長期視点での災害リハビリテーションの あり方を考える ~パキスタン地震から8年後の様子から~ ○古郡恵(北海道こども心療内科氏家医院) 三浦和(国際医療福祉大学) <2006年活動時> <はじめに> 2005年10月8日にパキスタン地震が発生し、多くの 脊髄損傷被災者が首都の病院に集められた。発災半 年後に、国際協力機構より、理学療法士、作業療法士、 看護師の青年海外協力隊によるグループ派遣が5カ 月間行われた。 支援後、脊髄損傷の方々の経過を調査し、 長期な 視点でどのように災害リハビリテー ションが行われる べきかを考察する。 <方法> 2009年 2013年 (4年後) (8年後) *以下の3人は、再度再会する。 <地震から4年後(2009年)> ・約30名の女性の方々が病棟にいた。 ・全員、褥瘡があり、退院後住んでいた所から戻って きて治療中であった。 2010年 (5年後) 筆者は地震から5年後の2010年、8年後の2013年に、 脊髄損傷被災者がいた病院を訪れ、当時担当してい た理学療法士や現在も病院にいる脊髄損傷者にイン タビューを行った。 <2006年の活動について> • 震災から半年後、歩けず帰る家もない脊髄損傷者が 病院に残っており、首都の3カ所の病院に集められて いた。 <地震から5年後(2010年)> ・約20名の方が入院。故郷へ帰ることができない。褥瘡を 繰り返す人は繰り返している。病棟を閉鎖したい。 ・治療、リハは行われていない。 ・悲観的なことを話す。 ・6名亡くなっている方の名前を聞く。 • 震災直後からHandicap Internationalは現地人の理 学療法士,作業療法士に脊髄損傷者へのリハビリ方法 や勉強会、訓練器具の提供などの活動をしていた。 • 対象者とその家族に直接支援を行う。 • 集団での活動を中心に行う。 <地震から8年後(2013年)> 「脊髄損傷者へ必要なリハビリを提供すると共に、退院 後地域で車いすで生活できる知識と技術を伝え、家族 を含めた患者を取り巻く環境が改善されるような支援を 行うこと」とした。 ・買い物(計14回) ・調理実習(計15回) ・家屋改造(計2回) ・レクリエーション(計8回) ・食事自立支援(4人に実施) ・約20名が入院。帰ることは困難。 ・カシミールのCBRセンターは実現せず。 ・肺炎・膀胱炎で亡くなる方が多い。 ・ポジショニング(計8人に実施) ・家族へ障がい・肥満体験 (計13回) ・スライドショー(計9回) ・冊子作成・配布 <結果> レクリエーション 食事自立支援 家屋改造 カップホルダー 買い物 調理実習 ポジショニング スライドショー ・地震から3年後には、脊髄損傷被災者の病棟は閉鎖 する予定であったが、当時220名近くいた脊髄損傷者 のうち、20名弱の方々がいまだに帰ることができない でいた。 ・8年後の時点では、元気に過ごしていると思われた車 いすで自立レベルにある20代の脊髄損傷者の何名か が亡くなっていた。実際はそれ以上。 ・一方で退院し、家族の理解が得られ自宅で元気に過 ごしているケースもいる。 ・国の政策や福祉制度の問題もみられる。 <結論> 肥満体験 障がい体験 冊子作成 ・災害支援には、医師、看護師、薬剤師だけではなく、 リハビリテーション職種も関わる必要性がある。 ・実際の支援は3カ月間であったが、助け出された方 が故郷に帰り、生活できるには長期的な視点で、生活 や環境への支援が必要。 ・支援は医療だけではなく、国の政策や福祉制度の拡 充、コミュニティの形成を促す関わりも必要ではない かと考える。
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