「民法(債権関係)の改正に関する中間試案」に関する意見 東 京 都 中 央 区 八 丁 堀 2 丁 目 21 番 6 号 一般社団法人日本建築士事務所協会連合会 基本問題検討特別委員会 ◆建築設計・工事監理等の業の立場からの意見 ・多 種 多 様 な ビ ジ ネ ス 社 会 に お い て は 、典 型 契 約 の 原 則 に か か わ り な く多様な契約慣行が存在している。裁判例で多く認められ、学説上 も 支 持 が 多 い 考 え 方 で あ っ て も 民 法 の 新 た な 規 定 に 置 く 場 合 は 、こ れ ら 想 定 可 能 な 全 て の 契 約 慣 行 に 当 て は ま る 必 要 が あ り 、そ う で な いと社会的な大きな混乱をまねく恐れがある。 ・このため、新たな規定として置くことについては、全てのビジネス 分 野 の 契 約 慣 行 に 適 合 す る か を 慎 重 に 見 極 め て 、適 合 し な い 契 約 慣 行がある場合は、新たな規定として置かない、又は除外規定で明確 にするなど、きめ細かい配慮をお願いしたい。 ◆ 特 に 下 記 の 条 項 に つ い て は 、建 築 設 計 ・ 工 事 監 理 の 契 約 慣 行 へ の 影 響 が大きいので再考して頂きたい。 ● 第26 契約に関する基本原則/3 付随義務・保護義務 ( 中 間 試 案 P47) → 建 築 設 計 の 委 託 者 が 得 よ う と す る 利 益 は 、個 々 の 契 約 ご と に 千差万別であるため、これらを基本原則に置くと委託者の一方 的な主張によっては、受託者が想定外の不利益を被る場合がで るなど実務に大きな混乱を生じるため、この条項は基本原則か ら削除するか、規定の置き方を再考して頂きたい。 ● 第41 委任/1 受任者の自己執行義務(1) ( 中 間 試 案 P 6 9 )( 関 連 条 項 : 中 間 試 案 P 5 1 / 約 款 ・ 不 意 打 ち 条 項) → 建 築 設 計 で は 、委 託 者 の 許 諾 が な い 場 合 で あ っ て も 部 分 的 な 再委託があることを前提にしてきた契約慣行があること、また 約款において再委託の許諾について記載をしても、第30約款 3(不意打ち条項)により契約の内容とならない恐れがあるこ と、などから「原則委任者の許諾」に限定すると混乱が生じう る た め 、「 許 諾 を 得 た と き 、 又 は 復 受 任 者 を 選 任 す る こ と が 契 約の趣旨に照らして相当であると認められるとき」として頂き 1 たい。 ● 第41 委任/3 受任者が受けた損害の賠償義務 ( 中 間 試 案 P70) → 委 託 者( 建 築 設 計 の 委 託 者 = 建 築 主 )の 一 方 的 な 主 張 に よ り 、 現行民法では認められてきた受託者(建築士事務所)の損害賠 償 請 求 が で き な く な る 恐 れ が あ る た め 、現 行 民 法 6 5 0 条 第 3 項 を維持して頂きたい。 ● 第41 委任/4 (3)委任事務の全部又は一部を処理する ことができなくなった場合の報酬請求権 ( 中 間 試 案 P70) → 建築設計の契約慣行では、解約後の報酬請求は、民法648 条3項に基づき、業務割合に応じて精算するというものであっ た。しかし、この条項が適用されると従前と大きく異なる扱い となる可能性がある。 → まず、委任者の都合で解約された場合について、アが適用さ れるか、イが適用されるかが、一見して明らかではなく、疑義 が残る。 → イ が 適 用 さ れ る と す れ ば 、設 計 報 酬 の 全 額 を 請 求 す る こ と が できることになるため、委託者(発注者)が従前より大きな負 担を強いられるようになる(損益相殺を考えても、利益部分の 請 求 は 可 能 に な る と 思 わ れ る )。 一方、アが適用されるとすれば、設計契約は成果について報 酬が定められる契約であるため、設計が可分であるかどうか、 委 託 者 の 利 益 に な る か ど う か が 争 わ れ 、 受 託 者 (建 築 士 事 務 所 ) は、従前は認められた報酬請求が認められなくなる場面が生じ ると考えられる。 以上のとおり、どのように解釈しても、現状と異なる結論を 生ずることになり、実務に多大な混乱を生じさせるおそれがあ る こ と か ら 、 現 行 民 法 648 条 第 3 項 を 維 持 し て 頂 き た い 。 2
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