第4版のはじめに 2011年の第3版刊行後2年半余りが経過し、〔建前〕 この間、 有期労働契約に関する労働契約法の改正、注目すべき最高裁判例 の登場などもあったため、〔本音〕 遊ぶ金が欲しかった、どの本 でもよかった、第4版を刊行することとした。 スリムでちょっと小脇に抱えるとオシャレな厚さだったのは初 版のみ。その後版を重ねるにつれてのバルクアップは避けられな かった。このままだと第4版はかぎりなく立方体に近づくのでは ないか、オマエはコロコロコミックかという懸念もあったのだが、 今回1ページあたりの字数を増やすという裏技?偽装?により、 ほんの少しだが第3版よりも減量に成功した。ちょっとのリバウ ンドですぐ帳消しになるくらいのささやかなページ数だが。 私がこのようなスタイルのテキストを書けるのは、恩師である 菅野和夫先生(古稀だけどまだイケメン)をはじめとする東大労判の 諸先生方がそれぞれ立派な基本書を出版されているからである。 私はある意味それに甘えて──などとすごく謙虚な体で書いてみ たが、よく考えたらこれって「オレだって分厚い教科書を書く能 力はあるんだけど敢えて書いてないだけだよ」と言ってるのと同 じであった。やはり人間年を取るとさらに傲慢になるようだ。 今回の改訂にあたっても、成蹊大学法学部の原昌登教授(祝昇 進! のぼすけ先生→「初版のはじめに」参照) 、京都大学大学院博士 後期課程の佐藤慶さん、そして慶應義塾大学法科大学院修了生の 安藤翔さんに数多くの有益なアドバイスを頂き、編集作業では弘 文堂編集部の高岡俊英さんに大変お世話になった。改めて心より お礼を申し上げたい。 2013年7月 中道通り港やにて 森戸 英幸 第4版のはじめに iii 初版のはじめに この本は、一言でいえば「ざっと読んでとりあえず労働法の全 体像をさっと把握する」ための本、あるいは「さっと読んでとり あえず労働法の全体像をざっと把握する」ための本である──ど っちがいいのかよくわからないのでとりあえず両方書いておいた。 まあそれはともかく、要するに労働法の入門書だ。労働法を初め て学ぶ人、ちょっとは勉強したけどもう一度最初からきちんとや りたい人、とにかく明日の朝までに「一夜漬け」しなければなら ない人。そんな人たちに是非読んでもらいたい。 なにしろ「ざっと(さっと)」読む本なので、できるだけ平易に、 わかりやすく書いたつもりである。ホントは途中にイラストやマ ンガを挿入してさらにわかりやすくしたかったのだが、自分で描 く才能はないし、人に頼む予算もコネもないし……ということで ビジュアル系アピールは断念。そうすると残された可能性はテキ スト系アピールだ。とは言え、事例とかケースを載せるっていう のはいかにもありきたりだし……ということでたどり着いたのが、 職場でリアルになされていそうな「会話」というか「セリフ」を 挟み込む、というやり方である。是非、実際に会話がなされてい る場面を妄想、じゃない想像しながら読んで頂きたい。結構楽し めるはずだ。 なにしろ「さっと(ざっと)」把握するための本なので、そんな に細かいことまでは書いていない。取り上げた判例の数も多くな いし、文献の引用も基本的にはしていない。断片的にサラッとし か、いやそもそもまったく触れていない「論点」(なんかいかにも 試験勉強チックでイヤな響きだ……)もいくつかある。そこはもっと ちゃんとした、分厚い、面白くな……じゃない、マジメな本でカ バーして欲しい。ただそう言いつつ、ぶっちゃけ新司法試験くら いならこの本(+ケースブック系の本を使ったロー・スクールでの講義) iv でも十分だと個人的には思っているのだが…… 「入門書」と自ら銘打ったが、ただ「コンパクトで読みやすい けど、表現があっさりし過ぎててつまらない、したがってなにも 頭に入らない」というよくあるタイプの入門書には絶対にしたく なかった。読みやすいけど面白い、(体系書ほどじゃないけど)それ なりにその筆者の思いが感じられる本。そんな本にしたいと思い ながら書いた。ホントにそういう本になっているのか? それを 確かめながら、かつちょっと疑いながら読んで頂ければ幸いであ る。 * * * 以下、(ガラにもなく) 謝辞です。忘れもしない19年前の春、司 法試験や公務員試験に邁進する級友たちの間でなんとなく波に乗 り切れていなかった筆者に(なぜか) 研究者の道を勧めて下さっ た、恩師菅野和夫先生。人間としてはなかなかナイス・ガイだが 学者としては明らかにデキの悪い筆者をずっと暖かく見守って下 さった、東京大学労働法研究会の諸先生方。そして、小さな大 学(=教科書採用でも部数期待できず)の無名(=ってこともないんだけ ど、労働法じゃなくて企業年金が専門だと思われてきたので) 研究者に (なぜか)このありがたいチャンスを与えてくれた、弘文堂編集部 の高岡俊英さん。 まだまだいます。判例や行政解釈の照合などの煩わしい作業を やってくれただけでなく、内容についても多くの有益な助言をし てくれた、成蹊大学法学部の原昌登助教授(ちなみに「はらまさ・ のぼすけ」教授ではなく、「はら・まさと」助教授です)。新司法試験に 向けての勉強で忙しいのに、そして報酬はこの本1冊だけなのに 一生懸命原稿を読んでダメ出ししてくれた、成蹊大学法科大学院 の院生有志、すなわち奥田真理子さん、金田恒平さん、志村彩織 さん、鈴木淳史さん、長谷川泰さん、八田剛さん。 初版のはじめに v 以上の皆さんのご指導とサポートがなければ、この本が世に出 ることはなかったはずです。本当にありがとうございました。 2006年秋 吉祥寺東急裏のスタバにて 森戸 英幸 第2版のはじめに 2006年の初版刊行後まだ2年足らずではあるが、労働契約法の 成立やパートタイム労働法の改正など、労働法制に大きな変化が みられ、また注目すべき新たな裁判例もいくつか登場したので、 第2版を─ うー、ダメだ(>_<) あまりにベタな「第2版のはじめに」を 書いている自分に寒気がしてきた。というわけで、いつもの調子 に戻ろう。え、なんで第2版出したかって?! うーん、まあ強 いて言えば「みんなが出すから」かな? おかげさまで初版にはいろいろなご意見・ご批判を頂いた─ たとえば「ふざけ過ぎだ」 「ふざけ過ぎだ」あるいは「ふざけ過 ぎだ」など。しかし残念ながら第2版もまったく同じトーンなの で、ふざけた本で勉強したことをマジメな場面に応用する能力に 欠ける場合は読まない方がよいかもしれない。 もちろん、おかげさまでお褒めの言葉も数多く頂いた(ちょっ と自慢っぽいが、こっちの方が圧倒的に多かった) 。 「労働法を楽しく勉 強できました!」という初学者の皆さんの反応もありがたかった が、学界の先生方、つまりは労働法を本当にわかっている方々の 「面白かった」「実は深い本だね」などのお言葉が何よりも嬉し かった。 vi 第2版も初版同様、いやそれ以上に喜んで頂けるように、やっ ぱりこの裁判例も載せた方がいいかな、これもうちょっと詳しく 書こうかな……などの思いはすべて封印、グッと我慢。あまり欲 張らず、初版同様、さっと(ざっと) 読んで労働法の全体像をつ かめる本、あまり息継ぎしないで一気に読める本に徹する、それ だけは心がけたつもりである(……と言いつつ第2部にこっそり第6 章が追加されたりしているのだが)。 * * * 今回の改訂でも、多くの方々にお世話になった。初版同様この 第2版についても数多くの有益な助言をしてくれた、成蹊大学法 学部の原昌登准教授(そう、文科省の陰謀?により、残念ながら初版の ギャグはもう二度と使えない……)。法令等の照合と内容の「検閲」 をお願いした、上智大学法科大学院の院生有志(三振すんなよ!)、 すなわち、秋山経生さん、荒木耕太郎さん、佐藤慶さん、鈴木健 太郎さん、飛田亮さん、藤井建徳さん。そしてもちろん、今回も 全面的にバックアップしてくれた、弘文堂編集部の高岡俊英さん。 皆さん本当にありがとうございました。 2008年夏 赤坂見附WeST PArK CaFE にて 森戸 英幸 第3版のはじめに 2008年の第2版刊行後2年半余りが経過し、この間、労働基準 法・育児介護休業法の改正、注目すべき最高裁判例の登場なども あったため、第3版─ 第3版のはじめに vii ハッ(◎_◎;) ベタな書き出しにはもうサヨナラしたはずだっ たのに、加齢とともにいつの間にかまた無難な方向に(>_<) い かんいかん!(←これがすでに初老のフレーズ)というわけで、いつ もの調子に戻ろう。なんで第3版出したかって? だってしょう がないじゃん、菅野先生も水町くんも、忙しいはずなのに毎年の ように改訂するからさあ…… 両先生をはじめとする東京大学労働法研究会の諸先生方の立派 な教科書にはまだまだ及ばないが、おかげさまで本書は「教科書 採用はほとんどされてないのになぜかそこそこ売れる本」として の地位?を築いたようである。初版と第2版をお読み頂いた皆様 に心より感謝申し上げるとともに、 「だったらついでに3版も買 えよ!」との言葉を捧げたい。 今回の改訂でも、第2版に引き続き、成蹊大学法学部の原昌登 准教授、ならびに京都大学大学院博士後期課程の佐藤慶さんに数 多くの有益なアドバイスを頂き、編集作業では弘文堂編集部の高 岡俊英さんに大変お世話になった。改めてお礼を申し上げたい。 2011年1月 紀尾井町Aux Bacchanales にて 森戸 英幸 viii おわりに どこかの教科書売り場にて── 「この本ってさー、『プレップ』にしては厚くない? 労働法の くせに生意気じゃね?!」 「確かにー! せっかくのこじゃれた装丁もこの厚さだとちょ いダサー、みたいな」 おっしゃるとおり。 「プレップとは、英語の Prep で予習、予備、 準備という意味」なのに、 「これから法律学にチャレンジする人 のため」の、「新しいタイプの『入門の入門』書」(以上、弘文堂ホ ームページより)なのに、結局フツーの教科書くらいの厚さになっ てしまった。値段もその分ちょっと高い。 いや、筆者も最初はせいぜい200頁いくかいかないかくらいの ボリュームで考えていたのだが、いざ書き出してみると「アレも 大事だ」「コレは落とせない」 「ソレを書かないとアホだと思われ る(○○センセイには面と向かってアホと言われる)かも」──で気が ついたら300頁だ。そう、(論点の)リストラ、(ページ数の)ダウン サイジング、(記述の)スリム化にことごとく失敗してしまったの である。たぶん経営者だったら完全に失格だ……でも労働法学者 としてはむしろ立派かも。 * * * そんなやや「大盛り」の「プレップ」を最後まで読んで頂いた 読者の皆さん、本当にありがとうございました。途中ほとんどと ばしてとりあえず今ここを読んでいるアナタ、でも大丈夫、ミス テリーってわけでもないのでここを読んでも犯人とかオチがわか 295 っちゃったりはしません。これから時間をかけてゆっくり中身を 読んでもらえれば嬉しいです。 2006年秋 やっぱり吉祥寺東急裏のスタバにて 森戸 英幸 296
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