習熟が容易なウォークスルー操作実現のための経路

画像電子学会
The Institute of Image Electronics
Engineers of Japan
年次大会予稿
Proceedings of the Media Computing Conference
習熟が容易なウォークスルー操作実現のための経路自動生成手法
An automatic route generation method for easy operation of the walk-through
水野 良紀†
Yoshiki MIZUNO†
大貝 彰‡
Akira OHGAI‡
辛島 一樹‡
多田村 克己†
Kazuki KARASHIMA‡ and Katsumi TADAMURA†
†山口大学大学院理工学研究科 Graduate School of Science and Engineering, Yamaguchi University
‡豊橋技術科学大学建築・都市システム学系 Department of Architecture and Civil Engineering, Toyohashi
University of Technology
E-mail: †{v029vm, tadamura}@yamaguchi-u.ac.jp, ‡{aohgai, k-karashima}@ace.tut.ac.jp
1. はじめに
震災時に起こり得る様々な状況を,CG 技術を用いて
仮想空間中に擬似的に表現した避難訓練シミュレータが
開発されている[1,2].この避難訓練用シミュレータに期
待されるのは,実際に被災したときに慌てることなく正
しい避難行動を取れるように現実に近い発災状況を再現
し,利用者がその中で質の高い疑似避難経験を積めるよ
うにすることである.このような仮想空間を利用するシ
ミュレータは,ウォークスルーによる移動が基本である.
しかし,従来のウォークスルーベースのシステムでは,
図 1. 仮想空間ウォークスルー操作の問題点
複雑な経路を移動する際,曲がるタイミングや移動速度
行可能な領域の最も安全な部分を移動経路として選択し
等を細かく調整する操作が必要である.また,通過可能
ているはずである.このような,仮想空間での移動のた
な隙間がある場合でも,移動の際に足元は画面に現れな
めだけに必要な操作がウォークスルーベースの避難訓練
いため,視野に入り難い低い瓦礫などの障害物に衝突し
シミュレータの実用性を大きく損ねていると言っても過
易い.このため,利用者が空間移動操作に習熟していな
言では無い.
いと,訓練の主目的である周囲状況を観察して適切な避
この問題に対して,藤原らはカーナビゲーションシス
難行動を判断することよりも,障害物に衝突しないよう
テムでの移動経路設定用に提案されたハイパーレール
に移動するための操作に注意が集中してしまう.
[4]の考え方を避難訓練シミュレータに適用した通行可
本稿では,ウォークスルーの操作性を改善するための
能経路自動生成手法を提案した[5].具体的には,大規模
移動に関する新たな概念を提案し,それに基づき被災状
震災時に建物から発生する瓦礫の分布を記憶するために
況に応じて変化する瓦礫の分布に合わせて自動的に移動
用いられる避難訓練対象領域を正方メッシュで分割した
経路を生成可能な手法を提案する.
セルを移動経路としても用い,通行可能経路の限定と瓦
2. 従来研究
礫の付近では移動速度を自動的に低下させることで衝突
これまでに開発された避難訓練シミュレータは,屋内
回避を実現する経路生成法を提案した.しかし,セルの
向けと屋外も含めた汎用のものたが提案されている
大きさによっては,利用者に進行方向選択の余地が残る
[1,2].これら従来のシステムを利用する際には,前節で
こと,進行方向がセルの境界に衝突するとセルの境界に
述べたウォークスルーベースの避難訓練シミュレータな
沿って移動させるようにしているため,利用者の意図と
らではの問題点が生じる.図 1 は,大震災直後の瓦礫の
実際の移動とが一致しない場合が生じる点に問題がある.
散乱する道路[3]を避難する場合を想定した訓練シナリ
仮想空間を利用した避難訓練を,従来のような移動が
オの 1 シーンである.この図中に示すように現在の地点
自由なウォークスルーで行うのではなく,移動の制約が
からどの方向にも移動が可能であり,利用者は前方の瓦
大きく歩行速度で動く仮想のトロッコに乗車して行うも
礫を効率良く躱すために移動方向と速度の調整に注意が
のとすると,操作習熟の必要性を軽減できると考えられ
集中する傾向にある.しかし,実際に被災した現場にお
る.本稿では,仮想トロッコでの移動を実現するための
ける避難の際には,自分の歩速でほぼ無意識のうちに通
レールを自動的に敷設する手法を提案する.
画像電子学会
The Institute of Image Electronics
Engineers of Japan
年次大会予稿
Proceedings of the Media Computing Conference
3. 基本的な考え方
3.1 システムの概要
図 2 は,提案手法の適用結果を利用する避難訓練シミ
ュレータと関連する入出力を示したものである.入力デ
ータとして,倒壊建物を含む建物データと道路データに
加え,提案手法により得られる進行経路を示すためのレ
ール状の経路およびそのレールの中心線である仮想トロ
ッコ移動経路データを利用する.この避難訓練システム
では,前述のように仮想トロッコを運転して移動する事
を想定するが,実際のトロッコと異なり仮想トロッコは
進行方向を自由に反転させることができる.利用者はジ
ョイスティックにより,前進,停止,反転,回頭(右回
り/左回り)の操作を行う.
3.2 前提条件
図 3. 経路自動生成処理の概要
提案手法では,以下の前提のもとに仮想トロッコ用の
経路を生成する.
・移動対象の道路は道路セグメント単位に分割されてお
り,各セグメントの経路探索のための始点と終点は予
め与えられている.
・道路は正方メッシュに分割されており,その要素であ
るセル単位に瓦礫容量が与えられている.
図 4. 適用例
・後述する波の伝搬および最終経路探索の際,移動可能
なセルは上下左右の4方向のみに限定する.
4. 経路自動生成の概要
図 3 は,提案手法による仮想トロッコ用移動経路生成
動のためのコストが小さいとして始点セルから終点セル
に到達する経路を探索する.
4. 適用例
処理の流れを示したものである.まず,シミュレーショ
提案手法を実装して得られた適用例を図 4 に示す.図
ン対象範囲に含まれる道路セグメントおよび建造物デー
中の紫色の矩形は建造物を,オレンジ色のセルは瓦礫等
タと、瓦 礫 散 乱 シ ミ ュレ ー シ ョ ン 結 果[3]か ら 得 られた瓦
の障害物を示し,黄色は提案手法により得られた経路に
礫分布データを読み込む.そして,すべての道路セグメ
基づき敷設した仮想トロッコ用のレールである.
ントに対して始点と終点を設定してその時の瓦礫の分布
5. おわりに
状況に対応した仮想トロッコ用の経路を求める.具体的
ウォークスルーの操作性を改善するための移動に関
に は , 藤 原 ら の 手 法 [4]と 同 様 に , 始 点 を 含 む セ ル (始 点
する新たな概念を提案し,それに基づき被災状況に応じ
セ ル )か ら 波 番 号 を 更 新 し な が ら 伝 播 さ せ て い き 終 点 を
て瓦礫の分布が移動する度に新たな移動経路を生成可能
含むセ ル(終 点 セ ル)に 届 く ま で 繰 り 返 す . 次 に 終点セル
な手法を提案した.今後の課題として,メッシュをベー
から波番号が 1 つ小さいセルだけを残しながら逆に伝播
スとしない経路生成手法の考案が挙げられる.
させていき始点セルまで繰り返す.以上の処理により選
択されたセルに対して,直進の方が右折や左折よりも移
文
[1]
[2]
[3]
[4]
[5]
図 2. 避難訓練シミュレータの概要
献
横井他 , 防災・減災のため の 避難シミュ レ ータの開発 , 東
京都市大学 環 境情報学部 ジ ャーナル , 12, pp.82-88, 2011.
J. Ewer, et al., SMARTFIRE-the fire field modelling
environment, Proc. of ECCOMAS CFD2010, 2010.
S. Morinaga, et al., A Method for Simulating Distribution of
Rubble Immediately After The Earthquake, Proc. of
IWAIT2015, ID463, 2015.
藤 原 他 , ウォークスルーのための障 害 物 を考 慮 した通 行 可 能
経 路 自 動 生 成 手 法 , 画 像 電 子 学 会 第 269 回 研 究 会 ,
pp.85-90, 2014.
清水他 , 3 次元 空間をウォ ー クスルーす る ための操作 イ ン
ターフェイ ス の一提案 , 情処 第 52 回全 国大 会論文集 (メ デ
ィア情報処 理 ), pp.291-292, 1996.