蒸気タービンの熱・流体設計 火原協大学講座 March 21, 2015 せのお しげき 妹尾 茂樹 蒸気タービンの熱・流体設計 Contents 3-① ヒート・マスバランス 1.章 歴史 3-② 速度三角形(代表翼高さ) 2.章 特徴 3-③ 多段落負荷配分 3.章 熱・流体設計 3-④ フローパターン設計 4.章 翼設計 5.章 効率向上とCO2削減効果 (翼高さ方向負荷分布) 3-⑤ 効率と損失 1-6 ターボ機械の歴史 蒸気タービン 1884 発電機駆動用実用化 1889 5,000kW発電機駆動 1903 Parsons (反動型) Parsons Curtis and Emmet (衝動型) 1908 1924 1933 三菱重工 蒸気タービンの初号機製造 Aurel Stodola教授が教科書を出版 日立製作所 蒸気タービンの初号機製造 ガスタービン 1936 Brown Boveri 900kWGT実用化 Sun Oil Company of Philadelphia ジェットエンジン 1930 1937 フランク・ホイットル(航空士官) ,特許取得 ホイットル,航空用としては初のジェットエンジンの地上試験 2-1 蒸気タービンの特徴 本章で話すこと 蒸気 Mach数 Reynolds数 熱 流体 幅広い 構造 翼長 2-2 蒸気タービンの熱条件と構造 800-1300MW class steam turbine Thermal power plant 高圧タービン 超臨界圧蒸気 圧力 25MPa 温度 600℃ 低圧タービン 湿り蒸気 圧力 5kPa 温度 33℃ 湿り度 8-12% 中圧タービン 温度 620℃ 流量係数 wet dry 1 2-3 蒸気タービンの作動域 35MPa 700 ℃ =200 kg/m3 原 子 力 高圧段 saturation line 原子力 低圧段 比エンタルピー h =200 kg/m3 u=2000 kJ/kg 6.5 1.4MPa 263 ℃ 過熱蒸気域 相変化 5kPa 8~12% =0.02 kg/m3 =0.02 u=2000 kJ/kg 6.0 4MPa 600 ℃ saturation line 湿り蒸気域 5.5 USC 中低圧段 100 MPa 火力 中低圧段 6.69MPa 284 ℃ 3.3MPa 700 ℃ u=3600 kJ/kg u=3600 kJ/kg 火力 高圧段 25MPa 600 ℃ 800 ℃ A U --SC 高圧段 超臨界 4200 4100 4000 3900 3800 3700 3600 3500 3400 3300 3200 3100 3000 2900 2800 2700 2600 2500 2400 2300 2200 2100 kg/m3 7.0 7.5 8.0 specific entropy s (kJ/kgK) 比エントロピー s 0.001 MPa 8.5 9.0 2-7 蒸気タービンの特徴 ① 熱:作動流体が蒸気 複雑な状態変化 (超臨界圧~湿り蒸気) 高速流中での気液相変化 (非平衡凝縮) 気液二相流 水膜,水滴 ② 流体:広い流体力学特性 レイノルズ数 Re=105 ~108 マッハ数 M = ~ 2.0 ③ 構造:広い幾何学的特徴 翼長,ボス比,アスペクト比,翼形状(入口角) 3-1 蒸気タービンの熱・流体設計 本章で話すこと 与えられた熱条件から 要求された出力を出す ”流れ”を決める ”形(蒸気タービン)”を決める + 高効率 3-5 蒸気の熱力学特性: 取り出せるエネルギ 理想気体 蒸気 等エントロピ膨張により 取り出せるエンタルピは 入口全温(エンタルピ)と 圧力比で決まる 1 RT0 p 1 h 1 P0 入口全エンタルピと圧力比が同じでも 取り出せるエンタルピは,理想気体に比べて, 高圧域: 小さい 分子間力(水素結合)に逆らって分子間距離を広げる 必要があり,外部に取り出せるエネルギが小さくなる 湿り蒸気域: 湿り度大で大きい 凝縮潜熱を利用できる 膨張 水素結合 3-6 蒸気タービン中のH2O 非平衡凝縮 高速流中の相変化: 非平衡凝縮 液滴形成 → 表面エネルギ(表面張力) nonequilibrium condensation 飽和蒸気線を越えても相変化はすぐには起きず, 過冷却度が流れの膨張速度依存の閾値を超えた時 エントロピ上昇を伴う急激な相変化が起きる pressure Hnoneq Heq 凝縮 無 同じ圧力比で膨張する場合, 相変化のない過冷却蒸気(非平衡)では, 相変化を伴う平衡蒸気の膨張に比べ, 潜熱放出がない分, 有効熱落差(取り出せるエネルギ)が小さくなる nonequilibrium saturation steam line 潜熱放出 無 温度 低 equilibrium enthalpy entropy 比容積 小 熱落差 小 さらにその非平衡状態から,急激な凝縮により平衡状態に戻る変化は, 仕事として取り出せない等エンタルピ変化であり,エントロピ増加が生じる 密度 大 3-10 速度三角形設計 ”流れ”を決める P=Tω=Frω 出力 トルク 回転数 given 力 半径 回転数 given F=m∆c, m=cxA U c1 U P=rA cx∆c 形状 速度 cx1 c2 cx2 U 3-13 衝動タービン,反動タービン 衝動タービン:反動度 = 0 反動タービン:反動度 = 0.5 U U U U U U 50%反動タービンでは,同じ周速Uの場合, 衝動段の1/2しか熱落差を取ることができない 3-21 三次元フローパターン設計 半径方向速度を積極的に利用した設計 運動量保存則(半径方向) cr cr 1 p c2 cx cr x r r r c2 cm2 cm sin cos cm m r R R 一般平衡式 cm c rc c c cx r x r r x r 渦の導入 3-25 内部損失 1)翼型損失(profile loss) 翼面速度分布を仮定, エネルギ散逸係数を一定として損失計算 摩擦損失,後縁損失,入射角損失,衝撃波損失 2)側壁損失(endwall loss) 二次流れ損失,側壁境界層 3)湿り損失(wetness loss, moisture loss) Baumann law 平均湿り度1%でタービン効率1%低下 a) 熱力学的損失(thermodynamic loss) 過飽和損失,凝縮損失 Denton (1993) b) 機械的損失(mechanical loss) 加速損失,制動損失,捕捉損失,ポンプ損失 4)非定常損失(unsteady loss) 静動翼干渉,など 5)内部漏洩損失(internal leakage loss) 6)部分噴入損失(partial admission loss) 7)回転円盤損失(disc friction loss) 8)排気損失(exhaust loss) リービング損失,ターンナップ損失,フード損失 図 排気損失 蒸気タービン(日本工業出版,2013) 5-5 効率向上とCO2削減効果 1,000MWの石炭火力発電所: 5%発電効率向上 1) 二酸化炭素排出係数: 0.943 kg/kWh kWh当たりのCO2排出量 出典:http://www.hitachi.co.jp/environment/showcase/solution/energy/coal_thermal_power.html 2) 設備利用率: 80% 一年間発電した場合の発電量 7,012,800 MWh/年 3) 発電端効率: 40%→45% CO2削減効果 83万トン/年 5%/40%×7,012,800 MWh/年× 0.943 kg/kWh
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