読解の熟達に関する研究

高等学校における評論文読解の熟達に関する研究
一学習者の読解ルールの実態把握一
教科・領域教育学専攻
言語系(国語)コース
M10124A
前川 啓太郎
1.研究の目的
3.論文の概要
匿
本研究は、高校生の評論文読解において、推
論、解釈あるいは方略の選択や使用に一定の規
学習者の文章理解には、しばしば独特の傾向
制を加える「読解ル』ル」の実態を把握するこ
が観察される。例えば、書かれていない教訓的
とを目的とする。読解ルールが作用する仕組み
メッセージを読み取ってしまうことなどである。
とその構造を明らかにすることは、評論文読解
そこには、文章を読むという行為についての学
の熟達化を図る上での指針を与えてくれる。つ
習者独自の理解が関係しているように感じる。
まり、うまく文章を理解することができない要
第1節では、素朴概念に関する先行研究によ
因を明確にして、何について働きかければよい
って、文章理解との関連から、素朴概念とはど
のか、どう働きかければよいのか、ということ
のようなものか、素朴概念の変容を図るための
を考えるための視点を与えてくれる。
視点などについて考察する。
次に第2節では、学校教育によって学習され
2.論文の構成
た文章を読むことに関する概念にはどのような
1、先行研究の検討と本研究の目的
ものがあるのか明らかにする。本研究で対象と
1.1.学習者の概念形成に関する心理学的研究
するのは評論文読解であるので、説明的文章に
1.2.学校教育によって学習された概念
関する先行研究に絞って検討する。
1.3.一般的読者の文章理解に関する心理学的研究
続いて第3節では、読解ルールが文章理解の
1.4.本研究の目的
どの局面でどのように作用するかということを
2.学習者の読みの類型化による識零ルールの把握
明らかにするために、一般的、日常的な読書に
2.1.データの収集
おける文章理解がどのような心理的処理によっ
2.2.データ分析と考察一学習者の読みの傾向一
ておこなわれているのか概観する。
2.3、学習者の読みの検討と類型化
更
3、読解のルール・システム
3.1.規範としての「結論らしさ」
第2章では、学習者の評論文読解の過程を分
3.2. 「結論らしさ」の構造
析し、学習者の読みを類型化する。そのうえで、
3.3.学習者の読みの類型の検討
学習者がどのような読解ルールに基づいて文章
3.4,成果と今後の課題
理解をおこなっているのか考察する。
第1節では、データを収集するための授業の
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計画やねらいについて明らかにする。
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1r冒標状態.」1._、、一暫二;幕■
第2節では、文章理解におけるトップダウン
処理とボトムアップ処理の傾向の違いとテーマ
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の理解との相関を明らかにする。
下位目標1 r結論」を探す
第3節では、学習者の文章理解過程を類型化
1+段1接近※鮒さ」に
し、そこで作用する読解ルール「結論らしさ」
■しL
一 一コントロIル いモニタリング
について考察する。
現時点での読み取り
函
図 評論文のテーマ読み取りにおける
ルール・システム
第3章では、学習者の文章理解過程を読解の
ルール・システムとしてとらえ直す。そのうえ
で、ルール・システムにおいて中核に位置づけ
②「結論らしさ」の概念構造をミンスキーの
られる「結論らしさ」の概念構造について検討
フレーム理論に基づいて類型別に示した。本研
する。
究で示すことができたのは大まかな構造で、不
まず、第1節において、類型化した学習者の
明な点も残っているが、それでも類型別のr結
読みを問題解決の枠組みを使ってルール・シス
論らしさ」の違いを具体的に記述することが可
テムとしてとらえ直す。
能になった。
次に、第2節では、類型毎の「結論らしさ」
このように、読解ルールが作用するル』ル・
の概念構造について記述を試みる。
システムと概念構造が明らかになったことで、
さらに、第3節では、学習者へのアンケート
評論文読解の熟達化を図る上での指針を得た。
調査のデータを用いて、ルール・システムで「結
読解ルールを変容させるために、どのスロット
論らしさ」が本当に支配的に作用しているか検
に、どの教材で、どう働きかければいいのかと
討する。加えて、第2節で記述した概念構造の
いうこと考える視点を得た。
修正もおこなう。
5
今後の課題
4.研究の成果
1.評論文読解の熟達化を促進する具体的
①読解ルールが作用する仕組みを図のように
な手立てを明らかにする。
ルール・システムとして示した。これは評論文
2.
読解において「テキストのテーマをとらえる」
「結論らしさ」以外に読解ル』ルとし
て機能するものを把握する。
という課題を解決する目的でテキストを読む場
3.
r結論らしさ」を構成するスロットの
合の限定的なものである。このルール・システ
うち、特定のものが優先的に活性化す
ムは、学習者の持つ「結論らしさ(結論の概念)」
る要因を探る。
が、学習者にとっての理想的な結論のイメージ
として、メタ水準でモニタリングやコントロー
主任指導教員 井上 雅彦
ルを制御するということを示す。
指導教員 井上雅彦
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