店舗インフォメーション第248号発行

回
覧
平成27年3月1日≪第248号≫
<明日を創造する>
発行:
一般社団法人農協流通研究所店舗生活部
〒103‐0014
東京都中央区日本橋蛎殻町 1-38-9
TEL(03)5643(3675)
FAX(03)5643(3688)
第 86 回Aコープ店舗海外セミナー
平成27年2月13日(金)~19日(木)
野での業務に生かす機会とする。
5泊7日で、第86回Aコープ店舗海外セミ
(3) 本年度は、特にテキサス州に本拠
ナー(店長コース)を 33 名(事務局・添乗
を置き近年の競争環境に打ち勝ち成長を
員含む)の参加により実施しました。農流研
続けている、「HEB」社が展開する「セ
主催の海
ントラルマーケット」その他業態の取組み。
外セミナ
大きなトラブルもなく7日間の行程を終
ーも回を
えることができたのですが、初日のアメリカ
重ねて第
入国審査で時間をとられ、時間が連れ込んだ
86 回にな
ために肝心のセントラルマーケットの視察
りました。
時間が短縮、さらにバレンタインの催し、夕
第 1 回目
方の混雑の理由で店長インタビューができ
は昭和 47
ませんでした。
年で、当時はホノルル経由で 20 日間の長期
アメリカのSM概況
なもので、視察先も農場から市場、大学のセ
向き状態です。原油の値下げが消費動向を良
ミナーも受講しているような内容で派遣団
くしていて活気がありました。そうした中で
のイメージでした。
SMの店舗すべてが好調という事ではあり
今回の海外セミナーは、次の 3 つを主な目的
ません。アメリカは資本主義のもとM&Aの
にして、ヒューストン、サンフランシスコ、
世界です。かつてのSM優良企業としてのア
サクラメント3都市 14 店舗の視察を中心に
ルバート
行いました。
ソンの存
(1)スーパーマーケット(以後SMとす
在は投資
る)の発祥の地であり、社会・経済情勢
家配下の
の変化や厳しい競争の中にあってもなお
名目だけ
ダイナミックに変化をし続けるアメリカ
のものと
の店舗運営の実態を視察研修
なり、上
アメリカの景気も上
(2) 視察を通じて新たに得る知識・驚
位企業の
き・感動を日本に持ち帰り、新鮮な取り組
セーフウェイも配下にしてしまう状態で寡
み感度を日常店舗活動に反映させる契機
占化が進んでいます。今はクローガーという
とします。また、アメリカにおける食文化
やはりM&Aで大きくなったSM企業がN
や生活環境に触れ見聞を広げ、より広い視
o1になっています。
従来店舗の衰退
寡占化の中でSM企業の
品、食事の場の提供であったりするわけです。
従来型コンベンショナルな店舗(生鮮・日配
その中で際立っていたのが「ホールフーズ・
食品は壁を背にして主通路を配置、一般食
マーケット」です。売場の中に企業の取り組
品・雑貨売場を売場の中心にゴンドラで併設
みがビジュアルに表現され、つい”格好いい”
した売場面積 500~700 坪の大衆型)で標準
っていう言葉が出てしまいます。店内のすみ
化されただ物を販売しているだけの店舗は、
ずみまでその施しがなされ、ヒューストンの
衰退化しています。消費者は、日常的な食料
ホールフーズには 2 階から店内が一望できる
品の買物はウォルマートのようなスーパー
スペースがありそこで店内で購入した物を
センター、コストコなどの会員制の店舗で購
飲食できるスペース、催事スペースがあり、
入、医薬品はドラックストアー、簡単便利な
設けてあります。私たちが行ったときには、
商品はダラーストアーを利用しています。い
ミュージシャンがギターをかなで歌を披露
まお客様に支持されている店舗は、お客様の
していました。さらには、この店舗には自家
健康な生活を願いそのために店舗で何をし
製のビール工房まで備えられていてビール
なければいけないかを追求し実践している
(一杯 4・50$位から)が数種類販売されて
企業の店舗です。
いました。単に”楽しい”だけのものではな
支持される店
人気の店は、店舗の運営目
く、尽すという考え、歓待、おもてなし、心
的・目標に共感した従業員が働いているので
地良くなる「エンターテイメント」の世界に
一人ひとりの意識が高く”働きがい”を持っ
導く売場を作り上げていました。
て働いています。それに共感した顧客が店舗
何故この店が
を利用するというサイクルです。SMという
H・E・Bの店舗と競合する「ライス・エピ
形に拘るのではなく、ワンウェイの売場づく
ュキュリアン」の店舗を視察しました。「エ
りや壁面陳列の技術、ゴンドラ活用など有効
ピュキュリアン」とは食道楽という意味です。
な技法は活かしこれを売場に組みいれた新
かつてはその名のごとくレシピに拘りグル
たなSM店舗です。クレンリネス、カラーコ
メなデリ・惣菜を提供しお客様の満足度を高
ントロール、前進陳列の技術は踏襲されてい
めてきたが、スーパーマーケットに求められ
ます。大きな違いは経営者の運営の考え方で
る新しい
す。働く従業員の意識、さらには取引先との
価値観、シ
関係、すべてが一体化してお客様の健康で楽
ョッピン
しい日常生活を送ってもらう為に店舗で何
グへのエ
ができるかを実践している企業です。店舗の
ンターテ
存在理由
イメント
が明確な
性などお
店舗です。
客様が求めるものを提供できない状態にな
健康な生
り、今は閑古鳥が鳴く状態でした。クレンリ
活を送っ
ネス、前だしの状態も良好、入口にはバレン
ていただ
タインの催事コーナーを設け、デリコーナー、
くための
カットフルーツ、ジュースでの演出、ドライ
食の提案、安全で美味しいオーガニック商品
フルーツのコーナーも設置してあり、店づく
の提供、どこにも負けないカテゴリーの品揃
りはできているのに、お客さまが入っていな
え(チーズ、ヨーグルト)、美味しいデリ食
いのです。売場に活力がないのです。整然と
テキサス州ヒューストンの
した売場では、お客様が来店してくれないの
円換算で 1lあたり 168 円~200 円)、たまご
です。現在は対応策として配送車 6 台を駆使
1p(12 個入り 4.49~5.99$、120 円・10
して、自らお客さまに近づく対応をしていま
個入り換算 449 円~599 円)
。グロの商品も容
したが、その状態に唖然としました。
量が大きいことを考慮しても売価 1.89$、
エンターテイメント
3.28$、7.49$(120 円換算
初めてアメリカのS
226 円、393 円、
Mを見たときの感動は、迫力ある陳列、クレ
898 円)の売価が目に入りました。価格はウ
ンリネス、青果売り場のカラーコントロール、
ォルマートが先導しています。でも視察先の
接客と笑顔の対応でした。そして、日本でど
ウインコーズ・フーズの店では、価格面でも
のように普及していくかも気になるところ
しっかり対抗できていました。
でした。しかし、今日では、売場の管理(棚
セントラルマ
割り、品質表示、デジタルプライス)
、鮮度、
ーケットを筆
細かな品揃え、什器、照明、設備関係、など
頭にホールフ
は日本の方が進んでいるように思えます。特
ーズ、トレー
にエンド什器、(奥行が短くなった)などは
ダージョーズ、
日本のエンド、平台展開・什器使用などは逆
ナゲット、ス
に日本仕様がアメリカで見られるようにな
プラウツ、バ
っています。
ークレーボールの店舗、それぞれに特徴をも
でもどうしても日本で変わってこないのが、
った店舗でした。Aコープと比較してどうか
店舗デザイン(組合せ)です。店舗のムード、
という視点では、企業の運営の考え方、又ア
レイアウト、コーナーの演出、ビジュアル面
メリカの小売環境の中に存在する店舗とし
での質的な感度が日本のSMの売場に見ら
て、ハード面の比較は難しいように思います。
れないことです。
しかし、企
日本は、売場が必要性に流されてごちゃごち
業の理念か
ゃし過ぎています。(類似のアイテム数が多
らの店舗運
い)!「小さな器にいっぱい物を詰め込んで
営、売り場
いる感じです」。だからお客さまの買物とい
作り、販売
う行為が楽しくなくなってしまいます。この
手法、取扱
点が現地で案内をいただいた浅野氏が説い
商品、演出、取組姿勢は多いに勉強になりま
ていた「エンターテイメント」という事にな
した。また、「人」という大きな資源、人材
るわけです。売場のムード作り、品というか
活用、人材教育の重要性を感じ取れたと思い
質の違いです。
ます。そして、次のような点が目立ちました。
価格
取り組みの課題になると思います。
価格面
の競争はED
LPが当たり
前の状態とし
ながらも円安
感もあり、日
本のSMの価
格と比較した時に売価は高く感じました。牛
乳は1ガロン(3.78L5.09$~6.33$、120
1.カット野菜、カットフルーツの壁面棚展
5.什器の活用、照明、ディスプレー(商
開(パッケージ包装)による壁面での面展開(す
品が浮き出してくる照明、明暗の差)
ぐに目につきました)
6.ナッツ、穀物雑穀関係の量り売り、バル
ク販売(個々の計りによる量目バラ販売)
2.オーガニック、自然食品の販売強化、デ
リコーナーの展開(味は、まずまず)
3.対面方式での販売(デリ、水産、精肉・
7.カラーコントロール、定番管理(前だ
し、クレンリネスがしっかりできています)。
加工肉、ケーキ)
8.ワンウェイコントロール
9.ワイン、チーズの売り場の拡大(棚陳列
が増えています)
4.カテゴリーによるラインロビング(スパ
イス、シリアル、野菜・パスタソース)
10.食品売り場に連動したサプリメント売場
の拡大
11.PB商品の拡大(調味料、ジャム、飲料)
写真はトレーダージョーズで人気のジャム
14. グロの単品大量エンド陳列は少なくなっ
ています。(ナゲットは別)
テキサス
ホールフーズマーケット店内の
2 階フロアーからの景観
12.EDLPの実施
13.冷凍食品(リーッチンケース)調理食品
(ディナー、)熟成フルーツ、野菜冷凍、ピザ、
アイスクリームがさらに充実し、ローカロリ
12.EDLPの実施
ー、オーガニック、PB商品で商品化
ホールフーズが総合で際立っていました。SM
の領域を超えています。基本的な運営手法に
合わせた演出はやはりデザイン性において
大きな差があったように思えます。
お客様に楽しく買い物をしていただく。目的
商品が作れると店舗利用の価値が上がりま
す。代表的にはトレーダージョーズのPBで
す。圧倒的質と値ごろな価格で支持されてい
ます。
(事務局)
鯵の高騰!
大衆魚で代表の鯵が高騰している。商品調
見ていくと
達ルート、産地、売場での売り方、商品選定、
まだ価格は
販売方法、お
安定してい
客様へのア
る。ちょっ
ピールが企
とアピール
業によって
することで
大きな違い
干物・冷
が出てくる。
凍の価値
い つも繁 盛
A店の鯵、鮮度感もよい。青あじのP
が上がる
し ている 人
OPもよい。価格は 278 円
ことにな
「鯵高騰しています。」の垂れ幕は目につ
く。原材料にこだわっていれば、価値が
ある。しかし、そのアピールはない
気 の店は 価
る。アピールの仕方できっと冷凍食品の鯵が
格も安い(そ
美味しく感じることになる。しっかりPOP
れでも安い時
で販促して
の鯵に比べれ
ほしいもの
ば 5 割~10 割
である。ちな
の値段)
。しか
みに今年の
し、A店の鯵
鯵の漁獲量
は同じ青鯵
だが鮮度感
繁盛店B店の鯵の売り方。価格 199 円。
の予定
は、総合
調理承ります。
鯵の高騰の理由と「このままだと鯵が食べ
もある。売り
的には平年
方の違いで大きな差になる。これでは、せっ
並み、やや
かくの鯵の価値を落としてしまう。ただ単に、
減少の予測
「鯵が高くなった」で終わってしまう。この
になってい
時だからこそ、売り方にも一工夫が必要です。
る。しかし、確実に、黒潮の流れが変わって
B店では、「鯵高騰」を垂れ幕POPでアピ
いるので近海の鯵の漁獲量は減ってくるは
ールして販促している。食べかたを変から考
ずです。ここで、鯵の高騰を目先を変えて販
えれば鯵フライ、干物、冷凍食品という風に
促してみてください。
れなくかもしれない」というアピール、な
んかちょっと違う気がするけどこれもア
ピールの一つ!
(杉田)
講習会案内
4月の講習会
講習会名
会
場
開催時期
申込締切日
:第 7 回経営幹部講習会 -事業計画立案-
: (一社)農協流通研究所 会議室
: 平成 27 年 4 月 23 日(木)~24 日(金)2日間
: 平成 27 年 3 月 27 日(金)
*「店舗インフォメーション」の休止について
平成 14 年 4 月より 18 年間にわたり「店舗インフォメーション」を発行してまいりました
が、諸般の事情により今回の≪第 248 号≫をもちまして休止とさせていただきます。長期
間のご愛読をいただきありがとうございました。
Aコープチェーンを取り巻く環境は、デフレ化・消費の低迷・競争の熾烈化、一方では
JAグループ改革進行における経済事業諸施設の収支問題がクローズアップするなか、店
舗存続・発展のための諸施策実行・諸課題解決について即時具体化が求められています