特集 April Vol.26 No.1 平成 27 年度介護報酬改定が決定 充実(4)口腔・栄養管理に係る取組の充実― 概論 中重度・認知症高齢者への対応が柱に 基本報酬は引き下げ各種加算を創設 の 4 つの取り組みを評価した。 中重度の要介護者等を支援する対応では、リハ ビリ専門職の配置等を踏まえた老健施設における 在宅復帰支援機能のさらなる強化を打ち出した。 老健施設の在宅強化型基本施設サービス費およ び在宅復帰・在宅療養支援機能加算を重点的に評 価。基本施設サービス費は通常型が▲ 2.99%に 対し、在宅強化型は▲ 1.56%に抑えた。 2 月 6 日の介護給付費分科会 平成 27 年度の介護報酬改定の内容が決定した。 答申を受け、厚生労働省は同 10 日から 3 月 在宅強化型と通常型の基本施設サービス費(要 今回の改定は、中重度・認知症高齢者への対応や 11 日までパブリックコメントを募集。その結果 介護 3 ・多床室)を比較すると、現行は在宅強化 認知症高齢者へのリハビリでは、認知症の特徴に 介護人材確保対策の推進を柱に、地域包括ケアシ を踏まえ、告示や関連通知などを発出する。 型 963 単位/日、通常型 904 単位/日でその差 合わせたリハビリとして機能を追加。 ステムの実現に向けた内容となった。全体として 介護報酬の改定率は、予算編成過程のなかで政 は 59 単位/日なのが、改定後は在宅強化型 948 さらに、歩行・排泄行動などの ADL や調理な は改定率▲ 2.27%のマイナス改定のなかで、基 府が決定する。全体の改定率は▲ 2.27%の改定 単位/日、通常型 877 単位/日でその差は 71 単 どの IADL、社会参加などの生活行為の向上に 本報酬は一部を除き引き下げる一方、介護職員処 となった。 位/日となり、両者の差はさらに 12 単位広がる。 対する新たなリハビリの仕組みを導入する。 「生 遇改善加算の拡充や各種加算の創設などを行うこ このうち、介護職員の処遇改善分( 1 人当たり また、在宅復帰・在宅療養支援機能加算を現行 活行為向上リハビリテーション実施加算」を新設。 とで、 「メリハリをつけた」 (厚生労働省)改定と 月額 1.2 万円相当の処遇改善)が+1.65%、介護 の 1 日 21 単位から 1 日 27 単位に引き上げる。 開始月から起算して 3 月以内に行われた場合は している。 サービスの充実分(中重度の要介護者や認知症高 老健施設については、在宅復帰機能のさらなる 齢者などの介護サービスの充実)が+0.56%とプ 強化を図るとともに、看取り期の対応として退所 ラスとする一方、収支状況を反映した適正化分は 後の生活を支援するための新たな評価を設定。ま ▲ 4.48%としている。 リハビリは、大幅に見直される。本来、介護の 一方、社会参加を維持できるサービスへ移行す た、在宅支援を推進するため看護・介護職員の専 ▲ 2.27%を在宅・施設別にみてみると、在宅 リハビリは生活機能リハビリであるべきだが、実 る体制を評価。通所・訪問リハビリの利用で 従常勤要件を緩和した。一方、老健施設が展開し ▲ 1.42%(地域密着型特別養護老人ホーム含む) 、 態は急性期や回復期の医療・看護のリハビリとあ ADL・IADL が向上し、指定通所介護など社会 ている通所・訪問リハビリについては、社会参加 施設▲ 0.85%となる。 まり変わらない心身機能の回復訓練に偏っている 参加を維持できる他のサービスに移行させるなど ことから、地域における社会参加や家庭での役割 質の高いリハビリを提供できる事業所の体制を評 づくりを支援する「活動」と「参加」に焦点を当 価する。社会参加支援加算が新設され、通所リハ てたリハビリを推進する。 ビリ事業所は 12 単位/日、訪問リハビリ事業所 こうした改定率を踏まえた今回の改定内容は、 通所・訪問リハビリの見直しでは、リハビリ は 17 単位/日となる。 ①中重度の要介護者や認知症高齢者への対応のさ テーションマネジメントを強化するとともにプロ 平成 27 年度の介護報酬改定については、社会 らなる強化②介護人材確保対策の推進③サービス グラムの充実を図る。マネジメントについては、 保障審議会介護給付費分科会(厚生労働大臣の諮 評価の適正化と効率的なサービス提供体制の構築 リハビリテーション計画書や計画策定と活用のプ 問機関、分科会長=田中滋慶應義塾大学名誉教 ―の 3 つの柱を基本的な視点としている。 ロセス管理の充実、ケアマネジャーなど他のサー 看取り期の対応では、本人・家族とサービス提 授)が協議を続けてきた。 1 月 9 日の分科会で審 このうち、第 1 の柱である「中重度の要介護者 ビス事業所も交えた会議の実施と情報共有の仕組 供者との十分な意思疎通を促進することで、本 議報告をまとめ、改定の基本方針を決定。その後、 や認知症高齢者への対応のさらなる強化」では、 みを評価する。 人・家族の意向に基づくその人らしさを尊重した を維持できるサービスへ移行する体制の評価など 在宅支援の強化を打ち出した。 ▲ 2.27%のマイナス改定 処遇改善分は+1.65% 老健施設の在宅支援機能を強化 強化型と通常型の格差広がる 活動・参加に焦点当てたリハビリ マネジメントやプログラム見直す 2,000 単位/月、開始月から起算して 3 月超 6 月 以内に行われた場合は 1,000 単位/月と設定して いる。 看取り対応で退所後の支援計画 多職種による口腔・栄養管理へ 同 11 日に厚生労働大臣と財務大臣との大臣折衝 (1)中重度の要介護者等を支援するための重点的 プログラムについては、退院(所)後間もない ケアの実現が重要であることから、介護施設など で合意した改定率を踏まえ、 2 月 6 日に具体的な な対応(2)活動と参加に焦点を当てたリハビリ 患者・利用者に対する短期集中リハビリに個別リ におけるそのような取り組みを重点的に評価する。 サービス単位数を盛り込んだ諮問案を答申した。 テーションの推進(3)看取り期における対応の ハビリの機能を統合し、評価を平準化する。また、 老健施設は、入所前後訪問指導加算について多 10 ●老健 2015.4 010-13特集_概論(七)0317.indd 10-11 老健 2015.4 ● 11 2015/03/17 17:17:46 特集 April Vol.26 No.1 職種による退所後の生活の支援計画の策定を新た に評価。計画の策定では、終末期の過ごし方や看 取りについても話し合いを持つように努め、入所 介護職 1 人 2.7 万円の加算 介護福祉士の評価を拡大 平成 27 年度介護報酬改定が決定 2.7 万円引き上がる仕組みではないとした。 一方、効率的なサービス提供体制の構築では、 また、介護福祉士の評価を拡大する。介護福祉 人員配置基準などの緩和を図る。老健施設は看 士は継続的に専門性を高めることを前提に、介護 護・介護職員の専従常勤要件を緩和する。老健施 予定者やその家族が希望する場合には、具体的な 第 2 の柱である「介護人材確保対策の推進」で 職の中核的な役割を担う存在として位置づける方 設の看護師や准看護師、介護職員は原則、当該施 内容を支援計画に含むものとする。 は、介護職員処遇改善加算を拡大する。 向性が示されていることを踏まえ、介護福祉士の 設に専ら従事する常勤職員でなければならないと 口腔・栄養管理の取り組みについては、胃ろう 介護職員の処遇改善については、平成 21 年度 配置が促進されるよう、サービス提供体制加算の されている。しかし、訪問サービスなどの併設で 造設をめぐる問題が指摘されたことを受け、介護 補正予算で介護職員の給料を月額平均 1.5 万円相 要件について、新たに介護福祉士の配置割合がよ 退所者の在宅生活を含めて支援するため、老健施 保険施設などの入所者が認知機能の低下や摂食・ 当引き上げる介護職員処遇改善交付金を創設した。 り高い状況を評価する区分を創設した。 設の看護・介護職員が当該施設併設の介護サービ 嚥下機能の低下で食事の経口摂取が難しくなって 前回の平成 24 年度介護報酬改定では、例外的か も、自らの口で食べる楽しみを得られるよう、多 つ経過的な取り扱いとして、交付金と同様の仕組 職種による支援の充実を図る。 みで、介護職員処遇改善加算を創設。 経口維持加算を見直す。現行の摂食・嚥下障害 今回の改定では、現行の仕組みを維持しつつ、 3 番目の柱である「サービス評価の適正化と効 今回の改定では、老健施設は在宅復帰機能を重 の検査手法別の評価区分を廃止。改定後は、多職 さらなる資質の向上や雇用管理の改善、労働環境 率的なサービス提供体制の構築」では、集合住宅 視する見直しが行われた。基本サービス費がマイ 種が食事の観察(ミールラウンド)やカンファレ の改善の取り組みを行う事業所を対象に、月額平 へのサービス提供を適正化する。訪問介護や訪問 ナスとなったが、在宅強化型の引き下げ幅は小さ ンスなどに共同して取り組むプロセスを評価し、 均 1.2 万円相当を上乗せする介護職員 1 人月額 リハビリなどの訪問介護事業所は、同一敷地内ま く、在宅復帰・在宅療養支援機能加算は 6 単位 経口維持加算(Ⅰ)として 400 単位/月を設定 2.7 万円相当の加算を設けた。 たは隣接する敷地内の有料老人ホームやサービス アップするなど、通常型との基本サービス費の差 した。さらに、介護保険施設が協力歯科医療機関 事業者はサービス別加算率に基づいた額を原資 付高齢者向け住宅などの集合住宅に居住する利用 が拡大したといえる。 を定めた上で、食事の観察および会議等に医師 とし、介護職員に対して処遇改善を行う。新たな 者を訪問する場合、その利用者に対する報酬を また、 「心身機能」 「活動」 「参加」にバランス 加算の算定額に相当する介護職員の基本給、手当、 10%減算する。 よく働きかける効果的なリハビリの提供を推進す 聴覚士のいずれか 1 名以上が参加した場合は重点 賞与などの賃金を改善する。なお、個々の介護職 通所介護や通所リハビリなどの事業所が送迎を るべく、訪問リハビリや通所リハビリで新設の加 的に評価し、経口維持加算(Ⅱ)100 単位/月が 員への具体的な処遇改善方法は事業者が判断する していない場合は、片道あたり 47 単位を減算す 算や見直しがあったことは、老健施設の取り組み 上乗せとなる。 もので、すべての介護職員の賃金が一律に月額 る。 に対する後押しとなるだろう。 (配置医師除く)や歯科医師、歯科衛生士、言語 12 ●老健 2015.4 010-13特集_概論(七)0317.indd 13 集合住宅のサービス提供適正化 看護・介護職の専従要件を緩和 ス事業所の職務に従事する場合については、当該 施設の看護・介護職員の一部に非常勤職員を充て ることができる旨を明確化する。 老健 2015.4 ● 13 2015/03/17 17:17:48
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