国際社会論

授業科目名:
国際社会論
科目番号:
KOK301
単位数:
担当教員名:
2単位
担当形態:
黒木 國泰
開講時期:
単独
3年後期
オフィスアワー:
なし
1.授業の到達目標・テーマ
めまぐるしく変動する国際社会の現況と課題を、とくに東アジア、日本そして九州に視点をおい
て考察する。その上で、中国の覇権主義的政治思想を歴史的に把握するために、世界史の中の
前近代環シナ海地域システム、海禁-册封-朝貢システムについて史資料をもとに研究する。
2.授業概要
国境無きヒト,モノ,カネ,情報の移動とナショナリズム,ローカリズムの衝突を講義形式で考える。その
際,めざましい発展を遂げつつあるアジアの現況を調べ,華僑研究の理論や実証研究の成果から学び,
エスニシティ論を考える。その上で世界史の成立期,大航海時代の前史としての14世紀から今日に至る
アジアの歴史を考え,東アジア世界(册封ー朝貢)システムを概観し,台湾問題,領土問題等の東アジア
の諸問題への理解を図る。授業形態は講義とする。
3.授業計画
第1回:ガイダンス
なぜ国際社会論を学ぶのか、講義計画と授業規律の確認
評価の方法等
第2回:国際連合の8つのミレニアム開発目標(MDG)とその限界を考える
極度の貧困と飢餓の撲滅、普遍的な初等教育の達成等8つの開発目標の現状と課題につい
て、インターネット等を活用し、資料を読み解き考察し、自分の言葉で考えたことを表現する
第3回:21世紀はアジアの時代 日本を取り巻く環境
アジアとは何か、地理的環境とグローバリゼーションについて、アメリカンスタンダードを考える、
日本の国土は約38万平方kmで世界第60位、領海と排他的経済水域(EEZ)を合わせると約44
7万平方kmで世界第6位、日本の海洋資源確保と中国の海洋進出との摩擦
第4回:21世紀はアジアの時代 中国をはじめとするアジア諸国の現況と将来予測を考える
世界経済と政治の動態分析、とくに中国の経済発展、インド、大韓民国、ASEAN諸国の勃興
等を押さえる。1945年7月26日ポツダム宣言から今日に至る歴史的外観、1972年「日本国政府
と中華人民共和国政府との共同声明」以後をふり返る。
第5回:21世紀はアジアの時代 東アジアの諸問題 台湾問題 領土問題等
鄭氏滅亡、1684年からの中国の台湾領有。下関条約以後の日本による台湾領有、亜東関 係
協会と日本側のカウンターパート財団法人交流協会の役割等台湾問題について考える、全人
代常務委員会議で議決された「中華人民共和国海島保護法」を考える、尖閣諸島、南沙諸島
問題。北方領土問題、竹島問題。ロバート・ウィラード米太平洋軍司令官の議会証言等をもと
に現況分析を行う
第6回:グローバル、ナショナルとローカルの現況 華僑論、エスニシティ論を考える
地域経済統合を考える、APEC、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約
を考える、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)、華僑華人の歴史と現況を考察する、ババ・
マレー(クレオール系の方言、福建語から多くの語彙を取り入れた言語)を話す人々プラナカン
エスニシティを考える
第7回:東アジア世界史概観 大航海時代と「世界史」の成立
1453年オスマントルコがビザンチン帝国(東ローマ帝国)を滅ぼした結果、スペイン・ポルトガル
による地中海世界から大西洋への大航海時代が出現、中国の銀需要による世界史の展開
第8回:世界史の中の環シナ海地域システム 16・17世紀の環シナ海地域の状況
中華帝国によるアジア支配、内臣、外臣の国と朝貢国のシステム、ポルトガル、スペイン、オラン
ダ、イギリスの環シナ海への登場と波紋
第9回:勘合貿易と環シナ海朝貢システム
足利義満は、なぜ中国皇帝の家来になったのか。満済准后日記を読み勘合貿易について考
える、善隣国宝記を読み、勘合貿易反対論を考える。正徳大明会典を読み中華システムを考
える
第10回:中世東アジア世界システム概観 海禁-册封-朝貢システムについて
中華帝国の皇帝が「册書」という辞令書によって、自分の一族や、功績のあった臣下に、王侯
公などの称号を与え、領地を与えることを册封という。これに準じて本土外の異民族の首長にも
王号等を与え、皇帝の臣下に組み入れたこと
第11回:琉球国の朝貢貿易 琉球国の貢物からわかること 琉球国の東南アジア交易について
琉球王国の貢物の出産地を確認し、産地ごとにまとめる。琉球王国では生産されないものも貢
物リストにあるのはなぜか。琉球国の交易相手国地域を確かめる。歴代宝案とはなにか。
第12回:環シナ海世界における琉球国の位置 中世-近世の琉球と日本・朝鮮間の交易
漢文の手紙を書く人、大きな海船を操る人は何者か、唐船をどうやって手に入れたのか、華僑
ネットワークについて、琉球国の交易船は唐船だ、通事,火長(船長)等は久米村系の人、中国
人であることが名前からわかる、閩人36姓とはなにか。
第13回:朝貢システムと私貿易 倭寇とは「倭寇的状況」とはなにか
倭寇的海商が、略奪商品を日本にもたらす交易ルートをもつ、明朝が、16世紀の後半に倭寇
の根拠地日本方面への海禁を維持する一方、東南アジア方面への海禁を解除。ために東南ア
ジア方面へ向かう中国商人が増大。西南大名や豪商による「投げ銀」とはなにかを考える
第14回:近世環シナ海地域システム 鎖国システムの中での交流・交易
鎖国と海禁のちがい、「鎖国」という言葉は『鎖国論』1801年で初めて使われた、4つの口交易1
長崎貿易(「中国」・オランダ)2薩摩-琉球-中国 3対馬-朝鮮-中国 4松前藩-アイヌー
ダッタン-中国について考える
第15回:近代環シナ海地域システムについて
大アジア主義と孫文、孫文に資金援助をした梅屋庄吉、沖縄・琉球国、朝鮮国、台湾について
史資料を分析する、福沢諭吉『文明論の概略』『脱亜論』を読み、日本にとっての近代を考える
定期試験
4.テキスト
特になし(プリント配布)
5.参考書・参考資料等
・Hブル『国際社会論』(岩波書店、2000年)、
・和田正廣・黒木國泰編著『華僑ネットワークと九州』(中国書店、2006年)ほか適宜紹介
6.事前・事後学習
・毎回の内容について、事前に講義資料印刷物をわたすので、しっかりと目を通し、不明な点
等をあらかじめ調べておくこと。
・毎回の授業後に、内容について自分の言葉でまとめ、他者に説明できるようにする。
7.学生に対する評価:
定期試験70% 、課題レポート30%で評価する。
8.その他
特になし