修 士 論 文 修 士 論 文 の 和 文 要 旨 和 文 要 旨 和 文 要 旨

修 士 論 文 の 和 文 要 旨
大学院
電気通信学研究科
氏
論
名
文
題
目
太
田
博士前期課程
大
輔
電子工学専攻
学籍番号
0432013
IEEE802.11 MAC プロトコルによるマルチホップネットワークの
時刻同期に関する基礎研究
要
旨
近年 の 無線 デバ イ ス及 び 携 帯端 末 の発 展と 普 及に よ り ,無線 ア ドホ ッ クネ ッ トワ ーク が 注目
され て いる .こ の 無線 ア ド ホッ ク ネッ トワ ー クの 利 用 可能 な 技術 とし て ,物 理 ・ MAC層に て 現
在広 く 用い られ て いる 無 線 LANの標 準 規格 群の IEEE802.11があ げ られ る. 無 線ア ドホ ッ クネ ッ
トワ ー クに おい て は ,ネ ッ トワ ー ク内 のノ ー ドの 状 態 を管 理 する 中央 調 停役 と な るア ク セス ポ
イン ト が存 在し な い.した がっ て,ネ ット ワー ク 内の 各ノ ー ドが お互 い の動 作 タ イミ ン グを 自
律的 に 揃え るこ と で ,ア ク セス ポ イン トが 存 在し て い る状 況 と同 等な ネ ット ワ ー クを 構 築す る
必要 が ある .IEEE802.11に おい て は,ノー ド毎 に 所持 して い る時 刻を ネ ット ワ ー ク内 に 定期 的
に送 信 する こと で お互 い の 時刻 を 確認 し ,それ ぞれ の 時刻 の 更新 を行 い なが ら 全 体の 時 刻同 期
を達 成 させ るプ ロ トコ ル を 持ち 合 わせ てい る .し か し なが ら ネッ トワ ー クの 規 模 が大 き くな
り,マル チ ホッ プあ る いは 高密 度 なネ ット ワ ーク に な ると ,時 刻 同期 の精 度 を保 証す る こと が
困難 と なり ,ま た,他 のネ ット ワ ーク との 融 合の 際 や ,新 規に 参 入し て くる ノ ー ドに 対 して の
時刻 の 再更 新を 行 なう 過 程 にお け る同 期障 害 など の 問 題も 生 じて くる .
本論 文 では,IEEE802.11マ ルチ ホ ップ ネッ ト ワー ク に おけ る 時刻 同期 の 過程 に つ いて 解 析を
行な い ,全体 の 時刻 同期 が 達成 さ れる まで に 長時 間 を 要す る よう な同 期 障害 の 本 質に つ いて の
洞察 を 与え る.そ の結 果と して ,全 体 の時 刻 同期 を速 やか に 達成 させ る 一手 法 を 提案 す る.ま
た,以上 の 解析 結果 に つい て,周波 数 誤差 を含 む より 現実 的 なケ ース の シミ ュ レ ーシ ョ ンを 行
なう こ とに より , この よ う な場 合 にお いて 新 たに 発 生 しう る 問題 につ い ての 解 析 を行 な う.
本論 文 では 以下 の よう に 5 章か ら 構成 され て いる .
第1 章 は序 論で あ り,IEEE802.11に お ける アド ホ ック ネッ ト ワー クで の 時刻 同 期 の概 要 につ
いて 述 べて いる .
第2 章 では,異 なる 時 刻で 同期 し てい る2 つ のセ ル が 1つ に 融合 して い く過 程 に つい て 解析
を行 な って いる .すな わち ,セ ルが 結 合し ,全 体 で時 刻同 期 が達 成さ れ るま で の 時間 に つい て
厳密 評 価を 与え る .そ の結 果,セル 内 のノ ー ド数 が増 加す る に伴 い,全 体で 時 刻 同期 が 達成 さ
れる ま での 時間 は ある 特 徴 的な 傾 向が ある こ とが 明 ら かに な った .
第3 章 では ,ノ ー ドの 空間 分布 を 考慮 した ネ ット ワ ー クに お いて ,他 の ネッ トワ ーク か ら新
規に 参 入し てき た ノー ド の 時刻 に 追従 し ,全体 で時 刻 の再 同 期が 行な わ れる ま で の過 程 につ い
て解 析 を行 なっ て いる .ノ ード の 空間 分布 を 考慮 し た 場合 ,ネ ッ トワ ーク 内 の局 所的 な ノー ド
密度 の 不均 一さ か らノ ー ド 毎の ビ ーコ ン送 信 頻度 に 不 平等 を 生じ , 再同 期 の過 程で ネ ット ワ
ーク 中 心部 にお い てビ ー コ ンの コ リジ ョン が 頻発 し 同 期完 了 まで に長 時 間を 要 す るこ と が判
明し た.こ の同 期障 害 の原 因と な るノ ード 毎 のビ ー コ ン送 信 頻度 の不 均 一性 を 解 消す る 為,競
合に 基 づく タイ ミ ング ビ ー コン の 送信 にお い て「 足切 り」を付 加 した 結 果,全体 で時 刻 同期 が
達成 さ れる まで の 時間 が 大 幅に 短 縮さ れた .
第4 章 では ,2・3 章 にて 行っ た 解析 の結 果 をよ り 現 実的 な 問題 設定 に おい て も 検証 し てい
る .2・3 章に おい て は ,ノー ド の個 性を 無 視し た 理 想状 態 を仮 定し た が ,こ こ では ノ ード 1
つ1 つ の周 波数 が わず か に 異な り ,ま た送 信 遅延 を 考 慮し て シミ ュレ ー ショ ン を 行な う .
第5 章 は結 論で あ り, こ れ まで 行 なっ てき た 解析 結 果 をま と め, 今後 の 課題 を 述 べて い る.