日台共通の宝を守れ!日本の世界遺産を支える台湾の木

日台共通の宝を守れ!日本の世界遺産を支える台湾の木
作文部門
くら もと
りょう へい
倉本 涼平 早稲田実業学校高等部
2年
世界最古の木造建築として有名な法隆寺に台湾のヒノキが使われているということを知った
のは
「最後の宮大工」西岡常一さんによ
って書かれた「法隆寺を支えた木」という本だった。
審査委員長
優秀賞・
特別賞
復興支援特別賞
法隆寺の建物の大部分はヒノキが材料で、
主要なところにはすべて樹齢1000年以上のヒ
作文部門
ノキが使われていた。そして昭和9年から29年まで行われた「昭和の大修理」と呼ばれる修
復の時、日本のヒノキではなく、なんと台湾のヒノキを使ったというのだ。樹齢1000年のヒノ
キを使えば、建物は1000年もつということを西岡さんは経験から見抜いていた。しかし、日本
フジサンケイ
にはすでに樹齢1000年をこえるヒノキは存在しなかったので台湾のヒノキを求めたのだ。
薬
優秀賞
ビジネスアイ賞
師寺を再建するときもわざわざ台湾に出向いてヒノキを買いに行ったという事実に驚いた。
僕は、中学3年生の修学旅行の時法隆寺を訪れた。聖徳太子が610年ころ建立したことや
五重塔、金堂などの建築と釈迦三尊像などの仏像、仏具のことは学習していたが、解体修理
の時に台湾のヒノキを使ったことなど全く知らなかった。日本の世界遺産を支えているのが
奨励賞
台湾のヒノキであるという事実、
そのことを知って法隆寺を訪れている人が果たしてどれだけ
いるのだろうか?
台湾には樹齢1000年はおろか樹齢2000年をこえるヒノキが多数存在していることを知っ
た僕は、長期休みを利用して台湾のヒノキを見てみたいと強烈に思った。そこで、家族と一緒
に宜蘭にある馬告生態公園の棲蘭神木園に行くことにした。そのことを日本に住んでいる台
特別賞
湾の知り合いに相談したところ、
「宜蘭にいる私の友人と一緒に行ってもらえばいい、電話
してあげるから。いつ行く予定? 鉄道のチケットも先に用意しておくよう頼んでおくね。」と
話がどんどん進んでいく。こういうとき僕は、台湾の人の社交辞令で終わらない「行動力」と
「温かさ」を感じるのだ。日本人にはなかなかできない行動である。
そうして、僕達は宜蘭駅で初めて顔を合わすことになった林乾蔵さんの運転で棲蘭神木
園に向かった。車から降りて棲蘭神木園に入ると空気中の水分が一斉に顔にぶつかってき
た。別世界に来たような、とても神秘的な雰囲気に包まれた。このような場所だからこそ樹齢
1000年をこえるヒノキが育つのだと思った。奥に進んで行くとより一層空気中の水分が増し
たような気がした。神木園はまるでジブリ映画「もののけ姫」に出てくる「シシ神の森」のよう
だった。
首を思いっきりそらして見上げないとてっぺんが見えないほどの巨木。今までに見たこと
も感じたこともない圧倒的な存在感だった。ガイドの人が小さなヒノキの種を手にのせてくれ
た。こんな小さな種が1000年以上の時を過ごし、目の前のような巨木になるのかと思うと気
が遠くなる。そして、人間がいかに無力であるかということを思い知らされる。西岡常一さんも
「法隆寺を支えた木」の中で「台湾で2000年のヒノキを立木で見た時もそうでした。ときの
流れを枯れた色に変えて、樹齢にふさわしい風格と重味が、枝にも葉にもにじみ出ていまし
た。わたしはこういう木に向かうときは、一心に拝みます。
『宮大工の良心に誓って、そのいの
ちを殺すようなことはいたしません』」と語っている。それだけすごいパワーなのだ。
日本の世界遺産である法隆寺、薬師寺、他にも明治神宮の大鳥居を支えているのが台湾
のヒノキであるということを日本のどれだけの人が知っているのだろうか? 台湾が東日本大
震災のとき多大な援助をしてくれたことはニュースで人々に知られることとなったが、このよう
な事実を知っている人は少ないだろう。
台湾は国連から「国」として認めてられていないため、世界遺産として1箇所も登録されて
いないのが現状である。しかし、世界遺産は人類が共有すべき普遍的価値をもつ文化遺産
及び自然遺産を守ることを目的としている。日本の屋久島が世界遺産に登録されていること
を思えば僕が行った棲蘭神木園も世界遺産にふさわしいだろう。人類共有の価値というのな
ら、台湾が世界遺産登録できないことに違和感を感じずにはいられない。僕が見たあの圧倒
的な存在感を感じさせた神木たちは台湾の宝であり、日本の宝でもある。国の問題は多くあ
るけれども、地球の一員として守るべき宝が台湾にはある。そしてそれが、日本の世界遺産を
支えているということを認識し、伝え、日台共通の自然や文化の宝を守るよう、その架け橋と
なりたいと強く思う。