2015年11月号

ミハル通信
コミチャン最大3chを1RFに多重
「統計多重システム」新製品発売
ミハル通信はケーブルテレビのHDの自主放送を1RF当たり最大3チャンネル
多重できる自主放送統計多重システムを今年度中にリリースする。ミハル
通信製の既存の自主放送多重システムを導入しているケーブルテレビ事業者は
ハードウェアを新しく購入することなくファームウェアのバージョンアップ
だけで統計多重の機能を追加できるのが特長だ。この新製品は10月2日に
名古屋で開催される「ケーブルフェスタ2015」で初公開される。
最適ビットレートを常時変動
限られた帯域の利用を効率化
ローラが各チャンネルにビットレートを割り当て
他社製品にはまだほとんどないものだと思いま
ます。画像の動きの速さや複雑さは時間の経過
す。
」
(尾花部長)。
とともに常時変化するため、ビットレートの割り
HDチャンネルの多重を2チャンネルに限定し
当ても常に最適な値になるよう動的に変化させ
て、データ放送の帯域を大幅に増やすこともで
る機会が多い地上デジタル放送のネットワーク
続けます」と説明する。例えば、自主番組で放
きる。「データ放送のビットレートを増やすこと
で放送する自主放送に力を入れている。ミハル
送している高校野球予選の映像の動きが速くな
によって、カルーセル方式で繰り返し放送する
通信が今年度中にリリースする地デジ自主放送
った時はビットレートを多く割り当てて、一方で
周期を早めることができるため、視聴者は自分
統計多重システムは、帯域の利用効率を高めて
通販系のチャンネルや地域の情報チャンネルは
が見たい情報を短時間で見ることができます」
ケーブルテレビ事業者各社は視聴者に見られ
1RFチャンネルの帯域(6MHz)の中に自主放送
画像の動きが激しくないためビットレートの割り
(尾花部長)。実際にデータ放送のビットレート
を最大3チャンネル多重できる。この新製品に
当てを減らす、といった使い方ができる。図1
を増やす目的でこの新製品を導入する予定のケ
よってケーブルテレビ事業者は、自社制作の自
では、途中でチャンネル2の画像の動きが激し
ーブルテレビ事業者もあるという。このケーブ
主番組の他に収益につながる通販系のチャンネ
くなったためビットレートをたくさん割り当て、
ルテレビ事業者は、HDチャンネルとデータ放送
ルを増やすことができる。あるいは自主放送の
画像の動きが少ないチャンネル1に割り当てる
で自主放送を行っているが、データ放送で気象
チャンネル数は増やさずに画質を向上させたり、
ビットレートをその分下げた例を示した。各チャ
情報の更新頻度を高める必要がある時は、動き
データ放送の更新頻度を高めたりすることが可
ンネルのビットレートを常時変動させて帯域を
の少ない時間帯のHDチャンネルのビットレート
能になる。
効率利用できるため、HD3チャンネルの多重が
を下げ、その分データ放送のビットレートを上げ
統計多重技術を用いない従来の地デジ自主
可能になった。
ることを考えている。
放送多重システムは、1RFの21Mbps(符号化
新製品の統計多重機能はミハル通信の自社
率7/8)のビットレートをHDの地デジ自主放送 2チ
開発だ。
ャンネルとデータ放送に割り当てるのが限界だ
った。また割り当てたHD2チャンネルとデータ放
送のそれぞれのビットレートは固定されていた。
それに対して統計多重技術を用いた今回の新
番組ごとにビットレートの
上限・下限を設定できる
ハードの新規購入は不要
ファームウェアで統計多重に
HD2チャンネルの統計多重をする場合は、す
でにミハル通 信製の低レートHDエンコーダ
「MENC-HDM2UN-6」を使用してHD2チャン
製品は、HDの地デジ自主放送 3チャンネルとデ
チャンネルごとやチャンネル内の番組ごとにビ
ータ放送を多重できる。しかも各チャンネルの
ットレートの上限・下限の設定ができるのも特長
ネルを多重しているケーブルテレビ事業者は、
ビットレートを固定的に割り当てるのではなく、
だ。「統計多重コントローラに自動的にビットレ
そのハードウェアを活用して新製品の統計多重
映像に応じてビットレートを変化させることによ
ートを調整させるのではなく、担当者がビットレ
機能を追加できる。低レートHDエンコーダのソ
って帯域を有効活用できる。この新製品の開発
ートの上限・下限を設定できます。例えば、動き
フトウェアを統計多重コントローラのファームウ
責任者であるミハル通信(株)デジタル応用技
の速いコンテンツでは、ビットレートの下限を設
ェアにオプションでバージョンアップすることに
術部部長の尾花毅氏は、「エンコーダに入力さ
定し一定値以下には下がらないように制限を加
よって統計多重機能を加えることができるため、
れているビデオ信号の動きの速さや画像の複雑
え、動きの少ないコンテンツは上限を低めに設定
新たにハードウェアを購入する必要はない。
さなどの映像評価値を基に、統計多重のコント
するといったことができるわけです。この機能は
ミハル通信は現在、3Uサブラックのヘッドエ
32
11-2015
⃝取材・文:渡辺 元・本誌編集部
ンド装置「MDSRシリーズ」のラインナップを増
やしている。来年度上期には、MDSRシリーズ
【図1】 固定ビットレートの現行システムと変動ビットレートの統計多重システム
の新製品として、3Uの地デジ自主放送統計多重
システム「MDSR-M2ENC-A」もリリースする予
定だ。「これまで当社の地デジ自主放送多重シス
チャンネル 1
テムは9Uサイズのため、他社製品よりも実装効率
で劣っていましたが、来年度リリースするMDSR
チャンネル 1
シリーズのラインナップは大幅に実装効率を改善
し、業界最小レベルになっています(図3)。
3チャンネルの統計多重をこの3Uサブラックで
18Mbps
3
チャンネル 2
チャンネル 2
データ放送
チャンネル 3
実現するのは苦労しましたが、OFDM変調器を
MUXユニットに内蔵することなどによって実現
データ放送
3Mbps
しました。2チャンネル多重の自主放送を1キャ
リア、3チャンネル多重の自主放送を1キャリア
という形で、第1コミチャンと第2コミチャンの機
能を3Uサブラックの中にすべて収めることがで
【図2】 地デジ自主放送統計多重システムのシステム構成例(MDSRシリーズの場合)
きます」
(尾花部長)。すでに他社の地デジ自主
RMP
放送多重システムを第1コミチャンに使用してい
るケーブルテレビ事業者でも、追加する第2コミ
チャンにはミハル通信製品を導入して組み合わ
MPEG2ENCODER 1
せて使用することも可能だ。
MUX
OFDM
MPEG2ENCODER 2
CATV監視装置にも新機能
放送局のメンテ停波に対応
MPEG2ENCODER 3
ミハル通信はケーブルフェスタ2015で、地デジ
自主放送統計多重システムの他にCATV監視装
Ethernet Switch
置の新機能も紹介する。同社のCATV監視装置
はチャンネルの停波やノイズなどの映像品質悪
化を常時監視してアラームを出す装置だ。今回、
テレビ局のメンテナンスによる計画的な停波の場
合はアラームを出さない「未通知オプション」の
機能を追加した(この機能の追加は9月末)。
CATV監視装置はアラームが出た場合、ケー
ブルテレビ事業者の担当者にメールを送信して
知らせる仕組みになっている。地デジは日曜日
の深夜などにテレビ局によるメンテナンスのた
め計画的に停波されているが、これまではこの
計画的な停波でもアラームが出てメールが送信
【図3】 3Uの地デジ自主放送統計多重システム「MDSR-M2ENC-A」
従来の
低レートHDエンコーダ
「MENC-HDM2UN-6」
※大型の9Uで、1RFに最大HD2チャンネルを多重。
されていた。事故ではないのに、その都度担当
新製品の
地デジ自主放送統計多重システム
「MDSR-M2ENC-A」
者が深夜に起こされてしまう。
新機能は計画的な停波の場合にはアラームを
※小型の3Uで、1RFに最大HD3チャンネルを多重。
出したりメール送信をしたりしないようにする。
計画的な停波の場合、EPGには「放送休止」な
どと表記される(放送局によって表現は異な
る)。この文字を自動的に解析して、その時間
帯はアラームやメールを出さないようにする仕
低レート HDエンコーダ ×2
組みだ。この新機能については、ケーブルフェ
スタ2015でのミハル通信によるセミナーで詳し
く紹介される。
MUX(OFDM変調器内蔵)×1
低レート HD エンコーダ ×2
TS 多重ユニット ×1
OFDM 変調器 ×1
×2
1RFにHD2 サービス
11-2015
低レート HD エンコーダ ×3
MUX(OFDM 変調器内蔵)×1
1RFにHD3サービス
33