水蒸気と水の混合噴流による 低環境負荷(薬液無し)洗浄技術 半導体デバイス製造工程では,デバイスの微細化,新規材料・プロセスの 研究の背景と目的 真田 俊之 導入,地球規模の環境問題などから,従来の一括型大量洗浄から使用する 薬液使用量を減らし,かつ再現性の高い洗浄技術が求められています.そこ で私達は,薬液を使用せずに高い洗浄力を持った洗浄技術の開発を行って います.ジェット洗浄という分野に着目し,特に蒸気を使用することで,非常に 細かな対象物であっても,薬液無しで桁違いに優れた洗浄能力を実現してお ります. 工学研究科 准教授 蒸気と水を混合させ,ノズルで加速して表面に噴射する洗浄技術を開発し ■ キーワード ました.近年の半導体デバイスのパターンが微細化するのに伴い,従来の手 法では歩留まりの悪化などから新規洗浄技術の開発が求められています.ま ・ 半導体デバイス た環境問題に伴いから,従来使用していた薬品が使えなくなったり,また薬品 ・ 太陽電池 の使用量を減らすことが重要で求められています. ・ LED ・ 低環境負荷(薬液無し) ・ 蒸気 研究の概要 ・ 洗浄 ・ 枚葉式 本研究では,非常にきわめて細かなパターンでも蒸気を凝縮させることに よって確実に濡らし,そこに高速な液滴を衝突させることで発生する衝撃波や キャビテーションなどの物理力を利用した洗浄技術を開発しました. 本洗浄手法を用いることでは,100ナノスケール以下のパーティクルも除去 できること,またフォトレジストも同時に除去できるため,作業工程を減らすこ とが可能となり,より高効率な洗浄が行えるようになり実現できました. ■ 技術相談に応じられる関連分野 ・ 洗浄技術 ・ 気泡を含んだ流れ ・ 特筆すべき研究ポイント: ・ 気泡生成制御 蒸気を使用していますので,凝縮効果を利用して効率良く洗浄可能 ・ 高速度撮影 (細かなパターンでも濡らすことができる) ・ 画像処理 高温によるキャビテーション効果の増大,化学反応の促進(薬液を使 ・ 流体数値シミュレーション 用する場合) (CFD) セールスポイント (混相流,圧縮性流体力学) ・ 新規研究要素: 蒸気用の 2 流体ジェット洗浄用ノズルの開発 2 流体ジェットによる表面処理(ピーニングなど) ・ 従来技術との差別化要素・優位性: 通常の2流体ジェット洗浄に比べて低圧.薬液不要. ・ 特許等出願状況: 「対象物洗浄方法および対象物洗浄システム」 特許第 4413266 号 イメージ図 図の説明 (左)蒸気と水を混合して噴射している様子。ドライエッチング後のポリマー(副生成物)や不要と なったフォトレジストの同時除去が可能です。 (中)洗浄処理前のシリコンウェハー表面。ポリマーやフォトレジストが付着 (右上)空気と水で洗浄後のウェハー表面。ポリマーやフォトレジストが残留 (右下)蒸気と水で洗浄後のウェハー表面。ポリマーやフォトレジストが完全に除去されています。 新規材料や新規プロセスへの適応性(洗浄対象物のダメージなど)や様々なサンプルに対する洗浄能力評価を行っ ていきます.また,クリーンな水蒸気の更なる作成コスト低減を図り,より多くの現場で利用されることを期待します. 今後の展望 また,半導体デバイスやプリント基板などの精密洗浄だけでなく,より広範囲な分野での洗浄への応用を検討してい ます.特に蒸気の持つ特異性を利用して,医療・食品産業等の洗浄分野へ応用ができないか,積極的に多くのメーカ ーとの共同研究を期待します. ■ その他の研究紹介 その他以下のような研究をおこなっています.(修了したテーマも含む) ・ 気泡を含んだ流れ -音響学的手法による気泡発生制御法の確立,気泡の合体現象や気泡に働く力のモデリング (変形気泡に働く抗力,気泡間相互作用など)- ・ in vivo ヒト毛細血管非観血非侵襲高速度観察顕微鏡の確立(Capillaroscopy) ・ 再生軟骨内物質移動の解明(再生医療) ・ 複雑地形における風車性能評価法の確立
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