サプライチェーンと金融制約を織り込んだ 震災モデルの構築及び分析

ESRI Discussion Paper Series No.324
サプライチェーンと金融制約を織り込んだ
震災モデルの構築及び分析
佐藤主光、小黒一正
December 2015
内閣府経済社会総合研究所
Economic and Social Research Institute
Cabinet Office
Tokyo, Japan
論文は、すべて研究者個人の責任で執筆されており、内閣府経済社会総合研究所の見解を示すものでは
。
ありません(問い合わせ先:https://form.cao.go.jp/esri/opinion-0002.html)
ESRIディスカッション・ペーパー・シリーズは、内閣府経済社会総合研究所の研
究者および外部研究者によって行われた研究成果をとりまとめたものです。学界、研究
機関等の関係する方々から幅広くコメントを頂き、今後の研究に役立てることを意図し
て発表しております。
論文は、すべて研究者個人の責任で執筆されており、内閣府経済社会総合研究所の見解
を示すものではありません。
ESRI Discussion Paper Series No.324
「サプライチェーンと金融制約を織り込んだ震災モデルの構築及び分析」
サ プライチェー ン と 金 融 制 約 を 織 り 込 ん だ 震 災 モ デ ル の 構 築 及 び 分 析
佐藤主光
一橋大学教授
小黒一正
法政大学教授
1
要旨
本研究の主な目的は、震災と経済成長・財政の相互作用に関する分析を行うため、サプライ
チェーンといった複雑化する経済構造を織り込んだマクロ経済の基本モデルを構築するこ
とにある。具体的には①中間財と最終財を区別することで多層的な生産工程(サプライチェ
ーン)をモデル化するとともに、②企業への貸し出しにおける金融(信用)制約を反映させ
る。後者については貸出額を中間財企業の内部留保(利益)の一定割合とする Financial
accelerator モデルの簡単化による。①震災後のサプライチェーンの途絶(モデル上は中間
財生産性の低下)による短期的な効果、②金融機関の貸し出し能力の低下による短期・中期
的効果、及び③公的債務の累積に伴う金利上昇による中長期的効果が示される。
Keywords:公的債務, 震災, 経済成長, 財政, サプライチェーン, 金融制約
JEL Classification:D40, G21, L10, H60, R30, Q54
1
本稿の初期の草稿には、内閣府経済社会総合研究所のプロジェクトメンバーの方々などから助言を受けている。記
して感謝したい。また、本稿の文責はすべて筆者にあり、かつ本稿の内容はすべて筆者の個人的見解であって筆者の所
属機関の公式見解を示すものではない。
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「サプライチェーンと金融制約を織り込んだ震災モデルの構築及び分析」
1. は じめに
阪神淡路大震災(1995 年)や東日本大震災(2011 年)においては①震災後のサプライチ
ェーンの寸断や②金融機関の被災による貸出機能の低下が生じていた。こうした間接的被
害はインフラ・建物への直接被害に加えて地震の経済コストを高めるものとなる。特に首都
直下地震においては間接被害が高くなることが見込まれる。しかし、間接的被害については
経済理論(モデル)をベースにした試算がこれまで十分になされてこなかったという問題も
ある。このため、本研究の狙いは複雑化する経済構造を織り込んだマクロ経済モデルを構築
することにある。
具体的には①中間財と最終財を区別することで多層的な生産工程(サプライチェーン)を
モデル化するとともに、②企業への貸し出しにおける信用(金融)制約を反映させる。後者
については貸出額を中間財企業の内部留保(利益)の一定割合とする Financial accelerator
モデルの簡単化による。③市場金利や労働供給の決定は代表的家計の効用最大化に基づく
ことでミクロ的な基礎づけを担保している。従前のマクロ経済学に即して言えば、ラムゼー
成長(外生的成長)モデルの拡張にあたる。震災以前、経済は定常状態にあるものと想定、
震災を中間財生産性や資本ストック、労働力に与えるマイナスのショックとして、成長率や
金利の変動を時間的(動学的)にとらえていく。震災の直接的な影響は局所的(首都直下地
震であれば関東圏)に留まるとしても、
(1)当該地域の中間財生産を損なうことで(これを
投入物として用いている)他地域の生産活動も低下させることになる。加えて(2)金融機
関の貸出機能の低下は全国的な波及効果を持つ。モデルのもう一つの特徴は④政府の債務
残高の推移を織り込んだところにある。震災による税収の落ち込みや復興のための公的支
出は財政赤字を拡大させるだろう。財政再建に向けた施策がなければ、債務の拡大には歯止
めが掛からなくなる。これが市場金利の上昇になって、中長期的には成長の阻害要因になり
かねない。震災と経済成長、財政の相互作用をモデル化している研究は数少ない。内閣府経
済社会総合研究所では、2009 年度研究において、DPNo.239「首都直下地震がマクロ経済
に及ぼす影響」
(佐藤主光、小黒一正)を公表した。これは簡単なマクロ計量モデルにより、
8 個のシナリオパターンについて、首都直下型地震が我が国のマクロ経済へ及ぼす影響を試
算したものである。これは災害による産業構造等(係数パラメータ)の変化が考慮されないモ
デルとなっているほか、厳密なミクロ的な基礎付けによってモデルを構築しているもので
はなく課題として残っていた。
震災が経済成長や財政に及ぼす影響を分析するため、厳密なミクロ的な基礎付けによっ
てモデルを構築し分析を行うことは重要である。まず、震災等の自然災害がマクロ経済に及
ぼす影響は短期と長期に区分できる。自然災害がマクロ経済に及ぼす影響の包括的サーベ
イを行った Cavallo and Noy (2009)では、Albala-Bertrand (1993)等の先行研究を紹介し、
地震やハリケーンといった自然災害が必ずしも経済に負の影響を及ぼすとは限らないこと
を明らかにしているが、Hochrainer (2009)は、自然災害が発生しなかった場合の GDP と、
発生後の GDP を比較し、短期的に自然災害は経済に負の影響(1 年後の GDP を 0.5%減、
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5 年後の GDP を 4%減)を及ぼす可能性を示している。また、Raddatz (2009)は、長期的
に一人当たり GDP を 0.6%減少させる可能性を明らかにしているが、実証分析から震災が
マクロ経済に及ぼす影響を抽出することは容易ではない。
さらに、震災等の自然災害がマクロ経済に及ぼす影響を分析する際には、短期と長期の区
別のみでなく、直接被害と間接被害の区別も重要である。特に間接被害による影響のうち、
震災等の自然災害が経済に負の影響を引き起こす問題で最も深刻なものが、サプライチェ
ーン問題や被災地金融機関の金融制約問題である。
例えば、Schnell and Weinstein (2012)は、東日本大震災では福島原発事故に起因する電
力供給問題があったことから、震災後の工業生産の減少は全国的な現象で、被災地域に関係
するサプライチェーン問題は重要な問題ではないという指摘をしているが、浜田(2012)では、
東日本大震災の被害が少なかった地域で 2 週間程度、大きかった地域では 1 カ月以上も生
産停止を余儀なくされたところもあり、震災によるサプライチェーンの寸断で、全国で工業
生産の低下を招いたのであり、決してサプライチェーン問題を過小評価するべきではない
ことを明らかにしている。また、若杉・田中(2013)は、東日本大震災の被災製造業に関す
る実証分析から、被災の大きさ、電力・工業用水・輸送手段の寸断が復旧を長期化する外生
的要因となったほか、サプライチェーンの寸断が復旧に要する期間を長期化させる要因と
なったことを明らかにしている。他方、植杉他(2012)は、被災地金融機関と取引関係にあ
った被災地企業について、震災後の倒産確率が有意に上昇するとともに、こうした被災地企
業の設備投資の増加幅が抑制される可能性も明らかにしている。
そこで、本研究では①震災後のサプライチェーンの途絶(モデル上は中間財生産性の低下)
による短期的な効果、②金融機関の貸し出し能力の低下による短期・中期的効果、及び③公
的債務の累積に伴う金利上昇による中長期的効果が示される。ここで念頭においている震
災は首都直下地震である。中央防災会議がまとめた
「首都直下型地震」
( 東京湾北部地震 M7.3)
の被害想定によると、建物全壊棟数・火災焼失棟数は最大で約85万棟、死者数約 1 万 1 千
人に及ぶ。その経済的な被害は甚大となり、建物・インフラ設備の損害だけで復旧費用は 66.
6 兆円、これに(被害地内外に渡る)生産活動の低下に伴う間接被害を加えると、経済被害
は約 112 兆円(国内総生産の約 2 割)に達すると試算されている。2本研究の試算にあたっ
ては 1990 年代以降の日本経済の主要マクロ変数(成長率、民間資本ストック、市場金利、
社会資本ストック等)をベースにして一部のパラメータをカリブレーションするほか、労働
供給の弾力性等については既存の文献を活用した。政策的含意を意図しつつも、学術研究に
即したマクロ経済モデルとなっている。試算にあたっては、①震災後貸出機能が毀損しない
(金融制約が悪化しない)ケースや②サプライチェーンを含まない(標準的な経済成長モデ
ルに即した)一部門モデルとの比較も行っている。加えて、③復興政策(金融支援や消費税
「首都直下地震対策に係る被害想定結果について」(中央防災会議 2005 年 3 月 30 日公表)の 18 タイプの地震動の
うち東京湾北部地震
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率の引き上げ)の効果も検証している。無論、いずれも一定の仮定の下で導かれる結果であ
り、モデルやパラメータ値の精査は今後とも進めていく必要がある。
2. モ デルの概要
以下ではモデルの基本的な枠組みについて説明する。モデルは標準的な外生成長(ラムゼ
ー)モデルに基づく。これに①サプライチェーンを担う中間財生産者と地域財生産者及び②
中間財生産者への信用(借入)制約を加えている。
タ イミング:各期( t 期)は幾つかの段階に区分される。期初に政府による社会インフラ
の整備が行われる。震災が起きるかどうかはその次の段階で決まる。震災は事前( t -1 期
前)には予期されていない。簡単化のため、地震発生のリスク自体認識されていないものと
する。このことは震災以前の経済の定常状態に影響する。その後、中間財、地域財、及び最
終財が順次生産され、賃金や利潤を含む所得の分配が確定する。本モデルにおいて、サプラ
イチェーンは中間財から最終財生産までの一連の流れを指す。続いて代表的家計が消費を
行い、消費税と労働所得(賃金)税を支払う。この代表的家計は労働も供給するが、その決
定は地域財生産と同じタイミングとする。期末に中間財生産者が(次期の中間財生産のため
の)投資に向けた、政府が財政赤字の補てんのための借入をそれぞれ、実施する。ただし、
①中間財生産者は金融機関を通じて借入れをする一方、②政府は家計に対して直接的に公
債を発行している。
図 表 1:時間軸(タイミング)
(出所)筆者作成
サプライチェーン(中間財生産):サプライチェーンを構成するのは①中間財生産者、②
地域財生産者、及び③最終財生産者である。中間財生産が川上産業、最終財生産が川下産業
にあたる。全ての生産者は完全競争的に(よって価格受容者として)振る舞うものとする。
このうち、中間財生産者は試算上では 8 地域(北海道、東北、関東、中部、近畿、中国、四
国、九州)からなる地域と 23 部門に分類される部門によって区分される。したがって、中
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間財生産者の数はI=8×23=184 に等しい。簡単化のため各中間財生産者は資本財のみを
投入物とするものと仮定する。中間財生産が他の中間財や最終財等を投入するといった相
互依存・フィードバック関係は考慮しない。
(こうした相互依存・フィードバック関係は震
災がサプライチェーンに与える影響を増幅させるだろう。
)資本財は後述する資本財生産者
から毎期購入するとともに、使用後(減価償却済み)の資本も同生産者に売却される。こう
した資本財の売買は Financial accelerator モデルを含めて、この分野では標準的な想定で
ある。
(1)
xti = ζ ti K ti
ここで、 xti は t 期の第 i 中間財の生産量、 K ti は資本投入量である( i = 1,2,3…, I )。震災は影
響地域(試算では関東圏)に立地する中間財生産者の生産性パラメータ ζ ti を一時的に低下
させる。これが地域財生産や最終財生産に波及していくことになる。試算では一般性を損な
うことなく震災時以外はこの生産性パラメータは 1 に基準化できる。
図 表 2:生産構造(プロセス)
(出所)筆者作成
地 域財生産:各地域には単一の地域財生産者が存在する。よって試算では地域財生産者数
は8となる。この地域財生産者は①「他地域を含む」中間財生産者から中間財群を購入する
とともに、②地域の労働力を用いて地域財を生産する。また、③地域財の生産量には当該地
域の社会資本も影響する。これを数式で表すと
y jt = ε jt N 1jt−α Z αjt Gηjt
ただし、Z jt = Π iI=1 ( x ijt ) σ
i
j
(2)
ここで、添え字 j は地域を、t は時間を表す。Z jt は中間財を集計したもので I =184 は(他
地域を含む)全ての中間財数、 x ijt はt期に地域 j で投入されている第 i 中間財を指す( i =
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1,2,3…, I )。σ ij は第 i 中間財が地域財生産に占める比重を示す。これが高いほど震災ショック
で当該中間財の生産量が低下する影響は大きいことになる。他の変数についても説明する。
G jt は政府によって提供される地域 j の社会資本ストックである。なお、本モデルでは国と
地方自治体の区別はなく、これらが供給している全ての社会資本が集約される。 N jt は地域
=労働人口×労働時間で与えられる。労働時間 H t は家計の
j の労働力であり、 N jt = N ・
jt H t
効用最大化問題を通じて内生的に決定される。ただし、
「代表的」家計を仮定する、つまり、
家計間の所得分配は捨象するため、労働時間は全ての地域で同一となる。本来、地域ごとに
代表的家計が居て然るべきだが、その場合、労働時間は(震災ショックの有無のほか)中間
財生産者等からの配当を含む所得分配に依存するため、分析が複雑になってしまう。最後に
ε jt は地域財生産の生産性パラメータである。試算では、他の変数と合わせて「基準化」のた
めに用いられる。
最 終財生産:最終財生産=GDP は地域財をインプットとして「代表的」生産者がこれを
担うものとする。価格は1に基準化される。
(本モデルではインフレ=物価変動は考慮しな
い。)生産関数はコブ・ダグラス型の生産技術に従う。
θj
Yt = At1−α −η Π j ( y jt )
(3)
ただし、∑ j =1θ j = 1
J
ここで At は生産性パラメータであり、標準的なマクロ生産関数でいう TFP(全要素生産
性)にあたる。外生成長モデルに従い、一定の比率 γ A で増加すると仮定する。経済の潜在的
成長率にあたる。生産関数の仮定から各地域財金額が GDP に占める比率は θ j に等しい。ま
た、
(中間財と労働を投入する)地域財生産、
(地域財を投入する)最終財生産はいずれも収
穫一定の生産技術に従うため、生産者にレント=利潤は発生しない。他方、中間財生産者に
ついては利益が生じており、これが自己資金として以下で説明する金融機関からの借入と
合わせて、次期の中間財生産のための資本購入の資金に充てられる。
金 融(信用)制約:中間財生産者は中間財を生産・販売、
(減価償却済み)資本ストック
を売却し、利益が確定した t 期の期末に借入を実施して、次の期( t +1期)の中間財生産
のための資本ストックを購入する。ただし、借入可能な金額は t 期時点で評価される資本ス
トック金額の一定割合 φt +1 に限定されるものと想定する。これは①中間財生産者が金融(信
用)制約に直面しており、②生産設備としての資本(機械等)が借入のための担保になって
いる状況にあたる。
(4)
Lit +1 = φt +1Qt K ti+1
ここで Lit +1 は第 i 中間財生産者の借入額、添え字 t +1 は次の期に持ち越されて返済される
ことを指す。 Qt は(借入のタイミングと一致する) t 期の資本財価格である。本モデルにお
いて(震災の影響を含めて)φt +1 は外生的に扱われる。金融機関の意思決定を織り込んだ φt +1
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の内生化は今後の課題として残される。ここでは学習効果(learning by doing)などを反映
して、 φt +1 は前期の比率に応じて決定されるものと仮定する。
(5)
φt +1 = (1 − ς )φ + ςφt
ここで φ は経済の定常状態(=長期均衡)における貸出比率となる。 φ や ς の値は貸出比
率の実績値を(5)式に回帰させることで推計する。具体的には ς =0.93、 φ =0.445 とな
る。
図 表 3: 回 帰 式
Coefficient Std. Error t-Statistic
ς
0.929497 0.055191 16.84141
R-squared
0.952322
Adjusted R-squared 0.952322
φ ( データ期間の平均) 0.445
Prob.
0
(出所)1993 年から 2008 年までの「総貸出平残(銀行計)」(日銀統計)
及び「民間資本ストック(全産業)」(内閣府統計)から推計
借入が担保価値によって制約される状況は Kiyotaki and Moore(1997)モデルとして知ら
れている。ただし、Kiyotaki and Moore では生産設備ではなく土地が担保として想定され
ていた。結果、投資は(バブル要因を含む)地価の影響を被ることになる。このほか、将来の
売上収入や国債等、流動金融資産を担保とするモデルもある。このように借入制約の定式化
は様々だが、
(4)式は簡単化された Financial accelerator モデル(Bernanke et al(1999)) と
関連づけることもできる。Π it を中間財生産者の t 期利益としよう。このうち比率 m が自己資
金として投資に充てられるとする。この m は①内部留保比率(よって残りは配当として代表
的家計に分配)と解釈できる。あるいは②中間財生産者が次期に生産する中間財の研究開発
やマーケット・リサーチ等に利益を費やした後に残余の内部留保の比率が m という解釈も
成り立つだろう。中間財生産に係る技術革新は本モデルでは明示的に扱われていないが、こ
れを織り込んでもモデルの本質は大きく変わらないものと思われる。結果、借入と合わせた
資本購入額=投資額は以下のようになる。
Qt K ti+1 = mΠ it + Lit ⇒ Qt K ti+1 =
mΠ it
1 − φt +1
(6)
すなわち投資額は自己資金の一定比率として与えられる。φt +1 /(1 − φt +1 ) は自己資金の何倍の
借入が可能かというレバレッジ比率にあたる。Financial accelerator モデルでも投資額は
自己資金(内部留保)に比例する。ただし、比率は投資収益率に依存するなど内生的になっ
ており、これを外生とする本モデルとは異なる。とはいえ企業の投資額が内部資金に制約さ
れる状況を表すところは共通する。なお、金融機関が家計から預金を借り入れるときの金利
と中間財生産者に貸付ける金利は一致しない。一般に利ざやを稼いている状況を想定する。
よって金融機関は利益を得るが、これは全額、家計に配当されるものと仮定する。
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そ の他のモデルの設定:マクロ生産関数:
(1)式及び(2)式を(3)式に挿入することで、
TFP で基準化された経済全体の生産関数が導かれる。
Yt = A Ωt H
1−α
t
1−α
t
K
Y
K t ⇒ Yt ≡ t = Ωt H t1−α  t
At
 At
α
α

 ≡ Ωt H t1−α ktα


(7)
[(∑ θ σ )(ln ζ
ただし、ln Ω t = (1 − α )∑ j (θ j ln N jt ) + η ∑ j (θ j ln χ jt ) + α ∑i
j
j
i
j
i
t
]
+ ln µti )
(8)
ここで、 Ω t はサプライチェーンを織り込んだ( At とは区別される)生産性パラメータで
あり、震災のサプライチェーンに及ぼす影響が集約される。 K t は中間財生産に投下される
民間資本ストックの総量であり、K t = Σ iI=1 K ti に等しい。χ jt ≡ G jt / At は基準化された社会資本、
µti ≡ K ti / K t は第 i 中間財生産に係る民間資本の全資本ストックに占める比重である。① µ ti は
市場均衡で内生的に決まる。ただし、各期の期初には決まっている先決変数である。一方、
② χ jt は(関東圏において)震災ショックを被った上、震災後は政府による復興政策の変数
として与えられる。地域財生産性パラメータ ε jt は他の定数項を合わせて対数値がゼロに基
準化されている。
(8)式において
µi0 ≡ ∑ j θ jσ ij
は第 i 中間財がサプライチェーンを通じて生産性に及ぼす影響の程度を表す。ここでは σ ij を
個別に推計する必要はない。震災で ζ ti が減じられたとき、 µ i0 が大きいほど生産性へのイン
パ ク トも強くなる。なお、 µ i0 としているのは震災前の定常状態において、 ∑ j θ j σ ij が
µ ti ≡ K ti / K t と一致することに拠る。
資 本成長率:本モデルでは(Financial accelerator モデル等のように)中間財生産者の破
綻は想定していない。とはいえ、借入金利(グロス) rt E には国債金利に比してリスクプレミ
アムが上乗せされているものとする。
「流動性リスク」を反映するものとするが、破たんリ
スクを織り込んだモデルを構築することも比較的容易である。中間財生産者は①中間財を
価格 qti で販売、②減価償却済みの資本ストックを資本財生産者に売却した上で③借入金を
返済する。ここで中間財生産者は完全競争的であるため、価格にマークアップは反映されな
い。利益 Π it はその残余である。
[
]
Π it = qti xti + (1 − δ )υQt K ti − rt E Lit = α Σ jσ ijθ j Yt + (1 − δ )υQt K ti − rt Eφt Qt −1 K ti
(9)
ここで金利はグロス(=1+利子率)であることに留意せよ。簡単化のため法人税等、生産
者に対する課税は捨象している。最後の式の第 1 項は市場均衡における中間財販売額であ
る。本モデルは資本財価値の①物理的な減価償却 δ と②(物理的減耗の後の)質的な減耗
1 − υ を区別する。後者は(技術の進歩等 A に伴う)既存の生産設備の陳腐化にあたる。結
果、中間財生産者が期末に売却できる資本財の(最終財で測った)価値は1単位あたり
(1 − δ )υ になる。資本ストックの質に係るパラメータは Gertler and Karadi(2011)等でも考
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慮されている。ただし、これらのモデルでは資本ストックの質を確率的に(経済ショックの
一つとして)扱っていたのに対して、ここでは簡単化のため定数とする。
(9)式を(6)式
に挿入し、 K t +1 = Σ iI=1 K ti+1 を用いると At +1 で基準化された民間資本 kt +1 ≡ K t +1 / At +1 の成長率(グロ
ス)が次のように導かれる。
γ tk+1 =
m / γ A  Ω t H t1−α
Q 
α
+ (1 − δ )υ − rt Eφt t −1 
1−α

1 − φt +1  Qt (kt )
Qt 
(10)
ただし、γ A ≡ At +1 / At 。添え字 t +1 は付されているが、この成長率は中間財生産者が借入を
行う t 期末に定まることに留意されたい。よって t+1期には既知の経済変数となる。他方、
Ω t +1 と H t +1 (労働供給)は当該期に決まるため t+1期の経済成長率=前期に比した Yt +1 の増
加は同期に決定されるという関係になる。
資 本財生産:本モデルでは各期末に資本財生産を担う生産者を想定する。中間財生産者か
ら(量的・質的に減価した)資本ストックを購入するとともに、新規の資本財を生産して期
末に売却する。ここで資本ストックの推移は以下のように与えられる。
(11)
K t +1 = ν・( I t + (1 − δ ) K t ) ≡ I t + (1 − δ )νK t
最初の等式は質的パラメータで調整した定式化である。
(ただし、前述の通り、本モデル
では υ を確率変数ではなく定数として扱っている違いはある。
) I t ≡ I tν はこの「質」調整済
みの投資=新規資本財とみなせよう。新規資本財の生産には調整コストを伴う。これは既存
文献に従い、前期の投資水準からのかい離= ( I t − I t −1 ) / I t −1 に依存するもの仮定する。よって
資本財の生産に係るコストは f (I t / I t −1 − 1)I t となる。①他の生産者同様、資本財生産者も完全
競争的であること、②定常状態では投資の増加率が(他の変数同様)TFP 成長率に一致す
るとして f (γ A − 1) = 1 、 f ' (γ A − 1) = 0 、③(11)式のような関係式を用いると、 t 期の資本財
価格は定常状態の周辺で次期までの(標準化された)資本成長率と当該期の成長率に依存す
るように近似される。
Qt = Q0 − Q'0 γ A + Q'0
γA
γ A − (1 − δ )υ
γ Aγ tk+1 − Q'0
(1 − δ )υγ A
γ A − (1 − δ )υ
γ tk
(12)
ただし、Q0 = 1 、Q0 ' = Q' (γ A − 1) ≡ f ' ' (γ A − 1)γ A である。Q0 ' の値について実証分析に依拠すべ
きところだが、筆者らが知る限り、合意された数値はない。仮置きとして試算では Q0 ' = 5 と
した。
代 表的家計:各地域に居住する家計は代表的家計に集約される。これは標準的なマクロ経
済モデルに即するとともに所得分配に係る試算の複雑化を避けるためである。この代表的
家計は①毎期、労働供給をして賃金所得を稼得するとともに、②期末には消費と貯蓄を行う。
貯蓄は国債の購入と金融機関への預金に充てられる。このうち後者が中間財生産者への融
資に回ることになる。所得には賃金所得のほか、国債・預金からの金利収入、中間財生産者・
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金融機関からの配当、(定常状態からかい離した状態では)資本財生産者からの移転が含ま
れる。また、代表的家計は賃金所得税と消費税を支払う。これらの課税は①労働供給の選択
のほか、②税率が変更される前後の期間の貯蓄に影響することになる。その生涯効用関数は
χ


U = ∑tβ t  log Ct + ϕ log( Bt +1 ) − H tσ 
σ


(13)
のように仮定する。ここで β は割引因子、 χ は労働の不効用を表すパラメータである。指
数 σ は後に示される通り、フリッシュ弾力性の逆数にあたる。
(13)式で特徴的なのは家計
が( t 期から)次期まで持ち越す国債残高 Bt +1 から直接効用を得ていることである。 ϕ はそ
の効用の程度となる。Hansen and İmrohoroğlu (2015)も(特に理論的な裏付けをすること
なく)我が国における低い国債金利を説明する便法として国債からの直接便益を仮定して
いる。無論、国債に加えて(あるいは国債に代えて)預金残高や現金残高が効用関数に加わ
る(cash in utility)など別の定式化もあり得る。
本モデルでも現実の国債金利と国債残高を定常状態において整合的に説明できるように
ϕ の値を決定(カリブレーション)している。Cash in utility の定式化と同様に家計は国債
の保有から(本モデルでは捨象されている)貨幣同様、流動性の便益を得ているのかもしれ
ない。とすれば(13)式を理論的に解釈することも可能であろう。①家計の異時点間の消費
選択を与えるオイラー方程式から国債金利の決定式を、②各期の効用最大化から労働供給
の決定式を以下のように導くことができる。
rt G = rt −
 (1 + τ tC ) γ A
ϕ (1 + τ tC )ct
ϕ (1 + τ tC ) 
= ct 
−
C
βbt
βbt 
 (1 + τ t −1 ) βct −1
1 /(σ −1)
(14)
1/ σ
 1 − τ tw Wt 
 1 − τ tw (1 − α )Yt 
(15)
Ht = 
=


C
C
ct
 χ (1 + τ t ) Ct 
 χ (1 + τ t )

ただし、 ct ≡ Ct / At は基準化された消費、 bt ≡ Bt / At は国債残高、 τ tC 、 τ tw はそれぞれ消費税
率、賃金所得税率である。 rt G は国債金利(グロス)であり、 rt は預金金利(グロス)ないし
(家計間での)貸借金利にあたる。(15)式の導出にあたっては(全国平均の)賃金率が
Wt = (1 − α )Yt / H t で与えられることを用いた。また、 1 /(σ − 1) が(所得の限界効用=消費の逆
数を与件とした)フリッシュ弾性値となる。
国 債の推移:本モデルの政府は国と地方自治体を統合している。このため震災が被災自治
体の財政に与えるインパクトは試算されない。各期の期初、政府は社会資本を整備する。公
共支出にはこの投資的経費のほか、経常経費 et が含まれる。具体的には社会福祉や医療・介
護、教育などがこれにあたる。ただし、これらは移転支出ではないため民間消費には影響し
ない。
(年金などの移転支出は最終的には民間消費に反映されなければならないだろう。
)最
終財が生産され、所得が分配された後、政府は消費税と労働所得税を徴収して、国債の元利
償還を行う。国債の満期は一期と仮定されるため、前期に発行された国債は今期に全て償還
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ESRI Discussion Paper Series No.324
「サプライチェーンと金融制約を織り込んだ震災モデルの構築及び分析」
されることになる。公共支出と元利償還費から税収を差し引いた財政赤字が新規の国債発
行額となる。一期債の仮定から新規国債は(来期に持ち越される)国債残高に等しい。試算
では定常状態で国債残高の対 GDP 比率を直近のデータ(=約 2.2)に一致させるため消費
税・労働所得税のほか、一括税を加える。この一括税は TFP の成長率=定常状態における
経済成長率と等しく増加するものとする。
(よって、 At で基準化すれば時間を通じて定額と
なる。)従って、基準化された国債残高の推移は次のように決まってくる。
Bt +1
≡ bt +1γ A = rt G bt + ∑ j (χ jt − (1 − δ G ) χ jt −1 / γ A ) + et − Tt
At
(16)
(17)
ただし、 Tt = τ tw (1 − α )Ω t H t1−α ktα + τ tC ct + TT
このとき、
(16)式の右辺の第 2 項が各地域に対する社会資本支出である。 χ jt ≡ G jt / At で
あることを想起せよ。この社会資本はストックとして与えられるため、減価償却後の前期の
社会資本ストックと今期のストックの差額が投資支出=フローとなる。
(17)式中の TT は
基準化された一括税である。本モデルにおいて想定される税は賃金所得税と消費税のみと
する。法人税・固定資産税等他の税目は簡単化のため捨象される。
(あるいは一括税 TT に
織り込まれると解釈しても良い。
)これらの税目を反映したモデルの構築は今後の課題とし
て残される。
3. 試算で用いる数式とパラメータ
主 要な方程式:試算で用いられる数式は以下のようにまとめられる。
(金利や労働供給を
除く)主要な内生変数は TFP パラメータの At で基準化されていることに注意せよ。具体的
には kt ≡ K t / At 、 ct ≡ Ct / At 、 bt ≡ Bt / At である。
γ tk+1 =
m / γ A  Ω t H t1−α
Q 
α
+ (1 − δ )υ − rt Eφt t −1 
1−α

1 − φt +1  Qt (kt )
Qt 
Qt = Q0 − Q'0 γ A + Q'0
γA
γ A − (1 − δ )υ
γ Aγ tk+1 − Q'0
(10)
(1 − δ )υγ A
[(∑ θ σ )(ln ζ
ln Ω t = (1 − α )∑ j (θ j ln N jt ) + η ∑ j (θ j ln χ jt ) + α ∑i
j
j
(12)
γ tk
γ A − (1 − δ )υ
i
j
i
t
]
+ ln µti )
 (1 + τ tC ) γ A
ϕ (1 + τ tC ) 
+π
−
rt E = rt G + π = ct 
C
βbt 
 (1 + τ t −1 ) βct −1
 1 − τ tw (1 − α )Ω t ktα 
Ht = 

C
ct
 χ (1 + τ t )

(8)
(14’)
1 /(σ +α −1)
(15’)
bt +1γ A = rt G bt + ∑ j (χ jt − (1 − δ G ) χ jt −1 / γ A ) + et − τ tw (1 − α )Ω t H t1−α ktα − τ tC ct − TT
(16)
ただし、π は国債金利に上乗せされる貸出金利に係るプレミアムである。
(15‘)式では、
Yt ≡
Yt
≡ Ω t H t1−α ktα
At
(7)
11
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「サプライチェーンと金融制約を織り込んだ震災モデルの構築及び分析」
を用いている。上記に加えて、第 i 中間財生産者の資本比率 µti ≡ K ti / K t は次のように与えら
れる。
µti =
1
m
γ γ 1 − φt
k
t
A
1−α



 α Σ jσ ijθ j Ωt −1 H t −11−α + µti−1  (1 − δ )υ − Qt −2 rt −E1φt −1  



Qt −1
Qt −1 (kt −1 )



[
]
(18)
ここでは µ ti ≡ K ti / K t −1 × K t −1 / K t を用いた。前述の通り(18)式は t 期の期初には決まっている
(よって先決変数である)ことに留意されたい。次に民間消費は財市場均衡(IS バランス)
から以下のように定まることになる。
{
}
ct = Ω t H t1−α ktα − (kt γ Aγ tk+1 − kt (1 − δ )υ ) − nx − et + ∑ j (χ jt − (1 − δ G ) χ jt −1 / γ A )
(19)
ただし、 nx は At で基準化された純輸出で一定と仮定される。右辺の第 2 項は民間投資で
あり、(11)式から与えられる。最後の項は政府の資本・経常支出である。この民間消費は
①(t 期末に定まる)資本成長率 γ tk+1 に依存することに留意されたい。このことは労働供給
や貸出金利も資本成長率に依拠することを含意する。② ct は当該期の労働供給にも依存す
る。
(15)式より、労働供給関数が変数として ct を含むことから、
(15)式と(19)式は同時
的に決まってくることがわかる。
定 常状態:本モデルは外生(ラムゼー)成長モデルの拡張である。よって、定常状態=長
期均衡では GDP 成長率は At =全要素生産性の成長率 γ A に等しい。 At で基準化された経済
変数は時間を通じて一定となる。つまり、 k 0 ≡ K t / At 、 c0 ≡ Ct / At 、 b0 ≡ Bt / At である。
金利や労働供給、各中間財生産者の資本比率も同様である。 ここで一般性を失うことなく
定常状態における労働時間は H 0 = 1 に基準化できる。
(18 )式で与えられる中間財生産者の
資本比率は µ i0 ≡ ∑ j θ jσ ij に等しい。また、ζ ti = 1(中間財生産性パラメータ)
、 Qt = Q0 ≡ 1(資
本財価格)より、定常状態に経済変数は以下の式から与えられる。
1=γ k =

Ω0
m/γ A 
α
+ (1 − δ )υ − r0Eφ 
1−α
1 − φ0  (k 0 )

(10’)
Y0 ≡ Ω 0 k 0α
(7’)
ln Ω 0 = (1 − α )∑ j (θ j ln N j ) + η ∑ j (θ j ln χ j ) + α ∑i[(µ 0i )(ln µ 0i )]
(8’)
 γ A ϕ (1 + τ C ) 
 +π
r0E = r0G + π = c0 
−
βb0 
 βc0
(14’’)
b0γ A = r0G b0 + ∑ j (χ j − (1 − δ G ) χ j / γ A ) + e − τ w (1 − α )Ω 0 k 0α − τ C c0 − TT
(16’)
{
(19’)
}
c0 = Ω 0 k 0α − k 0 (γ A − (1 − δ )υ ) − nx − e + ∑ j (χ j − (1 − δ G ) χ j / γ A )
上で内生的に定まる変数は k0 、 c0 、 Y0 、 b0 、及び r0E (あるいは r0G )であり、連立方程式
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の数と一致する。震災前の経済はこの定常状態にあると想定する。加えて、震災の発生は予
見されていない。仮に震災リスクが経済主体によって認識されているならば、そのリスクを
織り込んだ形で金利を含む経済変数は定式化されることになるだろう。
震 災ショック:震災年は t=2015 年とおく。ただし、経済は当初定常状態にあると想定
するため、当該年の経済状況を反映しているわけではないことに留意されたい。震災は被災
地(試算では関東圏 j =3)における①中間財生産性パラメータ ζ ti 、②社会インフラ χ jt 、③
(中間財生産者が保有する)民間資本 kti 及び④労働人口 N jt を毀損する。加えて、⑤金融機
関の貸出比率 φt +1 が低下する。ただし、φt +1 は全国共通であることから、震災は直接的に被災
地以外の企業(中間財生産者)の金融制約に影響することになる。これは東京に多く集中す
る金融機関の本店機能(建物やシステム、人員)が損なわれる結果と解釈できよう。試算で
は φt +1 が震災によって(全国一律に)定常状態に比して 1 割余り低下( φt +1 = 0.445 → 0.4) とし
た。政府による金融機関への支援策、あるいは企業への直接融資はこの低下の程度を抑える
ことになるだろう。その後、(5)式に従って貸出比率は回復していく。一方、 ζ ti は震災時
(2015 年と想定する)のみ、被災地に立地する中間財生産者の間で半減する
( ζ ti = 1 → 0.5 )
。
(翌年以降は元の生産性に回復する。
)ただし、この中間財生産性の低下幅については実証
的観点から検討の余地がある。今回の試算はあくまで「仮置き」の数値であることに留意願
いたい。首都直下地震ではインフラ全体の毀損は 66.6 兆円と推計されている。この直接
被害額を被災地=関東圏に存在する民間資本ストック=400 兆円と社会資本ストック=144
兆円の割合で案分することで、それぞれの被害額を算定する。つまり被災地における中間財
生 産 者 の 震 災 以 前 の 資本 スト ッ クを k0i ≡ µ0i k0 と お けば 、震 災 直後 の資 本ストックは
kti = (1 − d ti )k 0i に減じられる。試算では被害はその資本ストックに比例すると仮定される。つ
まり、
d ti = d =66.6 兆円÷(400 兆円+144 兆円)
これに応じて期末に資本生産者に売却される資本ストックも減ることになる一方、負債
の返済額に変わりはない。後者は中間財生産者の利益を減らし、よって(金融制約を通じて)
次期への投資額を低下させることを含意する。これらを織り込むと震災時点( t =2015)で
の資本の成長率と資本比率は以下のように変更が加えられる。
γ tk+1γ A =
µˆ ti ≡
Q
Ω t H t1−α
m 
α
+ (1 − δ )υ − r0E φ 0
1 − φ t +1  Qt (k 0 (1 − Dt ))1−α
Qt
1 − d ti
K ti (1 − d ti )
= µ 0i
K t (1 − Dt )
1 − Dt
µˆ ti 
i 
t 
∑1− d
i
(10’’)
(20)
ただし、 Dt = Σ i µ 0i d ti = Σ i K ti d ti / K t は全国でみた被害比率にあたる。無論、被災地以外では
d ti = 0 であるが、分母に占める資本ストック全体が損なわれる結果、こうした地域の中間財
生産者の資本比率 µ ti も変化する。なお、震災は予期されていないため、震災時(2015 年)
における貸出金利は前期に(定常状態で)定まった水準のままとなる。無論、震災後の金利
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は当初の定常状態からかい離、震災ショックが後年までに影響を及ぼす要因の一つになる。
(12)式より資本財価格は震災直後に来期への資本成長率 γ tk+1 に応じて変化する。また、
(8)
式より社会インフラや労働人口の毀損は震災時( t =2015)の生産性パラメータ Ω t に影響
することになる。首都直下地震の被害想定では死者と重傷者は 4.8 万人と推計される。試算
で は 関 東 圏の 就業者数 2078 万 人 のうち この 4.8 万 人を労働人口の減少分とした:
∆N j = −4.8 / 2078 × N j 。一方、社会インフラの毀損比率は按分された社会インフラ被害額÷被
災地に所在する社会インフラ額に等しい( ∆χ 3 = −66.6 /(400 + 144) × χ 3 )。
試算では①社会インフラは震災から 5 年をかけて復旧(毎年の復旧割合は一定)
、②労働
人口の復活には 2 年を要すると仮定した。加えて③震災時に政府の経常支出は対 GDP 比で
2%増加(約 10 兆円)する。これは被災者支援に充てられるものである。後述の通り、震災
からの復興については幾つかのシナリオがありうる。これらの仮定はあくまでその一つに
過ぎない。
図 表 4: 震 災 シ ョ ッ ク
(出所)筆者作成
パラメータの設定:本モデルの内生変数のうち定常状態における民間消費 c0 、b0 、及び r0G
は実績値に即する形で決める。このうち国債金利は(現行の金融緩和以前の水準を反映して)
1.5%とおく: r0G = 1.015 。また、民間消費対 GDP 比率を 0.6、国債残高対 GDP 比率を 2.2
とすることで c0 = 0.6 * Y0 、 b0 = 2.2 * Y0 で与える。
(7‘ )式中の生産性 Ω 0 については、その定
常状態(8’)式に実績値を代入することで導く( k 0 の導出については後述)
。このうち、各
地域の労働人口 N j は図表 5 の通り、全国 8 区分(北海道、東北、関東、中部、近畿、四国、
中国、九州)したときの労働人口比率を用いている。ここでは労働力の「絶対数」は全要素
生産性 At の「水準」に吸収されることなる。試算にあたっては労働人口の減少は加味してい
ないが、 At の成長率 γ A (グロス)にはこの人口減のマイナス分を含むものと解釈できよう。こ
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「サプライチェーンと金融制約を織り込んだ震災モデルの構築及び分析」
こでは内閣府の経済見通しのベースライン(慎重)シナリオに即して γ A = 1.01 とおく。GDP
に占める資本所得分配率にあたるαについては多くの先行文献に従い 0.3 とした。社会イン
フラの定常水準には各地域の社会インフラ÷全国民間資本ストック比率を用いる。よって
χ j = G j / K 0 * k0 。各地域における G j / K 0 は図表 5 に与えた通り。 µ 0i については資本比率に代
えて全国 I=地域数*産業部門=8*23=184 の名目付加価値シェアを用いている
(図表 6)
。
データは都道府県別生産性データ(RIETI)による。資本ではなく付加価値シェアとしたの
は µ 0i が第 i 中間財生産者のサプライチェーンに及ぼすインパクトを表す変数であることへ
の留意による。モデル上、中間財生産者は生産において資本のみをインプットとするが、実
際には無形資産・人的資本などの生産要素が含まれる。このため資本シェアでは試算におい
て震災のサプライチェーンへの効果をとらえ切れない可能性がある。なお、生産関数をコ
ブ・ダグラス型としたことから、個別の σ ij に代えて µi0 ≡ ∑ j θ jσ ij の値を特定できればよかっ
たが、一般の生産関数については σ ij の値が求められなければならない。①生産関数の一般
化や②実証に即した σ ij の設定については今後の検討課題としたい。続いて、
k 0 は(10’)式より、
k0
1−α
1 − φ A

γ − (1 − δ )υ + φ r0E 
= αe ln Ω 
 m

−1
(10’’’)
0
で与えられる。φ は実績(貸出比率の平均)から 0.445 とおく。民間貸出金利に上乗せされ
るプレミアム= π は Arai and Ueda(2012)に従って 3.6%とした: r0E = 1.015 + 0.036 。物理的
減価償却率は δ = 0.05 とする一方、ⅿと合わせて質的調整パラメータにあたる υ は定常状態
の民間投資が概ね実績値 15%(国民経済計算の総固定資本形成+在庫増加)ほどになるよう
定めた:
k 0 (γ A − (1 − δ )υ ) = 0.15 * Y0
(21)
次に公共支出についてみていこう。社会インフラ投資の対 GDP 比率は 5%ほどになる。
これを定常状態の公共投資支出を一致させるよう社会インフラの減耗率 δ G を決める:
∑ (χ
j
j
− (1 − δ G ) χ j / γ A ) = 0.05 * Y0
(22)
一方、政府の経常支出の対 GDP 比は 20%として e = 0.2 * Y0 。
これは政府最終消費の対 GDP
比(2009 年~2013 年)にあたる。本稿では単純化のため、賃金所得税率 τ w は 10%、消費
税率 τ C は 10%と設定する 3。
以上から、財市場均衡(19’)式から純輸出 nx 、政府の予算制約式(16’
)式から定額税 TT
が各々残余変数として定まる。このうち純輸出は概ねゼロであり、これは実績値とも整合的
になる。前述の通り、国債金利は r0G = 1.015 で与えられる。この金利水準と国債残高 b0 = 2.2 * Y0
が整合的になるよう効用関数中の国債への選好パラメータをおく。低い金利と高い国債残
厳密には、賃金所得税率 τ は 7%である。賃金所得税率は OECD の 2000 年~2013 年の所得税収対 GDP 比(平
均)5%を労働所得割合(1- α )=0.7 で割ることで算出できる。また、消費税率は現行の税率を採用する場合、消費
C
税率 τ は 8%と見込まれる。これらの数値を採用しても、結果が大きく変わることはない。
3
w
15
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高にも関わらず、家計が国債を保有する(現実には金融機関を介して間接的な保有ではある
が)のは国債の流動性・安全性に高い選好を有しているためと解釈される:
ϕ=
A
G
b0  γ − β r0

C 
(1 + τ ) 
c0




(23)
ここでβは先行研究に従い 0.98 とする。最後に労働供給についてみていく。定常状態に
おける労働時間は1に基準化される。労働の不効用パラメータはこれを満たすように定ま
る:
χ=
1 − τ w (1 − α )Ω 0 k 0α
(1 + τ C )
c0
(24)
労働供給に影響する外生変数として σ が残される。前述の通り 1 /(σ − 1) は(所得の限界効
用=消費の逆数を与件とした)フリッシュ弾力性にあたる。同弾力性の実証分析には労働時
間(intensive margin)のほか、就労選択(extensive margin)を含むことがある。一般に前
者に比して後者の弾力性が高く、男女の比較でいえば、女性の方が弾力性は高い。ここでは
黒田・山本(2007)の研究結果に従い、男女計の「労働時間の選択」のみのフリッシュ弾性
値として 1 /(σ − 1) =0.1 を採用する。結果、 σ =11 を得る。震災による民間消費の減少は負
の所得効果となって労働供給を喚起する。他方、復興増税(消費税の増税)は労働供給を減
じるように働く。これらの効果の多寡は σ の水準によることが示される。震災の影響を試算
する上では重要なパラメータの一つといえる。
図 表 5: 8 地 域 パ ラ メ ー タ
北海道
東北
関東
中部
近畿
中国
四国
九州
N
0.04
0.08
0.33
0.20
0.16
0.06
0.03
0.11
χ
0.04
0.05
0.11
0.11
0.07
0.04
0.02
0.07
θ
0.04
0.07
0.37
0.19
0.16
0.06
0.03
0.09
注 1:1990~2009 年平均(Nは 1990~2008 年平均)
注 2:N=就業人口
出所:経済財政データ(内閣府)・N は都道府県別生産性データ(RIETI)
図 表 6: 地 域 別 ・ 部 門 別 の 名 目 付 加 価 値 シ ェ ア
北海道
東北
関東
中部
近畿
中国
四国
九州
0.00202
0.00294
0.00297
0.00365
0.00117
0.00111
0.00114
0.00347
0.0001
0.00015
0.00026
0.00037
0.00018
0.00012
0.00006
0.00028
0.00145
0.00005
0.00275
0.00053
0.00999
0.001
0.00683
0.00227
0.00592
0.00177
0.00189
0.00065
0.00121
0.00034
0.00382
0.00042
0.00045
0.00045
0.00151
0.0017
0.0011
0.0003
0.00073
0.00029
0.00007
0.00064
0.00797
0.00362
0.00356
0.00185
0.00055
0.00094
石 油 ・石炭製品
窯 業 ・土石製品
0.00049
0.00027
0.00035
0.00055
0.00532
0.00199
0.00147
0.00241
0.00225
0.0013
0.00221
0.00058
0.00051
0.00024
0.00045
0.00095
1
農 林 水産業
2
鉱業
3
4
食料品
繊維
5
パ ル プ・紙
6
化学
7
8
9
一 次 金属
0.00024
0.00075
0.00541
0.00319
0.00323
0.00247
0.00026
0.00135
10
金 属 製品
0.00025
0.00057
0.00412
0.00361
0.00297
0.00064
0.0003
0.00077
11
12
一 般 機械
電 気 機械
0.00016
0.00028
0.00093
0.00367
0.00808
0.01422
0.00725
0.01002
0.00582
0.00607
0.00154
0.00181
0.00061
0.00074
0.00121
0.00275
16
ESRI Discussion Paper Series No.324
「サプライチェーンと金融制約を織り込んだ震災モデルの構築及び分析」
13
輸 送 用機械
0.00015
0.00057
0.00726
0.01381
0.00219
0.00195
0.00025
0.00127
14
精 密 機械
0.00001
0.00031
0.00149
0.00104
0.00053
0.0001
0.00001
0.00019
15
16
そ の 他の製造業
建設業
0.00068
0.00491
0.00149
0.00696
0.01362
0.02766
0.00725
0.01668
0.00564
0.01178
0.00162
0.00496
0.00072
0.00253
0.00195
0.00854
17
電 気 ・ガス・水道業
0.001
0.00263
0.00744
0.00633
0.00458
0.00183
0.00091
0.00288
18
卸 売 ・小売業
0.00542
0.0081
0.05589
0.02311
0.02557
0.0077
0.00342
0.01354
19
20
金 融 ・保険業
不 動 産業
0.00175
0.0007
0.00291
0.00101
0.03293
0.00763
0.00926
0.00283
0.00987
0.00329
0.00291
0.00084
0.00155
0.00043
0.0046
0.00147
21
運 輸 ・通信業
0.00374
0.00447
0.02461
0.01247
0.01169
0.00414
0.00205
0.00742
22
サービス業(民間、非営利)
0.00922
0.01358
0.09022
0.03617
0.03588
0.01144
0.0059
0.0228
23
サ ー ビス業(政府)
0.00639
0.00901
0.02924
0.01736
0.01448
0.00665
0.00358
0.01182
注:名目付加価値シェア(1990~2008 年平均)
出所:都道府県別生産性データ(RIETI)
図 表 7: 外 生 変 数
r0G
η
α
δ
φ
σ
γA
β
π
Q0 '
m
ν
1.015
0.25
0.3
0.05
0.445
11
1.01
0.98
0.036
5
0.5
0.42
4. 震 災の影響試算
ベ ースライン・シナリオ:①被災地=関東圏に立地する中間財生産者の生産性パラメータ
が震災の起きる年( t =2015)において半減する(ζit = 1 → 0.5 )こと、②被災地の労働人口
減は震災後 2 年間( t =2015、2016 年)続くこと、③毀損した社会インフラは 5 年かけて
復旧すること、④震災時( t =2015)、政府の経常支出=被災者支援は(震災前の定常状態
で測った)GDP 比 2%増加することは全てのシナリオで共通とする。繰り返すが、地震は
発生リスクを含めてあらかじめ認知されていない。また、潜在的成長率=TFP 成長率は 1%
で変化しない。ベースライン・シナリオでは⑤金融機関の貸出比率が 0.4 に低下する(定常
状態に比して 1 割減)
、⑥復興増税はなく、賃金税率・消費税率とも震災前の 10%に留まる
ものとする。図表 8 は震災年( t =2015)を含む t =2010 から t =2050 までの資本ストッ
クの成長率、
(実質)経済成長率、
(サプライチェーンに係る)生産性パラメータ、貸出比率、
国債金利(ネット)、民間消費、労働供給、及び国債残高の推移を与えている。震災は一旦
経済成長を大きく落ち込ませるが、その後回復基調に乗る。これは生産性パラメータの回復
などを反映する。震災直後、生産水準の減少や政府支出の増大のあおりを受けて、民間消費
は低下する。このことが負の所得効果となって(劣等財である)労働の喚起につながる。労
働供給の増加は震災のマイナス影響を緩和する方向に働く。後述するとおり、フリッシュ弾
力性は高くなるほど、この緩和効果は強く効く。財政の悪化=国債残高の累積は国債金利を
定常状態よりも高い水準に留め、更に国債を累積させることになる。実際、図表 8 中の国債
対 GDP 比率は発散経路にあることがわかるだろう。金利水準の高止まりは中間財生産者の
利益を圧迫して民間資本成長を阻害、GDP=生産量を低迷させる。図表9では TFP 調整済
み GDP の対震災前(定常)比を示している。前述の通り、成長率は回復基調に乗るものの、
2050 年の段階に至っても、震災前の TFP で調整済み GDP に復帰していない。つまり、潜
在的 GDP 水準= At *Y0 > At * Yt =震災後の GDP 水準。図表 9 は一部門( I = 1)
・一地域モ
17
ESRI Discussion Paper Series No.324
「サプライチェーンと金融制約を織り込んだ震災モデルの構築及び分析」
デル(J=1)との比較も与えている。この一部門モデルでは金融制約の影響は残しつつ、サ
プライチェーンの効果を捨象していることが特徴だ。結果、本モデルに比して、震災による
民間資本ストック、労働、社会インフラの毀損の影響は希釈されるのが特徴である。どちら
のモデルでも震災後の経済変数のトレンドは概ね同様だが、成長率の低下や金利上昇の程
度は(中間財生産が多部門からなる)サプライチェーンによって増幅させられることが伺え
る。特に金利水準と国債残高は時間が経過しても( t =2050 に至るまで)両者の間で顕著な
相違が見受けられる。
1.01
1
0.99
0.98
0.97
0.96
0.95
2010
2020
2030
期間
2040
2050
貸出額(対民間資本ストック)Ψ
全国の民間資本ストック成長率
図 表 8: 震 災 シ ョ ッ ク の 波 及 効 果
1.02
0.45
0.44
0.43
0.42
0.41
0.4
2010
2020
2030
期間
2040
2050
2020
2030
期間
2040
2050
2020
2030
期間
2040
2050
2020
2030
期間
2040
2050
0.1
実質GDP成長率
全国のΩ
1
0.98
0.96
0.94
0.92
0.9
2010
2020
2030
期間
2040
0.05
0
-0.05
-0.1
2010
2050
0.12
0.62
消費(対GDP比)
国債金利
0.1
0.08
0.06
0.04
0.02
0
2010
2020
2030
期間
2040
0.6
0.58
0.56
0.54
2010
2050
1.01
3.2
労働供給
国債残高
3
2.8
2.6
1.005
1
2.4
2.2
2010
2020
2030
期間
2040
2050
(出所)筆者作成
18
0.995
2010
ESRI Discussion Paper Series No.324
「サプライチェーンと金融制約を織り込んだ震災モデルの構築及び分析」
図 表 9:多部門(サプライチェーン)モデルと一部門モデルとの比較
経済成長率
一部門
2010
2011
2012
2013
2014
2015
2016
2017
2018
2019
2020
2021
2022
2023
2024
2025
2026
2027
2028
2029
2030
2031
2032
2033
2034
2035
2036
2037
2038
2039
2040
2041
2042
2043
2044
2045
2046
2047
2048
2049
2050
1.00%
1.00%
1.00%
1.00%
1.00%
-5.04%
6.21%
0.79%
1.02%
1.06%
1.11%
0.99%
1.01%
1.02%
1.02%
1.03%
1.03%
1.03%
1.03%
1.03%
1.03%
1.03%
1.03%
1.03%
1.03%
1.03%
1.03%
1.03%
1.03%
1.03%
1.03%
1.03%
1.03%
1.03%
1.02%
1.02%
1.02%
1.02%
1.02%
1.02%
1.02%
多部門
1.00%
1.00%
1.00%
1.00%
1.00%
-6.94%
3.25%
4.83%
1.48%
1.15%
1.27%
1.03%
1.05%
1.04%
1.05%
1.05%
1.05%
1.05%
1.05%
1.05%
1.05%
1.04%
1.04%
1.04%
1.04%
1.04%
1.04%
1.03%
1.03%
1.03%
1.03%
1.03%
1.03%
1.03%
1.02%
1.02%
1.02%
1.02%
1.02%
1.02%
1.02%
GDP(震災前=1)
国債金利
国債残高(対GDP比)
TFP調整済み
多部門
一部門
多部門
一部門
一部門
多部門
1.50%
1.50%
2.20
2.20
1.000
1.000
1.000
1.000
1.50%
1.50%
2.20
2.20
1.000
1.000
1.50%
1.50%
2.20
2.20
1.000
1.000
1.50%
1.50%
2.20
2.20
2.20
1.000
1.000
1.50%
1.50%
2.20
2.39
2.34
0.940
0.921
1.50%
1.50%
10.54%
2.26
2.37
14.79%
0.989
0.941
8.40%
2.56
2.50
1.25%
0.987
0.977
0.982
1.74%
2.54%
2.56
2.66
0.987
0.987
0.984
1.77%
1.96%
2.56
2.69
0.989
0.986
1.86%
2.17%
2.57
2.70
0.988
0.986
1.78%
1.87%
2.58
2.72
0.989
0.987
1.74%
1.85%
2.59
2.73
1.84%
2.60
2.75
0.989
0.987
1.75%
1.86%
2.61
2.76
1.76%
0.989
0.988
1.77%
1.86%
0.988
2.62
2.77
0.989
0.989
1.78%
1.87%
2.63
2.78
0.990
0.990
0.989
1.78%
1.87%
2.64
2.80
0.990
0.990
1.79%
1.88%
2.65
2.81
2.82
0.991
0.990
1.80%
1.88%
2.66
2.67
2.84
0.991
0.991
1.80%
1.89%
2.85
0.991
0.991
1.81%
1.89%
2.68
1.81%
1.90%
2.69
2.86
0.992
0.992
1.90%
2.70
2.88
0.992
0.992
1.82%
2.71
2.89
0.992
0.992
1.82%
1.91%
0.993
0.993
1.83%
1.91%
2.72
2.91
2.92
0.993
0.993
1.83%
1.92%
2.74
2.94
0.993
0.993
1.84%
1.92%
2.75
2.76
2.95
0.993
0.994
1.84%
1.92%
0.994
0.994
1.85%
1.93%
2.77
2.97
2.78
2.99
0.994
0.994
1.85%
1.93%
3.00
0.994
0.995
1.86%
1.94%
2.80
1.86%
1.95%
2.81
3.02
0.995
0.995
0.995
0.995
1.87%
1.95%
2.82
3.04
0.995
0.995
1.87%
1.96%
2.83
3.05
0.995
0.996
1.88%
1.96%
2.85
3.07
0.996
0.996
1.88%
1.97%
2.86
3.09
2.88
3.11
0.996
0.996
1.89%
1.97%
0.996
0.996
1.89%
1.98%
2.89
3.13
0.996
0.996
1.90%
1.98%
2.90
3.15
1.90%
1.99%
2.92
3.17
0.996
0.997
(出所)筆者作成
復 興政策の影響:復興政策として①2025 年に消費税率を 15%に引き上げる復興増税と②
貸出比率 φt +1 = 0.445 を低下させないような公的金融支援を実施するケースを想定する。後者
については震災時の経常支出の増加(対震災前 GDP 比 2%)は据え置く。よって、公的支
援のメニューが変更されたものと解釈される。その結果は図表 10 で与えた通りである。 t
=2025 年における消費増税は一時的に成長率を低下させ、僅かながらも財政が悪化(ベン
チマークに比して国債残高が増加)する。しかし、金利の低下は国債残高の増加を抑えるよ
う働き、経済成長率も概ねベンチマークの水準に収斂していく。最終年( t =2050)時点で
もみると国債金利、国債残高(対 GDP 比)に相違が見受けられる。一方、公的支援による
貸出比率低下の解消は震災翌年( t =2016)の民間資本ストック成長率の低下に歯止めを掛
けている。その分、同年の経済成長率を高めることが出来ている。このように震災後の復興
政策のあり方は中長期にわたり経済・財政に対して一定の影響を与えることが示唆される。
19
ESRI Discussion Paper Series No.324
「サプライチェーンと金融制約を織り込んだ震災モデルの構築及び分析」
図 表 10: 復 興 政 策
経済成長率
2010
2011
2012
2013
2014
2015
2016
2017
2018
2019
2020
2021
2022
2023
2024
2025
2026
2027
2028
2029
2030
2031
2032
2033
2034
2035
2036
2037
2038
2039
2040
2041
2042
2043
2044
2045
2046
2047
2048
2049
2050
民間資本成長率
国債金利
国債残高(対GDP比)
ベンチマーク 復興増税
貸出支援
ベンチマーク 貸出支援
ベンチマーク 復興増税
ベンチマーク 復興増税
1.00%
1.00%
1.00%
0.00%
0.00%
1.50%
1.50%
2.20
2.20
1.00%
1.00%
1.00%
0.00%
0.00%
1.50%
1.50%
2.20
2.20
1.00%
1.00%
1.00%
0.00%
0.00%
1.50%
1.50%
2.20
2.20
1.00%
1.00%
1.00%
0.00%
0.00%
1.50%
1.50%
2.20
2.20
1.00%
1.00%
1.00%
0.00%
0.00%
1.50%
1.50%
2.20
2.20
-6.94%
-6.94%
-6.91%
-4.42%
-4.42%
1.50%
1.50%
2.39
2.39
3.25%
3.25%
4.28%
-2.02%
-1.15%
10.54%
10.54%
2.37
2.37
4.83%
4.83%
4.03%
-1.73%
-1.53%
8.40%
8.40%
2.50
2.50
1.48%
1.48%
2.02%
-0.69%
-0.29%
2.54%
2.54%
2.66
2.66
1.15%
1.15%
0.88%
-0.28%
-0.08%
1.96%
1.96%
2.69
2.69
1.27%
1.27%
1.47%
-0.05%
0.17%
2.17%
2.17%
2.70
2.70
1.03%
1.03%
0.96%
0.06%
0.19%
1.87%
1.87%
2.72
2.72
1.05%
1.05%
1.11%
0.11%
0.23%
1.85%
1.85%
2.73
2.73
1.04%
1.04%
1.03%
0.14%
0.21%
1.84%
1.84%
2.75
2.75
1.05%
1.05%
1.06%
0.15%
0.20%
1.86%
1.86%
2.76
2.76
1.05%
0.78%
1.04%
0.16%
0.18%
1.86%
1.35%
2.77
2.78
1.05%
1.04%
1.04%
0.16%
0.17%
1.87%
1.80%
2.78
2.78
1.05%
1.03%
1.03%
0.16%
0.15%
1.87%
1.79%
2.80
2.79
1.05%
1.05%
1.03%
0.16%
0.14%
1.88%
1.83%
2.81
2.80
1.05%
1.04%
1.03%
0.16%
0.12%
1.88%
1.82%
2.82
2.82
1.05%
1.04%
1.03%
0.16%
0.11%
1.89%
1.83%
2.84
2.83
1.04%
1.04%
1.02%
0.15%
0.10%
1.89%
1.83%
2.85
2.84
1.04%
1.04%
1.02%
0.15%
0.09%
1.90%
1.84%
2.86
2.85
1.04%
1.04%
1.02%
0.14%
0.08%
1.90%
1.84%
2.88
2.87
1.04%
1.04%
1.02%
0.14%
0.07%
1.91%
1.85%
2.89
2.88
1.04%
1.03%
1.02%
0.13%
0.06%
1.91%
1.85%
2.91
2.90
1.04%
1.03%
1.01%
0.13%
0.06%
1.92%
1.86%
2.92
2.91
1.03%
1.03%
1.01%
0.12%
0.05%
1.92%
1.86%
2.94
2.92
1.03%
1.03%
1.01%
0.12%
0.05%
1.92%
1.87%
2.95
2.94
1.03%
1.03%
1.01%
0.11%
0.04%
1.93%
1.87%
2.97
2.95
1.03%
1.03%
1.01%
0.11%
0.04%
1.93%
1.88%
2.99
2.97
1.03%
1.03%
1.01%
0.10%
0.03%
1.94%
1.88%
3.00
2.98
1.03%
1.03%
1.01%
0.10%
0.03%
1.95%
1.89%
3.02
3.00
1.03%
1.02%
1.01%
0.09%
0.03%
1.95%
1.89%
3.04
3.02
1.02%
1.02%
1.01%
0.09%
0.02%
1.96%
1.90%
3.05
3.03
1.02%
1.02%
1.00%
0.08%
0.02%
1.96%
1.90%
3.07
3.05
1.02%
1.02%
1.00%
0.08%
0.02%
1.97%
1.91%
3.09
3.07
1.02%
1.02%
1.00%
0.08%
0.02%
1.97%
1.91%
3.11
3.08
1.02%
1.02%
1.00%
0.07%
0.01%
1.98%
1.92%
3.13
3.10
1.02%
1.02%
1.00%
0.07%
0.01%
1.98%
1.93%
3.15
3.12
1.02%
1.02%
1.00%
0.06%
0.01%
1.99%
1.93%
3.17
3.14
(出所)筆者作成
頑 健性:試算にあたっては、①震災時( t =2015)における被災地(=関東圏)の中間財
生産性を ζ ti = 1 → 0.5 とした他、②同じ年の政府の経常支出の増加を(震災前)対 GDP 比の
2%、③資本財価格の変動に当たる Q0 ' を Q0 ' = 5 とした。また、④フリッシュ弾性値の値を 0.1
と比較的低い水準に留めている。これらの「仮置き」された数値が試算結果に与えた影響を
見るため、
(他の条件はベンチマークと同じとして)①中間財生産性の低下が ζ ti = 1 → 0.7 に
留まる、②経常支出の増加が GDP 比 5%に及ぶ、③ Q0 ' = 10 (資本成長率に資本財価格が大
きく反応)
、④フリッシュ弾性値が 0.5 になるケースをそれぞれ検証した。結果は図表 11 で
与えた通りである。いずれも定量的な違いは見受けられるが、変化の推移等にベンチマーク
との大きな差異はない。中間財生産性の毀損が少なければ、サプライチェーンを介したマク
ロ経済へのマイナス影響も抑えられる。政府支出の増加も震災時の成長率の低下を抑制す
る。これは政府支出の増加が民間消費を抑え、
(負の所得効果を介して)労働供給を喚起す
るためだ。しかし、長期的には財政を更に悪化させる結果になる。労働弾力性=フリッシュ
弾性値が高いとき、震災時の労働供給が増加する程度が高まり、震災ショックを緩和する方
20
ESRI Discussion Paper Series No.324
「サプライチェーンと金融制約を織り込んだ震災モデルの構築及び分析」
向に働くことが分かる。
図 表 11:頑健性
経済成長率
中間財生産
ベンチマーク
性低下
2010
2011
2012
2013
2014
2015
2016
2017
2018
2019
2020
2021
2022
2023
2024
2025
2026
2027
2028
2029
2030
2031
2032
2033
2034
2035
2036
2037
2038
2039
2040
2041
2042
2043
2044
2045
2046
2047
2048
2049
2050
1.00%
1.00%
1.00%
1.00%
1.00%
-6.94%
3.25%
4.83%
1.48%
1.15%
1.27%
1.03%
1.05%
1.04%
1.05%
1.05%
1.05%
1.05%
1.05%
1.05%
1.05%
1.04%
1.04%
1.04%
1.04%
1.04%
1.04%
1.03%
1.03%
1.03%
1.03%
1.03%
1.03%
1.03%
1.02%
1.02%
1.02%
1.02%
1.02%
1.02%
1.02%
1.00%
1.00%
1.00%
1.00%
1.00%
-3.68%
0.22%
4.54%
1.43%
1.16%
1.25%
1.02%
1.04%
1.03%
1.04%
1.04%
1.04%
1.04%
1.04%
1.04%
1.04%
1.04%
1.04%
1.04%
1.04%
1.03%
1.03%
1.03%
1.03%
1.03%
1.03%
1.03%
1.03%
1.02%
1.02%
1.02%
1.02%
1.02%
1.02%
1.02%
1.02%
経常支出
1.00%
1.00%
1.00%
1.00%
1.00%
-6.60%
2.91%
4.63%
1.66%
1.03%
1.33%
1.00%
1.06%
1.04%
1.05%
1.05%
1.05%
1.05%
1.05%
1.05%
1.05%
1.05%
1.04%
1.04%
1.04%
1.04%
1.04%
1.04%
1.03%
1.03%
1.03%
1.03%
1.03%
1.03%
1.02%
1.02%
1.02%
1.02%
1.02%
1.02%
1.02%
国債残高(対GDP比)
資本財価 フリッシュ弾
性値
格
1.00%
1.00%
1.00%
1.00%
1.00%
-6.91%
1.02%
7.50%
1.60%
0.98%
1.32%
0.97%
1.03%
1.01%
1.02%
1.02%
1.02%
1.02%
1.02%
1.02%
1.02%
1.02%
1.02%
1.02%
1.02%
1.02%
1.02%
1.02%
1.02%
1.02%
1.02%
1.02%
1.02%
1.02%
1.02%
1.02%
1.02%
1.02%
1.02%
1.02%
1.02%
1.00%
1.00%
1.00%
1.00%
1.00%
-5.76%
2.53%
4.37%
1.43%
1.13%
1.25%
1.01%
1.04%
1.04%
1.04%
1.05%
1.05%
1.05%
1.05%
1.04%
1.04%
1.04%
1.04%
1.04%
1.04%
1.04%
1.04%
1.03%
1.03%
1.03%
1.03%
1.03%
1.03%
1.03%
1.02%
1.02%
1.02%
1.02%
1.02%
1.02%
1.02%
中間財生産性
ベンチマーク
経常支出
低下
2.20
2.20
2.20
2.20
2.20
2.39
2.37
2.50
2.66
2.69
2.70
2.72
2.73
2.75
2.76
2.77
2.78
2.80
2.81
2.82
2.84
2.85
2.86
2.88
2.89
2.91
2.92
2.94
2.95
2.97
2.99
3.00
3.02
3.04
3.05
3.07
3.09
3.11
3.13
3.15
3.17
2.20
2.20
2.20
2.20
2.20
2.31
2.36
2.35
2.49
2.52
2.52
2.54
2.55
2.56
2.57
2.57
2.58
2.59
2.60
2.61
2.62
2.63
2.64
2.65
2.66
2.67
2.68
2.69
2.70
2.71
2.72
2.73
2.74
2.75
2.76
2.78
2.79
2.80
2.81
2.83
2.84
2.20
2.20
2.20
2.20
2.20
2.38
2.41
2.69
2.85
2.90
2.90
2.93
2.95
2.96
2.98
3.00
3.01
3.03
3.05
3.07
3.09
3.11
3.12
3.14
3.16
3.18
3.21
3.23
3.25
3.27
3.29
3.31
3.34
3.36
3.39
3.41
3.44
3.46
3.49
3.51
3.54
資本財価 フリッシュ弾
格
性値
2.20
2.20
2.20
2.20
2.20
2.39
2.43
2.40
2.67
2.71
2.71
2.74
2.75
2.76
2.77
2.79
2.80
2.81
2.83
2.84
2.85
2.87
2.88
2.90
2.91
2.93
2.94
2.96
2.97
2.99
3.01
3.02
3.04
3.06
3.08
3.10
3.11
3.13
3.15
3.17
3.19
2.20
2.20
2.20
2.20
2.20
2.36
2.36
2.46
2.60
2.62
2.63
2.65
2.66
2.67
2.68
2.70
2.71
2.72
2.73
2.74
2.75
2.77
2.78
2.79
2.80
2.82
2.83
2.84
2.86
2.87
2.88
2.90
2.91
2.93
2.94
2.96
2.98
2.99
3.01
3.03
3.04
(出所)筆者作成
5. ま とめ
本モデルの特徴は①中間財から最終財に至る階層的な生産過程=サプライチェーンと②
中間財生産者が投資を行う際の金融(信用)制約を織り込んだところにある。地域財生産と
最終財生産は(収穫一定な)コブ・ダグラス型の生産技術を想定しているが、これは成長モ
デルの分野では標準的であろう。ただし、各地域の生産額=地域 GDP が GDP に占める割
合は θ j で固定されることになる。震災はこうした比率にも本来影響を及ぼすだろう。CES
型生産関数などに一般化することで地域経済のウェイトの変動も含めた分析が可能になる。
中間財がマクロ経済に及ぼすインパクトはパラメータ µi0 ≡ ∑ j θ jσ ij に集約されることになる。
資本ストックのみを中間財生産のインプットとする仮定も financial accelerator モデルに
おける危険投資を担う投資家の生産活動と同じである。資本ストックの推移に質的パラメ
21
ESRI Discussion Paper Series No.324
「サプライチェーンと金融制約を織り込んだ震災モデルの構築及び分析」
ータを仮定するのは、技術的には定常状態において実績値(具体的には民間投資の対 GDP
比率)に合わせるための自由度を確保するためであるが、生産設備の陳腐化などで理論的に
説明することも可能だ。代表的家計が国債保有から直接効用を得る仮定も cash in utility と
類似させた解釈が成り立つだろう。他方、今後の課題として残されるのは金融制約に係るパ
ラメータ(レバレッジ比率にあたる) φ t +1 を外生的に与えていることだ。他のマクロ経済モ
デルと整合的にするためにも、金融機関自身の金融制約(貸し出し可能額が自己資本に縛ら
れる)や、その選択を明示して、これを内生化することが求められるだろう。加えて、幾つ
かの検討課題が残される。本モデルでは無限に生存する(フォワードルッキングな)代表的
家計を想定するにも関わらず、①国債残高の発散が財政破たんに繋がる(政府の通時的予算
制約式において横断条件が満たされない)リスクが考慮されていない。あるいは②暗黙裡は
2050 年以降、
( At で基準化された)定額税 TT が新しい定常状態における財政均衡を回復す
るよう増税されることが想定されている。本来は財政リスクが将来的に予見された場合、代
表的家計の選択に与える効果も明示的に織り込むことが望ましい。
22
ESRI Discussion Paper Series No.324
「サプライチェーンと金融制約を織り込んだ震災モデルの構築及び分析」
参 考文献
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・ B.S. Bernanke, M.Gertler and S.Gilchrist(1999)”The Financial Accelerator in a
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・Cavallo, Eduardo and Ilan Noy (2010) “The Economics of Natural Disasters: A Survey,”
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・ Gertler.M and P. Karadi(2011)”A model of unconventional monetary policy,” Journal of
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・Hansen, G.D. and S. İmrohoroğlu (2015),”Fiscal Reform and Government Debt in Japan: A
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・Hochrainer, S. (2009) “Assessing the Macroeconomic Impacts of Natural Disasters – Are
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・Kiyotaki, N. and J. Moore(1997) "Credit Cycles," Journal of Political Economy Vol. 105, No.
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・ Raddatz C.(2009) “ The Wrath of God: Macroeconomic Costs of Natural Disasters.”
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・Schnell, M. K. and Weinstein, D.E. (2012) “Evaluating the economic response to Japan’
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・植杉威一郎他(2012)「大震災と企業行動のダイナミクス」RIETI Policy Discussion Paper
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・佐藤主光・小黒一正「首都直下地震がマクロ経済に及ぼす影響についての分析」
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・浜口伸明(2012)「「東日本大震災による企業の被災に関する調査」の結果と考察」RIETI Policy
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・若杉隆平・田中鮎夢(2013)「震災からの復旧期間の決定要因:東北製造業の実証分析」RIETI
Policy Discussion Paper Series, No. 13-J-002.
23