富士通グループ統合レポート 2015

外部から見た懸念事項
富士通グル ー プの経営成績および財務状況などに悪影響を及ぼす可能性のある主な懸念事項には次のような
ものがあり、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項と考えています。
テクノロジー ソリュー ショ ン
サービス
「ソリューション/ SI 」は SI ビジネスの活況に伴う SE リソースの不足およびそこから派生する人件費の
高騰が利益悪化要因になる可能性を危惧しています 。また、不採算案件による巨額の損失の発生や、期
末集中型ビジネスといった、近い将来における収益性の予測が難しい点、クラウド型システムの広がり
によるレガシービジネスの縮退もリスクと感じています。
「インフラサービス」は、アウトソーシング、クラウドビジネスにおける競合他社の台頭や、価格競争に
陥る可能性、ハードウェアの統合・集約に伴うサポートビジネスの減少も中期的なリスクと捉えてい
ます 。加えて、海外ビジネスでは、英国市場における政府系ビジネスのウェイトの高さ、欧州大陸では
ハー ドウェアからサービスへの構造改革シフトの成果が見えてこない点も懸念されます。
システムプラットフォーム
「システムプロダクト」は 、世界的にサーバ市場が縮小していく中で 、コモディティ化された製品でど
のように競合他社と戦っていくのか、垂直統合の強みが本当に差別化要素となるのかなど、競争力に
対する不安が大きくあります。また 、メインフレームビジネスは漸減ビジネスであり 、これに代わる
高収益プロダクトがないことも、将来の展望が描けない一因と考えられます。
「ネットワークプロダクト」は、キャリアの投資動向に大きく左右されるため、ベンダー の自助努力だ
けでは状況を改善できないケースがあります。国内キャリアは投資抑制傾向が顕著になっており、そ
の影響がどれだけの規模で、どれくらいの期間続くのかが懸念されます 。また、業界動向として SDN
や NFV といっ たハードウェアに持たせていた機能の「ソフトウ ェ ア化」が進んでおり 、ベンダ ー側が
従来型のビジネスから転換できるか、注視しています。
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外部から見た懸念事項
ユビキタスソリュー ショ ン
「パソコン」は他社との差別化要素がほとんどなく 、非常に薄利であるため為替影響だけで大きく赤字
に転落する体質に見えます。中期的にこうした課題を克服できるのか大いに疑問に感じています。
「携帯電話」は構造改革の効果で赤字体質が解消したように見えますが 、依然として品質問題が続いて
いるように見えます。また、国内市場に特化し、
「らくらくホン」以外に競争力のある製品も見当たらな
いため、国内市場の飽和、製品の競争力の両面から見て中期的には事業規模が縮小していくリスクしか
感じられません。
デバイスソリュー ショ ン
「 LSI 」は構造改革効果や特定商材の需要が好調で順調に見えますが、事業体制については、依然 SoC 事業
が分社化されただけで、製造体制の今後の再編が不透明な点にリスクを感じます。また、特定商材に頼っ
ている現状の利益構成も今後の成長に対して不安を抱かせています。
「電子部品」については 、新光電気をはじめとする子会社の株式を保有し続けること自体にリスクを感
じます。コアビジネスに位置づけられていない事業をいつまで続けるのか、明確な指針も示されず、大
いに疑問です。
事業セクション
全社共通
過去に示された中期経営計画の数値目標が一度も達成されたことがない点が一番のリスクと考えていま
す。課題を認識しても 、それに対する改革の実行が遅いと感じます。経営のスピード感のなさが根本的
な問題点であり、加えてガバナンスが国内外、グループ全てに対して効いているのか、疑問視されます。
また 、2015 年 3 月期の決算発表時にあっ た「ビジネスモデル変革」費用のような不十分な説明は 、市場と
の対話を軽視しているように見え、企業と市場の信頼関係の醸成という点で疑念が残ります。
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