報告書

Journal of The Sugiura Memorial Foundation
Vol.4 July 2015
気になる人を真ん中に
都市部における住民主体の
地域包括ケアの実践と効果の検証
鈴木 恵子 氏
ボランティアグループすずの会 代表
1.背景
下の4点を実施していく。
人口145万人の川崎市の高齢者人口は年々増加が続
①住民主体の地域包括ケアの実践事例を通して、その活
く。2014年
(平成26年)年現在269,000人、高齢化率は
動内容と繋がりのコーディネート、マネージメント方
18.67%と全国平均に比べると低い水準にあるが、2025
法などを検討する。
年には高齢者人口が340,485人、22.46%となる見込み
②地域MAPを活用しながら、多くの問題を抱える「気に
である。すずの会が活動エリアとしている川崎市宮前区
なる」人たちのニーズキャッチとその問題を解決する
2
野 川 地 区 は、面 積2.67km 、人 口28,282人、高 齢 化 率
ための連携方法を考察する。
21.52%であり、坂道の多い地形に新旧住民・団地住民
③高齢者の暮らしの実態調査を実施する。
が混在しており、要支援・要介護高齢者約1,000人が在
④住民主体の地域包括ケアの実践活動が地域にもたらす
宅生活を送っている。
介護保険事業者は多く、
サービスは
人的・経済的効果を明らかにする。
充実してきているものの、医療・介護サービスだけで生
活全体を支えきることは困難なケースが急増している。
4.期待される成果
高齢化が進む都市部の地域において、
住民は
「いつまで
①自分たちの地域でも実践できると思わせる地域づくり
この地域で暮らしていけるのか」
と不安を感じ、
繋がりの
の要因などを明らかにすることは、他の都市部地域に
必要性を感じている。
孤立に陥りそうになりながら、ほっ
おける住民活動の構築と普及に寄与するものと考える。
ておけない状況の中で暮らし続ける高齢者のニーズに応
②多職種、専門機関と地域住民とが同じ意識で「気になる
えるために、すずの会は20年間にわたり、居場所づく
人」と関わることの意義を見出すとともに、その活動が
り、
情報提供、
ネットワークづくりなどの新しい活動を生
地域にもたらす人的・経済的効果を実感することで、
み出してきた。現在、65名のボランティアが活動してい
住民の意欲を向上させるものと考える。
る。
専門職との連携を通じて、
要支援者・介護者と関わり
続けているすずの会の実践を通して、住民主体の地域包
括ケアと活動がもたらす人的及び経済的効果を考えてい
きたい。
2.目的
住民主体の地域包括ケアの実践を検証すると共に、そ
の活動が地域にもたらす意義と人的・経済的効果の有用
性を明らかにする。
3.計画
典型的な都市部である川崎市宮前区野川を中心に、以
41