2015/01/29 2015.01.06 セミナー 微小管の機械的性質と 量子生物学の現在 川井将敬 背景 • 1944年にオーストリアの物理学者Erwin Schrödingerに講演 「What is life?」が刊行され後の生物学に大きな影響を与えた • 生体内の化学反応はすべて量子力学的効果だといえるが、 量子もつれ、トンネル効果といった量子力学特有の現象は温 かくごちゃごちゃした細胞内で起こっているとは考えられてい なかった。 1 2015/01/29 背景 • 最近、そのような現象が生体内でも起こっている証拠が見つ かりだして来た。(Jim Al-Khalili & Johnjoe McFadden (2014). Life on the Edge: The Coming of Age of Quantum Biology.) • 線毛の骨格は微小管であることと、細胞内の微小管が量子的 現象の場となっているとする仮説 Orchestrated Objective Reduction (Orch OR) (S. Hameroff & R.Penrose, 1996) に 興味を持ったことから、微小管の物理的性質を調べた論文を 紹介する。 • 微小管の物理的性質は今までに計測されて来たようだったが、 値がまちまちであった。 2015.01.06 セミナー 川井 2 2015/01/29 実験概要 • 微小管に対してNAMDというソフトを使い、Molecular Dynamics (分子動力学法) シミュレーションを行った。 • 長軸方向、横方向の応力、ねじりによる微小管の変形を シミュレートし、機械的性質を推定した。 Molecular Dynamics (分子動力学法)とは 2体(あるいはそれ以上)の原子間ポテンシャルの下に、古典力学における ニュートン方程式を解いて系の静的、動的安定構造、ダイナミクスを解析する手法 (wikipedia) 3 2015/01/29 微小管はα、βサブユニットの二量体が 構成するprotofilamentsによって形成される。 生体内では通常13本のprotofilamentsからなる。 極性があり+方向への伸長の方が速い。 Protofilament間の結合には N system (B type lattice) と S system (A type lattice)がある。 Fig2. N system, S systemのセットアップ 4 2015/01/29 長軸方向の応力-ひずみ曲線. Complete microtuble N S ε<0 / 0<ε ε<0 / 0<ε 1.4GPa / 0.3GPa 1.3GPa / 0.5GPa 1.2GPa Young‘s modulus 微小管のシミュレーションのセットアップ 5 2015/01/29 横方向の応力をかけた場合の シミュレーション S 0.05 < ε < 0.15 での バネ定数は0.3 N/m S +端 -端 ねじりのシミュレーション。 時計方向と反時計方向でねじられやすさ が違う事がわかる。 時計方向の方がねじられやすい。 6 2015/01/29 +端 Node の線毛は時計回りに回転しているが、 シミュレーションではパラメーターによっては反時 計回りも可能だという論文がある。(A. Hilfinger et al., 2008) 時計方向の回転 -端 総括と感想 • コンピューターシミュレーションによって微小管の物理的性質 が導かれた。しかしこれが妥当かどうかはやはり実験と整合 性がとれているかどうかからはんだんするしかない。 • コンピューターシミュレーションに計測の難しい物理的性質が 演繹されてくるようになったのはすばらしい事であると思う。 • 量子力学によってすべてのミクロな現象も解析できるように なったが計算量の多さからできる事は限られていることが分 かった。 • 単一の微小管の性質がどれほど線毛に影響を与えているか は今後の研究によって明らかになると思われる。 7
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