第 11 回帝京国際文化学会

第11回帝京国際文化学会
《報
告》
第 11 回帝京国際文化学会
中 村
楼 蘭
第11回帝京国際文化学会は11月29日、本館 7 階第 5 会議室で開催さ
れた。会員11人、準会員 3 人の他、短大・国際コミュニケーション学
科の水口紀勢子教授、法学部の則武輝幸助教授、国際文化学科の大学院
生12人、留学生1人、合計29人が出席した。
午後 2 時35分開会。北原敦学会長が開会の挨拶をされ、グローバリ
ズムや地方主義が交錯し国民国家の在り方が問われている現在、「『国際
文化 』と どう 取り 組む べ き か」、「こ の discipline を根底 から 捉え 直そ
う」と呼びかけた。
続 い て 、 海 老 坂 高 会 員 の 「『 新 し き
土』-日独合作映画をめぐって-」と題
する報告が始まった。海老坂会員は、
1937年 に 封 切 ら れ た 日 独 合 作 映 画 『 新
しき土』はその制作過程で、ナチスの後
援の下、独日連帯を前面に押し出し政治
性を重視しようとするドイツ側と、映画
人・企業が中心となり芸術性・リアリズ
ム・商業性を保とうとする日本側との間
にギャップが存在し続け、結果的にファ
報告をする海老坂高会員
ンク版と伊丹版二種類が作られたと説明、
映画制作の背景として、ドイツの政治事情 (独中提携を進めた主流派へ
の反発、領土拡大政策の推進)、日本人の対独感情 (ナチスの有色人種
蔑視に対する反感)、日独の映画に対する法的規制の相違などを指摘した。
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報告を聞く出席者
また、会員は、『新しき土』はドイツで一千万人以上が見、日独双方で
成功をおさめたがそれは「宣伝の力によった」、ドイツ側が続編の制作
に意欲的だったのに対し日本側は監督ファンクの映画人としての才能に
疑問を抱き続編は 「幻」 となったなど、興味深いエピソードを紹介した。
報告後、斎藤治子準会員、水口教授、北原会員、岩浅武久会員、二村宮
國会員、呉忠根会員から、「(同映画に対し)会員自身はどのような感想
を持ったか」「ファンク版が好評だった理由は何か」「伊丹版、ファンク
版はどこで見られるか教えて欲しい」「山田耕筰が戦後復権できたのに、
合作映画に関わったファンク等はなぜ復権
できなかったのか」「(同映画は)国策映画
であったが、日本の政府・軍部は日本人監
督等の行動にどのように対応したのか」な
ど様々な質問や要望が出された。
10分間の小休止。4 時05分より、斎藤治
子準会員の「北方領土問題の過去・現在-
領土帰属の法的根拠を中心に-」と題する
報告が行われた。斎藤準会員は、まず、こ
れまで日本で展開されてきた北方領土返還
報告をする斎藤治子準会員
に関する主張を五つに分類して詳述し、各
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主張が依拠する法的根拠を説明、その妥当性を検証しながら、日ソ共同
宣言 (1956年) を根拠とする歯舞・色丹二島返還が現存の「国際法」と
しては妥当と結論付けた。なお、日本でしばしば主張される四島返還論
については、その根拠とされる日露通好条約(1855年)に翻訳上の誤
りがあること、かつて日本外務省条約局長が「(日本が放棄した千島列
島に)国後・択捉が含まれる」と発言していたことなどに基づき、妥当
性に疑問を投げ かけた。一 方、ロシア側で もプーチン 政権が「(日露
の)講和条約締結後、歯舞諸島、色丹の返還」に応ずる考えを持ってい
ると推測されるとし、北方領土問題が将来二島返還で解決される可能性
を示唆した。また、準会員は、北方領土問題の解決に当たっては、先住
のアイヌ民族の占有権問題、ロシア人住民や日本人の元住民の問題、自
然保護と経済開発の調整の問題、日露間の平和・安全問題、様々な視角
から捉えこれに対処していく必要があると述べた。報告後、海老坂会員、
岩浅会員、久米あつみ会員、田村さと子会員、大和正典会員から、「か
つてイスラエル人の樺太移住が提案されたことがあったが、これに対す
るロシア側の反応は」「鈴木宗男氏の北方領土関連の活動について何か
情報はないか」「日露通好条約の翻訳に関して詳しく教えてほしい」「北
方領土に関して日本外務省が展開した外交は真に国益を反映したものと
出席者一同
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いえるか」「ロシアの、日本以外の国に対する領土問題の処理方法につ
いて教えて欲しい」「世界的に見て、先住民問題まで考慮した領土問題
処理の例があるか」など、多数の質問や要望が出された。
5 時30分、予定を20分超過して閉会。記念の写真撮影後、散会。
学会の開催に当たり、今回も大学事務局の全面的なご支援、並びに大
学院生の協力をいただいた。この場をお借りして御礼を申し上げたい。
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