超音波駆動型ワイヤレスCMOSセンサチップの開発

立命館大学研究部
2015 年
6月 4日
2014 年度採択 研究推進プログラム(基盤研究)研究成果報告書
採択者
(研究代表者)
研究課題
所属機関・職名:理工学部電気電子工学科・准教授
氏名:宇野重康
超音波駆動型ワイヤレス CMOS センサチップの開発
Ⅰ.研究計画の概要
研究計画について、概要を記入してください。
スマートダスト(Smart dust)とは、1997 年に UC Berkeley の Pister らにより提案され、DARPA により予算
配分を受けた技術概念であり、センサ・データ処理回路・通信回路・電源を内蔵した数 mm 程度の微小粒子(dust)
を大量に散布し、そこからのデータを遠隔で取得するというものである[1]。近年の理論検証では、数 10um 立方程
度の大きさをもつ smart dust を体内に埋め込み、超音波によってエネルギー供給とデータ通信を行うことで、体
内深部(たとえば脳内)の電位情報を多点で取得する可能性が指摘された[2]。現在までに、超音波駆動型ワイヤレ
ス CMOS センサの人体応用を目指した実験的検証には前例がなく、その足がかりとなる要素技術に取り組むこと
は意義深い。
本研究提案では、このような人体用超音波 smart dust の実験的実証試験への足がかりとして、人体中に埋植し超
音波によるエネルギー供給とデータ通信を行うことを目指した CMOS 集積回路の要素回路設計を行うことを目指
した。具体的には、次のような回路素子の設計・試作を行うこととした:
(a)
人体用超音波として使用される周波数での電圧振幅を想定した、整流・平滑回路の設計と試作
(b)
消化器官内部での pH 測定を想定した計装アンプおよびそこで用いる低消費電力オペアンプの設計と試作
(c)
pH 測定用センサ電極の CMOS 集積回路チップ上での試作と評価
[1] http://robotics.eecs.berkeley.edu/~pister/SmartDust/
[2] arXiv:1307.2196 (http://arxiv.org/abs/1307.2196)
Ⅱ.研究成果の概要
研究成果について、概要を記入してください。
上記のような計画に基づき、標準 CMOS プロセス(0.18um)での要素回路を設計し、試作・評価を行った。
(a)
エナジーハーベスティングのための整流・平滑回路の設計と試作
Mandal-Sarpeshkar 整流回路を 4 段連ねることにより整流平滑回路を構成した。試作回路の評価を行った結果、
周波数 13.56MHz 振幅 800mV において無負荷時に 1.8V が発生すること、振幅を 900mV とすることにより電圧
が 2.2V 程度まで上昇することを確認した。また、オペアンプと PMOS を組み合わせた LDO レギュレータを試作
し、正常な電圧調整動作を確認した。
(b)
バイオセンシングのための低消費電力オペアンプおよびポテンショスタットの設計と試作
電位検出型バイオセンシングのための低消費電力オペアンプを設計し試作を行った。また、電流検出型バイオセン
シングのためのポテンショスタット回路を設計し試作した。ポテンショスタット回路については溶液を抵抗で置き
換えたダミーセルにて動作検証を行い、その正常動作を確認した。
(c)
人体埋植超音波スマートダストに向けたその他の CMOS 回路設計と試作
上記に加え、バイオセンサ回路のアナログ出力電圧をデジタルデータへ変換するためのΔΣ変調回路などを設計試
作し、その正常動作を確認した。
(d)
pH 測定用センサ電極の CMOS 集積回路チップ上での試作と評価
一般的に幅広く電気化学的バイオセンシングに用いることが可能な電極を CMOS チップ上に作製・評価した。
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