2015/8/31 文献 社会意識(3) 準拠集団の変化 数土直紀著 『日本人の階層意識』 講談社 階層帰属意識の明確化 • 階層帰属意識の明確化 残された問題 1 • 準拠集団論 • 階層帰属意識と地域 なぜ、人びとは過去よりも学歴を反映す るような階層意識をもつようになったの か? 階層帰属意識の明確化 階層帰属意識の明確化 考えられる説明 1 考えられる説明 2 教育水準が上がり、 自身の所属階層を判断するメカニズム が、昔と異なったものに変化した 1 2015/8/31 階層帰属意識の明確化 考えられる説明 1 考えられる説明 2 階層帰属意識の明確化 相対的不満 社会的境遇の絶対的な低さではなく、 こちらの可能性に注目 する! 階層帰属意識の明確化 階層帰属意識の明確化 階層判断の基準 これが異なると、 階層判断の基準 絶対的な基準ではない 絶対的な基準ではない それは相対的な基準である それは相対的な基準である 階層帰属意識の明確化 学歴による準拠集団 ここでの仮説 相対的不満の考え方 期待水準 階層を判断する基準の選ばれ方が1970 年代から2000年代にかけて変化した 達成水準 実際の収入 2 2015/8/31 学歴による準拠集団 相対的不満の考え方 学歴による準拠集団 相対的不満の考え方 客観的には高額の収入を得 ていても、 > 実際の収入 事前に予想した収入 > 実際の収入 収入の額に関係なく、収入が事前の予想を下回ると、 不満が生じる 収入の額に関係なく、収入が事前の予想を下回ると、 不満が生じる 学歴による準拠集団 学歴による準拠集団 この水準は、その人が何 相対的不満の考え方 を準拠集団にしているか に依存して決まっている 大卒の場合 期待水準が上がる 期待水準 達成水準 実際の収入 学歴による準拠集団 大卒の場合 たとえ同じ収入 でも・・・ 期待水準が上がる 大学時代の同窓生の平均給与が高く、自分もそれだけもらっ て当然だと思えば、 準拠集団:同年代の人びと 期待水準が下がる 学歴による準拠集団 大卒の場合 準拠集団:同年代の人びと たとえ同じ収入 でも・・・ 期待水準が下がる 同年代の人びとの平均給与が低く、自分もそんなもんだろうと 思っていれば、 3 2015/8/31 学歴による準拠集団 学歴による準拠集団 疑問 準拠集団論の問題点 比較のための準拠集団は、どのようにし て選ばれるのだろうか? どのような準拠集団を選択するかが事前 に分かっているわけではなく、結果をみ て後から判断するしかない 学歴による準拠集団 学歴による準拠集団 階層意識の輪郭が 明確化した理由 階層意識の輪郭が 明確化した理由 人びとによって想定される準拠集団が変 化したのではないか? 階層帰属意識と地域 階層帰属意識と地域 都道府県別の大学進学率に注目する 階層得点との相関係数 •階層意識は地域によってどのように異なっている のだろうか? •そのような違いは、どのようなメカニズムによって 生まれているのだろうか? 1985年SSM ‐0.019 1995年SSM 0.046** 2005年SSM 0.064** 4 2015/8/31 階層帰属意識と地域 階層帰属意識と地域 95年以降、地域間で差が現れて いる(階層意識の空間化) 都道府県別の大学進学率に注目する 都道府県別の大学進学率に注目する •進学率の高い地域に住む人びと ⇒ 階層得点との相関係数 •進学率の低い地域に住む人びと ⇒ 1985年SSM ‐0.019 1995年SSM 0.046** 2005年SSM 0.064** 階層得点との相関係数 ‐0.019 1985年SSM 1995年SSM なぜ、学歴構造の違いが階 層意識に反映されないの か? 2005年SSM 0.046** 0.064** 階層帰属意識と地域 階層帰属意識と地域 都道府県別大学進学率間の相関係数 都道府県別の大学進学率に注目する 各地域間の学歴構造の差 異は、 85年 何かが変化 した 階層得点との相関係数 95年 85年 ―― 95年 0.879** ―― 05年 0.743** 0.875** 05年 ―― 1985年SSM ‐0.019 1995年SSM 0.046** 2005年SSM 0.064** 階層帰属意識と地域 階層帰属意識と地域 考えられる説明 考えられる説明 1985年の場合 1985年と1995年・2005年とで、階層的地 位の判断基準(回答者の準拠集団)が 身近な地域が準拠集団 進学率の高い地域 ・・・ 高学歴がふつう 進学率の低い地域 ・・・ 非高学歴がふつう 5 2015/8/31 階層帰属意識と地域 階層帰属意識と地域 考えられる説明 考えられる説明 1985年の場合 身近な地域が準拠集団 1995年以降の場合 日本全体が準拠集団 進学率の高い地域 ・・・ 高学歴がふつう 進学率の低い地域 ・・・ 非高学歴がふつう 進学率の高い地域 ・・・ 非高学歴がふつう 進学率の低い地域 ・・・ 非高学歴がふつう 階層帰属意識と地域 階層帰属意識と地域 考えられる説明 1995年以降の場合 準拠集団の変化 1985年 ・・・ 身近な地域 日本全体が準拠集団 進学率の高い地域 ・・・ 非高学歴がふつう 進学率の低い地域 ・・・ 非高学歴がふつう 階層帰属意識と地域 階層帰属意識と地域 使用するデータ 使用する変数 •ミクロデータ ・・・ 1985年SSM 1995年SSM 2005年SSM •従属変数 階層帰属意識(1~5) •マクロデータ ・・・ 学校基本調査 •独立変数(マクロ) 都道府県別大学進学率 •独立変数(ミクロ) 学歴(大卒,高卒) 6 2015/8/31 階層帰属意識と地域 階層帰属意識と地域 • 階層得点 • 学歴 平均 標準偏差 大卒(%) 高卒(%) 1985年 3.02 0.86 1985年 21.0 45.4 1995年 3.05 0.83 1995年 25.0 51.0 2005年 2.80 0.86 2005年 28.9 57.1 全体 2.97 0.85 全体 25.2 51.4 階層帰属意識と地域 分析結果(85年) • 都道府県別大学進学率 進学率 平均(%) 標準偏差 最小値 最大値 1985年 29.6 5.92 17.8 40.8 1995年 37.0 6.62 22.9 47.2 2005年 45.5 6.71 31.1 全体 38.8 8.87 17.8 ‐0.003 (0.002) ‐0.005* (0.002) 0.340** (0.039) 高校 0.214** (0.032) 定数 3.104** (0.075) 3.007** (0.076) 58.4 調整済みR2 0.000 0.023 58.4 N 3,751 3,751 分析結果(95年) モデル1 モデル2 モデル1 モデル2 ‐0.003 (0.002) ‐0.005* (0.002) 進学率 0.006** (0.002) 0.004* (0.002) 0.340** (0.039) 大学 0.457** (0.030) 0.214** (0.032) 高校 0.257** (0.026) 大学 高校 モデル2 大学 分析結果(85年) 進学率 モデル1 高い学歴をもっていても、 定数 3.104** (0.075) 3.007** (0.076) 定数 2.823** (0.062) 2.664** (0.063) 調整済みR2 0.000 0.023 調整済みR2 0.002 0.039 N 3,751 3,751 N 6,242 6,242 7 2015/8/31 分析結果(95年) 分析結果(95年) モデル1 モデル2 モデル1 モデル2 0.006** (0.002) 0.004* (0.002) 進学率 0.006** (0.002) 0.004* (0.002) 大学 0.457** (0.030) 大学 0.457** (0.030) 高校 0.257** (0.026) 高校 0.257** (0.026) 進学率 定数 進学率の高い地域に住んでいるひとは、 2.823** 2.664** 定数 2.823** 2.664** 2005年にも、同様の傾向を観察すること (0.062) (0.063) ができる (0.062) (0.063) 調整済みR2 0.002 0.039 調整済みR2 0.002 0.039 N 6,242 6,242 N 6,242 6,242 階層帰属意識と地域 • 85年 社会の全体を捉える視点がなかった 階層帰属意識と地域 • 95年以降、 社会 社会 地域 地域 地域 地域 地域 地域 地域 地域 地域 地域 階層帰属意識と地域 階層帰属意識と地域 1985年 1995年以降 地域で分断されていた人びとの視点は、 階層意識の均質化(平準化)をもたらして いた によって、階層意識の輪郭がはっきりした 8
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