第10章 大人になるために 第13回 7月9日 時間的展望の発達 • 時間的展望とは:ある時点における個人の心理的 過去および心理的未来についての見解の総体。 Question • 子どもの頃のことを思い出してみよう • あなたが最初に抱いた「大きくなったらなりた いもの」はなんだっただろうか。 • それはなぜ 実現した/しなかった のだろう か。 2歳~7歳の子ども 女の子 男の子 親 1 ケーキ屋さん 警察官 子供がなりたいもの 2 アイドル バス・電車の運転士 公務員 3 お花屋さん サッカー選手 薬剤師 4 パティシエ 野球選手 医師 5 お医者さん お医者さん 看護師 6 お姫様 消防士 保育士 7 プリキュア(6位) ヒーロー 弁護士 8 看護師(6位) ゲームクリエイター 建築士(7位) 9 美容師(6位) 宇宙飛行士(8位) 会社員 10 パン屋さん パイロット 警察官(9位) 青年期には… • 自尊感情が低下する – 自己評価が低下する – 自己理解が混乱する(身体変化,地位の変化, 関係性の変化) • 時間的展望が混乱する – 未来展望の低下 – 空虚感の上昇 私とは一体何者なのか どのように生きればよいのか 時間と自己の問題→アイデンティティ危機 アイデンティティの感覚とは • 1.斉一性と連続性…自我同一性の感覚 – 私は私である • 自分の個性的な存在のスタイルである自我の統合の方法 が、それ自体の斉一性と連続性を有しているという自覚 • 自分が、自分以外の何者でもなく、以前からも自分であり、 これからも自分であり続けるということの自覚 • 2.心理一社会的同一性の感覚 – 私には生きるための居場所がある • 自分の個性的な存在のスタイルが、自分の属する共同体 の重要な他者に対する自己の意味の斉一性と持続性に合 致しているという事実の自覚 • 自覚される自分という存在のあり方が、周囲の人たちとの 関係の中でのそれと合致している状態 エリクソン:心理‐社会的発達理論 • 発達的危機 – フロイト:心理-性的なもの – エリクソン:心理-社会的なもの • 発達段階 – フロイト:青年期まで – エリクソン:青年期以降、老年期までの発達過程 を見越した8段階 • 生涯発達の過程…“ライフサイクル” Ⅷ 老年期 私の努力は 報われるの か? Ⅶ 成人期 Ⅳ 学童期 自分として 存在してよ いのか? 世界を信じ Ⅲ ることは出 遊戯期 来るか? 親密性 対 孤立 自律性 対 恥、疑惑 基本的信頼 対 基本的不信 アイデンティ ティ 対 アイデンティ ティ拡散 自分の人 生をよりど ころにでき るか? 勤勉性 対 劣等感 自主性 対 罪悪感 Ⅱ 早期児童期 Ⅰ 乳児期 世代性 対 停滞、自己 耽溺 自分らしく 行動してよ いのか? Ⅵ 初期成人期 Ⅴ 青年期 統合性 対 絶望、嫌悪 私は何 者か? 何がで きるの か? 他者を 愛する ことが できる か? 私は私で よかったの か? 11 図 エリクソンの漸成発達図式(エピジェネティックチャート)(Erikson, 1973より作成) プラスの特質 (例:基本的信頼) マイナスの特質 (例:基本的不信) 図 達成されるべき心的な特質(鑪, 1983) 12 プラスの特質 (例:基本的信頼) マイナスの特質 (例:基本的不信) マイナスの特質がプラスの特質を 上回ってしまい、心理的に生きづらい プラスの特質 (例:基本的信頼) マイナスの特質 (例:基本的不信) プラスとマイナスの間で常に大きく 揺れ動き、安定できない 図 危機を乗り越えられなかった場合の例 (鑪, 1983) 13 図式の意味 • 第1は、自我の各部分は、それぞれ特に優勢 的に成長させるべき時期があるということ、 • 第2は、すべての素因はその成長が最優先さ れる時期以前にも何らかの形で存在している ということ、 • 第3は、各段階における心理・社会的危機は、 それに対する解決が見いだされたとしても、 次の段階ではそこに適した形でさらなる発達 を遂げていくということ 「どうしてこんな性格なんだろう。もっと違う Ⅷ 老年期 人に生まれたかった。自分が嫌で仕方が ない。」 Ⅶ 「皆が私を避ける。もう人に会いたくない。」 成人期 統合性 対 「何もする気が起こらない。何を 絶望、嫌悪 したらいいか分からない。」 世代性 「今はとりあえず休憩中。その時 対 停滞、自己 が来たらやるから。」 耽溺 親密性 対 孤立 Ⅵ 初期成人期 Ⅴ 青年期 時間的展望 対 時間的展望 の拡散 自己確信 対 自意識過剰 役割実験 対 否定的アイ デンティテ ィ 勤勉性 対 劣等感 Ⅳ 学童期 Ⅲ 遊戯期 達成の期待 対 労働麻痺 自主性 対 罪悪感 アイデン ティティ 対 アイデンテ ィティ拡散 性的アイデ ンティティ 対 両性的拡散 指導性と服 従性 対 権威の拡散 イデオロ ギーへの帰 依 対 理想の拡散 「どうせ○○みたいにはな れない。ならばとことん逆 を行ってやる」 「(非行仲間が)初めて自 分を認めてくれた」 自律性 「どうしてこんなに苦しいことばっ 対 恥、疑惑 かりなんだろう。生きていることが 苦しくて仕方がない。」 基本的信頼 Ⅰ 対 「何もしないのに気づけば1日が 乳児期 基本的不信 終わってしまっていた。なんか時 16 間感覚がおかしい。」 図 エリクソンの漸成発達図式(エピジェネティックチャート)(Erikson, 1973より作成) Ⅱ 早期児童期 アイデンティティ発達においては コミットメント (答え)の獲得 早期完了 達成 探求 拡散/混乱 モラトリアム 適応がすべてではない Aさん Bさん Cさん Dさん ・親が医者で、小さい頃から医者になるように 言われ続けてきた ・自分でもそのことを当たり前だと思ってきた ? 他の人が進路に悩む姿を見る ? 勉強をつらいなあと思う × なぜ自分が医者になりたいの かを改めて考える × 自分の考えや価値観を改めて 問い直す 早期完了 ○ 進路や価値観についての確固 たる答え ○ 親の価値にそのまま同一化 ? 他の人が進路に悩む姿を見る ? 勉強をつらいなあと思う × 親の価値にそのまま同一化 ○ なぜ自分が医者になりたいの かを改めて考える ○ 自分の考えや価値観を改めて 問い直す ○ 自分なりの答えを探す努力 モラトリアム × 確固たる答え 拡散/混乱 ? 他の人が進路に悩む姿を見る ? 勉強をつらいなあと思う × 親の価値にそのまま同一化 × なぜ自分が医者になりたいのかを 改めて考える(以前は○の場合も) × 自分の考えや価値観を改めて問い 直す(以前は○の場合も) × 自分なりの答えを探す努力(以前 は○の場合も) ○ 本来とりくむべきこと以外の課題に 熱中 × 確固たる答え ? 他の人が進路に悩む姿を見る ? 勉強をつらいなあと思う × 親の価値にそのまま同一化 ○ なぜ自分が医者になりたいの かを改めて考える 達成 ○ 自分の考えや価値観を改めて 問い直す ○ 自分なりの答えを探す努力 ○ 確固たる答え アイデンティティ地位 アイデンティ ティ地位 危機(役割の試 人生の重要な領 域に対する積 みと意志決定 極的関与 の期間) アイデンティ ティ達成 経験した 有り モラトリアム 経験中 曖昧、確認中 早期完了 経験していない 有り アイデンティ ティ拡散 経験していない 無し 経験した 現在 • 達成に至ってもまだ発達し続ける:MAMAサイクル – 広い探求→コミットメント形成 – 深い探求→コミットメントとの同一化 – 生涯発達モデルとして展開されている コミットメント (答え)との同一化 DIDS? 達成 コミットメント (答え)の獲得 早期完了 深い 探求 達成 モラトリアム 探求 広い 探求 モラトリアム 拡散/混乱 3.9 DIDS_CM 3.7 DIDS_IC 3.5 3.3 3.1 2.9 2.7 2.5 小6 中1 中2 中3 高1 高2 高3 3.7 DIDS_EB DIDS_ED 3.5 DIDS_RE 3.3 3.1 2.9 2.7 2.5 小6 中1 中2 中3 高1 高2 高3
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