4
3
2
1
0
-1
-2
-3
-30
GO-1
LCO
LCO-EGR25-12.4°
LCO-EGR25-10.6°
LCO-EGR25-8.8°
0.30
P
0.25
0.20
0.15
Pfuel
0.10
dQ/dθ
0.05
0.00
0
crank angle (deg)
30
図 3.燃焼解析結果(LCO 混合油、EGR25)
dQ/dθ (kJ/deg)
噴射制御が重要であることが分かっている
燃料噴射時期が排ガス性状に与える影響を図 4 から
図 6 に、熱効率の結果を図 7 に示す。
NOx はエマルション燃料にすることで減少し、EGR 率
に、NOx を 70%低減することが可能であった。
を大きくすると大幅に減少する。燃料噴射時期を早く
2) 燃料噴射制御で適切な着火時期に設定する際、スモ
すると最高筒内圧の上昇とともに NOx も上昇する。し
ークを増加させる場合があり、適切な水混合割合と
かし EF30 の場合は元の GO の値と比較すると依然低い
EGR 率の組み合わせが重要である。
値である。LCO 混合油の場合はもともと GO に比べて NOx
は高い値であり、EGR を使用することにより低くなるが、
燃料噴射時期を早くすると高い値になる。
Smoke 濃度はエマルション燃料にすることにより大
参考文献
1)西尾他 3 名, 日本機械学会関東支部第 19 期総会講演
論文集,130-1(2013-3),459-460
幅に減少するが EGR 率を高くすると増加する。しかし
2)西尾、柳,海技研講演会講演集,PS-35(2013), 1-2.
元の GO に比べると依然低い値である。燃料噴射時期を
3)西尾、柳, 日本機械学会関東支部第 20 期総会講演論
早くすると EF30 の EGR 率 25%の場合は、Smoke が増加
文集,10302(2014-3),1-2
することなく低い値で推移する。EF30 の EGR 率 30%の
1400
く。LCO 混合油の EGR 率 25%の場合も燃料噴射時期を
1200
早くすると Smoke は増加していく。
1000
CO はエマルション燃料にすることにより増加し、EGR
率を高くすることにより更に増加する。燃料噴射時期
NOx (ppm)
場合は燃料噴射時期を早くすると Smoke は増加してい
800
600
200
熱効率はエマルション燃料にすることにより低下し、
0
-16 -15 -14 -13 -12 -11 -10 -9 -8
燃料噴射時期 (deg ATDC)
EGR 率を高くすることにより更に悪化する。燃料噴射時
期を早くすると熱効率は改善され、元の GO の熱効率と
同等まで改善することが可能であった。
4
3
EF30 の EGR 率 30%の場合は、燃料噴射時期を早くす
することは可能であるが、Smoke が増加した。燃料噴射
時期を早くすると、燃焼が上死点に近くなり着火遅れ
が減少すると共に燃焼速度が早くなる。EGR により燃料
Smoke (%)
EF30 の EGR 率 25%の場合、燃料噴射時期を早くする
ことにより(噴射時期-12.4 度)、基準の GO に比べて
ることにより NOx を大幅に低減したまま熱効率を改善
EF30-EGR30
EF30-EGR25
LCO-EGR25
GO-EGR 0
EF30-EGR 0
EF30-EGR10
EF30-EGR20
LCO-EGR 0
1
0
-1
-2
-3
-4
-16 -15 -14 -13 -12 -11 -10 -9 -8
燃料噴射時期 (deg ATDC)
3000
CO (ppm)
2500
2000
1500
1000
Smoke は増加した。燃料噴霧の燃焼火炎内の O 2 に対す
500
る燃料の割合が関係しているものと考えられる。LCO
0
ため、LCO 混合油では Smoke が増加し、EF30 では増加
基準
34
熱効率 (%)
33.5
33
32.5
32
31.5
EF30-EGR30
EF30-EGR25
LCO-EGR25
GO-EGR 0
EF30-EGR 0
EF30-EGR10
EF30-EGR20
LCO-EGR 0
1) エマルション燃料、EGR、燃料噴射制御を組み合わ
31
-16 -15 -14 -13 -12 -11 -10 -9 -8
燃料噴射時期 (deg ATDC)
せることによりスモーク及び熱効率を悪化させず
図 7.熱効率と燃料噴射時期の関係
影響を調べた結果、以下のことが明らかになった。
-6
34.5
油に比べて低いのもこれが原因の一つと考えられる。
ィーゼル機関に適用し、燃焼・排気ガス特性に与える
-7
図 6.CO と燃料噴射時期の関係
しなかったものと考えられる。EF30 の NOx が LCO 混合
エマルション燃料、EGR、燃料噴射制御を小型高速デ
基準
-16 -15 -14 -13 -12 -11 -10 -9 -8
燃料噴射時期 (deg ATDC)
混合油の場合を 100 とすると EF30 の場合は 70 である
4.まとめ
-6
EF30-EGR30
EF30-EGR25
LCO-EGR25
GO-EGR 0
EF30-EGR 0
EF30-EGR10
EF30-EGR20
LCO-EGR 0
3500
の O 2 濃度は約 11.8%、EGR を 25%かけた場合は約 8.8%、
EGR 率 25 % で あ っ て も 燃 料 噴 射 時 期 を 早 く す る と
-7
図 5.Smoke 濃度と燃料噴射時期の関係
たものと考えられる。EGR を使用しない場合の排気ガス
着火遅れが EF30 と同程度である LCO 混合油の場合は、
-6
基準
2
噴霧の燃焼火炎内の O 2 濃度が減少しスモークが増加し
EGR を 30%かけた場合は約 7.6%であった。
-7
図 4.NOx と燃料噴射時期の関係
5
を約 70%低減することが可能であった。
基準
400
を早くすると CO は減少していく。
熱効率を同程度に保ち、スモークを減少したまま NOx
EF30-EGR30
EF30-EGR25
LCO-EGR25
GO-EGR 0
EF30-EGR 0
EF30-EGR10
EF30-EGR20
LCO-EGR 0
-7
-6