中山間地域コミュニティの移住定住意識に関する研究

(一社)建設コンサルタンツ協会 近畿支部
第48回(平成27年度)研究発表会 論集
プレゼンテーション発表アブストラクト №229
中山間地域コミュニティの移住定住意識に関する研究
株式会社エース
加藤大貴
1. 背景と目的
現在,過疎化・少子高齢化が進む中山間地域では地
域の担い手である住民が減少し,地域コミュニティを
十分に管理することが困難である.その対策として地
方自治体は移住定住の促進に取り組んでいる.移住者
がより円滑に地域に定住できるために既存住民と移住
者の意識の違いを明らかにすることが重要であると考
えられる.
本研究では,鳥取県智頭町山郷地区の住民と智頭町
UIJ ターン者を対象に行ったアンケート調査の結果を
分析し,地域コミュニティが必要としている移住者の
条件と移住する際に重視する要因を明らかにする.
移住者受け入れ条件に影響を与える要因について,
データに主成分分析を用いた.主成分得点を散布図に
プロットしたものが図-1,図-2 である.
長期居住すること
問7
家の建築・購入をすること
問8
地域の活動に積極的に参加すること
問9
地域の機能を維持するために移住者を受け入れること
問 10
移住者に対して行政が支援すること
問 11
近所付き合いをどのように考えているか
にいくほど行政による支援の重要度が高いことを表し
ている.UIJ ターン者と比較すると,地域の活動への
参加や付き合いを重視する傾向にある.
次に,移住定住に影響を与える要因についてデータ
に主成分分析を用いた.前述と同様に散布図にプロッ
移住者受け入れ条件についての質問
問6
図-2 において第 2 主成分の性質より,右にいくほど
地域の付き合いや地域による支援の重要度が高く,左
2. 移住定住意識に関する分析
表-1
図-2 主成分得点(山郷地区)
トしたものが図-3,図-4 である.
表-2
移住定住に影響を与える要因についての質問
問 18
病院・医療サービスの充実
問 19
買物・遊びの施設の充実
問 20
就職支援
問 21
子育て支援
問 22
交通の利便性
問 23
自然環境
問 24
教育環境
問 25
住宅の供給
問 26
近所付き合い・地域コミュニティの充実
図-1 主成分得点(UIJ ターン)
図-1 において第 1 主成分の性質より,上にいくほど
移住者個人の自主性の重要度が高く,下にいくほど外
部からの支援の重要度が高いことを表している.第 2
主成分の性質より,左にいくほど地域の維持の重要度
図-3 主成分得点(UIJ ターン)
が高いことを表している.これより,UIJ ターン者は
自主的に移住する者と,外部支援を重視する者がおり,
図-3 において第 1 主成分の性質より,上にいくほど
地域のために移住する者と自分のために移住する者が
いることがわかった.
自身の過ごしやすさの重要度が高く,下にいくほど子
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第48回(平成27年度)研究発表会 論集
プレゼンテーション発表アブストラクト №229
育て自然環境の重要度が高い.第 2 主成分の性質より,
右にいくほどの重要度が高く,左にいくほど地域コミ
ュニティの充実の重要度が高い.このことから,UIJ
ターン者は子育てや自然環境を重視する者と自分自身
の生活環境を重視する者と分かれることがわかる.ま
た,買物・遊びを重視する者と地域コミュニティの充
実を重視する者に分かれ,地域コミュニティの充実を
重視するものは少ない.
図-4 主成分得点(山郷地区)
図-4 において第 1 主成分の性質より,上にいくほど
総合的な項目の重要度が高い.第 2 主成分の性質より,
右にいくほど地域コミュニティの環境の重要度が高い.
UIJ ターン者と比較すると,地域コミュニティの充実
を重視する傾向にある.
3. 結論
移住者受け入れ条件は地域の活動への参加や付き
合いの重要度に差があることがわかった.また,UIJ
ターン者には子育て,教育・自然環境が移住に影響を
与えることがわかった.山郷地区の住民は,地域コミ
ュニティの充実が移住に影響を与えると考えているこ
とがわかった.
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